仮面ライダーディケイド 現実と幻想の狭間   作:神咲胡桃

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深夜テンションで書いたぜヤッホー!!


~信じること 信じられること~

《SERE†CANNON》

 

「ぐ、ぐおおおおおおお!!!!」

「はあああああああああ!!!!」

大剣を振りぬき、マリアはバットファンガイアを切り裂く。そして堪えられなくなった切歌たちの攻撃もその身体を切り裂く。

「やったデス、やったデース!」

「ふう」

切歌たちの声を聞きながら、緊張に硬くなった体をほぐそうと一息つく。

 

 

 

それが決定的な油断となった。

 

 

 

「えっ?」

唐突に自分にかぶさる陰に、マリアは後ろを振り向く。

「貴ざまだけでも、みぢ連れだああああああ!!!」

振り抜かれようとする拳にマリアはなすすべもなくやられる――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ことはなかった。

 

《ATTACKRIDE BARRIER》

 

マリアとバットファンガイアの間に発生したバリアによって拳は弾かれる。

「なん・・・!?」

「これは・・・?」

 

《FINALATTACKRIDE DI、DI、DI、DIEND》

 

「ハア!」

ディエンドライバーから撃ちだされたエネルギー波がバットファンガイアを撃ち抜く。そして断末魔の悲鳴を上げながら爆発し、今度こそバットファンガイアは倒れる。

「油断大敵だね」

「え、ええ。その、ありがとう。助かったわ」

「「マリア!」」

マリアに向かって、切歌と調が抱き着く。

「だ、大丈夫デスか!?」

「マリア、怪我はない!?」

「ええ大丈夫よ二人とも。この通り問題ないわ」

心配して怪我がないか確かめる2人を、安心させるように宥める。

「そうだ、貴方も本当にあり・・・あら?彼はどこに」

「デス?どこにもいないデス。」

「どこに行ったんだろ?」

改めて海東にお礼を言おうと、海東の探すがその姿はどこにも見えなかった。

 

 

 

 

 

 

「今のは、いったい・・・」

ビルの屋上で、自分を探すマリアたちを見ながら考える。海東は確かに憶えている(・・・・・)。魔法少女と魔女がいる世界、その世界で新たに生まれた仮面ライダーの存在を。そしてこの世界が、今の自分にとって過去に訪れた世界(・・・・・・・・)であると。

だからこそ、先ほどのバットファンガイアの攻撃を防ぐことができた。あの時(・・・・)は防ぐことができず、マリアとかいう女性は致命傷を食らっていた。そのあと突然現れたオーロラカーテン(鳴滝が出した)によって、別の世界へ移動していた。

「・・・これが、彼女の力の一端か。なかなか興味深いね」

海東はそう言いながら笑うと、オーロラカーテンを呼び出し移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあー!なんですかそれ!?」

そう興奮気味に聞いてくる声で、意識が覚醒する。声のした方を見ると、そこにはこの世界で戦う少女、立花響がいた。

「これは・・・」

「どうかしましたか?」

どういうことか分からない士に、仮面ライダーファイズが声をかける。だが士は知っている。変身者は灰牧灯。実はオルフェノクの一体、ウルフオルフェノクでありこの世界の調査のため潜入していたが、響たちの歌を聞きこの世界を守るために離反した。この少女の最後がどうなるかも知っている。

「・・・いや、なんでもない」

そう返し、アークオルフェノクを向く。

「おのれ、王である私に向かってそのようなことを!貴様はここで粛清する!」

「やれるものならやってみろ」

 

《エクシードチャージ》

《FINALATTACKRIDE DE、DE、DE、DECADE》

 

「ハッ!」

「ハア!」

士と灯は同時に飛び上がり、灯の右足からポインターが射出され、士はカード状のエネルギーが列を成す。そして灯の「クリムゾンスマッシュ」と士のディメンションキックが命中し、アークオルフェノクは吹き飛ぶ。

「やったか!」

「灯ー!」

着地した2人に響たちは近寄る。だが、喜ぶにはまだ早かった。

「まだだ・・・こうなれば、最後の手段を使うまで」

「最後の手段?」

「フ、フハハハハ!」

不気味な笑い声をあげ、アークオルフェノクは爆発する。しかし誰も喜ぶことは出来なかった。

「おーい」

そんな響たちにマリアたちも合流する。海東の姿が見えなかったことが気になるが、どうせどこかに行ったのだろう。

「どうしたの、あなた達?」

「じつは・・・うわっ!?」

響たちが妙に険しい表情をしていることに気付いたマリアが詳しい話を聞こうとする。その時、大きな地震がその場の全員を襲う。

「な、なにこれ!?」

「なんデスか!?」

突然のことに慌てていると、空から一本の光の柱が降る。

「あれは・・・ソロモンの杖!?」

その光の柱の中の物を見て、クリスが声を上げる。

それもそのはず、光の柱の中には奪われたはずのソロモンの杖が浮かんでいたのだ。

「何でここに・・・ん?」

『全員聞こえるか!』

「おっさん!?おい、あれなんだ!何が起きようとしてる」

『時間がない、手短に伝えるぞ!君たちの目の前に現れたソロモンの杖は現在、暴走状態にある!』

その通信に全員が息を呑む。

『このままではソロモンの杖が自壊、大量のノイズが生み出されることになる』

「これがあいつが言った最後の手段か!」

「おっさん!あれ止めるにはどうすればいい!」

『君たちの歌だ。シンフォギアの力を最大限引き出して、止めるしかない!』

本来、ああいった聖遺物を止めるためにシンフォギアがある。なので、そこは良いのだが

「そんな簡単にはさせてくれないわよね」

光の柱と地面の接触点から、泥のようなものが現れたかと思うと、それが人の形を成しオルフェノクあるいはファンガイアになる。

「おいおい、シャレになんねえぞ!」

歌による聖遺物の鎮静化。それを行う間響たちは戦闘を行うことができない。

「私があれを抑える。だから響たちがソロモンの杖の鎮静化を」

「そんな・・!?あの数相手に」

「でもやるしかない。こうしてる内にあれは数を増していく」

しかし、響たちはなかなか承諾できない。なにせ相手の数が段違い。2人だけで相手をするのはきつすぎる。別の場所で戦ってるはずのミラ(・・・・・・・・・・・・・・)がどうなったのかもわからない。

「・・・ディケイド。私にはないの?あなたのような強化フォームが」

唐突に灯が士に聞く。士は少しの間何も答えないが、口を開いたとき灯に問いかける。

「あるにはある。だが、それを使いすぎればお前は間違いなく死ぬことになる。それでも使うか?」

「はい。使います」

士の問いはあまりにも衝撃的で、そして灯の即答にその場の全員がさらに驚かせる。

「そんな!?灯、今すぐ考え「響」っ!?」

「貴方の言いたいことは分かる。でも私だって死にたいわけじゃない。だから一発で頼むよ」

「灯・・・」

「貴方が私を信じてくれた。だから今度も信じて」

「・・・うん!」

灯の言葉に響は頷く。

「ならいいか?さっさと始めるぞ」

士が目を向けた先にはオルフェノク、ファンガイアがすでに迫っていた。

「ったく、勝手に決めやがって」

「そう言ってクリス先輩顔が笑ってるデス!」

「素直じゃない・・・」

「翼、準備は良いかしら?」

「フッ、もちろんだ。防人の歌、見事響かせて見せよう」

と他の奏者たちも、やる気満タンらしい。

今ここに、最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

「いきます!セットS6CA・オールバースト!」

響たち奏者が手を繋ぎ合い、魂の込められた歌を歌い始める。オルフェノクとファンガイアはそれに反応して襲い掛かろうとする。士たちはそれを防ぐ。しかし―――

「くっ、こいつら数が多い!」

一体一体の強さは大したことがないが、数が多いすぎる。数にものをいわせた波状攻撃により、士はコンプリートフォームの能力を使えず、灯のファイズアクセルは一度使ってしまったために使えない。このままでは、ジリ貧すぎる。

その時一瞬の隙を突かれ、数体のオルフェノクの突破を許してしまう。

「まずい!」

士は射撃を行いオルフェノクを倒すが、2体撃ち漏らしてしまう。

「(おい、まずいぞ!)」

「(大丈夫です!私は灯たちを信じます!)」

灯と士をただ信じ、歌い続ける。ついに奏者たちに攻撃が加えられそうになった時、2つの影(・・・・)が響たちを後方から(・・・・)飛び越える。

「「はあああああ!」」

 

《タイムブレイク!》

《タイムバースト!》

 

「(なんだ!?)」

「(おい!あの赤い奴って!)」

「(仲直りできたんだ!)」

奏者たちの危機を救ったのは、2人の仮面ライダー。仮面ライダージオウと仮面ライダーゲイツだった。

「大丈夫、皆!?」

「今歌ってるから返事できないんじゃ?」

「そうだった!事情は聴いてるから、私たちも戦うよ!」

ミラと月乃はそれぞれジオウウォッチⅡとゲイツリバイブウォッチを取り出す。

 

《ZI-OⅡ!》

《ライダータイム》

《仮面ライダー ライダー ジオウ!ジオウ!ジオウ! ツー!》

 

《ゲイツリバイブ 疾風!》

《スピードタイム!》

《リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リ・バ・イ・ブ 疾風!》

 

そこには、新たな姿。仮面ライダージオウⅡ、仮面ライダーゲイツリバイブ疾風。

その姿を初めて見た奏者たち、とくに切歌は興奮を隠せない。

「(ウオーーーー!すごいデース!)」

「行くよ、月乃」

「うん」

そう言葉を交わすと同時に走り出し途端、2人の姿が消え前方の敵が次々と撃破される。

「あれは・・・」

「あれは味方だ。俺達も一気に行くぞ!」

 

《FAIZ》

《KAMENRIDE BLASTER》

 

士がファイズの紋章をタッチすると、灯の左手にファイズブラスターが現れる。

灯はファイズブラスターにファイズフォンを差し込み「5、5、5、ENTER」と打ち込む。

 

《AWAKENING》

《STANDING BY》

 

ファイズの体は赤く染まり、ブラスターフォームに変わる。そのまま、「5214」と打ち込み背部ユニットを両肩に展開、前方のオルフェノク群に対して「ブラッディキャノン」を発射する。その威力は凄まじく、次々と撃破していく。

「俺も行くか」

 

《KABUTO》 

《KAMENRIDE HYPER》

 

今度はカブトの紋章をタッチし、仮面ライダーカブトハイパーフォームを呼び出す。

 

《FIMALATTACKRIDE KA、KA、KA、KABUTO》

 

カードをバックルへと装填しライドブッカーソードモードを両手銃のように構える。また召喚されたカブトも、自身の武器「パーフェクトゼクター」を構える。

「ハアアッ!」

2人の武器から竜巻状の巨大エネルギーが撃ちだされ、ファンガイア群はチリも残らず消える。

「・・・すごーい」

「むっ。私たちだってあんなの簡単にできる」

「よーし。なんかいける気がする!」

士と灯の戦いぶりを見て、意気込むミラと月乃もまたそれぞれの必殺技を撃ちだそうとする。

 

《パワードタイム!》

《リバイブ剛烈!》

《剛烈!》

 

月乃はリバイブ剛烈へとフォームチェンジし、のこモードに変形したジカンジャックローにリバイブウォッチをセットする。

 

《ジカンジャック!》

《スーパーのこ切断!》

 

「ハアアア、ハッ!」

月乃が思いっきり振り抜くと、のこの形をした斬撃が飛んでいき文字通り目の前の敵を刈り取っていく。

ミラは地面に突き刺したサイキョ―ギレードから、ジオウの顔を模した「ギレードキャリバー」を外しジカンギレードの装填スロットにセットし、サイキョ―ギレードを上部に接続することで「サイキョーギカンギレード」を完成させる。

それを構えると、「ジオウサイキョウ」と書かれた長大な光の刃が現れる。

 

《サイキョーフィニッシュタイム!》

《キング!ギリギリスラッシュ!》

 

「これで、どうだぁー!」

サイキョーギカンギレードを振るい、前方の敵すべてを切り裂く。

 

 

 

それを見ていた響たちはというと、

「(あれが仮面ライダーというものなの!?)」

「(私、あんなのにケンカ売ってたのか・・・)」

「「(・・・まだ気にしてたんだ(デスか))」」

「(おい!まだ終わってないんだぞ。油断するな!)」

「(そうですよ!それに今度は私たちの番です!)」

「「「「「(おおっ!!)」」」」」

奏者たちの歌ももう終盤に入り、ソロモンの杖の暴走も次第におさまりつつある。

「(あともう一息!)」

「(よっしゃあ!お前らきばれぇー!)」

しかしソロモンの杖も抵抗するかのように、2体のオルフェノクとファンガイアを呼び出す。呼び出されたのはバットファンガイア・リボーンとアークオルフェノク・リボーンであり、先ほど倒された2体が強化された姿だった。

「「がぁぁぁぁぁぁあ!!!」」

「やらせない!」

2体は叫びながらす凄まじい速度で飛行し奏者たちに襲い掛かる。が、それを直前で灯が2体に飛びつき、軌道を逸らすことで奏者たちから引き離す。

灯は着地の際に地面を転がるがすぐに立ち上がり、2体に立ち向かう。

しかし、もともと凶悪な強さを誇る2体が強化されただけあり、すぐにピンチに陥ってしまう。アークオルフェノク・リボーンの触手が灯の身動きを封じ、バットファンガイア・リボーンの闇を纏った拳が灯を殴り飛ばす。

「(灯っ!)」

「やらせない・・・響たちは私が、守るんだ!」

バットファンガイア・リボーンが再び迫ってくるが、横に跳び2体の軌道をそらした際に地面に転がったファイズブラスターを拾う。

 

《1、4、3》 

《BLADE MODE》

 

「143」と入力し、大剣のフォトンブレイカ―モードに変形させた灯は、また迫ってきたバットファンガイア・リボーンを薙ぎ払いの一撃で吹き飛ばす。

 

《1、0、3》 

《BLASTER MODE》

 

さらに「103」を入力し、大型銃のフォトンバスターモードに変形させる。アークオルフェノク・リボーンが飛ばしてくる触手に対して、右から左へ払うように連射し触手を蹴散らす。そしてフォアグリップを引き弾を装填すると、無防備になったアークオルフェノク・リボーンに射撃をお見舞いする。

肩で荒く息をしていると、士も合流する。

「ディケイド、手を貸して」

「ああ」

士もカードを取り出しながら応える。

2体の怪人は危険な感じがしたのか、飛んで逃げようとする。

「逃がさない」

 

《5、2、4、6》

《FAIZ BLARTER TAKE OFF》

 

「5246」を打ち込むと、背部ユニットが軌道し灯は空を舞い、逃げた2体を射撃で足止めする。

 

《FINALATTACKRIDE DE、DE、DE、DECADE》

《EXCEED CHARGE》

 

士がライドブッカーガンモードを、灯はフォトンブラスターを構える。アークオルフェノクとバットファンガイアは生存率を少しでも上げようとしたのか、2方向別々に逃げる。

それに構わず士の撃ちだした光弾は外れるかと思われたが、並んだカード状のエネルギーが光弾をバットファンガイアに誘導するようにカーブしながら増えていく。

灯は撃ちだしたチャージビームを強引に、ファイズブラスターのビームでアークオルフェノクを切り裂くようにして動かす。

2人の必殺技は見事命中し、アークオルフェノク・リボーンとバットファンガイア・リボーンは空の藻屑となった。

 

 

 

そして、響たち奏者組の方でも決着が付こうとしていた。

「(向こうは終わらせたみたいね)」

「(なら今度は私たちが頑張る番ですね!私たちの思い、灯の、士さんたちの思いを無駄にしないために!私たちの歌、響けえええええ!!!)」

6人の思いが一つとなり、光に包まれる。そして6人の姿は、シンフォギアのリミッターをすべて解除した姿、エクスドライブモードになっていた。

歌が終わると同時にソロモンの杖はエネルギーの放出を沈静化し、暴走は止まった。湧き出していたオルフェノクやファンガイアたちは、泥のように溶けていき消滅した。

「はあ、はあ、はあ」

「終わったデス?」

「そうみたい」

「やっっっったああああああ!!!」

静かになった戦場に、響の歓声が響き渡る。

「あとは、ソロモンの杖を回収すれば今回の事件も終わり「やっと取り返せたよ。僕のお宝ちゃん」っ!貴様は!」

翼がソロモンの杖を回収しようとしたその瞬間、何者かがソロモンの杖をかすめ取った。

「海東さん!?」

「おい盗人野郎、どういうつもりだ!」

「どういうつもりも何も、僕のお宝を取り戻しただけだし、これは僕のお宝だ」

「何を言っている。それはこちらで回収し保管するべきものだ」

「はぁ、君たちはこのお宝の価値を何も分かっていない。ただこのお宝を恐れ保管しかせず、腐らせるなんてもったいない」

などと掠め取った人間、海東大樹はそう言いながらソロモンの杖を手の中で弄ぶ。

「ということはなんだ?お前はそいつで何かを企んでいるってわけか!」

「失敬な。僕はお宝がほしいだけさ」

「あ、あの!それはとっても危険なものなんです。だから、私たちに渡してもらえませんか?」

「無理な相談だ。それにこのお宝が危険とされているのは、使った人間に悪用されたからに過ぎない。使った人間と一緒くたにしか見ず、価値を理解できない君たちに渡すより、僕が持っていた方が良い。例え敵だろうと、誰とでも手を繋ごうとする君がただ使われただけのお宝が危険かどうか、そう簡単に決めつけるのはどうだろうね。」

言うだけ言った海東はオーロラカーテンを出し、潜り抜ける。

「ど、どうするデス!?」

「落ち着きなさい切歌。とりあえずは基地に戻ってからにしましょう」

「そうだ、灯は・・・・え?」

響が灯は大丈夫かと思い目を向けるとそこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そん、な」

右手から灰を零す灯の姿があった。

「そんな!」

「おい、うそだろ・・・」

間に合わなかった。その事実に全員が放心状態になる。

「灯・・・」

「ごめん、響。時間切れみたい」

どことなく吹っ切れた顔で、灯はそう話す。

「もともとオルフェノクは短命だから、きっと遅かれ早かれこんな結末が待ってる。だから、これでよかったんだよ」

「そんなこと、言わないでよ」

響は現実を認めたくないと言わんばかりに涙をこぼす。

「お前は、それでいいのか」

「士、さん?」

「このまま消える運命に屈して、死んでいくのを認めるのか。お前は見たはずだ。お互いがお互いを信頼し、起こした奇跡を。その結末が、こんなバッドエンドで良いのか?」

「・・・そんなこと、ない。・・・もっと、もっと生きたい!響たちといろんなとこに行って、いろんなものを食べて、思い出を、作りたいよぉ・・・」

「私だってそうだよ!もっと灯といろんな思い出を作りたい!未来も一緒にみんなでもっと居たいよ!」

こぼれる灰の量が増え、涙を目に浮かべながら生きたいと叫ぶ灯。本当の意味で手を取り合えた親友と、もっと一緒に居たいと望む響。

その2人の願いを聞いた士は、ライドブッカーからカードを2枚取り出す。何も描かれていないカードに絵柄が浮かび、内1枚それをバックルに装填する。

 

《FINALATTCKRIDE SI、SI、SI、SYMPHOGEAR》

 

響たちのシンフォギアから光の粒子が漂い、それが灯に集まってゆく。それらは灯に溶け込むように次々と吸収していく。そしてあたり一面を光が覆うと、そこには何ら変わりない灯がいた。

「いったい何が起こったの?」

「あ、ああ!?あか、灯!体、体!」

「ん、体?」

「灯、灰になってないよ!?」

響の言葉に灯は自分の姿を見ると、灰化が完全に止まっていることに気付く。

「これって・・・!?」

「お前たちの願いが奇跡になった瞬間だ。この先お前が灰化することはないだろう」

「じゃ、じゃあ私はもう灰化しないの・・・?」

確認するように呟くと、灯の目にたまっていた涙が決壊する。しかしそれは悲しさによるものではなく、まごうことなき嬉しさからくるものだった。

「灯ー!」

響が灯に抱き着き、変身を解除した士がその様子をカメラに収める。

そうしてこの事件は終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、私が言うのもなんですが、お世話になりました」

そして闘いから1日経ち、ミラは共に戦ったS.O.N.Gの面々に感謝の言葉を述べていた。

「さびしくなるわね」

「そうだな。今回の事件はきっとあなた達がいてくれなければ、解決できなかった。だから礼を言うのは我々の方だ」

年長組のマリアと翼は、落ち着いた様子でミラに声をかける。

「ズジュ、もっと一緒に遊びたかったデス」

「うん、私も。グスッ。ぬいぐるみ、大事にするね」

奏者の中では歳が低い2人は、涙を浮かべ時々鼻をすすりながら声をかける。ミラと遊んだ時に手に入れたぬいぐるみが、3人の手の中におさまっていた。

「この世界で私たちがするべきことは終わった。もう次の世界に行く頃だからね」

現在ミラは次の世界に行くためにお別れを言いに来ていた。誰もが別れを惜しむ中、ミラに声をかける少女が3人いた。

「ミラ、ミラと友達になれてよかった」

「私だって、響たちと友達になれたことは、この世界での一番の思い出だよ!」

「ミラ、体には気をつけてね」

「うん、未来も響のことよろしくね。響はドジなところもあるしね」

「ちょっと、何それ!?」

ミラと未来の会話に響は異議を申し立てるも、逆に2人はそれを聞いてクスクスと笑う。

「私からもお礼を言わせて。貴方たち仮面ライダーのおかげで、私は人間と同じぐらいの寿命を手に入れられた。本当にありがとう」

「それはほとんど士さんのおかげと、あなたが生きたいと願ったからだよ。でも、のこっている力は響たちのために使ってあげてほしいかな」

実はあの時、灯は士のカードの効果でオルフェノクの寿命による灰化を免れただけでなく、人間とさほど変わらない寿命を手に入れた。オルフェノクの力自体は残っているものの、それを活かしてS.O.N.Gの保護を受けながら、響たちの力になることにしたらしい。

「灯さんのバイタルは問題なしです。サポートを万全にしていけば、これからはちょっと力を持った人間として生きることは可能です」

「そっか、ありがとう。エルフナインちゃん」

ミラはどう見ても幼女にしか見えない女の子(実は無性だが外見はまんま女の子なのでこれからは女の子とする)の金髪の頭をなでる。

この女の子の名前はエルフナイン。彼女たちの仲間らしく、ミラがS.O.N.Gに来たときは、ある戦いでけがを負って入院していたため会うことはなかったが、先日の戦い(S.O.N.Gではライダー事変と呼ばれているらしい)の終結直後にめでたく退院。話だけは聞いていたらしい仮面ライダーに知的好奇心が爆発しミラの元に来るや否や質問攻めにした。そのあとなんやかんやあり仲良くなった。

「それじゃあ、また逢う日まで」

そう言いミラは光写真館へと帰る。

 

「・・・・」

ミラが出て行った部屋は静かなものだった。ミラは士たちと共に世界をめぐっており、次会える保証がないのだから当然である。

「みんなの気持ちは分からんことはない。だが、気持ちは切り替えてほしい」

それを見かねた弦十郎が奏者たちに声をかける。

「またミラ君と再会した時、笑って再会を喜べるように、我々がこの世界を守っていかないといけないからな」

「そうですよ!ミラたちに会ったら、私たちが頑張ったんだってとこ見せないとですね!」

その言葉に奏者たちの雰囲気も明るくなる。

「しっかし、ソロモンの杖は結局盗まれたまんまだよなぁ」

クリスは悔しそうにぼやく。海東が盗んだソロモンの杖は、表向きは暴走のため自壊されたと言うことになっている。しかし、それで少女たちの心が晴れるかといったら、そうでもない。

「大丈夫なのだろうか?彼が持っていることは」

「大丈夫だと思います!」

海東がソロモンの杖を持つことに疑問視する声が上がる中、響が声を上げる。

「響、どうしてそう思うの?」

「だってあの人、たぶん私と同じだと思うから」

その言葉に全員が首を傾げる。

「海東さん、私がソロモンの杖は危険なものなんですって言ったら、怒ったんだよ。ただ使われた道具が危険かどうか決めつけるのはどうだろうって。確かにその人の言うとおりだと思う。私たちのシンフォギアだって、使う人が悪い人だったら危険なものだって言われるはずだよ。だから海東さんは私と同じ、ううん、私以上にすごい人かもしれない」

例え敵だろうと、完全に悪いと決めつけず話を聞こうとする。それを第一とする響からしたら、海東の言葉は納得のいくものだった。海東の言葉はとどのつまり響の考えの対象を道具にしただけ。響からしたら十分尊敬できる考えである。

まあ、あくまで響にとってなので、他の奏者たちには伝わりづらいようだが。

「はあ、なんというかお前らしいな」

「まったくだ」

「あ、あれぇ~」

響が頭をかき、部屋に笑い声があふれる。

 

そんな中エルフナインが床に落ちているものを見つける。

「あの!これって」

エルフナインが拾ったものは、ミラが使っていたライドウォッチと言われていたものと似ていた。しかし落ちていたものは不思議なことに、絵柄がなく真っ黒だった。

「これってミラの物じゃない?落としたのかな?」

「ふむ、だったらすぐに渡しに行った方が良いんじゃないか?」

ミラの話ではすぐに次の世界に行くということらしいので、急いだ方が良いだろう。

「そうですね。ホントは分解してみたいところですけど、我慢して渡しに行きましょう」

エルフナインの本音に、苦笑が起きる。なまじ仮面ライダーをまじかで見る時間が少ないだけに、好奇心がまだまだ消化不良なのだろう。

「なら、私もついてってやる。あいつの家の場所は憶えてるしからな」

「そんなこと言って~。ホントはもうちょっと一緒に居たいんでしょ」

「なっ、そ、そんなんじゃねえ!私はただ、エルフナインがパクッたりしないか見張るだけで!」

「僕、そんなに信用無かったんですね」

響にからかわれたクリスは顔を真っ赤に染め言い訳をするが、その言い訳にエルフナインが落ち込みそれを慌ててフォローしたりと大混乱である。実際エルフナインも光写真館の場所は知っているので、苦しい理由である。

「だったら私もついていくデス!」

「切ちゃんも?」

何故か切歌もついていくと言い出す。

「そうデス!ミラにはお世話になったデスから、もっとお礼が言いたいデス!」

「・・・本音は?」

「・・・おじいさんのココアがもう一回飲みたいデス」

その理由に周りは思わずため息をつく。確かに昨日、光写真館にお邪魔した際に飲んだおじいさんのココアやコーヒーは美味しかった。だからと言って、お別れをした直後にそれを言うとは。

「あ、だったら私も行きたいかなぁ~なんて」

「だーめ。響は学校の宿題あるんでしょ」

「うぇっ!?うぅ~」

響も便乗しようとするが、あえなく未来に撃沈。

「なら、エルフナイン君とクリス君、暁君が行ってきてくれ。くれぐれも迷惑にはならないようにするんだぞ」

「ああ」

「分かりましたデース!」

「それじゃあ、行ってきます」

3人は駆け足でミラを追いに行った。

 

 

 

カランッ、カランッ

「ただいま~」

「あ、お帰りなさい。」

「おかえり、ミラ」

「おかえりなさい。お別れはちゃんとできた?」

ミラが光写真館に着くと、光とユウスケが迎える。月乃もミラに抱き着き迎える

「はい、ちゃんとできました。それにしてもこの音楽って・・・」

今室内には、翼とマリアの曲「星天ギャラクシィクロス」が流れていた。

「ああ、この世界の有名な歌手なんだってね。ユウスケ君が買ってきたから、ためしにかけてるんだ。はい、ココアどうぞ」

「ありがとうございます」

抱き着いてくる月乃の頭をなでながら、栄次郎が入れたココアを飲む。

「やっぱいい歌だよなぁ~。しかも世界を守るために活動しているのもすごいことだよな。なっ、士もそう思うよな」

「ん?ああ、アイツらがいる限り、この世界は大丈夫だろ」

「おっ!いい顔してるねえ、この子たち」

「ほんとだっ」

そう言いながら、士が机に放り投げた写真にはぼやけていながらも、仲の良さげな少女たちが写っていた。

 

カランッカランッ

 

士たちが和んでいると、突然玄関のベルが鳴り誰かが来たことを知らせる。

「おやっ、お客さんかな」

栄次郎が対応に行こうとするとそれより早く、士たちがいる部屋のドアがノックされる。

「どうぞ」

栄次郎が答えると、中に入ってきたのは今しがたお別れを済ませてきたはずの少女たちだった。

「また来たデース!」

「おい、礼儀悪いぞ!挨拶ぐらいしろ」

「お、お邪魔します。えっと、こんにちは」

「ええっ!」

元気よく切歌がドアを開け、クリスがそれを窘め、控えめにエルフナインが挨拶をする。

「どうしたの!?」

「えっと、実はこれを届けに来まして」

「これは・・・ブランクウォッチ?」

「ミラさんが帰られた直後に、落ちていたのを見つけまして・・・」

「それでわざわざ届けに来てくれたの?」

「ああ」

「そっか。ありがとう」

「ああそうだ、だったらお礼にココアでも飲んでいくかい?」

話を聞いていた栄次郎が提案する。

「ココアデスか!?いただくデース!」

「お、おい!」

「遠慮しなくてもいいよ。今入れてくるからね」

「それじゃあ、こっちおいで」

もともとそれが狙いだった切歌は大喜びで受け、クリスは咎めようとするが栄次郎が入れようとしていること、ミラたちも特に断る理由がないことから誘いを受けることにする。

「じゃ、じゃあ遠慮なく」

「失礼します」

「えへへ、それじゃあおじゃましま・・・デース!?」

「ふえっ!?」

クリス、エルフナイン、切歌の順番で部屋に入ろうとすると、伸ばしてあったCDプレイヤーのコードに切歌が思いっきり足を引っ掛け、前にいたエルフナインを巻き込み大きな音を立てて転倒する。

「だ、大丈夫!?」

「まったく、何やって―――」

士が呆れたようにした瞬間、背景ロールの絵が変わった。そう、世界を移動する背景ロールの背景が切り替わったのだ。それに切歌たちを除いた全員が固まる。

「ん?おい、どうしたんだよ」

「いてて・・・あれどうしたデスか?」

「もう、ひどいですよぉ」

事情を知らない切歌たちは、士たちの様子にただただ困惑する。

「え、えっとね、3人とも。落ち着いて聞いてほしいんだけどね」

「どうしたです?ハッ!もしかしてココアが切れてたですか!?」

そんな優しいことだったらどれほど良かっただろう。だが今起きたことは間違いなくやばいことである。

「落ち着いてほしいんだけど、たった今世界を移動しちゃった」

「「「・・・・・はっ(えっ)?」」」

「今私たちがいる世界はシンフォギアの世界、貴方たちの世界じゃないんだ」

未だに切歌たちが理解できない中、士は新たな背景ロールを見つめていた。

その背景ロールには、3人の警察官とそれに対峙する怪盗の絵が描かれていた。

 

 

 

 

 

パトカーの音が鳴り響く。小規模な爆発が起きている場所に止まり、警察官らしき人物が3人、手に白い銃を構えながら出てくる。

「先輩、これって・・・」

「ああ、やつらもいるはずだ」

3人のうちの1人に、先輩と呼ばれた男が確信を持って返す。その男の視線の先には、シルクハットをかぶりアイマスクをした男女が3人いた。

「お宝は頂いた」

「今度は逃がさんぞ、怪盗ぉー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 仮面ライダーディケイド アナザーストーリー

「違う世界ってどういうことだよ!」「私たち、帰れないデスか?」「お姉ちゃん?」「何とかしてあげたいけど・・・」「スーパー戦隊?」「どうやら、この世界には怪盗と」「快盗チェンジ!」「それを追いかける警察がいるらしい」「警察チェンジ!」「君たちのお宝集め、手伝ってあげようか」

全てを破壊し、全てを繋げ

~永遠の宿敵?~

 




仕方がなかったんや。描いてる途中にエルフナインちゃんの小説読んで出しときゃよかったー!と思ってしもうたんや・・・。無理矢理なのは分かるけども!
だから番外編でエルフナインちゃんとの出会いと、遊んだことのも出すから許してください。お別れシーンでなんか光写真館行ってた事実もそのために入れたので。
あ、でも番外編より設定集が先かm(殴
でもさ、ミラとエルフナインの絡みを書きたくなったんだよ。私は絶対エルフナインちゃんをミラの妹ポz(殴(唐突なネタバレのため作者を気絶させました)

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1つの世界の話を前章、後章に分けてるんだけど、後章の挿入歌っている?

  • 入れてほしい
  • 邪魔。入れなくていい
  • 前章にも入れてほしい
  • 後章だけで良い

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