ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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いけるって

………あれ……?

 

私、生きてる?

 

「ギジュ……」

 

声は…まぁ、いつも通りというか、もうなれたというか、金属をこするような声

 

視界には白いだけの無機質な壁ではなく、青く透き通った空が映っている

 

聴覚と嗅覚は問題ない、味覚は…わからない、少なくとも建材のコンクリートや土をおいしいとは思えない程度には人間的だと思う

 

「…ギュウ」

 

伏せていたらしい身体を起こし

立ち上がる

 

あんまり変わらないけど

 

「ミキュルクゥ♪」

ギュギ(なに)?…ガキュギジィ(アバドンか)

 

ドヤ顔で私の前を旋回するアバドン

ミャキュゥ(たべてぇ)

「ッ!?」

 

その口に咥えられていたのは

錆びた鋼らしきもの

…日本刀のカケラ?かな

 

間違っても黎明の亡都にはないアイテムだけど…って寒!

 

寒いし日本刀のカケラ?あるし

ってことはここは…鎮魂の廃寺かな?

 

…のまえにどうやって私を運んだのかすごく気になる

 

「ムュィ?ミャキュウ?」

ギジュ…ギュギイ(いや…いいの)?」

 

「ミュイニュゥ♪」

 

上機嫌なアバドンがコロコロと地面を転がりながら日本刀のカケラを地面に落とす

…って、よく見たらかなりの数ある

 

アイテム的に見れば

『玉鋼』であろう日本刀のカケラ?に『黒鉄』系統らしい金属の棒

『結晶』系アイテムっぽいもの、ジュラルミンケース

 

なんかもう雑多にかき集めた

みたいな感じだ

 

「キュウキュッ、ミキュルルウッ」

取り敢えずなにいってるんだかわからないアバドンの声に急かされて

 

その…アイテム類?の前に立つ

…私アイテム食べられるのかな

 

…少なくとも私の偏食因子はそれを食物と認識してはいないようだけど…

 

取り敢えず一番食べられそうな黒鉄?に近づき…

 

「ン…」

 

恐る恐るひとなめ…

ギュギジィィイ(くっさぁい…)

 

放置されているうちに塗布された油が腐っているらしい、酸性油の匂いが鼻を突き刺す

 

でも…この匂いは…

嫌いじゃない

 

ペロ…ペロ…ん、

 

やっぱり硬い…んんっ!

 

私はアラガミの捕食力を信じて一気に口に含んで…やっぱり無理…

 

「ミュッ!」

「ングッ!」

 

突然アバドンが鳴くと同時に、思いっきり棒を突っ込んできた

 

ギジュグゥ(鬼畜うっ)

「ミユリュッ♪」

 

「ギガュッギィ…」

口の中に捩じ込まれたモノをそのまま動かされて、無理な体勢のままの捕食を余儀なくされた私は、仕方なくそのままガンガン突っ込まれるその黒くて太くて硬い棒を舐める

 

口から全身にそのニオイが満ちてくる…あ、だめ、抜かないでっ

 

「ミキヒヒッ!」

「ギュィィ…」

 


 

あのあと鬼畜アバドンがいろんなものを突っ込んで来たので、息も絶え絶えである

…が、なんとか腰ガクガク状態からは回復した、

 

ゴギニュゥギロォ(覚えてろぉ)…」

 

無自覚鬼畜(アバドン)をにらみつつ、とりあえず立ち上がり…軽く歩く

しばらく使わないと機能が劣化してしまうから、楽なことに慣れてはいけない

 

「ギュァイ」

 

身体的な機能に劣化は見られない、ちゃんと以前通りだ

 

身体能力的には変わらないとして

………特殊技能はどう?

 

まずは糸を生成して…ふっ!

「ギュルッ!」

 

ドピュッ!と白く濁った濃厚な液体が飛び出して、瞬時に結膜、繊維化する

 

アラミド繊維とアラガミ紡糸、それに硬質なプラスチックのポリプロピレンの繊維構造を参考にして独自に変質しているらしい

 

というか、こんな濃厚な液体なのに空気に触れて即時硬化するとか、瞬着かな?

 

私の糸には二種類あって

敵を捕獲したい時に出る『粘り気のある捕獲糸』と移動や単純な攻撃に使う『表面ごと硬化する足場糸』が使い分けできる

 

確かめ方?足元にライターがあったから、それに糸を付けて固定、足でスイッチオン、すると溶けるのがアラガミ紡糸+アラミド繊維?の捕獲糸、展開した後も粘着性を持っているらしい

溶けないのがポリプロピレンとタンパク質の構造体の足場糸

 

いちおう足場糸も完全硬化までの一瞬の間は粘性があり、糸が当たったものを巻き込んで硬化することもある、

 

割と高性能な中距離攻撃を会得した、といっても過言ではないのだろう

 

相変わらずビームは使えないけど

…まぁ、中型もビーム使わないこと多いし、ヤクシャ・神機兵・シユウくらいしか明確に『光弾』と呼べるものは使わないから、気にするべきではないのかもしれない

 

スペックは万全とわかったところで、眠ることにした…いくら捕食したからといってすぐに体が回復するわけではないし、再生にだって時間はかかる、という訳で体調を万全にするために私は眠った

 

入院生活中に一日中ベッドの上にあるせいでまるで眠気がないときも消灯時間になったら眠る振りくらいはして来たし、経験則でどのくらいで眠れるかくらいは分かる

 

私が思うにもう…

 


 

はっ!私寝てたっ!

 

「ミュ〜…ミュ〜…」

 

アバドンも寝てる…可愛い…

 

「ォギジィ…」

 

足でアバドンをつついて起こし、移動に備える、もとより高頻度に出現する大型アラガミだけでなく、ストーリー的に大切な場所だが

それでも長居するには危険すぎる場所だ

 

逃げるに越したことはない

 

「…ジッ」「ミィ」

 

とりあえず休める場所としてここを選定したアバドンには感謝もするが危険すぎるので早めに撤退する

 

急げ急げ

 

「…ジジギィ…」

アバドン早いよぉ

 

 

 

さて、私は今、どこにいるでしょうか

 

正解は…あなたの後ろです

ドーモオウガテイル=サン

ドレッドパイクデス

 

ギジャァァァァッ(イヤーーーッ)!」

 

喚声一喝(カラテシャウト)と共に

私は体内オラクルを駆って走り出し…とおぉ()ぉおう()

 

「ガギュゥッ!」

「グブルルグゥウッ!」

 

二体のオウガテイルの片方を

空中からの落下刺突で一撃死させる

 

もちろんコアごと全部捕食する

色々食べたお陰か

体内の偏食因子が変異しているらしい私は今、このオウガテイルよりも上位の偏食因子を持っているはずだ

 

つまり私は…!

「グルガァァッッ!」

 

噛みつき攻撃を甲殻で受け、尻尾の叩きつけを受け止めて踏ん張る

 

ジャゥギュッ(勝負っ)!」

 

地面に跡を刻みながらも、叩きつけに耐えてツノをかまえたその瞬間

飛んできたのは峨眉刺の連射

 

「ガガガガッ!」

 

どうやら相手となったオウガテイルも、ただの無個性な一個体ではないらしい

峨眉刺の威力を下げる代わりに連射性をあげ、アサルトの銃弾のように連射してきている

 

制圧能力に優れた特殊個体(サプレッサータイプ)

 

「ガガガッ? 」

 

連射していた峨眉刺が急に途切れ、困惑したようなオウガテイルの声が聞こえて来る

 

何なのかはよくわからないけど

とりあえずチャンス

 

「ッ!」

 

空中に足場糸を放射して、硬質化した糸が贖罪の街エリアBに乱立する鉄骨に接着する

 

これで、私は

簡易的ながらに空中に足場を確保したわけだ

ギュギギィ(これないの)?」

 

「グルガァァッッ!」

 

オウガテイルをさりげなく煽りつつ、足場に登った私は、通常なら悪手である

ドレッドパイクが距離を取る

つまり自ら攻撃範囲外に出るという行動を起こしながらも戦況を有利に動かしていた

 

「グルルルルゥ」

 

恐る恐る、と言った様子ではあるが

私の掛けた足場糸に乗って、一本道に登ったオウガテイルが、私めがけて歩いてきたのだった

 

それが誰によって作られた

如何なるものなのかも考えず

 

そして、その道に立つ以上

私の射程範囲から逃れられないということもまた、知らないまま

 

「ジッ!」

 

都合二度目の糸放射

これで体内分は使い切ったけど

それに見合う効果はあった

 

そう、二度目に放ったのは捕獲糸

それを咄嗟にかわして落下したオウガテイルの尾を捉え、強力な粘着性を発揮して

 

オウガテイルを宙吊りにした

尾を搦め捕った以上、尾を起点とする峨眉刺は使えない!

 

「ビギィイィッ!」

「ガァァァゥッ!」

 

助走をつけた跳躍で糸から離れ、ツノを構えて落下する私に、オウガテイルは捨て身の一撃を以って応じた

 

自分の背骨を追って棘にして

それを峨眉刺の代わりに背中から放射したのだ!

 

「ギゴガッ!」

 

おお!なんたるカラテか!

本来オウガテイルには不可能である全身からの一斉攻撃!カラテだ!

 

「ジュッ!」

 

ドレッドパイクは身を捩りつつ緊急回避、攻撃は失敗…いや!

 

「ギイィムァァァッ!」

「ミュゥゥウッ!」

 

アバドン=サンのアンブッシュめいた突進がドレッドパイクに突き刺さる!

ゴウランガ!カラテ力学に基づいた軌道修正により再び角度を取ったツノがオウガテイルに直撃したのだ!

 

「ガァァァ…」

 

ハイクを詠むことも無くオウガテイル=サンは爆散!ナミアムダブツ!

 

グギィィグギュァ(ヤッツケター)

 

快哉を叫ぶドレッドパイクの背中にデスノボリが立つ!

 

「グルルルゥ…」

 

ラーヴァナ=サンのエントリーだ!

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