シンside
「……貴様とジェラルドは、この位置から侵入しろ。他、貴様等3人はここ、貴様は私と共にここだ」
端末に記された、目の前の研究所の地図を見ながら、僕等は作戦を聞いていた。
ここでは、ファルスハーツや他の組織に属さない、フリーの研究者達によるレネゲイドの人体実験が行われているらしい。
それを襲撃し、研究成果の奪取、及び意識をまだ保っているオーヴァードの保護が今回の目的だった。
キョージさんの指示が終わり、みんなが所定の位置へ散っていく。
人体実験……何としてでも、止めないと。
……時間だ……行こう。
薄暗い通路を、ゆっくりと、音を立てない様に歩く。
右手には、龍の形をした御守りを……いつでも武器は出せる様にしておく。
後ろをついて来る蒼のボサボサ頭の少年……ジェラルド・ジェードに手で待て、と合図を送ってから、そっと十字路の様子を窺う。
……警備員と思われる人影が2つ。
気を抜いているのか、周りの警戒度合いは低い……2人とも目を反対側に向けた所を見計らって、一気に倒そう。
「投影、開始」
右手に持つ御守りを、剣に変える。
……今だ!
「だあっ!」
1人の首筋に峰打ちを叩き込み、無力化する。
「な、貴様等……!?」
「ブラックエオン!」
もう1人も、ジェラルドが分身の様なもの……「ブラックエオン」というらしい……を出現させ、それでぶん殴って気絶させる。
……よし、他の連中には気付かれてないね。
とりあえず、近くにあった部屋にその2人を放り込んでおく。
えっと、確か……こっちか。
突入前に見た地図の記憶を頼りに、再び進む。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「「!?」」
突然聞こえてきた音に、一瞬身体が硬直した。
……これは……警報?
侵入がバレたか……!
「マズいな……急ごう!」
「うん!」
ジェラルドの言葉に頷き返し、警報が鳴り響き続ける廊下を走る。
『侵入者発見。掃討開始』
そこへ立ちふさがる、2つの人影。
一見すれば、黒い服を着込んだ大男、って感じだけど……。
ガシャンという足音、顔を隠すマスクから漏れてる赤の光。
……ロボットか。
なら……遠慮は要らない!
「はああぁぁ!」
攻撃をさせない様、1体に素早く肉迫して剣を振り下ろし、斬り伏せる。
「ドラララララララァッ!」
ジェラルドも分身で拳のラッシュを叩き込み、もう1体を破壊。
そのまま突き進み、更に襲い来るロボット兵達を破壊しながら進んでいく。
「ッ!?」
そんな中、とある部屋に入って見た光景に、思わず息を呑んだ。
無数に並ぶガラスケース。
それを満たす、薄緑の液体。
そしてその中にある、沢山の人体。
……これが、全部。
この施設の、実験体……。
思わず、拳を強く握り締めていると。
どこからともなく魔力弾が来て、近くに着弾した。
その方角を見れば、武装した人影が4、5名……今度は人間らしい。
色々言ってやりたい事はあるけど……今は、敵を倒して、この人達を救出しないと!
そう、構えた時だった。
「……ブラックエオン」
背後から、何かを感じて振り返れば、顔を怒りに歪めたジェラルドが。
その隣に立つ分身も、凄まじい形相となっていた。
「最初に言っとくぜ……俺の大ッ嫌いな事はなぁ!何の関係も無い人間にッ!自分勝手な都合を押し付けて!何食わぬ顔してる奴なんだよ!覚えとけッ!」
言い捨てるやいなや、ジェラルドは迫り来る魔力弾を分身に弾かせながら、猛スピードで敵に肉薄。
「ドラララララララララララララララララララァッッッ!」
拳のラッシュをお見舞いし、見事に全員をノックアウト。
凄いな、と感心していると、視界の端に1つの人影を捉えた。
それがジェラルドを狙っている、と本能的に察知。すぐさま対応に移る。
まず、身近にあった小物2つを手に取り、呟く。
「投影、開始」
2つの剣に変化させ、敵を見据える。
敵は1体のみ。
距離は大して離れていない。
遮蔽物は無し。
魔力集中……制御。
目標、敵1体。
「だぁっ!」
2本の剣を、一気に対象に向けて投射。
願い違わず命中、ロボットだったらしいそれは見事に沈黙した。
周りを見回す……良し、もう敵はいないな。
急いで、この人達を助けないと。
あの後、助けられる人は助けて、データを出来るだけさらい、それから研究所を爆破した。
……全員が助けられた訳じゃない。
ジャーム化した何人かとも、戦う羽目になったりした。
……相変わらずだ。
僕は、結局みんなを救えていない。
正義の味方なんて、まだまだ本当に程遠い。
どうしたら良いんだろう。
そうやって、溜め息をつきながら街を歩く。
昨日の今日で、仕事は無いから気分転換の為に街に出て来てみたけど……あまり目的は果たせてない。
様々な人とすれ違う。
笑いあう男女2人組や、小さな子供連れの家族。友達とわいわい話しながら歩く、学生?の集団……。
幸せな光景が、そこにある。
この裏側で、レネゲイドなんて人を変えてしまうウイルスがあって、その力で人知れず戦っている者達がいる……なんて、誰が信じるだろう。
大半は知らないまま、それぞれのささやかな幸せを手に過ごしているんだと思う。
それで良い。
こっちの世界を、知る必要は無い。あまりにも暗くて、残酷だから。
この人達が、こっちの世界に入らない為に。
こっちの世界の住人が、化物にならない為に。
僕は、強くならないといけない。
今の僕の手じゃ、小さ過ぎて、弱過ぎて……その全部を支えきれない。
でも。
いつか、やってみせる。
正義の味方になってみせる。
理不尽な理由で苦しむ人を、僕は見たくないから。
「っとと」
「あ、ごめんなさい!」
そんな事を考えてる内に、周りへの注意が散漫になっていたらしい。
気が付けば、青髪の少女とぶつかってしまっていた。
「ごめん、大丈夫?」
「あ、はい!」
良かった、と言ってから、また歩き出す。
……腹が減ったし、レストランでも行ってみるかな。
スバルside
クラナガンの街は、相変わらず活気に満ち溢れていた。
今日、あたしがここへ来たのは日用品の準備の為。
つい先日聞いた話で、とある次元世界でロストロギアが紛失したらしくて……その為に機動六課のメンバーがそこへ行く事になったらしい。
その世界が、「第97番管理外世界地球」。
なのはさんや八神部隊長、周平さんの故郷。
そして、良く解んないけど……うちの父さんのご先祖様が住んでいた場所……らしい。
まあ、そんな訳で。
任務だっていうのは解るけど、それでもワクワクしちゃうんだよね。
見てみたいっていうのはずっとあったし。
さってと、まずは……。
「っとと」
「あ、ごめんなさい!」
しまった、ちょっと気をそらしすぎてたかな。
茶髪の人とぶつかってしまっていた。
「ごめん、大丈夫?」
「あ、はい!」
と、返事をした時だった。
周りの光景が、突然塗り替えられた。
どこまでも澄んだ夕焼け空。
辺りはいつの間にか荒野になり、そこには見渡す限り、剣、剣、剣……。
多くの剣が、突き刺さっていた。
まるで、1つ1つが誰かのお墓みたいに。
……何でだろう。
何で、こんなに悲しいんだろう。
「……ル?コラ、スバル?聞いてる?」
「へっ?」
気が付けば、そこはクラナガンの街で。
目の前には、あたしの相棒……ティアが呆れ顔で立っていた。
「全く、どうしたのよ?まさかもうお腹が空いてきたとかじゃないでしょうね」
え?あれ?
「えっと、ティア。さっき沢山の剣が無かった?」
「は?何言ってんのよあんた?この街に沢山の剣なんてあったら一大事よ」
……いや、そりゃそうなんだけど。
ティアには、見えなかったのかな。
「はぁ……白昼夢でも見た?ほら、さっさと行くわよ。あまり時間無いんだから」
あ~、と少し情けない声を出しながら、ティアに引っ張られていく。
……あれは、何だったんだろ?
間を空けてしまいすみませんorz
最近、やたら忙しくて……しかも、別のネタが思い浮かんでしまったりして大変で(オイ
という訳で、新キャラも登場、そしてシンの本格的初戦闘でございます。
新キャラは……うん、解りますよね(笑)アニメをやってるからついカッとなりまして(爆)
ただ、ブラム=ストーカーはちょっとありきたりかな、と思ったので、独自解釈効果も含めて、別のシンドロームにしています。ヒントはモルフェウス。
ちなみに、この時点のFHってまだ穏健(?)なんですよね。
少なくとも、管理局に敵対してたり他の研究所襲って、そこから実験体とかを連れ去ったりはしてますが、まだ一般人はあまり襲ってません。
とはいえ、一枚岩ではありませんし……やはり末端の部分では、非道な実験を平然とやってたりする奴もごろごろいますが。
最後のはフラグ……なのか?
俺にも良く解りません(オイ
感想やアドバイスお待ちしております。