異世界はネカマのおっさんと共に   作:斉藤 幸助

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3話

 草原地帯に存在する【サールズ街道】を、三両の龍車が掛けていた。

 生活用品を積んだ龍車は王国で上位に位置する【トルトン商会】の物で、そこらの龍車よりも豪奢である。

 龍車の横には龍車を引くドラゴンと同じで、戦闘力は低いが大地を走る事を得意とする翼のない二足歩行のドラゴンに乗った冒険者の姿があった。

 

 そんな、冒険者達に護衛をされている龍車の中には身なりが良い、一人の男が座っていた。

 

 男はチョビ髭を生やしたシブい顔をした中年男性。ジョン・トルトンは【トルトン商会】のトップを務めるやり手の商人だ。

 本来なら中間管理職である部下がやる仕事であったが、最近になって各地で多発する事件を調査する為に同行している。

 その事件の一つは王都の治安は悪化させており、それが本当であるならば経済にも影響を及ぼしかねないからだ。

 

 「やれやれ。本当にこんな事が各地で起こっているのか?」

 

 各地で支店を任せている部下達がまとめた報告書を片手に、疑わしいモノを見るかの様に目を通すジョン。

 何度見てもバカらしい内容に溜息が漏れる。

 

 そんな彼の心境を他所に龍車は街道を力強く走っていたのだが、ふいに龍車の速度が落ちてきている事に気づく。

 ジョンは御車台に居る部下に声を掛けようとした……まさにその瞬間。

 

 「盗賊だっ!!」

 

 「全員っ!戦闘態勢へ移れ!!」

 

 「魔術師は魔法の準備をしろ!!」

 

 「ひぃぃぃいい!!?」

 

 部下達が悲鳴を上げて慌てる中、護衛の為に雇った冒険者達が己の武器を引き抜き、迎撃態勢へと移る。

 こうして、王都へと向かう街道で冒険者と盗賊達の戦闘が始まったのだ。

 

 「ちっ!完全に囲まれてやがる!!」

 

 「しかも、外からチクチク攻撃して来やがって!!」

 

 「奴らは、被害を最小限にする為に俺達をジワジワと追いつめて嬲り殺しにするつもりなんだ!!」

 

 「雇い主である会長は、何としても絶対に逃がせ!!」

 

 防御が手薄な所を斬り込まれ、こちらが反撃に転じた瞬間に矢が放たれて、接近していた盗賊が離れていく。

 盗賊とは思えないほどの優れた戦術と計画的な犯行である。

 

 敵に損害を与える事が出来ないまま、ジョンが雇った冒険者と部下達は次々と盗賊たちの凶刃に倒れていく。

 もはやこれまでか。

 

 誰もがそう思ったこの時。空からナニかが、落ちて来た。

 地面に落ちたそれはズダンっ!と、激しい音を立て、土煙を舞い上がらせる。

 モクモクと舞う土煙に誰もが視界を奪われるが、直ぐに風によって土煙は取り除かれた。

 視界が晴れて、誰もがソレを警戒し。この場に居る全員が地面に降り立ったモノに注目する。

 そして、全員が驚愕と恐れを心に抱いた。

 

 「……外道にはいつか報いが必ず訪れる。それを今、おじさんが丁寧に教えてやるよ」

 

 そう、コキッ!と指の関節を鳴らしながら現れたのは盗賊たちを前にして、不敵に笑う女装をしたおっさんだった。

 突然現れた変態に思考を奪われた盗賊達であったが、あまりにもふざけた格好にブチ切れた。

 

 「ふざけんなよ、変態が!!」

 

 「ぶっ殺してやる!!」

 

 「上を見ろ!!もう、お前たちを倒す準備は整った!!」

 

 鬼の形相で盗賊たちが、川口に襲い掛からんとした瞬間。

 襲われそうになると思った川口は上空を指さした。

 そして、誰もが上に注目する。

 

 「な、何だよアレ……」

 

 「白い……ドラゴン」

 

 「美しい……」

 

 天空を舞う、白き巨大なドラゴン。

 今から始まるのは、偉大なるドラゴンによる悪党へと下される神罰。

 現代における神話の再現。この場において、誰も抗う事の出来ない暴力の化身。

 

 「お前は……一体何者なんだ?」

 

 自分の運命を悟った盗賊のリーダーは、小さな声で目の前の変態に問いかける。

 しかし、その返事を聞く前に彼は頭上から降り注ぐ光によって、彼等の服は塵となった。

 

 ★

 

 カイトの思惑通り、空からいきなり現れた変態の登場にざわめく戦場。

 その上空ではドラゴンと視界を共有するカイトの【ドラゴンアイ】と呼ばれる魔法によって、敵の情報を収集していた。

 

 「【弓兵】が十に【剣士】が十三。頭目だと思われる斧を持った巨漢の【戦士】が一人。

 それぞれが、機動力のある騎乗タイプのドラゴンに乗っている……か」

 

 旋回しながら、敵の位置情報と戦場を把握する事に成功したカイト。

 

 (確実に盗賊を倒す為におっさんを巻き込んだ。覚悟を決めろ!!)

 

 必死に自分を奮い立たせる彼は共に戦う相棒と一体になる感覚に身を委ねる。

 そして、吐き気をこらえながらも、カイトは雷光に手をかざし、攻撃命令を下す。

 

 「【ブレイク・ボルト】!!」

 

 すると、彼の命令に応える様に雷光の両翼に展開される無数の魔法陣。

 そこから雷撃が狙った獲物へと向かって放出される。 

 

 これで終わった。

 

 雷光から放たれた雷撃によって、塵となった盗賊達の服。

 残ったのは黒焦げとなってピクピクと痙攣をしながら呻き声を上げる全裸の盗賊のみ。

 その光景に、殺さずに済んだ安心感と殺すかも知れない恐怖に心臓を鷲掴みにされたような気持ち悪さを覚えながら、必死に今後の事を考えようとする。

 

 (この世界にはモンスターだけじゃない。アイツ等みたいなのがウヨウヨと存在しているんだ。

 人間を殺すよりかはマシだが、この世界に居る限りは今後も似たような事が絶対に起る……。畜生っ!!

 何がチートだ!!何がハーレムだ!!現実は結局、異世界であってもクソだ!!

 仕方がないじゃあ、すまないぞ!!なんで異世界に召喚された主人公は躊躇せずに、人間を攻撃出来るんだよ!!

 サイコパス過ぎるだろうが!!仲間を探し求める勘違い系アンデットパイセンよりも怖いわ!!)

 

 しかし、駄目だった。

 平凡な大学生に過ぎないカイトの心を蝕む気持ち悪さはしばらく抜ける事はなかった。

 

 





 今日の攻撃魔法

 【ブレイク・ボルト】

 相手の装備を破壊し、麻痺の異常状態を付与する雷属性の魔法。
 レベル差と相手が装備している武具の耐久値によっては、全ての武具を破壊できるぞ!!
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