ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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西暦2068年4月9日午前10時15分

「うぉおおおぉおおおっ!」

 

ロングブレードを振り払い、コクーンメイデンを薙ぎ

その背後から出現してきたオウガテイルも纏めて叩き斬る、しかし遅い。

 

溢れるように出現してくる敵の数に対処が間に合っていないのだった

しかしここに湧いているのは雑魚ばかり、真打であろう大型は出てこない

つまりはそう、足止めされているのだ。

 

「クソッ!」「うるせえ!」

 

アサルトライフルの弾では火力が足りない

十分な威力が発揮できなければ狩るのには時間がかかる、そしてその時間はすなわち自分達の命そのもの、このまま遅滞戦闘を続けられたらその内に偏食因子が途切れてしまうし、そうでなくとも肉体的な限界が出てしまう

そもそも常に露出している腕輪という致命的な弱点を抱えた神機使いは長時間の連続戦闘に弱いもの

このままでは削り負けてしまう。

 

「あぁもう!どうすりゃ良いんだよ!」

「うるせえ俺にいうなっ!」

 

たとえ取るにたらない小物ばかりでも、津波の如き群れなれば即ち恐るべし

しかし、二人は同時にそれを狙った。

 

「スタンッ!」

「シャオラっ!」

 

スタングレネードのマグネシウムが爆発し、急激に燃焼して白炎を撒き散らして視界を奪う

それと同時にオラクルアンプルを連続で投入したアサルトライフルが、本来不可能な程の火力を発揮してコクーンメイデン達を焼き焦がした。

 

「「突破っ!」」

 

爆発性の弾を連射しながらアラガミの群れを突破していくなかでトシオはあるものを見つけ出した、オウガテイルが地面から出現した直後、僅かに覗く地中に煌めく橙を。

 

「おいアレ!」「あァ!?」

 

「やれ!」

「オラァッ!」

 

指差したそこに突き立つは血錆と鉄色のロングブレード、『ブレード序』だ

コンクリに覆われた灰色の地に突き刺さったブレードは、そのまま地面をこじ開けるように捻られ

そこにあった異形を露わにする

 

「なんだこれ!」

「んなもん俺が知るか!」

 

橙色の巨大な球体

彼らには知る由もないが、その正体はアラガミのコア

独自に進化した群体の大型アラガミ、仮称:コクーンヴァンプのコアだった。

 

「コレ壊せば終わるかっ!?」

「知らんっ!でも……」

 

「「試す価値はある!」」

 

剣を振り上げてゼロスタンスをとり、深く呼吸してスタミナを取り戻すアラタと

銃を構え直して弾種を各属性の基本弾へ変更するトシオ

二人の神機遣いが攻撃を再開した。

 

「まずは属性を!」

 

火・氷・雷・神、四種類の属性は大型アラガミならば必ずと言っていいほど、どれか一つは弱点となっている。

 

それは『属性特化』という現象で、どれかの属性に寄った偏食因子はその属性に対しては耐性を有し、反対にいずれかの属性を弱点とする事になるのだ

まれにこの原則に対して喧嘩を売るような輩もいるが、それにしても弱点が一切ないというわけではない。

 

「うぉらぁぁ!」

 

氷通常弾、炎通常弾が連射され

炎の赤と氷の蒼が橙色のコアを照らす。

 

「ダメだ!」

「ふんっ!」

 

裂帛の一声と共に突き出されたブレードがコア表面へと突き立ち

そのまま貫こうとするも、あまりに偏食因子のランクが違うのか跳ね返されてしまった。

 

「クソッ!」

 

今度はトシオが神属性の弾を連射すると、わずかに怯むような動きを見せたコア

それに味を占めて神属性弾をさらに撃ち込もうとしたその時

 

「トシオッ!」

 

それは唐突に背後から現れた。

 

 

剣のように鋭く、盾のように硬く、革のようにしなやかで

とても大きな、棘の群れ。

 

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

咄嗟に反転し、それを視認したトシオは身を翻してこれを躱すが、しかし遅い

鋭く硬く、大きな針が体をかすめ

致命的な傷を与えた。

 

「トシオォッ!」

 

ゴッドイーターの、ゴッドイーターたる所以

神機を握り、それに適合し

アラガミの力を制御する器官

即ち腕輪の破損、それはまさしく致命傷。

 

「クソ……やられた……ッ!」

 

右腕に繋がる枷であり命綱

ゴッドイーターたる証にして二度と外せない呪いの腕輪がひび割れる。

 

「トシオ……!腕輪がッ!」

「うるせぇ!」

 

スタングレネードを地面に叩きつけて爆発させ、そのまま隠れるようにして距離を取るトシオ

そう、彼はまだ諦めてはいなかった。

 

「そいつの弱点は神属性だっ!

情報だけでも持ち帰れ!」

 

腕輪を割られたまま、トシオは神機を握りしめて吼えた。

 

「俺がこいつを道連れにしてやる」

 

トシオの神機から神属性爆発弾が連射され、スタングレネードの影響から復帰してきた棘針を吹き飛ばす。

 

「早く行け!俺を無駄死にさせるな!」

 

その声に背を蹴り出されるように

俺は先を急いだ(トシオを見捨ててしまった)


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