※フブミオ付き合ってます。
※某サイトで投稿したものです。
最近、フブキの様子がおかしい。二人でテレビを見ている時、テレビから『チョコレート』というワードが出てくるたびに尻尾がピクッと揺れる。おかしいのはそれだけじゃない。二人でソファでくつろいでいる時には突拍子もなく「白上はちょっと苦目なチョコが好きなんだよねぇ」なんて言い出す。
フブキがこんなふうになっている理由がわからないほどウチも鈍感じゃない。フブキがソワソワしてる理由、それは多分明日に控えたバレンタインデーなんだろうと思う。でもあそこまで落ち着かない理由がウチにはわからない。去年も一昨年もフブキには日頃の感謝の意味を込めてチョコを送っていた。その時から変わったこととすれば……ウチらの関係性ぐらい?
去年のクリスマス、フブキが告白してくれて、ウチはフブキと付き合うことになった。あのときのフブキ、かっこよかったなぁ……。おっとその話は今じゃない。話が逸れかけたが、つまり今年のバレンタインはウチとフブキにとって恋人として迎える初めてのバレンタインなのだ。
あ、もしかしたらフブキは恋人になった分、これまで以上にすごいチョコを期待しているとか?ど、どうしよう。そんな大層なもの作る予定なかったよ……。これは誰かに相談するしか。
「というわけでおかゆんに電話したってわけなのですよ」
「うーん、前置きが長いねぇ。あとちょこちょこ惚気が入ってたよね?」
「そんなこと言わないでよ〜!これでも真剣に悩んでるんだよぉ」
こんなときに頼りになるのはウチの周りだとたらし猫こと、人付き合いの多いおかゆんぐらいしかいない。
「フブキが期待してるようなすっごいもの……う、ウェディングケーキ??」
「ミオちゃん話がぶっ飛んだねぇ。確かに嬉しいかもしれないけどさ……。そうだなぁ、僕は特別すごいものを贈らなくてもいいと思うけどね」
「え、どうして?」
「上手く言えないけどさ、フブキちゃんは気持ちのこもったものだったら何でも嬉しいんじゃないかな」
「それがミオちゃんからのならなおさら」とおかゆんは付け加えた。そっか、無理に特別なものを贈らなくてもいいんだ。フブキならきっとどんなものでも受け取ってくれる。そう思ったら悩んでいたことがなんかバカらしくなった。よし、こうしちゃいられない。
「うん、ウチ精一杯気持ちを込めたものを贈るよ。ありがとね、おかゆん」
「いえいえ〜。頑張ってね、ミオちゃん。余ったら僕にもちょうだいね〜」
「はいはい、また何か事務所に持ってくよ」
おかゆんとの電話を切る。おかゆんめ、こういうところは抜け目ないな。
さて、フブキは「今日はちょっと遅くなる」って言ってたから時間は十分にあるはず。早速フブキのためのチョコを作ろう。バレンタインは明日だけど今日作って明日サプライズで渡しちゃおう。そうすればもっと喜んでくれるかなぁ。フブキの顔を想像すると思わず笑みがこぼれてしまう。っとこうしちゃいられない。
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「えっと、ここで溶かしてバターを加えて……」
作るのはフブキが大好きなブラウニー。砂糖控えめ、フブキ好みの味。おかゆんから言われた通り気持ちを込めて、一つ一つ丁寧に。ホロライブゲーマーズのリーダーとしていつも明るくウチたちを引っ張ってくれるフブキ。でも裏では悩んで苦しんで、たくさんの困難を乗り越えてきたフブキ。「ありがとう」「おつかれさま」「がんばれ」「だいすき」溢れんばかりの想いを込めた。
「で、できた!」
いつもよりもだいぶ時間がかかったけど、その分いつも以上の会心の出来栄え。「料理は気持ち」とどこかで聞いたことがあったけど本当にそのとおりだと思う。あ~あ、早く明日になってくれないかな。早くフブキに食べてほしい。
「よし、あとは片付けて……
「ただいま〜!!」
あとは片付けるだけ。そう思った矢先、いつもより遅くなると言っていたはずのフブキがいつもより早く帰ってきた。
「え、フブキ!?あ、ちょっとま、うわぁあ!?」
焦って思わず手を滑らしてしまう。持っていた調理器具一式がやかましい音をたてて床に散乱した。
「ミオ大丈夫!?ミオ?……ってこれは」
あんな激しい音を聞いてフブキが待つわけがない。玄関からフブキがすっ飛んできた。床に散らばった調理器具たち、封が空いたままの小麦粉、そしてブラウニー。すべてを見られてしまった。これじゃあサプライズが……。
「ねぇ、ミオ。これって……」
「え、あぁこれ?これは明日ホロライブのみんなに持っていこうと思ってさ!」
「あ、あぁそうなんだ……ひ、拾うの手伝うよ」
二人とも無言で調理器具を拾う。チラッとフブキを見てみる。耳も尻尾も垂れ下がって悲しそうな目をしてる。そうだよね。絶対自分に作ってくれてるんだと思うよね。うぅ、とっさについたウソでフブキをあんなに傷つけてしまった。
「これで全部かな?」
「そ、そうだね。あのさフブキ……」
「あ、そうだ!私ちょっと着替えてくるね!今日もレッスン大変でさ〜汗かきまくっちゃったんだよね。これは汗かききーつねですわなんつって!ハハハ!」
私の言葉に耳も貸さず、早口で言い切るとフブキは隣の部屋へ逃げるように入ってしまった。
「何やってるんだろウチ……」
フブキが早口になるのは本当に嬉しいときと本当に悲しいときの二択しかない。今のは絶対……。テーブルの上に置かれたブラウニーが視界に入った。胸がぎゅっと締め付けられる。これでいいのか。いや、これじゃあだめだろ大神ミオ。あのブラウニーはみんなのためじゃない、ただ一人の、大切な人のために作ったんだ。
「謝らなきゃ」
フブキが飛び込んだ部屋のドアを叩いた。返事はない。
「ふ、フブキ〜?」
恐る恐るドアを開ける。そこには部屋の隅に座り込み、外から帰ってきた格好のままのフブキがいた。鼻をすする音が聞こえる。
「……み、ミオ!?ごめんねまだ着替えてなくてさ〜。すぐに着替えるから……ってミオ?」
慌てて立ち上がり、バレないようにと急いで涙を拭ってるフブキを見てウチはますます胸が苦しくなった。そして勢いよく頭を下げた。
「フブキごめん!!あのブラウニーはホロライブのみんなのためじゃない。フブキのために作ったの。でもフブキには内緒にしておきたくて思わずウソをついちゃった。でもそのウソでフブキを傷つけちゃって。ウチ、ウチは……」
恐る恐る顔を上げてフブキの様子をうかがう。フブキは俯いて肩を震わせていた。怒ってるかな……。嫌われちゃったかな。
「ミオ!!!」
フブキが向かってくる。殴られるんじゃないかと思い、身体に力を込めた。
「ふぇ……?」
ウチは殴られるわけでもなく、怒鳴られるわけでもなく、ただフブキに抱きしめられていた。
「フブキ?」
「えへへ……よかったぁ。私、もうミオからチョコを貰えないんじゃないかなって思って……。去年まではミオは友達としてチョコをくれてたよね?でも今年はもう友達っていう関係じゃないからさ。もしかしたらもう貰えなくなっちゃうんじゃないかなって思って不安になっちゃった。さりげなくミオにアピールしてみたけど全然反応なかったし」
そっか、フブキはフブキで悩んでたんだ。フブキに渡さないなんてありえないのに……。
「フブキは昔からずっと大切な人だよ。恋人になってもそれは変わらない。大切な人にチョコを渡すのは当たり前だよ」
「み、ミオぉ〜!」
「あ、でもアピールは全然さり気なくなかったよ」
「なぬ!?この白上の高等話術が」
「いや、全然高等じゃなかったし。…………というわけでさ、一日早いけど、ウチの想いの詰まったチョコ食べてくれませんか?」
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「改めて、ハッピーバレンタイン」
部屋着に着替えたフブキに小皿に盛った状態で手渡した。
「ありがとう!あのさ、ミオにあ~んしてほしい」
「え、それはちょっと……」
「ミオ、私にウソついた。私、傷ついた」
「ごめんなさい。やらせていただきます」
ウチはフブキの隣に座る。満足げに開けたフブキの口にウチは一切れのブラウニーを運んだ。
「んー!美味しい!美味しいよミオ!」
「ホント!?よかったぁ……」
嬉しそうに頬張るフブキを見てこちらまで嬉しくなる。フブキのこの顔が見れただけでウチのがんばり以上のものが得られた気がした。
「ねぇ、ミオ」
「どうしたのフブー」
そこまで言いかけたところで唇に柔らかい感触を感じる。そしてさっきまで隣に座っていたフブキの顔がウチの視界を埋め尽くしていた。
「なっ!?んっ」
驚いてる間もなくフブキの舌が滑り込んでくる。チョコレートの風味が柔らかな舌を通じて口いっぱいに広がる。
「ぷはぁっ!……フブキ!?」
「えへへっおすそ分け〜」
頬を赤らめたフブキが得意げな顔をしている。あれ、ブラウニーこんなに甘く作ったっけ。
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〜番外編、某所にて〜
「ごめんごめん、突然電話が来ちゃってさぁ。で、悩み事ってどうしたのフブキちゃん」
「あのね……もしかしたらミオは私にチョコをくれないんじゃないかなって」
「……それはないんじゃないかなぁ」
「どうしておかゆんはそんなふうに言い切れるのさ〜!」
「いやぁ、猫の感と言いますか。そんなに心配なら直接聞いちゃえばいいのに」
「流石にそれは恥ずかしいよ……」
「それで本当に貰えなかったらどうするの?」
「それはやだ!!泣く!!泣きます!!」
「それなら覚悟決めて聞くしかないんじゃないかな〜?」
「そうだね……よし、そうする!それなら急いで帰らなきゃ!ごめんねおかゆん突然家に押しかけちゃって。またね!」
「えっ今は!……あぁ、行っちゃった。ま、なんとかなるよねぇ。ほんと、似たものカップルだね。あの二人は」
次回はまたいつになるかわかりませんが書きたい題材があれば書くと思います。