読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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この作品を書いてると自分も本屋に行けば何かしら出会いがあるんじゃないかと思っては「そんなアホな事あるか」とツッコんで悲しくなる毎日。


7話

 リサとのプレゼント合戦から数日後の休日、良司は自室でリサからプレゼントされた衣崎 真理紗先生の新作小説を読んでいた(因みにあの時縦川に取られていた鞄は無事に帰ってきた。ボロクソに文句は言われたが)。

 すると突然ピンポーンと呼び鈴の音が聞こえてきた。一人暮らしの良司の家に来客とは珍しい。新聞の勧誘とかだろうか?だとしたら有無を言わせず追い返してやろう。

「はーい。どちら様ですか?」

 玄関の扉を開けながら言うとそこには一人の女性がいた。勿論リサではない。

「久しぶり。入っていい?」

「久しぶり。良いよ」

「お邪魔しまーす」

 良司に言われ、部屋の中に入っていく女性。

「相変わらず本ばっかだねぇ、この部屋」

「まあな。それより何の用があって来たんだよ。美希」

「そんな嫌そうな声で言わなくても良いじゃん。お兄ちゃん♪」

「気持ち悪っ」

 今し方やってきたこの女性、何を隠そう良司の実の妹、赤城 美希である。

「ひっど。愛しの妹が折角プレゼント持ってきてあげたのに」

「プレゼント?」

「そ。お母さんが渡せって」

 そう言って美希はあるものを差し出した。

「映画のチケット?」

 差し出されたそれを見てみると、どうやら映画のチケットらしい。しかもタイトルを見てみると『この愛の行く末は』だった。そう言えば実写映画の公開が始まったとネットの記事であった気がするなと良司は思い出した。

「お母さんが知り合いから貰ったらしいんだけど私達興味無かったから兄貴にあげようかなって」

「ああなるほど。ありがとう。そう言う事なら貰うよ。・・・って2枚?」

 チケットは2枚あった。

「彼女でも連れて見に行ったら?あっ、素敵なお兄様にはデートに誘うような相手はいないんでしたっけ?」

(この妹、ぶん殴ってやろうか)

 勿論本当にやる気もないが、この場合やっても良いんではと思ってしまう。

「まぁ原作の小説は読んでるから内容は知ってるんだけどな」

「え?そうなの?ならいらなかった?」

「いや、最近映画も見てなかったし偶には映画も見てみるよ」

 そう言って美希からチケットを受け取った。

「まぁそれで気になる女の人でも誘ってみれば?恋愛系なんでしょ?それ」

(気になる女の人、ねぇ)

 そう言うと不思議なもので浮かんでくる人物が一人いた。

(いやいや、何で彼女の事を思い浮かべるんだ俺は)

「え、何?兄貴好きな人でもいんの?」

 良司の表情からそう思ったのか、美希がそんな事を言い出した。

「別に好きな人なんていないよ。ただこの作品を知ってる人を思い出しただけだ」

 嘘は言っていない。

「お前こそ彼氏でも誘って見に行けばいいじゃないか」

 確か前に会った時に彼氏が出来たと言っていた気がする。

「いないよ。そんなもん。私に彼氏はいなかった」

 どうやら知らない間に別れていたらしい。道理で自分でチケットを使わないわけだ。

「そう言うわけだから、それは兄貴が使って。その気になる女の人でも誘ってさ」

「だからそう言うのじゃないって」

 話を聞かない妹だ。だがしかし、他に誘う相手もいないので誘う人物は一人しかいなかった。

 

 

 その頃、千堂の店では相も変わらず千堂とリサが暇そうにしていた。

(ん?LINE?)

 そんな時、リサのスマホに一件のLINEが入った。

『今日映画のチケット貰ったんだけど予定空いてる?近い内に一緒に行かない?』

 良司からの映画のお誘いだった。

(えーと。これってあれだよね。良くんから映画に誘われてるって事で良いんだよね)

 少しの間そう考え、数秒後、彼女は改めて画面を見た。

(ええええええ!何で急に!?お、落ち着け私!一度冷静に考えよう!)

 一度落ち着く為にリサはスマホをしまった。

(順に考えよう。送ってきたのは良くんから。そして内容は映画のお誘い。よし、大丈夫。何も慌てる事はない。普通の連絡なんだから普通に返せばいいの)

 だがそこでリサはある事を考えた。

(・・・でも何で急に私を映画に?私も良くんも映画が趣味なんて話はしてないし映画の好きなジャンルもお互いに知らないはず。それに誘うなら私より仲の良い友達を誘えば良いのに)

 そもそもそんな相手は良司にはいないのだが、そんな事はリサの知った事ではない。

 そして男が女を映画に誘うとなれば、その映画のジャンルも大概検討がつく。

(もしかしてこれってデートに誘われてる?)

 もしかしなくても誘われている。

(いやいやいやいやいや、落ち着こう。これだとまるで良くんが私に好意を持ってるとか勘違いしてる痛い女だ。これはあれだ。他の人が都合が悪くて偶然私に話が回って来たやつだ)

 実際には他の人物は誰一人誘われていないがリサが知る由も無い。

(ただのお誘いなんだから、普通に返せばいいんだよ。うん。仕事が終わったら返信しよう)

 そう考えてリサは平常心を保つ為に仕事に専念した。

 

 

 人間というのは面倒な生き物で普段と少し違う事が起こるだけでやたらと不安になったりするものだ。

(返信が来ない・・・。既読はついてんのに。急に送ってひかれた?)

 あれから数時間、リサからの返信は無かった。自分に自信の無い人間はどんな事にも自己嫌悪と不安に襲われるのだ。

「兄貴どうしたの?ずっとスマホ見て」

「別に。それよりお前はいつまで居座る気だよ」

「暇だし。ここラノベも漫画もあるし」

「お前は兄の家を漫画喫茶か何かと勘違いしてないか?」

「そんなわけないじゃん。あ、兄貴、コーヒーおかわり。砂糖多めで」

「・・・はいよ」

 なんだかんだ言いながらコーヒーを用意するあたり、良司もお人好しだ。

(やっぱいきなり誘ったのは失敗だったかな。いや、そもそもなんでこんなに人一人誘うのに俺はオドオドしまくってんだ)

 そうだ。自分はただ友達と映画に行くだけなのだから普通にしていれば良いんだ。何も焦る事はない。

「兄貴、リサさんって人からLINE来たよ」

 良司のスマホを片手に美希が言ってきた。

「人のスマホを勝手に見てんじゃねぇ!」

 叫びながら美希の手からスマホを奪い取る。確かにリサから返信が来ていた。

『うん。明日なら空いてるよ。映画楽しみにしてるね』

 その一言で良司は何故かとてつもなく安心した。

「そのリサさんって人、兄貴の彼女?」

「そんなんじゃねぇよ」

「でも気にはなるんじゃない?」

「・・・何でそう思うんだよ」

「スマホずっと見てたし、リサさんって人から連絡来た時の兄貴、引くほどテンション上がってたじゃん」

「言うほどじゃねぇよ」

「いや、自覚が無い時点でもう重症だから」

 そんな酷い症状なのか。

「別に兄貴に好きな人が出来ても笑ったりしないけど、家族としては心配してるんだよ」

「心配?」

「だって兄貴って今まで誰かと付き合った事ないじゃん。昔から一人で家で本読んでばっかだったし。そもそも特定の女の子と連絡先交換した事とかないじゃん?」

「・・・そうだな」

「そんな人がまともに恋愛なんて出来るのか心配してもおかしくないでしょ」

 妹にまで心配される程なのかと良司は頭を抱えた。それと同時に彼は考える。

「俺、リサの事、好きなのか?」

 誰に聞くでもなく良司は呟いた。

 それを意識し出した途端、心拍数が上がるのをなんとなくだが感じた。

「精々デート頑張って来なよ、兄貴」

 美希が言うが、そんな言葉、今の彼には届いてはいなかった。

 恐らく、彼の人生でこれが初めてのまともな恋と言うものだろう。

 何とも不安の残るデートになりそうだ。

(面白い事になりそうだなぁ)

 兄の慌てる姿を見ながら妹はそんな事を考えながら、密かに笑っていた。

 そんな美希の思惑など知りもせず、良司は震える指先で明日の日程をリサへと送るのだった。




たまに街中出歩いてネタになりそうな事を探そうにもお国が自粛しろって言うもんだから家から出れやしないよ。

ご意見ご感想、誤字脱字などありましたらコメントお願いします。
ではまた次回。
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