読書家男と本屋の彼女   作:シフォンケーキ

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最近こっちの作品ばっか書いてもう片方の作品がいつも以上に進みが遅い気がしてきた。


8話

 良司に返信をした時、リサはスマホを見つめていた。

「どうしたリサちゃん。スマホ見つめて」

「い、いえ。何でも無いですよ?」

「そうか?そう言えば最近、衣崎先生の小説が映画になったそうだな」

「その名前で呼ばないでくださいよ。確かにそうですけど」

「で先生は映画見たのか?」

「まだ見てないですよ」

 そもそも自分が原作を手掛けた映画を見に行くというのはリサとしてはどうにも気恥ずかしいものがあった。

「誰か誘って行けばいいのに」

 千堂が言うが、そんな相手がどうとかの話ではないのだ。

「仮に誰かから誘われたら行くのかい?」

「そりゃあ誘われたら行きますよ。折角誘ってもらったんですし」

 誘ってくれる相手がいれば、だが。

「もしかしてリサちゃんって友達いねえのか?」

 デリカシーも何もあったもんじゃない質問だ。

「い、いますよ。良くんとか。・・・良くんとか」

「・・・俺が悪かったよ」

 察した千堂が素直に謝った。素直に謝られるとリサとしても少し虚しいものがあるが。

「・・・まあ機会があれば見に行きますよ」

「そ、そうだな」

 気まずい空気が流れた。

(う、嘘は言ってないもんね。明日良くんと映画行くんだし。何見るかは知らないけど)

 まさか自分の作品を観る事になろうとは、この時のリサはまだ知る由もなかった。

 

 

 そして仕事が終わり、再度スマホを見ると良司からの連絡があった。明日の待ち合わせに関する連絡だ。

『明日1時、店の近くの駅前で待ってて』

 いたってシンプルな内容だった。

『了解☆』

 リサもシンプルに一言で返信した。これで後は当日を待つだけだ。

 だが、いざ家に帰って考えると改めて思ってしまう。

『これってやっぱデートじゃね?』と。

(いやいや、ただ友達と映画に行くだけだから。デートじゃないし)

 誰に言うわけでもなくそんな言い訳をしていた。

 これ以上考えると余計な事を次々考えそうだったので、それ以上余計な事を考える前にリサは寝た。

 

 

 そして翌日。

 起きたら時間は朝5時だった。

 念の為説明すると、それはリサが起きた時間ではなく、良司が起きた時間だ。

「・・・早く起きすぎた」

 どう考えても浮かれている事を自覚しながら良司は呟いた。二度寝しようともしたがどうにも寝れそうにはなかった。

「飯にしよう」

 早すぎる気もするが、他にする事がないのだから仕方がない。

 それから数時間、あれやこれやと作業をするが時間が気になって仕方がなかった。そして家事も一通り終えてしまって暇である。

「家にいても暇だし出掛けるか」

 現在時刻は午前10時。

 暇だからと家を出たが、これと言って行く場所もなかった。普段から引きこもりがちな生活をしているのだから仕方がない。

 かと言ってこれからまた家に戻るのも面倒な話だ。

 そうなればこの辺で暇つぶしに丁度いい場所は一つしか思いつかなかった。

 

 

「いらっしゃいませ」

 店のドアが開くと同時に千堂が言う。

「おはようございます。千堂さん」

 やはり良司が行く場所なんてここくらいしかないのだ。

「おうおはよう。良ちゃん。リサちゃんなら今日は休みだぞ」

「誰もリサ目当てでこの店来てる訳じゃないですよ」

 思わず知ってると言いかけたが、そうなれば面倒になるのは確実なのでグッと堪えた。

「そういや良ちゃん知ってるかい?」

「何をです?」

「最近衣崎 真理紗先生の作品が映画化したんだとさ」

「ええ。ネットで情報は見ましたよ」

 その作品をこれから観ようとしてるんだから勿論知っている。

「もう見たかい?」

「いいえ、まだ見てないですね。観ようとは思ってますけど」

 実際今日この後観に行くのだ。

「ならリサちゃんでも誘って観に行ったらどうだい?互いに作品知ってるんだから話も合うんじゃないか?」

 それは俺らにデートにでも行けって言いたいのだろうか?と良司は考えたが、深く考えるのはやめておこう。

「リサをねぇ」

「ああ。実際、興味は有るみたいだし、機会があれば観たいって言ってたぞ」

「千堂さん、前から聞こうと思ってたんですけど」

「何だ?」

「何で俺とリサをくっ付ける様な事するんです?」

 初めてリサと会った時からそうだ。事ある毎に二人を揶揄ってはまるで二人の距離を縮めて付き合わせようとするかの様な立ち回りをする千堂に前から疑問を感じていた。

「そんなの決まってるだろ。面白いからさ」

 ハッキリと言い切った。

「何ですかそれ」

「いやぁ、年取るとよ、色恋沙汰の刺激ってのが全く無いんだよ。俺はこんなだから周りに女っ気も無いからな。だったら代わりに自分の周りの誰かの色恋沙汰を見たくなるのよ。まぁ年寄りの悪足掻きみたいなもんさ。言っておくと、誰でも良かった訳じゃないぞ?俺は本当にリサちゃんと良ちゃんがお似合いだと思ったからこんなマネをしたんだ。嫌な思いをしたなら謝るけどな」

 こう言ってはいるが、二人が本当に嫌な思いをしていない事ぐらい千堂はわかっていた。それをわかっていながら素直に謝る様な事をするのだからこの人もタチが悪い。

 現に少なくとも良司は悪い気なんてしてはいなかった。リサと出会ってから、彼女とする会話はいつも楽しく感じていたのだから。

「別に良いですけどね。千堂さんがガキの悪戯みたいな考えでやってるわけでもないでしょうし。でもそんなに恋愛事の刺激って欲しいもんですか?」

 つい最近までまともに人を好きになった事も無い良司にはよくわからない話だ。

「当たり前だろ。人生を楽しむには何事も刺激が必要だ。良くも悪くも心に波があるから人生生きてるって実感するんだ。そしてそれをよりわかりやすく実感出来るのが恋愛してる時だぞ」

 途端に千堂先生の講義が始まった。

「そこまで言って何で自分の恋愛を諦めてるんですか」

「若くして恋愛を諦めたって言ってる良ちゃんには言われたくねぇけどな」

「今日も千堂さんの言葉の刃は切れ味が良いですね。見事に論破されましたよ」

「論破するなら刀より言霊の弾丸だろ」

 

 かなり話が逸れた。

 

「俺はよ。そりゃ若い頃はそれなりに遊んだけどもうこの年だ。相手にするのは数少ないお客さんと本の山だ。そんな男に出会いも何も無いだろ」

「千堂さん顔もちょっと怖いですもんね」

「初めて来たお客さんが連れた赤ん坊が俺の顔見た途端泣き出すからな」

 悲しい過去だ。話をしたら物凄く男女問わず良い人なのに。話も出来るし。

「千堂さんって今いくつでしたっけ?」

「今年で40だな」

「言ってもその歳ならまだ相手も見つかるでしょ?最近じゃ若くなくても結婚するとか普通にありますし。別に千堂さんも結婚願望が無いわけじゃ無いでしょ?」

「そりゃ出来るもんならしたいけどな。やっぱ相手がなぁ。わざわざ必死に相手探してまでってのも御免だし」

 確かに千堂の立場で考えれば、口では客が少ないと言うが、いつもそれなりの客は来ている。そんな客達の相手をしながら店を経営して、更に焦る様に相手を探すと言うのも馬鹿らしい話だろう。

「もしかしたらお客さんの中に千堂さんの事が好きな人がいるかもしれませんよ」

「こんなおっさんのどこに惹かれるんだよ」

 笑いながら言う千堂に、良司は少しだけ悪い癖が出た。

「なら賭けますか?」

「賭け?」

「今日から二年以内に千堂さんが結婚したら俺の勝ち。出来なかったら千堂さんの勝ち」

「俺の場合悲しい勝利だな、おい」

「やりますか?」

「勝った時はどうなるんだい?」

「俺が勝ったらその時はこの店の本十冊をただで貰います。千堂さんが勝ったら五万払いましょう」

「賭博法に引っかかるんじゃないのか?」

「千堂さん、バレなきゃ合法ですよ」

「好きだねぇ。お前さんも」

 良司は意外と賭け事が好きだった。

「まぁ良いさ。わかった。やるよ」

 やれやれと言った感じで千堂が言った。

「なら紙とペンあります?後で誤魔化せない様に証拠残しておかないと」

「徹底的だな」

 言って二人は互いに賭けの内容を確認し、それぞれ自分の名前をサインした。

 その後、いい具合に時間を潰した良司は二冊ほど本を買って千堂の店を後にして、リサとの待ち合わせに向かうのだった。




本当はこの話書かないでリサとの映画の話をさっさと書こうと思ったけどなんか書きたくなったので。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればコメントお願いします。
ではまた次回。
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