運命に愛されましたよクソッタレ   作:新幻

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召喚

 太刀掛来夢は寝ていたことを後悔していた。

 寝ていたらクラスごと異世界に召喚された。

 昼休みになって授業の内容もまとめ終わったところで机に突っ伏していたらいつの間にか別の場所にいたらしい。

 召喚されてから周りがざわざわしていたことで目が覚めたのだ。

 

(なんで寝てたんだよマジで! 厄介ごとの匂いしかしないぞこりゃ)

 

 寝ぼけ眼で周りを見渡せば何やら教会のような場所にいた。

 壁画には草原や湖や山などの自然を包み囲むように中性的な金髪の人物が手を広げている。

 

(この世界の神的な存在かねぇ……)

 

 そんなことを考えながら周りを見渡すと、クラスメイトのほかに三十人近くの法衣のようなものを着た集団がいた。

 その集団から老人が出てきた。

 来夢のその老人に対する第一印象は狂信者、だ。

 その顔は皺が深々と刻まれていて、目が異常にギラギラしている。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 その自己紹介を聞いて、ただただ嫌な予感しかしなかった。

 

 

 ***

 

 

 促されるままに場所を移ると、案内された場所は大きなテーブルがいくつもある大広間だった。

 クラスのカリスマとは離れた端のほうに座ると隣は問題児、南雲ハジメだった。

 教室では来夢の後ろの席なのだが、授業中ずっと寝ている。

 それだけならただの不真面目な生徒で済む。度々クラスの中心人物が周りに集まって騒がしくなるのだ。

 彼に好意を持っている(と思われる)、学校一の美少女がよく話しかけ、自然にそれによってくるリア充とそれに嫉妬した人間とでいつも騒がしくなる。

 あまりかかわりたくないない人間だった。

 

 そんななか、イシュタルと名乗った老人が説明を始めた。

 

 来夢たちの呼ばれた世界はトータスと呼ばれている。

 そして主に人間族、魔人族、亜人族の三つの種族がある。

 

 人間族は北一帯、魔族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと過ごしているらしい。

 

 そして人間族と魔人族で何百年も戦争を続けている。

 魔人族は数は人間族より少ない代わりに個人の力が大きく、結果として戦力は拮抗しているそうだ。

 大規模な戦争はここ数十年起きていないが、魔人族が魔物を使役するようになり、戦力の拮抗が崩れ始めた。

 そのため人間族の滅びを回避するために人間族が信仰する"エヒト"という神格が来夢たちを召喚したのだとか。

 

(はぁーくっだらねえ。その神が自演している可能性だってあるわけだし、そもそもどれほど強大な力があろうとももっと数がないと意味がないだろ……。どうにか逃げれないかな、これ)

 

 どうせこの先やらされることは人殺し。

 ならうまいこと失踪して逃げたほうがよさそうだ、と来夢は考えていた。

 

 すると社会科の先生である畑山愛子先生が怒り出した。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 その姿は小動物のようでかわいらしい。

 ただ、イシュタルの次の言葉で凍り付いた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

(だろうなぁ……)

 

 エヒトとやらが召喚した以上、送還できるのも今のところエヒトのみとなる。ある意味当たり前といえば当たり前だった。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。そして周りも騒がしくなってきた。

 みんなパニックになっている。

 そんな中、来夢は落ち着いていた。

 

 はっきり言うならば来夢自身は元の世界がそこまで好きではなかったからだが。

 戻れないのなら戻れないで危険から離れて適当に過ごせればよい。

 いずれ戦線に出されれば行方不明者として逃げることも不可能ではないだろうから。

 

 そこでクラスのカリスマ、天之河光輝がテーブルをたたき、おもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 その言葉で周りが元気を取り戻し始める。

 来夢はやるなーあいつなんて思いながら半眼で眺めていた。

 そしていつものメンバーも光輝に賛同していく。

 愛子先生は涙目で訴えているが、その影響力は皆無だった。

 

(さて、いつ逃げることができるかなぁ)

 

 

 

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