ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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それぞれの道

……なに?

 

何かが起こった、それはわかる

巨大なアラガミに似た反応、膨大なオラクルの噴出と固着を感知した

それ自体は大した問題ではない

大型アラガミが唐突に出現、なんてのは隠蔽能力(ステルス)持ちならば良くあること

しなし、さっきまでは多少の群れが屯している程度だった場所にそれが出現したという事実の方がよほどに重要で、かつ問題だった。

 

大型か……

 

どうにも薄く広がった気配

ステルス特有のふっと消える感覚ではなく、霧散したオラクルに近いそれ

……どうも罠臭い

だが、それは確かめなければわからない

原作に存在しないイレギュラーであるなら、それを取り除くのも考えるべきだ

たとえ些事であったとしても神機使いならざる民間人にならば十分な被害を出し得る

我々はアニメ版主人公のお姉ちゃんの死因を忘れてはいけない。

 

「……ギズザ(いくか)

 

私は単独で出撃し、地を駆け抜けて

目標地点へと急いだ。

 

 


 

「よし、よし、よし……」

 

安全と十分な効果のための指差し確認を終えて、第六部隊A分隊、葛城が発砲したのは

空中へと真っ直ぐに飛翔し、滞空する大きな球体型のバレット

例の悪名高き弾丸である。

 

空中にしばし留まり、周囲に供給されたオラクルエネルギーを吸い上げ

徐々に巨大化していく氷の球体が輝く。

 

「総員伏せろッ!耐ショック・耐閃光姿勢!」

 

その弾の発光を目撃した数人は直ちに退避し、または耐えるために身を隠し、衝撃に備え

そして今、実り育った果実が落ちる。

 

「メテオ」

 

地へと落ちた氷の球体から膨大なエネルギーが放出され、砕片諸共に爆発し

凄まじい衝撃波を放つ

その爆発半径は距離にして2000メートルを上回り、巨大なクレーターじみた地形を作るほどの力が解き放たれた。

 

「……ふぅ〜〜……」

 

大きく息を吐いた男は、粉微塵に消したんだコンゴウと小型の群れに視線を向けて。

 

「任務、完了」

 

群れの殲滅を宣言した。

 

 


 

「死にそう」

 

一方、任務開始早々にアクロバットじみた飛行を強いられた秋人隊長はロングブレードを勇ましく担ぐ余裕すらなく、空中で必死に吐き気に耐えていた。

 

「我慢してね、もう直ぐだから!」

 

「おぅ……」

「秋人くん、本当に我慢してよ?

ヘリで吐かれたら困るから」

 

副隊長である成美ですら扱いが雑になり気味である、隊長としての威厳というものが足りていない。

 

「はぁ……大丈夫かしら」

 

G耐性は成美の方が強かったようだ……。

 

 

ショボくれた隊長を乗せてヘリは飛ぶ

もうどこへ向かっているのかさえ、誰にもわからないまま。

 

 


 

「……ほう、来たか」

 

戦車(クアドリガ)たるそれは嗤う

戦士達への賛歌代わりに

戦いの神と呼ばれし者として

戦士達に敬意を評して。

 

 

 

霧のような気配の中で姿を探る

鷹の瞳(ケーロス)からの視線で見つめる

雑魚の群れを討滅しながら突き進んでくる威勢の良いもの、コソコソと走り回る狡猾なもの、一瞬だが凄まじい力を示したもの、

その力の群れの数は6つ

 

「こざかしい子らよ……さぁ来い」

 

濃霧のような茫とした気配の中に隠れながら近づいてくるそれらを

彼は容認した

どう動こうと見えている

狩人と獣、相対するならば正面からだ。

 


 

 

「うっし、行くか」

 

封印状態のロングブレードを担ぎ上げて起動し、雨宮竜胆は宣言した。

 

「ええ」

 

橘咲耶もそれに応じて、自らの狙撃銃型神機を神機封印ケースから引き抜く。

 

「じゃあオレはここで待機してる」

「あぁ〜……先帰った方が良いかもしんねぇな、その辺飛ばれると危なっかしくて困る」

「了解した、先行帰投する」

 

静かなローター音と共に、アナグラに10機しか存在しないオラクルエネルギー対応型ヘリコプターが飛翔し、キャビンが空になったぶん早く去っていく。

 

ヘリを帰して退路を自ら絶った二人は

しかしそれに対して怯える事はなく

前へ、見定めた敵の元へと進んでいく

クアドリガαへの道を遮る全てを薙ぎ払って。

 

「ビールがのみてぇなぁ……」

「もぅ、作戦中くらいそれやめてよね」

「あぁ〜わかったって、もう言わねえから

……っと、お出ましだ」

 

会話を打ち切るその言葉と同時に湧いてきた群れはコクーンメイデン、それも一般の個体ではなく炎属性に変異した堕天種だ

メイデン種の中でも攻撃能力に秀でる変異型である。

 

しかしもとよりサクヤの握るスナイパーライフルは氷属性、相性は有利

そしてリンドウの盾も炎属性には十分な耐性がある、二人の連携練度を鑑みるまでもなく、コクーンメイデン達の辿る運命は明らかだった。

 

「っしっ!」

 

横薙ぎに振るわれるブレードがコクーンメイデンを切り裂き、そのコアを抉り出し

反撃よりも早く霧散させる

群れの一体がやられたことで群れ全体が攻撃態勢に入り、幼児を象ったような頭部が奇妙に変形し、オラクルエネルギーを凝集したビームを放つ

よりも速く装甲が展開され、甲高い音だけを残してマグマの熱量は霧散した。

 

「こいつら大したことねぇな」

「油断しないの、ほら!」

 

パキン、ひび割れる音と共に凍結したコンクリート、その塊を盾としてコクーンメイデンの砲撃を受け止めたサクヤは狙撃弾を連射する。

 

「うぉおおぉぉお!」

 

神機から大顎を展開したリンドウが一体を丸ごと捕食して力へと変え

それをアンプルに封印してサクヤへと投げ、受け取ったサクヤが神機へと挿入れたと思えば全てを氷の弾丸へと変えて撃ち尽くす

気づけば20は居たアラガミの群れは無くなっていた。

 

 

「もう……油断も隙もありゃしないんだから」

「まったくだ」

 

全てのアラガミを根絶するまで、世に真の平和はない

この真理を噛みしめながら

二人はそれでも今の為に走り出した。


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