ドレッドなツノが生えてきた   作:魚介(改)貧弱卿

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閃光の果てに

「ギザギュゥガァ…」

 

いやさぁ、たしかに死亡フラグは立てたけど…さぁ?もうちょっと温情とか呵責とか命の価値の区別とか欲しいわけよ

 

私だって刺青燃やせば復活できるわけじゃないんだぞ?

 

「ガァァァッ!」

 

あ、見つかった

 

「ミキュゥツッ!」「ギギリィ!」

 

 

アバドンが逃げ足に任せて走り去っていく…そんな薄情な…

 

まぁ、アラガミだもん、

仕方ないよね、きっと…たぶん

 

「ギガァァッ!」

流石に小型アラガミの身で俊敏性と耐久力に秀でるラーヴァナは怖いが、カテゴリ上はコンゴウやシユウと同じ中型アラガミ

第2種接触禁忌種でありながら

素のヴァジュラと同じ程度の戦力しかない、GE無印〜バースト時間軸における禁忌種最弱とよばれるアラガミである

 

ちなみに、GE2の禁忌種最弱はチョウワンに更新された

 

「グガォォッ!」

ラーヴァナは一発吠えてから、駆け寄ってきて…パンチ!

 

「ガッ!」

ジャンプで躱した直後に体当たりを受けて転がされ、ゴロゴロと5回転半捻りを披露したところで追撃に飛んできた火炎弾を躱す…といっても同時発射はあらぬところに飛ぶので、ただ単に直進すれば当たらない

 

のだけれど、相手の圧倒的な火力は脅威だ、私には洒落た属性攻撃なんて持っていないし、頼みの綱の活性化も未だに自在とは言い難い

遠距離攻撃でチマチマ削るような耐久戦は体力のない私には向いていない

そもそも私は遠距離攻撃手段を持っていない、糸はあくまで捕獲であり、それ自体を攻撃手段にするほど強力ではない、硬化した足場糸を叩きつけてもあの装甲には弾かれて終わりだろう

 

…ごちゃごちゃと考えてはいるけど

結局『私にあいつを討ち取り得る火力は無い』って事だ

 

最優先は…①出来るなら逃げる

出来なければ②派手に物音を立てて

コンゴウ種、あるいは同じヴァジュラ種のアラガミを呼び寄せて、互いに争っているうちに漁夫って逃げる、

 

最悪だけど…③徹底抗戦

 

まずは…①を試そう

 

「…ギジィィイッ!」

 

派手に叫んで②のための布陣を残しつつ、足場糸を吐き出して、中央建物の屋根に引っかける

 

屋根には穴があるので、そこから中に入って…視界を遮ったら順次糸で吊り橋移動、それだけの作戦なんだけど…まずいねこれ

 

「ギガァォアァッ!」

 

え?ダメだから、あなたが乗ったら重量オーバーぁぁーっ!

 

「ジギュゥッ!」

しぬぅっ!…と危ない、空中でもう一本糸を出して着地できてよかったですまる

 

「ガァ?」

ガガァッ(ばかぁっ)!?」

 

私が出した足場を早々に破壊したラーヴァナは、再び形成された私専用(強調)足場に炎を吹きかけて焼き始めたのてでした

 

やむなく私は飛び降り体当たりを決行、ツノを向けて…

ゲェェェチィ(ぜぇぇぇい)

「グル…?」

 

背中の装甲に弾かれましたハイ…

でもオラクルはちょっと貰ったし

糸一発くらいは補充したし!

 

「ゴゴギィィオヴ!」

「ガガァ?」

 

私の大声にもまるで動じない

…というか、子供扱いされてる感が拭えないのだけれど、どうしようかな

 

「…ガァァァゥ!」

「グガァァッ!」

 

着地直後に連続ステップして

ラーヴァナのお腹に潜り込み

そのお腹の部分を、現状精一杯の衝角攻撃(ラムアタック)を仕掛ける!

 

やった!それなりに通じた!

 

腹部分の装甲は薄い!

今のうちにハムハム…ハムハム

といってもかじる訳じゃなく

装甲に突き刺したツノからオラクルを吸収してるんです、攻撃部位→非攻撃部位はやっぱり小型→中型でも攻撃判定が成立するみたい

 

囓るんだよオラッ!オラッ!

 

…ちょっとは痛がってよ…(泣)

 

「ガォァガァァッ!」

「ギジュッ!」

 

突然ジャンプしてきたラーヴァナに押しつぶされそうになる私…は

もちろん甲殻で耐える!

 

「…ガッ!」

お腹にプレスされて潰されながら

それでも耐える!

 

………今!

連続プレスの間に身をあげ、

低空ジャンプしたラーヴァナとタイミングを合わせて、私自身もツノを鋭角に立て

直角に近しいほどの角度で待ち受ける

 

果たして…ツノは、その重量に耐えきれずに砕けながらも、その甲殻を破砕して見せた

ついに攻撃手段無しにもダメージを通せる肉質を露出させたラーヴァナは

装甲を砕かれた痛みに悶えながらも力を失わず、反面私はツノを失い

最大の攻撃手段を無くしてしまった

 

だが、ダウン姿勢に入ったラーヴァナの腹を噛み破り、その甲殻を徐々に剥がしていく

 

そして装甲を多量に摂取したことで、私の体内オラクルも活性化し、

徐々にツノが修復されていく

 

「ガァァァッ!」

強い咆哮と共に立ち上がったラーヴァナは私を振り払い、オラクルを強制活性化

装甲を瞬時に再生させてみせる

これが小型と中型の、

オラクル細胞保有量の絶対的な差の現れ

 

ガゲギィガ(勝てないか)…」

 

オウガテイルの群れがヴァジュラを倒すこともあるという、だが私はドレッドパイク、群れを持たざる非力な虫だ

 

ゴゲギィゴオォ(それでもぉぉっ)!」

 

無謀にも直接攻撃を行うため、再び走り出した私は、活性化の応用で

身体内のオラクルを収束させ

一時的に密度を引き上げることで

ラーヴァナに対する攻撃…再生したツノによるラムアタックを強化する

 

そして…

「ガァァァッ!」

「ギィィィッ!」

 

負けじと声を張り上げながらぶつかり

()()()()()()()()()

 

だが、強引な活性化で力を引き上げすぎたのか、私を跳ね飛ばした後も勢いが収まらずに地面を滑走していくラーヴァナは

鍾乳石じみた材質の岩壁に頭から激突して、その物理的衝撃で頭部のキャノピーにヒビを作った

 

「グルルルゥ…」

脳震盪でも起こしたというのか、頭を振って姿勢を戻し、その直後に糸で壁に縫い止められるラーヴァナ

 

何度も言うが、こちらは小型

身軽さが売りなのだから、

火力で劣っても速度で負けられはしない

 

足場糸の効果は瞬間硬質化

それ単体ならまだしも、足場糸を複数展開して全身各所の『力の起点』を固定された状態にまで追い込んだらもう抜けられない

 

「ジギィ…ギムゥ」

 

再び力をチャージして跳躍

ツノから放出されたオラクルが

緋色の螺旋を描き、

そこから炎が溢れ出す

 

「ギィィィッ!!」

 

炎はツノ自体を焼く事はなく

それでも赤い輝きを放ってツノを覆い、ラーヴァナの前足装甲へと突き立った

 

「ガァァァッ!」

急所にはならないが、それでも貫通属性弱点の前足に思い切り刺さった一撃

重要なポイントを突き破ったような感覚と同時に、前足の装甲にヒビが入る

 

やった!

 

「グガァッ!」「ギッ!」

 

装甲に構わず、ラーヴァナは

自分の全身から炎を大放出

ラーヴァナ(炎の魔王)の名に似合わない冷静な対応で私を振り払うと同時に

私のかけた(努力)を灰へと還した

 

「アァッ…」

 

そう、私の糸は高熱に弱い、特に足場糸は容易に燃えてしまう

過熱性に分類されるアラガミ相手には相性が悪すぎる!

 

「ガァァァッ!」

 

自由を取り戻したラーヴァナは

たとえ一時でもそれを奪った封印を仕掛けた私に憎悪の目を向けて

前足を地面に対して叩きつける

 

「ニジュッ!」

瞬間-足元から火柱が上がり

それを回避するべくステップを踏んだ私に、突撃格闘が仕掛けられる

 

両前足による二連パンチ

叩きつけ、最後に毒爆発

 

……毒爆発が無ければ完璧にやり過ごせたのに、これじゃヴェノムが入っちゃうじゃない…ゴフッ…

 

「ゴゴギュィィィァ!」

 

声だけはあげながら、

必死に弱るオラクルを収束させる

 

 

結局①は諦めて、③に移行してしまっているけど、それもまぁ仕方ない

やるからには全力全開、

命を燃やして駆け抜けよう

 

「…………ギィチ…」

 

一つ、数えて

赤い光がツノ全体を彩る

 

「……ギゴ………」

二つ、数えれば

光が螺旋を描きながら、ツノの先端へと徐々に集まって行く

 

「ガァンッ!」

 

三つ、数えると同時に跳躍

ありったけのオラクルを収束した一撃で貫通攻撃を放つ、体勢確保は不十分

力の入りは不完全

だけどそれでも…この一撃は完璧に

 

 

 

相殺された

 

 

「ィ…」

「グルルルゥ…」

 

そう、毒爆発の直後に使ってくるアクション、背中の砲台を解放した最高威力の一撃

その直撃を以って威力を殺されたのだった

 

「ガァッ!」

 

圧縮プラズマ光弾を突き抜けて勢いを失った直後に、ベシィと体当たりされた私は

もはや身を躱す余力もなく

もろに吹き飛ばしを受けて…転がる

 

が、なんとか立ち上がる

正直、そもそも逃げられるとは思っていなかったけど、ここまで苦戦してやる気もなかった…

 

どうしようかな…オラクルも限界に来たし、私自身のメンタルも限界だ

最後に行っちゃうか?

 

全力で、もう一度…走る!

 

「ギィ……ィッ!」

 

「ガァァァッ!」

 

魔王に挑む勇者って、こんな感じのかな

絶対に勝てないと確信できる相手に

生きるために立ち向かう

 

それは私の居た病院では決してできない在り方で、私自身が憧れた

輝かしい生き方だった

 

私の足は既に弱り果て

最高速度は見る影もない

今までで最弱の一撃ですらあるだろう

 

しかし、そこには

たしかに立ち向かう意志が込められた

 

キィン

 

鳴り響く音はだにも聴かれず

ただ戦場に流れ行く

 

それは、未だ生まれざる赤子への祝福

それは、神の血を継ぐ者への声援

それは、神を滅ぼす者への囁告

 

強制活性化(コンバースト)したオラクル細胞が流動し、あらゆるものを喰い尽くさんと、私の形を超えて溢れ出し、同時に私の元へと収束する

 

オラクルは私の元より溢れ出し、万物を捕食し、私の元へと帰順する

 

その過程で放出されるエネルギーよりも、はるかに大きな力を湛えて

私の身へと還ってくる

 

力は拡散し、収束し

加速し、遅滞する

 

本来私の身には収まらないほどの

膨大なエネルギーは

しかし私自身を器として集い

私の心を樋にして流れる

 

「ギィィ…ガァァァッ!」

「ギィィィッ!」

 

 

私の捨て身のラストアタックに、ラーヴァナ(魔王)は己の最強の一撃を構えた

それはまるで、正々堂々たる勝負を望む戦士の様に、背に備えた真太陽核から

プラズマフレアが注ぎ込まれ

その砲身は莫大な熱を束ねて砲弾を成し

 

私も負けじと灼熱を纏った

先の攻防で奪ったラーヴァナ自身のオラクルから作り上げた、私の力が唸りを上げた

 

私のツノが真っ赤に燃える

 

魔王を倒せと轟き叫ぶ

 

ガァッギァア…(ばぁくねぇつ!)

 

轟咆と共に大きく踏み込み

地面を割り砕きながら超加速

 

赤熱したツノは更なる輝きを得て

ラーヴァナから放たれつつあったプラズマ弾に突撃した

 

ゴォッゴ…(ゴォット…)ギッガァーーッ(フィンガーーッ)!」

 

そして、閃光は瞬いた




死んだんじゃないの?

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