読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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皆さんお久しぶりです。
最近トラブルが多すぎる毎日でした。
財布を落としたり(キャッシュカードや保険証等も一緒に)、仕事のシフト間違えて仕事なのに休みと勘違いして昼まで爆睡したり。
小説載せるどころの騒ぎじゃなくなってましたね。
なんて言う言い訳をしても仕方ないのでこの辺で。
では本編をどうぞ。


20話

 会社を出て駅へ向かう柏木の足は本人の気持ちとは裏腹に重かった。

(うう、緊張する)

 いつもの事ではあるが、柏木はこう言う場面になると期待もあるがそれ以上に不安に襲われてしまう。

 しかしここまで来て帰るわけにもいかない為、不安と戦いながらも待ち合わせ場所へと向かう。

(次の電車は十分後か)

 電車に乗ってしまえば後は待ち合わせの駅まで一本な為、迷う心配は無かった。

「あれ?かっしーじゃん?」

「?」

 背後からそんな声が聞こえてきて周りを見渡すが誰かが呼ばれていた様子は無い。となれば呼ばれたのは自分だが、自分をそんな風に呼ぶ知り合いはいただろうか?

「ありゃ、人違いだった?・・・あ〜やっぱかっしーじゃん」

 案の定と言うべきか、やはり声の主はこちらに向かって言っていた。後ろからこちらを覗き込む様に見てきた。

「あら、もしかして春日部さん?」

 そして柏木もその人物の顔を見てようやく思い出した。大学時代同じサークルだった春日部 日向だった。

「かっしーは仕事の帰り?ウチはこれから大学時代の皆と飲み会〜。かっしーも来る?」

 柏木は内心で『なんでこんな時に』と思っていた。

 この春日部という女、大学時代から何故か特に接点の無かった柏木に絡んでは長々と柏木に自分話をし続けてくるのだ(大概が彼氏に対する不満という名の惚気だったが)。

 別に人と会話するのは嫌いではないが長い上につまらない話をされれば誰でも嫌気はさす。

(でも悪い人じゃないんだよなぁ)

 何かあれば柏木に構ってきたりもしたが、困ってる時には積極的に話を聞いたり問題解決の案を出してくれたりもしていた。その部分が柏木に彼女を拒むと言う選択肢を選ばせなかった。多少の苦手意識はあったが。

「私は仕事の帰りでこれから人と会う約束があるので」

「もしかして彼氏?」

「ち、違います」

 仮にそうだったらどれだけ良かった事か。

「ふーん。あ、かっしーのLINE教えてよ。今度飲みに行こ」

 そう言えばなんだかんだ関わりは多かった筈なのに互いに連絡先は知らなかった。

「は、はい。良いですよ」

 言われるがまま春日部と連絡先を交換する柏木。

 交換を終えると同時に電車が来た。

「あ、ウチこの電車だから。またね、かっしー。絶対連絡してよ!しないとウチから連絡するから!」

 言い終わると同時に電車の扉が閉まり、春日部を乗せた電車は走り去っていった。

「・・・元気な人だなぁ」

 当時と変わらない彼女の姿に少し安心していた柏木だった。大学を卒業した後、当時の友人達とは殆ど疎遠になってしまったからだ(元々そこまで友達は多くなかったが)。

 そう考えれば今再びこうして会って関わってきてくれた事に感謝しなければいけないのかもしれない。そう考えていると丁度柏木が乗る電車がやってきた。

「よし、行こう」

 久々に会った友人の事を考えながら、これからの本題を思い出して柏木は戦場へと向かったのだった。

 

 

 一方その頃、千堂の店ではちょっとした出来事が起きていた。

「千堂さん、これお願いします」

 良司が来ていたのだった。

「はいよ。2680円だ」

「はい。丁度で」

「毎度あり。でも店閉まる直前に来るなんて珍しいな」

「ちょっと残業したもので。明日にしようかと思ったんですが今日発売の本が早く読みたくて」

「お前さんらしいな」

 平然を装って会話しているがこの時の千堂は少しばかり困っていた(無論リサも)。

(良ちゃんが来るのは良いけどこのタイミングだとまずいなぁ。もしここで担当さんと鉢合わせたらリサちゃんの事がバレちまう・・・)

 千堂自身の口からリサが小説を書いている事は言わないと約束している為、上手く誤魔化す術も思いつかない。

 現在の時刻は20時37分。あと30分程で柏木が来てしまう。

(うー、良くん。今日だけは早く帰って〜)

 リサも同じような事を考えていた。

(駅に着いたら連絡する様に柏木さんには言ってあるけどもし良くんが見てる前で仕事の話されたら誤魔化せないよ。いや、隠しておく必要も無いかもだけどまだ心の準備出来てないし)

 誰に言い訳してるのかもわからないままリサはそう考えていたが、そんな考えを良司が察する事など出来る筈もない。

 いっそこの段階で話してしまえば楽なんだろうが、そんな度胸はリサには無い。

「じゃあ俺はこれで。千堂さんもリサもまたね」

 しかしそんな思いが神様に通じたのか、特に何もなく良司はそのまま店を後にした。

「良かったなリサちゃん。これで少なくともバレずに済みそうだぞ」

「それは良かったんですけど、今言えたら楽だったかなって思っちゃうんですよね」

「確かに。先延ばしにしたら言えるものも言えなくなっちまうからな」

 打ち明けたいのに勇気が出ない。そんな自分に嫌気が差している。

「まぁ、今は考えるのはやめとけよ。過ぎた事を言っても仕方ねぇよ」

「・・・確かにそうですけど」

「それよりそろそろ担当さんが来るんじゃねぇのか?連絡は来たか?」

「はい。もうすぐで駅に着くそうです」

「なら早めに行って迎えに行ってやりな。店の方は心配しなくていいから」

「ありがとうございます。なら今から行ってきますね」

 そう言ってリサは店を後にし、駅へと向かった。

「・・・本当、何しに来るんだろうな」

 一人残った千堂がそんな不安を抱えながら呟いた。

 

 

 駅に着いた柏木は高鳴る心臓の鼓動を抑えようと呼吸を整えてながら改札を抜けた。次に服装におかしな点はないか、それと髪が乱れていないかのチェックを済ませた(やってる事が宛らデート前の女子である)。

(先生早く来ないかな。紹介してくれる人がどんな人か凄く気になって仕方ないわ)

 そう考えるとどうしてもじっとしていられず、駅の周辺をウロウロする柏木。

 そんな事をしていると、通り掛かった通行人にぶつかってしまった。弾みで相手は手にしていた袋を落としてしまったようだ。

「ご、ごめんなさい!ちゃんと前見てなかったもので」

 慌てて相手が落とした袋を手に取り、相手に差し出した。

「大丈夫ですよ。それよりそちらは怪我とか有りませんか?」

「いえ、私は大丈夫です」

「なら良かった。じゃあ気をつけてくださいね。それじゃあ」

 そう言って相手の男性は袋を受け取り、その場を去って行った。

(あの袋の中身、多分本ね。それもおそらく小説が数冊。読書が趣味なのかしら?だとしたら気が合いそうね。ってダメダメ余計な事を考えちゃ。今日は先生の紹介なんだから他の事で余所見をしたらダメよ)

 自分に言い聞かせ、周りを見ながらリサを探す。

「柏木さーん」

 少し離れた場所からリサが呼んできた。

「先生。お疲れ様です。もう例の方は来られてるんですか?」

「えーと、はい。いつでも大丈夫みたいですよ。あとその人は私が小説家って知ってるので気にせず話して大丈夫です」

 一応注釈を入れる。内心では来てるも何も今からその人物の店に行くのだが、と思って笑うリサだった。

 そんな事を思いながらもリサは柏木を連れて店へと戻った。

 

 

「店長、戻りました」

「お邪魔します」

「お、貴女がリサちゃんの担当さん?」

「はい。初めまして、柏木 麻依と言います」

「初めまして。この店の店長の千堂 勝久です。今日はどんな御用で?」

「先生が普段お世話になっているバイト先がどんな所なのか見てみたくなりまして。お忙しい中急に押しかけてしまって失礼しました」

 一礼して言い終えた柏木だったが、内心はそれどころの騒ぎではなかった。

(ヨッシャキターーー!私のタイプドンピシャーーー!)

 柏木は強面の男がタイプだった。

「千堂さんはこんな顔ですけど本が好き過ぎて自分で本屋を始めたんですよ」

「こんな顔で悪かったな」

 千堂も千堂で言われ慣れているのでそこまで気にもしない。

「でも意外でした」

「何がです?」

 千堂が聞く。

「先生が自分が小説家だと説明していた事にです。基本的に先生は周りの方には話さないと仰っていたので」

「だって働くとなると言わずにいたら何かと問題になるかもしれないじゃないですか。それに千堂さん、意外と融通利かせてくれてますし」

「意外とは余計だ。意外とは」

「ふふっ。楽しそうですね。お二人共」

「秘密を共有する程度には仲良しだもんな」

「そうですね」

 千堂とリサも笑って返す。

「普段の先生はどうですか?ちゃんとこちらのお仕事もなさってますか?」

「ええ。いつも真面目で気が効くんで助かってますよ。お客さんにも人気でねぇ」

「ちょ、ちょっとやめてくださいよ」

 突然の事に焦りだすリサ。宛ら気分は三者面談の教師と親の間にいる学生というところか。

「照れるな照れるな。褒めてもらってる時は素直に喜ぶもんさ」

「そうですよ先生」

 二人揃って言ってくる。出会って早々に仲が良い事だ。

「そうだ。先生、実は嬉しい報告が有ります」

「何かあったんですか?」

「先生のサイン会が決定したんです!」

「ほ、本当ですか!?」

「やったな、リサちゃん」

「はい!」

「実は場所はもう決まってるそうで、あとは先生の細かい日程を決めるだけなんです。来月の間で空いてる日はありますか?」

「来月ですか?プライベートな予定は特に無いですけど。店長、来月の私のシフトで休みっていつでしたっけ?」

「直近だと6日と9日、13日だな」

「なら柏木さん、13日でお願い出来ますか?」

「了解しました。また詳しい事が決まりましたらご連絡致しますね」

「ところで会場って何処なんですか?」

「ここから二駅程先にある本屋に場所を押さえていただいている様です」

「うちでやってくれても良いんだけどなぁ」

 どこか寂しそうに天井を見ながら千堂が言った。

「ま、また機会がありましたらその時はお声がけさせて頂きます」

 慌てた様子で柏木が言う。

「しかしまぁサイン会だなんて先生も偉くなっちまったもんだなぁ」

「店長、やめて下さいよ」

「良いじゃねぇか。おめでたい事なんだ。もっとはしゃいだってバチ当たらねぇよ」

「そうですよ。これで先生の作品がもっと世の中に知られるんです。胸を張っていいんですよ」

 千堂の言葉に柏木が後から言ってくる。嬉しさよりも気恥ずかしさの方が勝っているリサだった。

「折角来たので私も何か本買って帰ろうかしら」

「売り上げに貢献してくださる方は大歓迎だ」

 千堂のそんな言葉を聞きながら柏木は本棚を物色していく。

(やった!めちゃめちゃタイプの人と出会えた!今度からここに通い詰めよう!)

 一人浮かれながらも本棚を漁る柏木だった。

 

 因みに余談だが、この時の柏木の買った本の合計金額が8000円を超えたとか超えなかったとか。




なんやかんやトラブルだらけではありましたが何とか楽しく生きてられるので大丈夫だろうと思いながら続きを書いてます(再発行したキャッシュカードは最近届きました)。
そんな作者のプライベートは置いといて、柏木さん視点での話は一旦ここまでとなります。恐らくそう遠く無いうちにまた書く事になるとは思いますが。
次回はいつ投稿するかわかりませんが、もし良ければ次も読んでやって下さい。

お気に入り登録してくださった
王月鏡様
ヘルシア・アーリア様
ありがとうございました。

誤字脱字、ご意見ご感想等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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