ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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無価値な命

「では、お話と行きましょう」

 

「…なんってのかはよくわからんけど、とりあえず、これ」

 

首に掛けていたヘッドフォンを付けるモブゴッドイーター …ムービーで死にそうな顔してるわ

 

それは(ゴベパ)?」

「おっ、聞こえる聞こえる!

これはな、博士につくってもらった翻訳機なんだよ」

 

そう、それはすごいわね(ゴグ、ゾベパズゾギバベ)

 

「スゲェだろう?ウチの博士は…ちょーっと残念なところあるけど

そんでもすっげぇんだよ

…まぁ、とりあえず、だな」

 

「……」

 

タケが戦闘態勢を取ったのを目で制して、地下で奇襲に備えているリオくんに対しては左足で地面を軽く叩いて伝える

 

それで、それを話にきたの(ゴセゼ、ゴセゾザバギビビダン)?」

「いや、違うよ、そうじゃない

それだけじゃなくてな

お前さん達は他の同種と違って、明確な言語の使用が認められていたから

もしかしたら、意思疎通が出来るんじゃないかって言われててな?

そんで試してみたんだよ」

 

「…そう(ゴグ)

 

茶髪ロン毛のモブイーターは

ヘッドフォンをひけらかすが、どうもこちらを舐めているような表情をしている

これは…よくないかな

 

私達を(パダギダヂゾ)どうしようと(ゾグギジョグド)?」

「別に?意思疎通の証拠さえ取れれば、あとは知ったこっちゃないよ

別段討伐しろとも捕獲しろとも言われてないし、『俺が生還した』っていう事実が一番の証拠になるしな」

 

神機手放して帰ってきたGEなんて殆どいないしな〜と軽く笑うモブ

 

別に私達以外にも(デヅビパダギダヂギガギビロ)脅威はあるでしょう(ギョグギパガグゼジョグ?)

 

暗に『安全は保証しない」と言ってやってもやはり彼の表情は崩れない

 

「大丈夫大丈夫」

 

…何か策がある…か?

 

「俺は帰るアテがあるから

実は仲間が近くまで来ていてね」

 

そう(ボグ)

 

相変わらず神機から3歩以内の距離を維持しているモブは軽くいっているが

私はタケに目線で指示を送り

タケは腕を組んだまま爪先で軽く地面を叩く

 

2-2-3

 

最初の2が

GE、これが1なら緊急招集、3ならアラガミ

 

続いての2が

探せ、1なら攻撃、3なら全速力での撤退

 

最後の3が

人数を示す3

 

人数はGE部隊が四人1チームだから隠れているのは三人、という予測なのだけれど

問答無用で攻撃とはいかなくてよかった

 

見つけた返事は来るかしら?

 

さて、本題と行きましょう(ガデ、ゾンザギドギビラギョグ)

 

「あいよ」

 

モブは、いや

彼らゴッドイーターを走狗とするフェンリルらは、何を望むのか

何を行おうとするのか

それは原作の未来に通じるのか否か

 

私は知りたい

だからこそ、あんな罠にしか見えないメッセージに乗ってまでここに来たのだ

彼らの要求を聞いてみようじゃないか

 

話はそれからだ

 

 


 

今日、多分俺は死ぬ

なんかよく分からないが、俺はとにかく神機の適合係数が低くて、

うまく神機をあつかえてない

『弱いゴッドイーター』だ

多分支部長は俺を使い捨てる気なんだろう

 

最近はゴッドイーターの死亡率も、着任率も下がってきているとはいえ高い

俺が一人で任務を受けて、それで死んでもどうせ誰も不審には思わないだろう

 

クソッタレ、誰も気づかずにあの支部長の野郎にいいように使い捨てられるのが定めってわけか

 

だが、もし

『知性を持っている可能性がある』とかいう情報が本当なら、俺は生還する

それに賭けるしかないだろう

 

 

そう、思っていた

 

〈それで、貴方達は、私たちに、何を求めるのかしら?〉

 

翻訳機から聞こえる声は

10歳前後の少女のような声

相手のサリエルα(進化個体)の見た目通りだ

こんな声を持った少女がアラガミだなんて信じたくないが、その能力は疑いの余地なく高い

 

通信によると、ほぼ常にシユウと共にいて、たまにコクーンメイデンの群れと合流するらしいが

このシユウもまたα(進化個体)らしき能力を持っているそうだ

 

確認したところによると

どうも体がクアドリガ並みに硬いらしい

 

それだけであってくれるならまだマシな方だが

 

「俺たちフェンリルが求めるのは

アラガミの掃討、故に人類の生存圏からの退去を要請する」

 

〈軽く言ってくれるけど…拒否一択ね、それでは我々が生存できないもの…それに、私達は人類の味方ではないのよ?〉

 

「………」

 

相変わらず沈黙したままのシユウに目を遣り、奇襲を警戒しながら通信先へと意識を遣る

 

「だ、そうだが?」

 

《ならば仕方ない、穏当な手段で確保ないし排斥出来ないのなら、強硬手段を以って排除する他にないだろう

現在をもってサリエルα個体、及びシユウα個体を最優先攻撃対象に指定する》

 

支部長の声と共に、通信が途絶する

どうも俺は切り捨てられたらしい

 

「……だってよ、はぁ……」

 

一度深く、ため息をつき

神機を手にする

 

「…べつにやる気は無かったんだけどなぁ…」

 

〈私達だって、戦いたい訳じゃないのよ…それじゃあ〉

 

サリエルが宙に舞い上がり

シユウが震脚と共に手を開く

 

戦闘態勢に入った

 

その瞬間

 

〈またね〉

 

サリエルαの両手が瞬き

爆発音と共に水煙が視界を奪う

 

「!…クソッ!」

 

味方が来ているなんてハッタリは、やはりとうに見抜かれていたらしい

あの爆発なら自滅していてもおかしくはないが、まるで慣れているかのように滑らかな動きだった、その可能性は低いだろう

 

「…帰って報告書、上げるか」

 

俺は極東支部第5部隊、

偵察捜索隊のエータ3

 

神機の銘はBeilaru(ヴァラール)

ただのゴッドイーターだ


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