最終選別が終わり一週間が経過した。
俺は最終選別が終わっても毎日稽古をしていた。しかし、今日は師匠に早めに稽古を切り上げろと言われたので昼頃に稽古を止め師匠の家に向かった。
師匠の家に戻ると師匠は誰かと話していた。
「只今戻りました。」
「戻ったか桜花。とりあえず座れ。先程お前の刀が届いたぞ」
「えっ! 本当ですか師匠!」
「あぁ。彼が届けてくれたぞ」
師匠が手を向けた先にひょっとこを被った一人の人物が居た。
「はじめまして。化野殿。私は貴方の刀を打った鉄穴森と申します」
「知ってると思いますが化野桜花と言います。その様な格好で、申し訳ありません」
俺は稽古が終わった後だった為少し汚れていた
「構いませんよ。貴方の師匠である如月殿から何をやっていたのか聞いておりますから」
すると、鉄穴森さんは木箱を俺の前で取り出し、蓋を開け、中から日輪刀を取り出す。
鞘の色は薄い青色で、柄巻は橙色。刀を握り、鯉口を切り、ゆっくりと抜き放つ。
「さぁ 刀の色が変わりますよ」
──日輪刀は、別名“色代わりの刀”と呼ばれ、持つ者によって色を変えるらしい。だが、才が無ければ色が変わることはないという。
すると、俺の手にした刀の刀身が緩やかに色付けていく。
「綺麗な桜色ですね~」
鉄穴森さんの言葉を聞き、俺は色が変化したことに安堵していると鉄穴森さんは立ち上り
「それでは刀を渡したことですし失礼させていただきます」
そう言って玄関に歩いていくので、俺は鉄穴森さんに
「この刀、大事に使います。本当にありがとうございました」
と、お礼を言うと鉄穴森さんは
「刀は物と同じで、大事に扱ってもいずれは壊れます。その時はまた、私があなたの為に刀を打ちます。こんなことでしか化野殿を支える事は出来ませんが、どうか一秒でも長く生き、一人でも多くの命を救ってください」
「はい!」
感動に震える心が胸の内に温かな感情を流し込む。
そして誓う。この刀で、技で、悪鬼を滅してみせると。
鉄穴森さんが帰ってから暫くすると一羽の鴉が家の中に入り
「カァー! カァー! 化野桜花ァ! 任務だァ! 任務だァ! 場所は北北東ォ! 北北東ォ! ある集落で、夜中次々と人が消えているゥ。至急向かわれたしィ! 向かわれたしィ!」
「任務っ……!」
ついに転がり込んだ初任務の伝令。
途端に凛々しい顔つきになった俺は師匠へと振り向けば、普段通りの厳めしい顔つきの師匠が無言で頷いた。
「っ……行ってきます!」
一刻も早く現場へ。
俺は逸る想いのまま飛び出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
任務場所に一日掛けて向かい、昼頃に件の集落に到着した。
俺は近くにあった飯屋で昼食を食べながら、お店の店主に最近奇妙なことはなかったか聞くと
「そういえば、近頃夜中に人が消えていると言う話を聞いたなぁ~」
「本当か! 是非その話を聞かせて欲しい」
有益な情報が手に入ると思ったので、店主の肩を掴み情報を教えてくれと頼んだ。
店主はいきなり肩を掴まれたので驚いていたが、俺の真剣な様子を見て只事ではないと感じたのか情報を教えてくれた。
店主の情報曰く
・二週間前から人が消えている。
・消えている人達は共通して、ある森の中で消えている。しかし、昼間にその森に行っても帰ってこれること。
・熊かと思い、桑や鉈等を持ち討伐に向かった五名がまだ帰ってきていないこと。
俺はそれらの情報を聞き、その森に鬼が居ると考えた。店主にお礼を言い、昼食と情報の分のお金を払い店から出た。
店を出た後も情報を集めていると、いつの間にか夕方になっていた。俺は、道行く人から聞いた情報によりその森に鬼が居ると確信した。
~森の中~
「ここが鬼が出る森の中……すごく血の臭いがする……」
血の臭いが濃い方に歩いていると、突然前から砂のような物が飛んで来たので俺は木の枝に飛び乗って、それを避けた。その数秒後に飛んでいった方向から何かが倒れた音がした
飛んでいった方向を見ると一本の木が倒れていた
(なんだ……今のは……)
警戒を高めていると前の方から声が聞こえていた。
「へぇ 今のを避けるか。君、何者だい?」
声がする方を見ると、黒い砂のような物を宙に浮かしながら歩いてくる一人の人物が居た。
「俺は、今からお前の頸を斬るものだ!」
「僕の頸を斬る? あはは……面白い冗談を言うね。なら、これは避けられるかな!」
血鬼術───鬼が持つ不死性や怪力とは別に、各個に発現する異能の力。弱い鬼は持ち合わせない能力だが、人を多く喰った鬼や十二鬼月など一定以上の実力を備えた鬼に発現する。
師匠から血鬼術について説明を受けていたので、目の前の鬼は少なくない人数を喰らっているのがわかった。
鬼を睨んでいると、目の前から無数の砂鉄が飛翔してきた。
相手の攻撃を避けながら戦術を練る
(攻撃自体は余り脅威ではないが……範囲が広い!)
「どうしたの? さっきから逃げてばっかだけど」
敵の煽りを無視しながら、さらに思想に耽る
(被弾覚悟で壱ノ型で殺るか?)
そこまで考えていると、急に砂鉄の嵐が止んだ。
「本当に戦う気があるの? つまらないよ」
鬼は俺を見下しながら言ってきたので
「本当に当てる気があるのか?」
俺がそう煽ると、鬼は顔を赤く染め
「もう死ねよ」
すると、鬼は手を上に挙げると砂鉄が集まり大きな槍を作った
「つまらなかったよ。お前」
そう呟き、槍を投げた。しかし、それは俺を貫くことはなかった。なぜなら
黒槍を断ち切ったからである。鬼は驚愕した。
「なっ! き‥斬られた、僕の自信作を!」
慌てて、もう一度黒槍を作ろうとしたが
「遅い!」
鬼の頚は宙に舞い、灰となって消えていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
鬼が灰になって消えてから少し経った後、鴉が俺の頭上を舞い次の任務を教えてきた。
「カァー! 任務ご苦労ォ! ご苦労ォ! 次の任務は南南西ェ! 南南西ェ!」
その知らせを聞き、俺は南南西に向かい走っていった…
戦闘シーンを書くのか難しい…
今回の鬼
砂鉄鬼
土の中にある砂鉄で武器を作ったり、撒き散らしたりする血鬼術
お気に入り登録していただいた
雪片二型様 空手マン様 ruko様 千代反田様 ゆきぞら様
Divid様 ありあ39916221様 ニカルル様 ワン01様
猫耳響様 山也様 藤岡様
本当にありがとうございます。
とても励みになります。
次回 下弦の鬼