読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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皆様、新年あけましておめでとう御座います。
挨拶も早々にまず最初に謝らなければならない事がございます。
元日の活動報告にて「今日中には投稿出来たらな思ってます」などと言っておきながら、それから一週間が経過してしまいました。
読者の方々に対し変に期待させるような事を言ってしまった事をここにお詫び申し上げます。
こんな作者ではありますが、作品を楽しみに読んでいただけたら幸いに存じます。
これからも本作及びもう一つの作品も楽しんでもらえたらなと思います。では、長くなりましたが本編をどうぞ。


番外編2 ハッピーニューイヤー

 1月1日。年が明け、朝早くから良司は家から近い神社へと来ていた。理由は勿論初詣だ。

「寒っ。やっぱ家で本読んでた方が良かったかな」

 そんな文句を口にする。そう。元々彼は初詣に来る気など無かったのだ。

「文句言わないの。年の初めくらい日本人らしく初詣しなよ」

 全ての元凶は妹の美希だった。朝早くから良司の家にやって来るや否や、彼を叩き起こして神社へと連行したのだ。

 何が悲しくてこの歳で妹と初詣に来なければならんのかと密かに思う良司だった。

「初詣も何も俺は神様を信じてねぇよ。朝っぱらから人の家のドア叩き続けやがって。新年早々近所迷惑だっての」

「あーでもしないと兄貴絶対行かないでしょ?寧ろ新年から健康的な生活の切っ掛けを作った妹に感謝するべきよ」

「恩着せがましいとはこう言う時に使うんだろうな」

「言葉の意味を再確認出来て良かったじゃん」

「お前には罪悪感ってもんは無いのか」

「新年早々兄貴の為に良い事をしたって爽快感なら有るけど?」

 これ以上は話にならないと判断して良司は深くツッコむのをやめた。

「にしても長い列だな俺らの番はいつになったら来るんだ?」

「さっきからずっと言ってんじゃん。あと20分くらいでしょ。我慢してよ」

 スマホを弄りながら答える美希に言われながら自分達の番が回って来るのを待った。

 

 

 それから数十分後、やっと自分達の番がやってきて、二人は賽銭箱に小銭を放った。何だかんだ言いながら初詣をする時にはちゃんとお願いはする良司であった。それに既に願い事は決まっていた。

(今年もリサと楽しく過ごせる時間が増えますように)

 誰かに聞かれたらそんな事は神様に頼まずに自分で何とかしろと言われる事間違いなしだろうが、自分で誘う度胸も無いチキンメンタルな良司は信じてもいない神様にでも縋るしかないのだ。

 そしてふと横を見ると未だに美希が目を閉じて手を合わせていた。

(何をそこまで必死に願ってんだ?)

「・・・今年こそ、今年こそ良い彼氏が出来ます様に

「・・・」

 聞こえるかどうかというボリュームで隣からそんな事が聞こえた気がしたが、良司は聞こえなかった事にした。

 それから二人は御神籤を引き、二人仲良く凶を引き、そのまま結んだ。

「さて、これからどうする?朝飯でも食いに行くか?」

 朝早くから叩き起こされてそのまま来た為、まだ何も食べていなかった。

「あー、ごめん。この後友達と約束してるからそこまで時間無いや」

「自由過ぎるな、お前」

「フットワークの軽さが私の武器だから」

「お前はボクサーか」

 そんな雑談を交わしながらも二人はその場で別れた。一人残された良司はこれからどうするかと頭を悩ませた。

 すると背後から声がした。

「あれ、良くん?」

「ん?リサ!?」

 振り返るとそこには栗色のコートに身を包んだリサが居た。

「良くんも初詣に来てたんだね」

「ま、まあね。リサも初詣?」

「うん。ここには毎年来てるからね」

「俺もだよ」

 早速願いが叶った事に良司は信じてもいない神様に感謝した。

(ありがとう神様!今年一年もよろしくお願いします!)

 先程美希に言った事と正反対の事を思う良司(哀れな生き物)だった。

「あ、そうだ」

「ん?」

「新年、明けましておめでとう御座います。今年も宜しくお願いします」

「こ、こちらこそ宜しくお願いします」

 礼儀正しく挨拶をするリサに良司も同じ様に返した。

「ところで良くんはこの後何か予定とかあるの?」

「いや、何処かで朝ご飯でも食べようかなってだけだよ」

「ふーん。だったらさ、私も一緒に行って良い?」

 可愛らしく首を傾げて聞いてきた。そんな頼み方をされて断れるわけが無い。

「勿論良いよ。飯は俺が奢る」

「え、そんなの悪いよ!」

 リサが食い気味に断って来た。だが一度言った以上、良司にも張りたい見栄の一つや二つはある。

「タダで奢るわけじゃないよ。リサ、今日は暇?」

「え?う、うん。今日は何も予定は無いけど」

 それを聞いて良司は少し笑って言った。

「じゃあリサ、一緒に遊びに行こう」

 それを聞いてリサは少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの無邪気な顔で答えた。

「うん。行こう!」

 こうしてお互いが自覚の無いまま新年最初の二人のデートが始まった。

 

 

「いただきまーす」

「いただきます」

 暫くして二人は近くのファミレスへとやって来ていた。元日だと言うのに店内にはそれなりに人がいた。

「でも何で急に遊びに行こうだなんて思ったの?」

 リサが頼んだパスタを頬張りながら聞いてきた。

「ん?リサと一緒に出かけたかったから、かな」

 今度はハンバーグセットを食べていた良司が答えた。言ってから自分がものすごく恥ずかしい事を言ってると認識して顔が赤くなった。

(んんんんん〜!)

 それを聞いたリサも顔を赤くして俯いていたが、当の良司はそんな顔を見ている余裕は全く無かった。

(な、何今の!?どう言う意味!?良くんは私の事をどう思ってるの!?もしかして良くん、私の事・・・)

 考えれば考える程妄想がどんどん加速していくリサだった。

(や、やめよう。都合の良い様に考えてると自分が痛い人に思えてくる)

 こう言う時は落ち着こう。落ち着く為に素数を数えよう。

 などとリサが考えている時、良司も似た事を考えていた。

(やばい、顔が熱い。一先ず落ち着こう。落ち着く為にフィボナッチ数列でも考えよう)

 

 それから五分間、二人の間に会話は無かった。

 

 黙々と食事を進めて食べ終わる頃、いつまでも黙っているわけにもいかず、良司は口を開いた。

「こ、この後どうする?行きたいところある?」

 自分から誘っておいていきなり聞く辺りが何とも言えない残念さはあるが、誘えただけマシであろう。そうで有って欲しい。

「そ、そうだね。じゃあゲームセンター行こうよ」

「おう。良いよ」

 ぎこちないながらも次の行き先を決め、二人はファミレスを後にした。

 

 

「そう言えばリサっていつまで休みなの?」

「三ヶ日の間はお休みもらったよ。年末年始くらいゆっくりしなさいって店長が」

「あー、千堂さんその辺キッチリ休ませたがるからなぁ」

 普段から問題無く店が回せるのは現場で真面目に働く者のお陰。そんな相手にはちゃんとした福利厚生を最優先に考えるのが千堂の基本理念だ。

「でも何が凄いってあの人基本的に年中無休で働いてるんだよなぁ」

「だよね。この前聞いたら『店の主人が店にいるのは当然だ』って言ってたもん」

「本が好きってのも有るんだろうけど、あの人、働いて人と触れ合うの好きだもんな。あんな顔だけど」

「あんな顔って、失礼だよ良くん」

「そう言うリサも笑ってるじゃん」

 二人して笑いながらも千堂の話で盛り上がった。

「そう言えば店長って何がきっかけで今の店を持つ様になったんだろう?良くん知ってる?」

「まあ一応ね。千堂さんから聞いた事無かった?」

「今まで考えた事も無かったよ。何でなの?」

「それは本人に直接聞きなよ。他人の俺が答えるわけにはいかないよ」

「ふーん。それもそうだね。今度店長に聞いてみるよ」

 そんな話をしていると気がついたら目的地に辿り着いていた。

「良くん、この前みたいにクレーンゲームでムキにならない様にね☆」

「気をつけるよ」

 リサに言われ、少し恥ずかしそうに良司が答えた。

 そんな冗談を交わしながら二人が店内に入る。ゲームセンター特有のBGMや空気が広がっていた。

「何からやろっか?」

「そうだなぁ。・・・クレーンゲームやると前みたいになりそうだし。リサは何かやりたいのある?」

「私?ん〜、あっ、あれやりたい」

「あれ?」

 リサが指を差しながら言ってくる。その先を見るとエアホッケーの台があった。

「何か懐かしいな。まだこう言うの有ったんだ」

「昔はよくやってた気がするよ」

 硬貨を入れながらリサが言う。

「なら勝負しようか」

「あ、良くん待って。折角やるなら何か賭けようよ」

「リサ、賭博罪って知ってるか?」

「勿論。でも内容によっては適応外になるんだよ?」

 確かに対象が食べ物や飲み物程度では賭博罪だとは言えない。

「で?何賭ける?」

「じゃあ負けた方が勝った方に本二冊買うって言うのは?」

「その勝負乗った!」

 えらく単純な男であった。

「先攻は譲るよ」

 そう言って良司はパックをリサに渡した。

「ふっふっふっ。良くん、あんまり私を舐めない方が良いよ。これでも昔はエアホッケーで負けた事無いからね!」

「ならお手並み拝見させてもらうよ」

 

 こうして二人の決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 そしてその結果。

「・・・負けた」

 10対0。良司の圧勝で勝負は幕を閉じた。

「悪いね。でも真剣勝負で手は抜けないからさ」

 肩を落として悔しがるリサに良司が笑いながら言った。

(まぁ、前は美希に連れられてゲーセン来た時によくやってたからな)

 自分が勝つと嫌と言う程調子に乗るので美希と一緒の時は全力で叩き潰していたものだ。その所為か、ある頃から一緒にゲーセンに行ってもエアホッケーに誘われる事は無くなった。

(あいつ、勝ったら調子に乗るし負けたらすぐ拗ねるんだよなぁ。オマケに手加減してんのバレたら蹴ってくるし)

 理不尽にも程がある。しかしそのお陰で望まずしてエアホッケーは強くなった。

「てなわけでリサ、小説二冊ありがとう」

「良くん!もう一回やろう!」

「ふふっ。良いよ。同じ条件で賭けをしても良いならね」

 リベンジを要求するリサを見て可愛らしいと思う良司だった。案外リサも負けず嫌いな様だ。

 

 その後二回程リベンジをしたが、リサが良時に勝つ事は無かった。

 

「合計六冊。悪いね、リサ」

「今度は絶対に勝つから!」

「楽しみにしてるよ」

 子供の様なリサに勝者の余裕を見せつける良司だった。

「あ、次はあれやろうよ」

「・・・あれって」

 次にリサが指差したのはプリクラだった。

(生まれて初めてやるなぁ)

「卒業してから初めてだよ。良くんは?」

「人生初だよ。女の子とは勿論、男友達ともね」

「そうなんだ。じゃあ人生初のプリクラだね」

 人生初のプリクラの相手が自分の想い人なのだから落ち着かない。

 そんな良司の気など知る筈もなく、リサはプリクラの操作を始めていた。

「ほらほら良くん、早く!」

「わ、わかったから引っ張るなよ!」

 プリクラ機の外で考え耽っているとリサに腕を引かれて中へと強制連行された。

(思ってるより狭いんだな)

 偶にSNSの画像などで数人で撮ったプリクラの画像を見た事はあったが実際に入ると予想よりも狭く感じた。

 それからはリサに促されながら次々と撮影が始まった。

「良くんもしかして緊張してる?」

「緊張と言うか初めてで戸惑ってる」

 本当は狭い空間にリサと二人きりなのでかなり緊張していたが、流石にそうは言えない為、良司はそう誤魔化した。

「そんなの気にしないで楽しく撮れば良いんだよ」

 そう言いながらリサが良司の腕にくっつきながらカメラに向かってポーズを決めた。

(この状況で気にするなって方が無理だろ!)

 

 腕から伝わるリサの体温に良司の呼吸が乱れたのは言うまでもないだろう。

 

 

「楽しかったね〜」

「楽しんでくれたなら良かったよ」

 プリクラを撮り終えてご満悦のリサお嬢様を見て良司も少し嬉しくなった。

「この後はどうするの?」

「折角だし行きたい場所があるんだ」

「行きたい場所?」

「ああ。少し歩くけど良い?」

「うん。良いよ」

 リサが答えると二人は次の目的地へと歩いていった。

 

 

「あーここかー」

「まあ年が明けたからね。今日中にはちゃんと挨拶しとこうって思ってたんだよ」

「良い心掛けだねー。私もちゃんとしておかないと」

「じゃあ、入ろうか」

「うん」

 そう言って二人が入って行った店。それが何処かは説明する必要も然程無いだろう。

「千堂さん、いますか?」

「お、良ちゃん。いらっしゃい。それにリサちゃんも」

「お疲れ様です。店長」

 そう。言わずもがな、千堂の店だった。

「千堂さん、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます。店長」

「ようお二人さん。今日はどうした?」

 中に入ると客のいない店内でレジに座りながら新聞を読んでいる千堂がいた。

「新年になったんで挨拶に来たんですよ」

「それに一人だと店長寂しいかなって」

「好き勝手言ってくれるな、おい」

 苦笑いしながら答える千堂。

「そう言わないで下さいよ。ちゃんと客として買い物しに来てるんですから」

「ようこそお客様。是非お買い物をお楽しみ下さい」

 どうも今日の男共は掌返しがお好きな様だ。

 対する二人はそんな千堂の声を聞きながら店の奥へと進んでいった。

「それで良くんは何買うの?」

「半分は新作を、もう半分は買おうと思ってまだ買ってなかったやつを、だな」

 そう言って良司は何冊かの本を手に取った。そして目当ての本を集めるとそれをリサへと渡した。

「はい。これでお願いね」

「う〜。わかった。ちょっと待っててね」

 軽く唸り声を出して良司に抗議しながらもリサはレジへと向かった。

「店長、これお願いします」

「毎度あり。新年早々よく買うもんだな」

「読むのは良くんですけどね」

「プレゼントか?」

「いえ、勝負に負けたので」

「何だそりゃ」

 いまいち状況が掴めない千堂だった。

「全部で4260円だ」

「4300円で」

「あいよ。40円のお釣りね。袋はサービスだ」

「ありがとうございます。はい、良くん」

「ありがとう、リサ」

「女に貢がせるとは最低だな、良ちゃん」

「千堂さん、名誉毀損で訴えたらどうなるかって気になりません?」

「OK、平和的に行こうぜお若いの」

 いつも通りの軽口を叩き合う。年始から楽しいひと時だ。

「じゃあ俺達はこれで失礼します」

「仕事頑張って下さいね〜」

「おう。お二人さんも気をつけてな」

 軽く挨拶を交わして二人は店を出て行った。

 

 

 それからは二人はカラオケに行ったり色んな店を覗いたりして過ごした。

 そして時間は過ぎ、辺りが暗くなってきた。

「あ〜、今日は楽しかった」

「だったら良かったよ」

 リサのリアクションを見て一安心した良司だった。

「この後飯でも行く?」

「うん。お腹減ったし行こっか」

「何食べたい?」

「うーん、気分的にお寿司かな」

「なら近くに回転寿司屋があるから行こうか」

「うん」

 隣で笑うリサを見て密かに良司は思っていた。

 

─── 今年も良い一年になりそうだ、と ───




新年一発目の投稿を盛大に遅刻しましたね。ええ、それはもう盛大に。
遅刻した理由はまぁくだらない事なので割愛します。
本当は本編の続きを書くか番外編を書くか悩んでたんですが、時期的にこっちだなと判断して本編は後回しとなりました(なら遅刻すんなや)。
今年もこんな感じでのんびりと投稿していきますのでよろしければお付き合いください。

お気に入り登録してくださった
粉みかんK様
Air Ride様
ありがとうございました。

ご意見ご感想、誤字脱字等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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