起こるはずがなかった。
それはもう終わったはずだった。
しかし
目を開ける。
「ここは・・・」
光夏海は何もない荒野に立っていた。いや、何もないと言っては語弊があるだろう。あたり一面には焦げ跡があり、さながら戦争が起きたようだった。しかし、この場所はどこかで見た気がする。
どーーーーーん!!!!
そんな風に考えていると、それを邪魔するように突如爆発がおきた。
「きゃっ」
爆風とそれに伴う轟音が夏海をたたく。突然のことに夏海はしゃがみこみ、身をすくませた。
「今のは一体・・・?もしかして、またあの夢?」
怯えを滲ませた声で、言う。そうでもしなければ心がおしつぶされそうだった。そんな夏海をさらに追い詰めるように、空から大きなビームが、夏海の視線の先に大量に落ちてくる。それに夏海は、どこかなつかしさをおぼえていた。
「っ・・まさか、ここって」
そう、夏海には見覚えがある場所。それは、前に見ていたある夢と同じ場所だった。しかし、とある戦いを終えてからはその夢自体をみることはなかった。もし、これが夢だとしたら、なんでまたこの場所にいるのだろう。
「まさか、また同じことが」
夏海は最悪の展開を予想したが、それはすぐに覆されることとなる。夏海の頭上を影が通り過ぎる。頭上を見上げると、そこにいたのは夏海の予想と違っていた。
「えっ。人?」
そう、人間だ。生身の人間が大量に空を飛んでいるのだ。しかも、服装に統一感がなく一つの勢力だけではないのは明らかで、それがより夏海の混乱を加速させていた。その上、巨大な戦艦までが飛んでいる。まさしくあの時のような光景だった。
しかし、仮面ライダーではないことに夏海は安堵していた。これならば、またあのようにはならないかもしれない。だが、現実は無情にも彼女に絶望を突きつける。夏海の正面に一際大きな爆発が起こり、視界を埋め尽くす。そして視界が開け、その先には数人に囲まれた男が一人いた。囲んでいる人たちのことは分からない。ある者は先端に羽が生えている杖を持ち、またある者は白く光る剣を持ち、挙句には弓を持った小女までもいる。そしてその中心にはピンクの鎧を纏う男が一人。なぜ男だと分かったか。それは、夏海が彼を知っているからに他ならない。そう、彼は
「結局、こうなる運命か」
彼は疲れたように、ともすれば諦めたようにも聞こえる呟きを漏らす。
「だったら、何度でもやってやる」
こぶしを握り締め彼は戦う。
「フッ!ハア!」
ある時は悪魔と呼ばれ、戦い
「クッ、オオ!」
ある時はその世界のライダーと絆を深め
「ハアアア!」
幾多の世界を救ってきた仮面ライダー
「何度だって破壊してやる。俺は世界の破壊者だからな!」
その名は
「ディケイド」
夢はそこで終わった。
「う~ん」
夏海は目を覚ました。ここは光写真館、その受付である。どうやら軽く居眠りしてしまったらしい。まだ朝なのにいけないと思いつつ店の奥に進む。
「お、夏海、コーヒー飲むかい」
そう声をかけたのは、光写真館を営む光栄次郎である。夏海の祖父であり、見た目こそおじいちゃんだが、世界を移動したり、怪物が存在していてもマイペースに順応する。またコーヒーと料理の腕前はかなりのもので、たくさんの異世界の人をうならせている。最近は喫茶店みたいだと夏海は思っていたりするのだが、それは心にしまっておくのがいいだろう。
「そういえば、士くんはどうしたんですか」
「ああ、彼ならそろそろ起きてくるんじゃないかな」
「もう、もうすぐユウスケが帰ってくるのに」
ユウスケ。フルネーム小野寺ユウスケ。仮面ライダークウガであり、夏海たちが旅を始めて最初の世界の仮面ライダーである。彼の世界ではグロンギと呼ばれる怪物がおり、ユウスケはクウガとして戦っていた。そして、ある男と究極の闇であるグロンギを倒し、グロンギを壊滅させたのだ。それ以降、縁あって夏海たちと行動をともにしている。
「ふあ~あ」
噂をすればなんとやら、一人の青年が降りてくる。彼の名は門矢士。光写真館に居候しており、彼もまた仮面ライダーである。もともと、記憶喪失だったが、夏海の世界の崩壊をきかっけに仮面ライダーとなり、世界をめぐる旅にでた。そして、己の運命を打ち破り、今はいろんな世界を旅している。また、先ほどのユウスケの説明にでた、ある男とは士のことである。
「士くん、もう朝の9時ですよ」
「なんだ、べつにいいだろ、夏みかん」
夏海もうたた寝していたことを棚に上げて士を叱る。しかし、士はどこ吹く風だ。ちなみに夏みかんとは士が夏海をそう呼んでいるだけである。
「ん?ユウスケは出かけてるのか」
「はい。この世界のことを調べてもらってます。少し聞いた話では、どうやら
今夏海は
「しかし、この世界は一体なんなんでしょうね」
そう言う夏海の視線の先には大きな背景ロールがある。この背景ロールが変わるたびに、描かれている絵と関連している世界にいくことができるが、どんな世界かは分からずまた、選ぶこともできない。つまりは、どこの世界にいくかは運なのである。
「さあな、この世界での俺の役割もまだわからんしな。ユウスケを待つしかないだろ」
栄次郎に入れてもらったコーヒーを持って、士が戻ってきた。士と夏海が見つめる背景ロールには、巨大な時計を背後に控えさせた黄金の玉座だった。
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