まあ遅すぎる上にギリギリ過ぎましたが。でも大事なのは言った事を守ろうと姿勢なので守れた自分を取り敢えず褒めておきます。
くだらない話はさておき、本編をどうぞ。
柏木と千堂の出会いから数日、リサは頭を抱えていた。柏木と千堂を合わせた事、ではない。問題はその後の事だ。
「サイン会かぁ」
そう。リサが小説家としてデビューしてから初めてのサイン会が決まったのだ。この事自体はリサも嬉しい。だが、それとは別に思う事もあった。
「人前に出る事って余り無いからなぁ。不安だなぁ」
簡単に言えば緊張していた。
サイン会まで一ヶ月を切り、それと同時に緊張感も増してくる。
しかしそんな事ばかり言っても始まらないので切り替えていくしかない。そう思っているとスマホが鳴り出した。
「もしもし?」
『あ、先生お疲れ様です。先日はありがとうございました。今お時間宜しいですか?』
相手は柏木だった。
「はい。どうかしましたか?」
「いえ、サイン会についてのご連絡なのですが、開催時間が1時間早まる事になりましてそのご報告をさせていただこうと」
「成程。わかりましたありがとうございます」
そうしてリサは電話を切った。
「早まったかぁ」
より一層緊張が増したリサだった。
一方その頃。社会人らしく仕事をこなしていた良司だったが、昼休みの為会社の食堂で昼食を取っていると澤口がやって来た。
「今日は縦川君と一緒じゃないのね」
「縦川に用か?あいつならさっき部長に呼び出されてたから先に来たんだよ。そろそろ来ると思うけど?」
「普段昼食は二人で食べていたから意外だっただけよ。用があるのはあなたの方だし」
「俺?」
「あなた、衣崎先生のファンだったでしょ?」
隣に座りながら澤口が言った。
「ああ。一番好きな作家さんだけど、それがどうかしたか?」
「ついさっき出た情報だけど、あなたに朗報よ」
言って澤口はスマホの画面を良司に見せてきた。
『衣崎 真理紗先生初のサイン会決定!◯月13日 ◯◯駅徒歩二分の本屋にて11時から開始予定!』
「これマジかよ」
「態々嘘をつく意味があるのかしら?」
「・・・無いな」
軽く
「それで、当然行くのよね?」
「おう。特に用事も無いしこんな機会は滅多に無いからな」
自分の好きな作家のサイン会だ。行くのは至極当然だろう。
「澤口も行くのか?」
「ええ。私も衣崎先生の作品は好きだしどんな人か気になるじゃない?」
「確かに」
あの小説の数々をどんな人が書き上げたのか良司も気になっていた(本当は既に知っているのだが)。
「良ければ一緒にどうかしら?」
「珍しいな。お前はこういうのは一人で行くものだと思ってたよ」
「残念な事にこう言った事に興味を持ってくれる友人がいなかったからよ。私だって同じ趣味で語り合える友人がいるなら一緒に行こうと思うわ」
「そりゃそうか。まあ断る理由も無いし、良いよ。一緒に行くか」
「ええ。それじゃあ当日の10時に駅で待ち合わせましょう」
「了解」
「お、何だよお前ら。何か遊びに行く話でもしてるのか?俺も混ぜろよ」
話が一段落したタイミングで縦川がやってきた。
「別に。お前の興味の無いジャンルの話だよ」
「本関連って事か」
縦川が数秒考えてから言った。
「よく分かったな」
「俺の興味の無いジャンルでしかもお前ら二人が話してるってなったら俺じゃなくてもわかるぜ」
「そうかい。で?お前も行くか?」
「行かねぇよ。興味無いからな。精々二人で楽しんで来いよ」
案の定断ってきた。
こうして当日は良司と澤口の二人がサイン会に行く事が決定した。
その日の夜、仕事が終わった後に良司は千堂の店へと行っていた。
「千堂さん、これお会計お願いします」
「はいよ。2,638円な」
「はい。丁度で」
「毎度あり。袋はいらねぇよな?」
「はい。あ、それと千堂さん、知ってますか?」
「何がだ?」
「今日聞いた話ですけど来月の13日に衣崎先生のサイン会があるんですよ」
「そ、そうだったのか。そいつは驚いたな。良ちゃんはやっぱ行くのか?」
思わず知っていると言いかけた千堂だがどうにか堪えてそう言葉を紡いだ。
「そりゃ勿論一番好きな作家さんのサイン会ですから」
「だよな。まぁ気をつけて行ってこいよ」
そう言ってはいるが、千堂は心の中で真逆の事を考えていた。
(まずいな。こりゃ後でリサちゃんに連絡しとくか・・・)
本人の気持ちの整理がついていない以上、偶然でもバレるのを防がねばならない。
(・・・このままだとバレるのも時間の問題だな)
一抹の不安を感じた千堂だった。
それから数十分後、リサのスマホに着信があった。
「店長から電話?」
態々連絡してくるとは急ぎの用事だろうか?そう思いながらもリサは電話に出た。
「もしもし店長、お疲れ様です」
『おうリサちゃん。休みの日に悪いな。今いいか?』
「はい、大丈夫ですけど何かありましたか?」
『リサちゃん今度サイン会があるだろ?さっき良ちゃんが店に来たんだが、どうやらそのサイン会の事を知ったらしくてな。当日行くって言ってたんだよ』
「本当ですか!?」
予想以上に大問題だった。
『ああ。知ったのは今日みたいだが楽しそうに話してたよ』
「〜〜〜っ」
リサは言葉にならない悲鳴をあげていた。
シンプルに興味を持って来てくれる事は嬉しい。だが、仮にこのまま当日を迎えれば確実に良司にバレる事になってしまう。自分の口から真実を告げたいリサからしてみれば『知られたので白状する』と言うのは嫌なのだ。
となればリサに残された手段は二つ。
一つ、良司にバレない様に当日どうにか誤魔化してやり過ごす。
一つ、サイン会当日までに良司に本当の事を明かす。
現実的に考えて一番目は無理だろう。替え玉として誰かを座らせるわけにもいかないし、変装した所で誤魔化せる筈もない。そもそも替え玉を用意して嘘をついたらその後が何かと面倒になるのは目に見えている。
となれば消去法で残るは一つしかない。
「良くんに、自分の事を打ち明けます」
リサなりに覚悟を決めた瞬間だった。
それを聞いた千堂は数秒の沈黙の後、一言だけ言った。
『俺にやれる事があるなら何でも言いな』
「ありがとうございます」
『いや、夜遅くに悪かったな。おやすみ』
「はい、おやすみなさい」
そうして通話が終了した。
「・・・ふう」
気がついた時にはリサは溜息をついていた。
サイン会よりも緊張する事が出来てしまったのだ。
「どうやって打ち明けよう」
問題はそこだ。次に良司と会った時に話すのがベストではあるが、それまでに心の準備が出来るだろうか?
「ダメダメ。今までそうやって言い訳してきたからこうなったんだから」
思わず逃げる様な思考になっていたのを無理矢理押さえつける。もう逃げる訳にはいかないのだ。
「次に良くんと会った時に言おう。それが良い、筈、だよね?」
疑問系になっているがそれに答える相手はいない。
さらに問題はどう伝えるかだ。シンプルにサイン会前に伝えるか?それともサイン会まで黙っていてサプライズで驚かし、その後で伝えるか。
「いや、それ結局伝えれてないじゃん」
それではバレた後の白状だ。リサとしてはサイン会の前に言いたいのだ。
「うーん。・・・よし、やっぱり次会った時に言おう!そして今まで黙ってた事を謝ろう!」
決心がようやくついたリサだった。
サイン会まで半月近くあるのだ。会う機会が必ず訪れるだろう。
そう考えてリサは寝る事にした。
だったのだが。
あれから二週間が経過してしまった。
サイン会まで残り五日となっても未だにリサが良司と会う事は無かった。
(何で?何でこんなにすれ違うの?いつも一週間に一度くらいは会ってたのに。え?何?神様私の事嫌い?)
ただの偶然なのだがここまで来ると誰かに八つ当たりの一つもしたくなるのが人間の悪い癖だ。
「リサちゃん、あれから良ちゃんに言えたのか?」
「言うどころか会えてないんです」
「うちには何度か来てたが全部リサちゃんのシフトが休みの時だったからなぁ」
やはりこれは神様の悪戯なのではなかろうかと本気で思うリサだった。
「このままだと当日になって久しぶりに会う、なんて事になりかねねぇな。何ならここに呼び出すかい?」
「・・・そうですね。お願いしても良いですか?自分だと何て言って良いのかわからなくて」
「あいよ。ちょっと待ってな」
そう言って千堂はスマホを取り出して良司にLINEを送った。
「後は来てくれるのを待つだけだな」
「き、緊張してきました」
「まあどうなるかはわからんが、ちゃんと伝えたい事は全部伝えな」
そうだ。ただ伝えれば良いのだ。先ずはそこからだ。何も難しい事はない。
そう自分に言い聞かせ、その時が来るのをリサは静かに待った。
「ん?千堂さんからLINE?」
仕事の途中で千堂からLINEが来ている事に気づいた。
『悪いんだが、今日仕事が終わったら店に来てくれ』
何ともシンプルな内容だった。
(千堂さんから連絡なんて珍しいな。また休みの日に仕事を手伝って欲しいのか?)
一番ありえる可能性を考えた。
(まぁ今日は用事も無いし仕事は夕方には終わるだろ。終わったら行くとするか)
そう考えて仕事を再開させる良司だった。
だが、世の中はそう甘くないらしい。
夕方になっても良司が会社から出る事は無かった。
(あの馬鹿部長何でこんな時に限って人に仕事押し付けてきやがんだ!)
残業していた。
仕事が終わる間際、納期が間近に迫っている作業の終わりが見えないと急にほざき出した部長の命令により、何故か良司だけが残業する羽目になってしまったのだ。
(何だよ神様は俺の事が嫌いなのか?)
そんな事を考えても仕事が進むわけではないとわかってはいるが思わずにはいられなかった。
(他の奴らは皆帰るし何で俺だけ居残りなんだよ)
そう考えると同時、せめて遅れる旨を知らせておこうとスマホを手に取った。
「・・・嘘やん」
思わずそんなエセ関西弁が出たが、それも仕方がないだろう。
「・・・バッテリー切れかよ」
スマホの画面は真っ黒のまま、良司の顔を映していた。
「充電器なんて持ってきてねぇよ、俺」
唯一の連絡手段が途絶えた良司に残された選択肢は一つだ。
「さっさと終わらせて帰ろう!」
ヤケになった良司は謎のテンションのまま自分のデスクと向き合うのだった。
日差しが馬鹿ほど人をイラつかせる季節になってきましたが、皆さん体調は問題無いですか?自分は暑いのは苦手なので毎日死にそうですね。
まったく、あついのはパチンコの演出だけにしてもらいたいもんです。
まあパチンコ打っても負けてばっかなんですけどね。
そもそも打つ暇があるなら小説書けよって話ですが。
そんな馬鹿な話は置いといて、本当に皆さん、暑さで体調を崩さない様に気をつけてくださいね。
暑さで動く気がなくなった時は気晴らしにでもまたこの作品を読んでやってください。
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ではまた次回。