提督との初デートに空回りする蒼龍のお話。

なお、本作の作品+ネタ作品+別カテゴリ作品はPixiv様にも掲載されています。
こちらに投稿される作品はすでに投稿したものを一部修正、書きなおしを行ったものになっております。

ハーメルン様は初心者ですので、不手際が多数あると思いますが、それについては追々直しますのでご了承ください。

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蒼龍「空回りの初デート」

 明日は提督との素敵な初デート!

そうやって意気揚々とベッドに飛び込んだのが昨日の私だったけど……気が付けば時計の針は午前6時。だけど私の目はギンギンに覚めている。予定の時間まではまだ3時間以上あるけど、私の心はすでに残り5分前のような余裕の無さで言いようもない不安を感じていた。

(うわぁーーーー!!どうしよどうしよ!!)

 思い返してみるとあれは一昨日の夕方の頃。

 秘書官業務も終わって一休みしていたとき、私が勇気を振り絞って提督を誘って、それがOKになんてなるものだから(いい意味だけど)、その日から私はずっと部屋のタンスの前で今日着る服を何にするか悩み続けていたものだ。

 昨日なんて鏡と洋服タンスを行ったり来たりで同室の飛龍にジトッと怪訝な目で見られていた。結局深夜2時に飛龍の拳骨と共に決まって今日を迎えたわけ。

(落ちつけぇ、落ち着け私)

そうよ蒼龍。ただ洋服に着替えて普段より“少し”気合いを入れて化粧をするだけ。何も焦ることなんてないのよ。いつもどおり。クールになるのよ。

とりあえず、起き上がって顔を洗わなくちゃね。

 ゴチン!!

「あうっ!!」

 体を起こしたら2段ベットの上部分に頭を強打した。すごく痛い。敵の魚雷より痛い。飛龍の拳骨よりは痛くない。けど頭の熱を冷ますにはちょうど良かった。

二段目で寝てる飛龍に起こしてないか顔の上半分だけを覗かせると、まだぐっすりと眠っている姿を確認。よかったと一安心。

(よし、改めて顔を洗うか)

 だけどどうしてだろう?

 顔を洗うために向かう足は自然と温泉浴場の方に向かっているのだ。

 

 

 

「………………」

 飛龍が実は起きていたことなど知らずに。

 

 

 さて、ここで私たちの提督について説明しよう。

提督は若くして中将の地位まで登りついた超エリート。父親が海軍の中でも相当偉いみたいなんだけど、提督はその親との縁を切って、自分の努力だけでここまで昇進したみたい。    

提督は部下である私たちに優しく接してくれる。作戦もよくて、私たちが大破して戻ってくることなんて滅多にない。もちろん轟沈者はゼロだ!

 そういったものだから金剛さんや酒匂ちゃんを筆頭にする提督LOVE勢が非常に多い。

何人かは夜戦に持ち込もうとしたけど他の人に捕まり“オシオキ”を受けるハメになる。空母勢だと一航戦の二人がオシオキを受けたけど、何をされたのかは頑なに口にしなかった。(青い人のほうは顔まで真っ青になってた。そこまで青に拘らなくても……。)

 だからこうしてデートに誘えるのなんて天文学的な確立で、まだほんの数人しかできていない。しかもこれは泊まりさえなければLOVE勢公認の合法となっている。

 だからこそ!私はここで皆よりも一歩リードをしたい!

私の心は燃えていた!

 

 

 

燃えていたのだけど……

「何も1時間も前に来なくてもいいじゃん私……」

現在私は朝早くでガランとした鎮守府前の公園のベンチで一人ポツンと座っていた。

(いやそりゃあ待たせるより待った方がずっといいよ。でもさ、いくら何でも1時間も前から待ってると思う?思わないよね普通)

 ほんと始まる前から空回りしっぱなし。ひとつ溜息をついて肩を落とす。これじゃあ先が思いやられるよ。ほんとにもし提督に恥ずかしい姿を見せてしまったらどうしよう。そうなったときは艦装を外して海の真ん中で深海棲艦のエサになって生まれ変わったときにもう一度会いましょう。そして二人で結婚して夫婦円満な家庭を築きましょうね提と「お、やっぱりいたか蒼龍」……へ?

「て、提督!?」

「よっ」

提督は片手を小さく振って答える。あ、私服の姿もとってもかっこいい。

……ってそうじゃない!どうして!?まだ時間まで全然あるのに!!

 提督はそんな私を見越したのか先に答えを言ってくれた。

「起きて窓から外を覗いたら蒼龍が見えてな。まさかとは思ったが、早く来て正解だったみたいだな」

 そういってあたふたしている私を後目に提督は私の横に立って微笑を浮かべて言った。

「まだ朝食ってないだろ?俺も腹減ってるからとりあえず街行って何か食うか」

「あっ、はい!」

 私は勢いよく立って提督の横に立って一緒に歩き始めた。

と思ったけど提督はすぐに何かを思い出したように立ち止まった。

 どうしたんだろ?と提督の方を振り返る。

「言い忘れていたけど、その服。かなり似合ってるよ」

「…………」

 

 

 顔カラ火ガ噴クト思タ。ボーボーッテ。

 

 

 

 朝早くから開いている喫茶店で軽い朝食を済ませた後、私たちは街中で特に賑わう繁華街に来ていた。何でも提督は普段こういった所にはあまり来ないらしい。ならばと、ここによく飛龍と二人で遊びに来る私がリードして案内しなくちゃね!

 といっても女性服のお店は提督も気まずいだろうから私お気に入りの宝石店に来た。ここではモノから金額まで多種多様なものがある。よく訪れるけど見てて飽きないところだ。

「へぇ、綺麗なものだ」

 提督もご満悦な様子で、ガラスケースに入っている商品を一つ一つじっくりと見ていた。

 でも提督?そこは特に高い商品のコーナーですよ。私じゃあ一桁足りないくらいには……。

(…………あ)

 しまったぁーーーー!!!さっきの喫茶店で緊張を解そうと水を飲みすぎたー!

 マズイマズイマズイ。もうだいぶ下まで来てる。あとは引き金を引けばすぐに飛び出すくらいには……。

「あ、あの……提督、ちょっとスイマセン……」

「ん?ああ、待ってるよ」

 察してくれてよかった。いや、まったくよくないけど!

 私は急いでそこから離れて、コンビニに入って済ませにいきました。どうしてこの店にはトイレがないのよ!

もう、散々だなぁ……。

 

 

 

 それから私たちはぶらぶらと色々なお店に立ち寄りました。特筆することと言ったら提督はゲームセンターに行ったことがなかったらしく、ならばと意気揚々と行けば、そこで提督はガンシューティングでハイスコアを出してしまった。隣でその姿を見ていたけど、ゲームをしている提督の方が気になって、横顔に見とれていたら終わっていた。スコアが出たときにちょっと誇らしげになった顔に思わず口元がにやけてしまった。

 その後なんと提督から二人でプリクラを取ろうと言われました!提督と大接近で取った写真は加工のおかげで変にはなっていなかったけど絶対私の顔は真っ赤だったはずだ。写真の中の私は恥ずかしそうにしながら満面の笑みを浮かべている。この半分に分けたプリクラの写真は一生の宝物にしょうと、そっとポーチにしまった。

 

 

 

 

 そういうことで今はお昼。私おすすめのデザートのおいしいレストランに入り提督はサンドイッチのセット。私はケーキセットとあとパフェも注文した。えっ、多い?そんなことないよ?でも仕方ないじゃん!おいしいんだから!前に飛龍と行ったときは更にもう一つパフェを注文したんだよ。その時に飛龍は「栄養がすべてそこに向かうのか……」と私の体の1部分を凝視していた。別に飛龍も小さくないじゃんと言ったらテーブルの下から足を蹴られた。

 食事中にこの後の予定を話し合ってたら、提督が見たい映画があるみたいでそれを見に行くことに決まった。私も気になっていた恋愛映画で今から楽しみ。でも提督が恋愛映画に興味があったことにちょっと意外。そういうと提督は物語の内容に興味を持ったらしい。

 えっと確か内容は……。

 

 

 

≪映画上映≫

 

 

≪上映終了≫

 

 

「ぐすっ、えぐっ……」

 こんな感じで私はさっきからずっとベンチで泣き続けています。内容は戦争物で、最後は恋人を守るために戦い、そして最後に彼は彼女の前で死ぬお話だった。その辺から涙が出て、最後の手紙のシーンで大号泣した。手紙と一緒に指輪が入っていたのはズル過ぎる。

 提督はそんな私が泣き止むのを、頭を撫でながら待っていてくれていた。いつもは顔を真っ赤にしてるけど、今はこの感傷の方が勝っていた。

 

 

 

 

「提督はあんな風にならないでくださいね」

 私はようやく泣き止んだ後にそう伝えた。

「ん?おいおい、俺はいつも見送る側だよ。むしろ蒼龍たちの方が心配だって」

「それでも!提督が先に逝くのは嫌です」

「…………約束するよ」

 提督は私の手をギュッと握ってくれた。それだけで私の心はとても温かく心地良いものになった。

 

 

 

 あれから意外なことに今度は提督から入るよう促された店はなんと女性服の専門店だった。気まずくないですか?と聞いたのだけど、別に不慣れじゃないとあっけんからんと言ってのけた。その澄ました表情が私にはちょ~っとだけ面白くなかったから、ここでドレスアップした一つ上の私の姿を見せて驚かしてあげよう。

 

 そういうわけでお店の中。

「蒼龍って下はどういったのが好みなんだ?」

「え?下って……?」

「いや、別に変な意味じゃなくてスカートやパンツとかあるだろ。どっちが好きなのかなって」

「あ、ああ!そういう意味でしたか!」

 まったく、私は何を考えているんだ!もう少しで危うく紫とか言いそうになったじゃない!

 そんなことを言ったら幻滅に一直線だ!気を付けないと。

「えっとですね!私は、やっぱりミニスカが好きかな~って。……それに私、お尻大きいからズボンが似合わないですし……」

「別に似合わないことないだろ?大きいならいっそのこと足全体のラインを見せるものでも買ったらどうだ?存分に見せてやれ」

「あぅっ……それは、それで恥ずかしいですし///」

「そうかい」

 提督とそんな会話をしながらも、提督は次から次へと服を選んでは品定めをしている。目は真剣そのもので、時折私の方を見ては服に目を移している。

 そんな時、私は違うお客さんと目があった。私よりも背の高い女性の二人で、露出が高くてキャピキャピしてるし、見るからに遊んでいそうなギャルだ。あくまで私の偏見だけど……。

 その女性二人は私を……じゃない。私の隣にいる提督の方をみてひそひそと話している。

 なんだか嫌な予感もするけど提督は今日は私のなんだから!二人には渡さないよ!

 

「……どうした蒼龍?目が細くなってるぞ?」

「へ?あ、いえいえ!なんでもないです!」

 いけない。この目は提督には見られたくなかった。

「そうか?まあいいか。とりあえず、この服を試着してみてくれないか?」

 いつの間にか提督は上下共に服を選んでいて、それを私の方にかざしながらそう言っている。それに何かものすごくセンスの良い服の組み合わせだし、これ私が着たら馬子にも衣裳になっちゃうんじゃないのかな?もうさっきまでの自信がなくなっちゃったよ。

 その言葉はギリギリで飲み込んで、提督に連れられるまま試着室に押し込まれた。

鏡に映る心配そうな今の私。手に持っているのは提督が選んでいただいた服。

「……よしっ!」

 一つ自分の頬を叩いて気合を入れて、いざ尋常に勝負!お前ら(服)に負けたりなんかしないぞ!

 

 

「ど、どうですか……」

「ほぉ……」

 いざ提督に見せるとなると尋常でなく恥ずかしくなって、試着室のカーテンも恐る恐る顔を出して、提督がいるのを確認してからまたゆっくりと開けた。

 別に露出が高いとかそういうのではないけど、提督が選んだ服という言葉だけで十分なほど私にはプレッシャーがかかるのだ。

 提督は感慨の言葉を呟いて私をまじまじと見る。

「あ、あんまり見ると恥ずかしいですよ」

「おっとすまない。俺の想像以上に似合っているものだからな」

「ほんとですかッ!?」

 ついつい食い気味に提督に問い詰めてしまう。落ち着かないと。

「ああ。かなり似合っているよ。ちょっと待っていてくれ。それに合うアクセサリーを取ってくるから」

 そういうと颯爽と提督は私の前からいなくなっちゃいました。

 試着室から顔を出してみると、提督はもう店のだいぶ奥の方に行っていた。

「……って別にアクセサリーなら私ここにいる必要ないじゃん!」

 私は自分にツッコミを入れて、すぐに試着室を出て……立ち止まった。

 そういえば今の私は店の服を着ている。

 このままじゃダメだから試着室に戻って、さっきまでの私の服に着替えなおさなくちゃいけない。

「あぶないあぶない……」

 もうさっきまでの緊張は無くなって、私はゆったりと着替えを済ませた。

 

 

「……あれ?」

 着替えを済ませて提督の方に向かっていたら、さっきもいたギャル二人が提督と話していた。

 嫌な予感をしながらも、自分の気配を消して聞き耳を立ててみる。

「ねえイケてるお兄さん♪ちょっと私たちと一緒にアソばない?」

「とっても楽しいよ~。アタシたちとゴーゴー!!♪」

 やっぱり逆ナンだぁーー!!?

 初めて見たけど、どうしてその相手がよりによって提督なのさ!いや確かにイケメンなのは間違いないけど!それにさっきまで私と一緒にいたのを見ていたよね!?

「悪いな。ツレがいるんだ」

 そう提督はクールに返す。よかった。ないとは思っていたけどそのままついて行ったらどうしようかと思った。

 たぶん私はショックで轟沈します。沈みます。深海棲艦化します。

 でも、ギャル二人はそう言っても引き返そうとしない。むしろ私の提督に腕を絡めてきた。

「えぇ~いいじゃんいいじゃん!アタシたちのほうが楽しいよ~?」

「そうよ。私たちと、熱い夜を過ごしましょうよ?」

 いえ、まだ昼間です。

「…………」

 そういえば、私はまだ提督とあんなふうに抱き着いたことないなぁ。

 …………ズルいなぁ。

「悪いな。俺は二人にはたぶん見合わない男だからな」

 そういうと提督は器用に二人から離れて、いつの間に気づいていたのか私の隣に立って私の肩をそのまま抱き寄せて、続けざまにこういった。

「俺にはコイツに見合うくらいが十分だからな」

「て、提督……?」

「……そう、残念だわ」

「またねお兄さん☆今度会うときは私たちに見合う男性になっていてよ♪」

 意外と諦めのいい二人はそれ以上何かを言うでもなくお店を出て行った。

 残されたのは、提督、提督に抱き寄せられている私。

「て、提督……?」

「すまないな蒼龍。嫌な思いさせたか?」

「……いえ、なんだか……嬉しかったです」

「そっか」

 その後も買い物は続行して、私はあの服と綺麗なアクセサリーを買ってもらいました。

 

 

 

 ディナータ~イム!

 

 なんだけど今私の前にはテレビでしか見たことのない光景が移っている。ここはフランス料理のレストランだけど、まず部屋の豪華な内装に圧倒されて、メニューもコース料理らしくてお酒しか注文してない。料理は出てきたけどフォークとナイフの使い方は数回教わった程度だから、私の食べるそれはとてもぎこちない姿になっていたと思う。提督の見よう見まねでやってはいるけど全然優雅にできない。これが熊野さんとかならもっと綺麗にできるんだろうけど、自分の庶民っぷりに肩を落とした。

「そんな肩肘張る必要なんてないぞ?自分の食べやすいように食べればそれでいい」

「……ほんとですか?」

「ああ。それにそっちの方が美味しいはずだぞ?」

提督がそう言ってくれてから、少しずつ自分のペースを取り戻しつつあった。

「この白ワイン美味しいですね。普段あまり飲めない分貴重です」

「そっか、俺の部屋にはあるけどたしかに少ないな。鳳翔か間宮に発注を頼むかな」

 提督はそこで一旦区切り赤ワインを一口飲む。提督はすでにビールを2杯。ワインを4杯飲んで少し酔ってるみたいで顔が若干赤い。(知らない人ならわからないと思うけど)

「そっちのワインも一口飲ませてくれないか?」

「あ、はいどうぞ!」

 そういって自分の飲んでる白ワインを差し出して、代わりにと提督の飲んでる赤ワインをいただいた。あ、飲みやすい。

(あれ?これって……)

 間接キスだ!

それに気づくとすぐに顔が熱くなったけど、今の私は酔ってるから驚きよりも喜びが勝ってしまい、ついニヤけてしまう。

「こっちも美味いな。ん?どうした蒼龍、顔が緩んでるぞ」

「ふふ、とてもいい気分だからですよ♪」

「なるほど、それなら仕方ないか」

 なぜかもう一度乾杯をして二人とも一気に飲み干して次のワインを注文した。

 

 

 

「ん~~!!夜風が気持ちいいー!!」

 とても満足な食事をとって二人は海岸沿いを歩いている。タクシーを呼ぼうかと言われたけど、私がもう少し二人っきりを堪能したくてわがままを言った。

 鎮守府まではあと少し。ルンルン気分で先を歩く私と少しあとから歩く提督。背景は月が照らす海で、遠目からみたら、たぶん私たちの姿は絵になるんじゃないかなと思う。

「蒼龍、一度そこのベンチで休むか」

 提督が指す方向には一つ海の方に飛び出した休憩スペースがあった。私もはいと答えて二人でベンチに座る。二人の目の向こうには月の明かりが照らす水平線がいつまでも続いていた。

「今日は楽しかったか?」

「はい!とっても楽しかったです!」

 こんな楽しいことこれ以上あるのかと思うほどに。それ程に今日は途中空回りもしたけど楽しい思い出でいっぱいだ。

 私の手にはあの時提督から買っていただいた服が大事に仕舞われている。

 ブローチには提督と一緒に取ったプリクラ。

 どれもこれも、私にとっての宝物だ。

「そうか。なら最後にプレゼントだ」

「へ?プレゼント?」

 なんだろう。提督はポケットから直方体の小さな箱を取り出した。一瞬指輪の箱かと思ったけど、それは立方体のはずだからそれはない。

「開けてみていいですか?」

「ああ、気に入ってくれると嬉しいんだが」

 若干自信無さげに提督が答える。私はパカッと開くとつい「わぁ……!」と感慨の言葉が漏れる。そこには綺麗なペンダントが入っていた。ペンダントには小さい写真を入れるスペースがある。月の光がペンダントを照らして、ペンダントはその光を跳ね返す様に銀色に輝いている。

でもこのペンダント、ものすごく高そうなんだけど……ってまさか!

「も、もしかしてあの宝石店でですか!?」

「ああ、折角の思い出だしな。ほら」

 そういうと提督はもう一つのポケットから全く同じペンダントを取り出した。

そして提督は徐にあの時とったプリクラをそのサイズに合わせて切り、ペンダントに填め込んだ。

「蒼龍もどうだ?特に気に入った写真を入れればいいさ。飛龍と撮ったものでもいいしさ」

「い、いえいえ!私もこれにします!!」

 私も慌ててプリクラを取り出すと慌てたせいかプリクラを落としてしまった。それを提督が拾うと、さっきと同じように切って填め込んでくれた。

「これでよし。蒼龍、こっちを向いてくれ」

「は、はい!!!」

 すでに私の心臓は振り切れる寸前である。提督は私の首に手を回すとそのままネックレスを付けてくれた。

「よし、やっぱり似合っているな。今日買った服ともたぶん似合うはずだぞ」

 提督は満足げにそういった。ってそういえば!!!

「ててて提督!?私、なにも準備なんてしてなくて!!あ、そうだ!!ほんとにありがとうございます!!」

 ずっと頭が回ってなかったせいでお礼まで忘れてた。私からは何も買ってないなんて、なんで抜けてたんだよ!私のバカ~~!!

「いいってそんなの。俺がしたくてやったことだ。喜んでくれたならそれでいいよ」

「それはもう!ほんとにありがとうございます!」

 何度お礼を言っても足りない!このペンダントは自分の命と同じくらい大切にしよう。

提督は一つ息をつき、海へと視線を向ける。

 少し雰囲気が変わったような気がする。提督は神妙な目をしていた。

「蒼龍たちはいつも死線と隣り合わせだ。いつも俺は不安で仕方がない。もしもの事があったらってな……。でもお前たちが戻ってきたときの、ただいまのその一言で俺は救われる」

「提督……」

「皆は兵士や道具じゃない。俺たちは家族だ。だから誰一人沈ませない。誰一人、不幸になんてさせない」

 提督はもう一度私を見る。私の一番好きな、優しい瞳で……。

「蒼龍は、今幸せか?」

 私ははっきりと「はい!」と答えて提督に抱き着いた。

 

 

 

 その日の夜、部屋に戻ってから飛龍に散々からかわれた後、私はベットに着く前にペンダントをじっと見ながら今日の事を振り返っていた。提督の言葉の「皆家族」。その言葉で初めて私たちの見方がわかった。それなら他の皆がいくらアタックを仕掛けても靡かないのは当然だった。

 飛龍にはこの話はしていない。これは私の胸の中にそっとしまっておきたかったらから。

 私はペンダントを大事に机にしまおうと思ったけど、手放したくなくて首にもう一度つけて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 今日は、いい夢が見れそう……。

 

 

 

 

 

 

 

 追伸

 あの日から少しした後、飛龍と買い物にいったらあの宝石店で自分の付けているのと同じペンダントが売っていました。

 桁が6ケタで本気でびっくりしました。

 

 



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