ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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熾烈な闘い(低次元)

「…ニュー…」

 

擦り寄って来るアバドンにそっとツノを向けて…そいやぁっ!

 

「ミュッ!?」

私渾身の一撃は、見事にアバドンの下を通り過ぎて、慌ててカチ上げに移行した私の背中を、アバドンが滑り落ちて行く

 

ギッ(あっ)…」

 

諸君は、『滑り台』という遊具を知っているだろうか?私は写真でしか見たことがないのだが『滑り台』実に直截的(ストレート)かつジョークセンスを感じるユニークな命名だと思う

 

ところで、滑り台の本質とは

重力に従った落下のスリルを安全、かつ低コストに味わう事であると判断している

 

視界が目まぐるしく変わり、重力が肉体にかける負荷が急減少する一瞬とは、フリーフォールやジェットコースターに通じるものがある、と私は考えた

 

ついでに…私のツノの先端から背中の甲殻までは非常になめらかだ、そこにアバドンが乗って、滑り落ちているのだけれど

そこのあたり、なにか感想をいただきたく思う

 

「ミュッ〜♪」

違うそうじゃない

 

楽しそうに擦り寄って来たアバドンに再び照準を合わせて…そいや!

 

「ミッ♪ギュ♪」

 

ジギギギィィィッ(だからさぁぁっ)!」

 

そうじゃないんだよ…私の糧になってくれよ…大人しく死んでくれよ…

 

「ニュ〜」

 

なにやら落ち着く場所を見つけたのか、私の背中に乗るアバドン

 

ニューニュー言っているのが少々腹立たしいけど、それもそれ、まずは

………もう殺すのは諦めよう

 

どうせ懐かれてしまった以上逃げることは不可能、殺そうとしても最速のアラガミの名に恥じない回避で躱されてしまうし、下手をすると付きまとわれる

だったら最初から同行した方が囮代わりにでも出来るというものだ

 

ギィ(はぁ)ギュッ(んっ)?」

 

そして唐突に出現するボルグ・カムラン様

我が目標にして進化系の遥先にいる存在…だと思いたいもの

 

なんだけど…

「ギジィィイッ!」

だからなんでこうなるのさ…

 

取り敢えず私は最近のトレンドに乗った(全力で逃げ出した)

 

「キュ?ミュ〜♪」

ジュグガギィギィ(もう黙ってよ)…」

 

なんなんだろう、アバドンを囮にしようとしても私についてくるだけで役に立たないし、建物の影や裏に隠れてやり過ごしたけど声をあげるし

足手まといにしかなっていない

 

なんならゲームにありがちなオプション『難易度+』のハンデキャラみたいに邪魔だ

 

…どうにかしないとそのうち私が死んでしまう

 

取り敢えず今日はこの辺の小型アラガミを狩って…いや、待ち伏せて飢えをやり過ごそう

 

はぁ…オウガテイル1.2匹なら確実にアイサツ前のアンブッシュからの一撃で殺せるのに…

 

アイサツ前の一撃(不意打ち)で死ぬようなアラガミは未熟であり、実際弱い

アラガミ同士のイクサはそんな未熟者を許しはしないのだ、サツバツ!

 

おっと、先方に見つかっちゃったみたい

「…グルガァァッ!」

「キュクルルルルッ!」

 

オウガテイル…堕天種だ、通常型と違って氷使いの火弱点、多分アラガミを狩っていて最初に属性を意識することになる相手だと思う

…ヴァジュラは除いてね?

 

普通に狩っていると氷装甲火バレットの組み合わせで通常種以上に雑魚なんだけど、無属性とかだと純粋に耐久が上がっているように感じると思う

 

一緒にいるのはザイゴート、通常種だが、これも油断ならない相手

一般人程度ならパックン!な上に(PVで軍人さんを一口にしている)遠距離攻撃が基本戦闘手段であり、アバドン並みの移動速度を持つ、さらには毒持ちという、これまた神機使いが最初に状態異常を意識することになるだろう相手

 

そして、早いし浮いてる

私の大敵といっても過言ではない

…進化先も大型や接触禁忌種が多い、勝利を約束された種族だ

 

なんだ!そんなにおっぱいがいいのか!?おっぱいの差が栄光と悲嘆を分けるのか?

私はそんな格差社会を許さないぞ!

 

「キュフw」

…これ食ってもいいかな?いいよね?よし食おう、売れた喧嘩は食う、これアラガミの常識、

 

「…ギジィ…」

視覚能力に優れるザイゴートに不意打ちは難しい、先にザイゴートを殺してから

改めてオウガテイルにアンブッシュを仕掛けるべきだろう

 

「ミュックルル」

ギュッ(黙って)!」

 

声を上げ始めたアバドンをつついて止め

私はオウガテイルと並走しているザイゴートに向かって走り…オウガテイル堕天の峨眉刺・凍をいつも通り甲殻で受け流す

 

ガチキィッ(冷たっ)!」

 

受け流した峨眉刺に視線を向けず、そのままザイゴートに突進して、オウガテイルの飛びかかりをステップ回避

 

そしてそのまま…空気砲っ!?

 

「ギュッ!」

ザイゴートの空気砲で無様に吹き飛ばされ、距離を開けられてしまった

そうか、ザイゴートは近接対応もできる…私のような片手落ち種族とはモノが違う

 

なめていた、ザイゴートが斬撃雑魚だからって、私が神機使いであるならノーダメが基本レベルの相手だからといって、今の私が欠陥だらけのアラガミであることを失念していた

 

これは失態だ、だけどまだ取り戻せる

 

「ギジィッ!」

一喝と共に姿勢を戻した私は、オウガテイルの尻尾回転を諸に受けて再度転がされ…体制を戻すために再びジタバタする羽目になった

 

「グルルルルゥ…」

 

オウガテイル堕天、その牙は氷を纏い、その爪は雪原に突き刺さる

過酷な環境での生存のために特殊な進化を遂げた強化個体、それこそが堕天種

原始個体(天に許された姿)より逸脱した形を持つそれは、より進化した種族が故に強力、油断ならない

 

「ジッ!」

だが、私もそれは同じ

なにせ、他のアラガミにはないだろう人格がある、野獣の本能しか持たないアラガミとは違うのだから

 

たとえそれが病室から出ない病弱な私であったしても

 

ジュウグガギギ(どうすればいい)…」

 

お腹に突き刺さる峨眉刺を気にせず、強制オラクル活性!お腹すいたお腹すいたお腹すいた!…よし!食べ終わり!

 

突き刺さっていた峨眉刺・凍(キマシタワー)が私の体細胞に食われて消滅、同時に私はオラクルを補給!

 

「ジッ!」

 

補充したオラクルを即座に消費して糸を錬成、それを地面に落として…

 

「グルルオゥッ!」

走り込んできたオウガテイルの足が急に固定され、つんのめって倒れる…私の上に

 

「ビビギジィッ」

…よし、転がされながらも戦闘態勢を取り直せた、リトさんなら出来なかった

アレがもし『結城 O(オウガテイル)リト・堕天』だったら今頃私は半脱ぎ状態で揉みしだかれていただろう

 

…まぁ、揉むほどないのだけれど

 

「…ジュァッ(そりゃぁっ)!」

 

声と共に、オウガテイル堕天に糸をぶっかけ、急いでその全身を固定する

 

完全かどうかはわからないけど

大量の糸を消費してしまったからどのみちこれ以上の糸を使うことはできない

 

ガギゴキュィ(ザイゴートォ)…」

 

ニタニタしていたザイゴートに不意打ち突進、当然のごとく至近距離空気砲で対応してくるが、今度は私だって対策した

 

()()()()()()()

 

ザィッ(ハァッ)!」「ギュルヴァ!?」

 

私を弾き飛ばさんと放たれた空気砲は、即座に、私が召喚したオラクル壁に弾かれ、その中をツノを固定した私が突き進む!

 

原理は不明だけど、多分長剣型神機(ロングブレード)BA『バリアスライド』と同じだと思う

 

攻撃の一瞬、全身のオラクルからかき集めたエネルギーで強烈に活性化したツノが周囲のものを捕食する性質をより強く反映したオラクル細胞の膜を展開、それが接触したオラクルを捕食吸収したのだと推測する

 

まぁ原理なんてどうだっていい

私が知る必要があるのは『食べたい』と願う必要がある事、そして無制限には使えない事、それだけだから

 

「ギュルルルルッ!」

 

人型の下半身を失ったザイゴートは、それでも声を上げながら体を修復して再び襲いかかってくる、

 

ガギザジュゾォ(まだやるの)!?」

 

「グルゥォゥッ!」

 

私の声に応えたのは、ザイゴートではなくオウガテイル堕天、糸を外せていない状況にもかかわらず、咆哮を上げてみせたのか

 

ダメだ、これはどっちかが死ぬまで、いや、食べるまで終わらない

生き残るためには…食う!

 

幸い、大規模に捕食したお陰でオラクルを補給できた、体には余裕がある

それに活性化の影響か、体が軽い

 

「ゴキュィ」

これなら…やれる

 

「ミュックルゥ〜ッ!」

「ギァっ!?」

 

その特徴的な声は、間違いなくアバドンで、それは聞こえてはいけないはずな声

 

どうして出てきたの?!

激しく混乱する私を置き去りにして、状況は動いた、いや、隙を晒した私こそが

私の不利へと状況を動かしてしまった

 

「ギクルルゥ」「ギュゥッ!」

ザイゴートが毒を使ったのだ

毒の煙を直接撃ち込まれた私は、全身の細胞が停止、喪失する感覚を味わい…

 

ギュルヴィァッ(ばぁ〜かっ)!♪」

そのまま空気砲と体当たりで吹き飛ばされた

 

「ゴガァッ…ギィ」

 

何度目かもわからない叫びとともに吹き飛ばされた…今度は身体中ボロボロだ

回復量をダメージが凌駕している

 

このままではいずれ細胞が形象を維持できなくなる、…そうしたら、どうなるの?

私は死ぬのか?それとも無数の細胞の中に分散した『私』がドレッドパイク種として拡散するのか?実験できない以上はわからないけど

 

それでも、今この場に『私』がいなくなるのはマズイ、だから私は勝たなきゃならない

…できるの?この磨耗した細胞で

小型ニ体相手に苦戦して、小型は数が多いのが強みなのに?

 

やる、それしかない

勝機はただ一つ、今この瞬間!

 

グジギジィォォ(限界を…超えろぉ)!」

 

叫びとともに、目の前が紅く染まる

怒り活性化(レイジ)状態へ移行

 

「ガァォァァァアッ!」

 

余裕な風に私に背を向けていたザイゴートは、叫び声に反応して背後を振り向き

跳躍した私と目を合わせる

 

そして

その瞬間、ザイゴートのとっさに出した人の手の様な部位ごと、女性体を貫き

裏の卵も貫通する

 

そして…そのコアを喰らい尽くした

 

ギジィィイッ(よしぃーっ)

 

ヴェノムは未だ抜けないけど

それでも体力補充はできた…よし!

 

そのままオウガテイル堕天(ついに糸を凍らせて破壊したらしい)に向けて突進し

…足に(オラクル)を込めて…

 

ジャァ(ハァッ)!」

 

声をあげながら突撃して、飛びかかりを受ける、そのまま甲殻が凍りつく!?

 

「ミキュウー!」

甲殻を凍りつかされて、そのまま連続の峨眉刺・凍で全身を凍り漬けにされ、動きが止まった私を、オウガテイル堕天が噛み砕こうとしたその瞬間

 

アバドンが体当たりしてきた

 

わたしに

 

「ギュン!」

速度の乗った体当たりとはいえど、アバドンのプニプニボディではさしたる威力にならず

凍りついたわたしの体を地面から引き剥がす程の運動エネルギーを供与してはくれなかった

 

弾性のあるアバドンの体は

私に衝突したエネルギーのほぼ全てを反発に転化して

 

オウガテイルの顔面に衝突

無論たいした威力はないだろうが

目に向かって高速の物体が飛来すれば、咄嗟に回避くらいはするだろう

 

かくして、当初の狙い?通り

噛みつきは阻止され…私は時間を得た

 

「ギュジィァッ!」

 

裂帛の一声と共に、全身を強制活性

自分の体内細胞が、隣人たる細胞と喰らい合い、無秩序な自己捕食を始める

 

強制的に活性化した肉体は

自己捕食で自壊する、その前にオウガテイル堕天を…捕食する!

 

「ギィッ!」

 

凄まじい勢いで細胞が流動し

体が形を不定形に崩していく

 

地面を捕食し、土を捕食し、空気を捕食し、発生した熱を捕食し、氷と溶けた水を捕食し、ありとあらゆるものを喰らい尽くしていく

 

この有様こそが

そう、原初のアラガミの形

 

万物を捕食するもの(パンフォノメフスィ)

 

破壊し捕食し吸収し淘汰し流転して

新たなる命を作る。それがアラガミの力

 

ギユルルグギィィッ(この私の力だっ)!」

 

オラクル細胞が変異し、増幅し

光が緑の甲殻に彩りを加える

 

七色に染められた甲殻からオラクルを噴射して突進し、オウガテイル堕天の峨眉刺・凍を捕食吸収、さらに加速して…ツノを顎の中に突っ込み…

 

ギッギュギジィ(活性かぁっ)!」

 

相手の体内から全てのオラクルを捕食吸収、即座に消化した

 

「…ゴギュィ…」

 

まだまだ全然足りない…もっと食べなきゃ…全部残さず…全部…食べなきゃ…

 

「ミキュウュルル〜」

 

ぽん、とアバドンが頭に乗ってきて

私は反射的に体内オラクルを活性化しようとして…倒れた




こんだけいってメンツは小型種三体…
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