読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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今回の話は普段とちょっと違う感じかも。
そして初の連日投稿。


5話

4月23日のスケジュールのブッキングが発覚してから数日、良司は自宅で頭を抱えていた。合コンの代役の目処も、上手い解決策も思いつかないのだ。

(どうする?縦川に言って俺は抜けさせてもらうか?いや、あいつの性格上無理にでも連れて行かされる可能性が高い。ならリサに予定を変更してもらうか?いや、自分から必ず行くとかほざいておいて『行けませんでした』なんて話にならねぇ)

どちらかを取るのはどうやら無理そうだ。

ここで良司は当日に自分が取れそうな行動の選択肢を脳内で並べた。

 

・合コンの途中でこっそりと抜け出してリサの元へ向かう。

これは無理だろう。酒が入れば誰がどんな行動をするかわからないし、確実性に欠ける。

 

・リサに連絡して予定変更を頼む。

これはさっきも言ったが論外だ。話にならない。

 

・合コンを全力で楽しんだ挙句にリサの元へ行く。

もしこれを選ぶとしたら俺は自分の正気を疑うだろう・・・。どこの世界に人を待たせて合コンを楽しむ馬鹿がいる。

 

・仕事が終わると同時に全速力で縦川から逃げてリサの元へ。

そうなれば可能性としてこれが一番現実的だろう。縦川には悪いが、最早最終手段だ。これでいかせてもらおう。

 

だが、これを実行するにあたって、問題が一つある。

(事前にこれがあいつにバレたら間違いなく合コン会場まで俺はあいつに連行されるな・・・)

縦川と言う男は、普段は優しい男なのだが、周りに女の気配があるとそれを嗅ぎつけ、「自分だけいい思いはさせねぇ!」と何かしら面倒な事をしでかすクレイジー野郎なのだ。

(あいつ、言ってる事とやる事が矛盾してんだよなぁ。だから振られんだよ)

恋愛事に関してはあいつは最早歩く爆弾だ。

「畜生、面倒事になった」

こんな事なら安易に合コンの参加なんて認めなければ良かった。

「二度と合コンなんざごめんだ」

行ってすら無い合コンに毒づく。そんな事を言ったが、言っても何も解決しないのだから仕方がない。

「都合良く合コン中止になったりしないかな」

都合良くそんな事があるわけがない。

つまりは詰みである。

「こうなりゃマジで当日バックれるしかないな」

他に策が無いのだからこれしかない。あとで縦川から何か言われるかも知れないがそんな事はその時考えればいい。こちとら情緒不安定な歩く爆弾野郎よりも可愛い女の子との約束の方が大事なのだ。

「大体、どうせあいつが誰かと付き合えたとしてもどうせすぐ別れるか振られるのがオチだろ」

それならもう何も縦川に気を使う必要もないだろう。こうなればもう賭けだ。もうどうにでもなれ。

そうして良司はそのまま眠りに就いた。

 

 

縦川主催の合コンを明日に控えた4月22日、会社に行くと朝から縦川がえらく浮かれていた。どうせ明日の合コンが待ち遠しいとかそんな事だろう。

(悪いな縦川。お前の計画は俺がぶち壊す。精々俺抜きで楽しんでくれ)

縦川に気づかれないように良司は心の中でそう思った。

だが、気を抜いてはいけない。少しでも縦川に勘付かれたら脱走計画は破綻するだろう。

 

いわばこれは縦川と言う名の監獄から逃げるプリズンブレイクだ。

 

だから少しでもバレないように、良司はいつもと同じ様に振舞っておかねばならぬのだ。もしここで急に合コンに乗り気になったとでも言おう物なら即座に不審がられてしまうだろう。あいつはお調子者ではあるが、馬鹿ではない。食うか食われるかのこの戦争、油断したら死ぬのはこちらなのだ。

「おう赤城!明日はお待ちかねのスペシャルデーだぜ!戦いの準備はいいか?しかもその日は週末の金曜日、何なら俺達はそのまま夜戦に直行かもな!」

「いや、だから俺は興味無いって。俺はあくまで数合わせなんだから」

「そんな悲しいこと言うなよ。参加するなら楽しまなくちゃ損だぜ!」

参加自体がこちらからしたら損だよ、と思わず言いそうになるのを良司は必死に堪えた。落ち着け、明日までの辛抱だ。

脱獄決行前の囚人はこんな気分なのかと良司は謎の感覚を味わった。

「明日逃げんなよー」

その一言に思わずドキッとした。顔には出なかったと思うが大丈夫だろうか?

「ったく。何でこんな事に」

誰にも聞こえない声で呟いた。

「明日ねぇ。ん?・・・明日?」

そこで良司はある事に気付いた。

明日、4月23日に何があるのか。

そして、それを知って彼は思った。明日は何としてでも逃げ切らねばならないと。

 

そして迎えた決戦の日、4月23日。朝から良司は不穏な雰囲気を感じていた。

(何だ?まるで見張られているこの感覚)

辺りを伺うが、誰かがこちらを見ている様子はなかった。あまり周りを警戒していると不審がられるだろうから気にせずに仕事に取り掛かった。

そして時間は経って仕事が終わる数十分前、良司は少しずつ自分の荷物を片付けていた。一度に片付けてしまうと何か急いでいると周りに思われる危険があるからだ。勿論仕事は全て終わらせて、残業など無いように対処した。定時で帰ると昨今の職場環境では異常と思われるらしいが、やるべき事を全て終わらせたのだから例え上司であろうと文句を言われる筋合いはない。後は業務終了の時間が来るのを待つだけだ。

しかし、世の中そう上手くはいかないようだ。

背後から誰かに肩を掴まれたのだ。相手なんて確認するまでもない。縦川だ。

「そろそろ時間だ。行くぞ」

その一言で良司は察した。

 

プリズンブレイクは失敗したのだと。

 

振り払って逃げるかとも考えたが、下手に動いてもそのまま取り押さえられるのがオチだろう。問題は何故彼がこんな早くに行動していたかだ。

「珍しいな。仕事が終わる直前にお前が俺に声を掛けるなんて」

「そりゃそうさ。そうでもしなきゃお前に逃げられるからな」

決定的な一言だった。確実に彼は良司が逃げようとしている事に気づいていた様だ。

「何でバレた?って顔だな?そりゃわかるさ。だって前に俺がお前を合コンに誘った時もお前は仕事が終わる前に帰り支度全部済ませて、気がついたら帰ってたからな」

失敗した。まさか前にやった事を覚えていたとは。そこまで根に持っていたのか。と言うか、こいつは合コンにどれだけの情熱を注いでいるんだ。

「いや、悪いんだが、俺実はこの後用があるんだ」

こうなればいっそのこと、本当の事を言って解放してもらうしかない。

「嘘つけ。どうせ帰っても本読むくらいしか無いお前に用なんてあるわけ無いだろうが」

案の定全く信じてもらえなかった。

(どうする?行く途中で逃げようにも体力でこいつに勝てるとは思えない。そうなればもう合コンの最中に抜け出すしかない。でもそれもこいつに読まれていると考えた方がいいか)

手詰まりと言ったところか。だが、諦めるわけにはいかない。例えプリズンブレイクは失敗してもまだこの勝負に負けたわけではない。最終的に勝てばよかろうなのだ。

結局、良司は途中で逃げる事も出来ず合コン現場まで連行されるのだった。

 

 

仕事が終わった後、電車に乗り、良司達が待ち合わせ場所に着くと、まだ相手の女性陣は来ていないようだった。話によると今回の合コンは3対3だそうで、こちらにももう一人の男がいる。少し前にうちの会社に入った広瀬と言う男だ。彼もこの集まりに乗り気なようだ。

「先輩、女の子達、まだですかね?」

「まあそう言うな。待ち合わせ時間までまだ10分以上ある」

スマホの画面を見ると時刻は18:15。待ち合わせは30分らしい。広瀬と縦川が話している横で良司は考えた。ここから逃げ出す算段を。

(こいつら、能天気に浮かれやがって。こっちは必死だってのに)

だが、こちらとて馬鹿ではない。こんな事もあろうかと策は考えている。

「悪い。ちょっとコンビニ行ってきていいか?」

そうこのままコンビニへ行く振りをして逃げるのだ。

「ああ良いよ。だが、お前の鞄は預からせてもらう」

どうやらこちらの策は見越されていたようだ。どこまでこちらの動きを警戒してるんだ。

「ッチ。わかったよ」

言って良司は縦川に自分の鞄を手渡してからコンビニへ歩いた。そして店内に入り、いくつかのおにぎりやお茶を買い、周りを警戒して確認した。あとをつけていたりはしていないようだ。

「良し、今だ!」

そのまま良司は全速力で駅まで走った。

赤城 良司の第2回プリズンブレイクの始まりだ。




書いてて思った。「リサ出てねぇじゃん」
次からはちゃんと出ますんでもし良ければ次も見てやってください。
続きは明日中には載せるつもりです。

ご意見ご感想、誤字脱字等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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