日脚が照らす景色   作:ピポヒナ

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初めましてヒポヒナです。
初めて投稿&小説書きます。

この作品は元々1話で終わらせるつもりだったので始まりは無限城編からです。
あらすじにも書いてある通り鬼滅の刃16巻までの内容を含みますので、未読またはアニメ派の人はご注意下さい。

それでは本編です。


壱話 覚悟

「カァーーッ!走レ!急ゲ!」

 

人の言葉を喋る奇妙なカラスが声を荒らげる。

 

 

「もー、それはさっきから分かってるってー

それより鬼の所までの近道とか分からないのー?」

 

 

それに対し不満を口にしているのは大正時代の日本には珍しい翠色の髪を持つ少女 氷川日菜

 

彼女は霞柱 時透無一郎と同じく鬼殺隊に入ってから短期間で柱まで上り詰め、晴柱という肩書きを持つ所謂「天才」だ。

 

若さ或いは天才故か常に興味を唆られるものを求め、興味の対象が見つかった途端自分が満足するまで張り付き怒涛の質問攻めをしたりと少し変わっている面を持つ。

 

そんな彼女を快く思わない者も最初は居たが、晴柱という肩書きに負けず劣らず彼女は基本的に笑顔で明るい性格なことから周囲から可愛がられ、自然と日菜の周りには笑顔が溢れるようになっていた。

 

 

 

「カラスさんだって一生懸命頑張ってるんだから、そんなこと言うと可哀想ですよ日菜さん」

 

 

晴柱の後ろを駆ける少女は至って普通の隊士 羽沢つぐみ

 

外見に目立った特徴は無く、性格は温厚、鬼殺隊としての実力は普通である。

そう、彼女は普通なのだ。

あえて普通じゃない所を上げるとすれば常人よりも他人のために頑張り過ぎてしまう所だろうか。時にはそれが返って心配を買うことがあるのが傷だが…それもまた彼女の良い所である。

 

基本的につぐみはしっかりしており、日菜と歳も近いことから自由奔放な日菜の世話係に任命され、普段は常に日菜と行動を共にしている。

 

 

「ほんとつぐちゃんは優しいよねぇ」

 

 

カラスの後を追い二人の少女の影が走り抜ける。

 

 

ここは無限城

 

鬼殺隊だけではなく多くの人間の仇を打つためにお館様は自らの命すらも囮に使ってようやく姿を現した鬼舞辻無惨。その憎悪の対象を討つため一撃をーー。と踏み込んだ途端足場が無くなり次の瞬間にはここへの入り込んでいた。

 

二人は無限城に入る時は別々だったが、つぐみが悲鳴を上げながら落ちていくのを日菜が発見し拾われて一緒に行動している。

 

視界に入るものは障子、畳、襖とよくある屋敷と同じなのだが、ここでは視界に広がるそれらの上下左右がめちゃくちゃで地上とは別世界な雰囲気を出していた。

 

 

「それにしてもほんとに変なところだなぁ、面白くてちょっとるんってしたけど……」

 

 

「るんっ」とは日菜がよく使う感情表現であり、気持ちが昂った時に使われている。それ以外の細かいことはつぐみや他の柱には分かっておらず、その真相は日菜本人だけが知っている。

 

広がる異様な光景に日菜が興味を持たない訳がなく、今現在も走りながらも楽しんでいるのだが

 

 

「鬼の本拠地だって言うのに全然強い鬼と会わないじゃん!」

 

 

大声で文句を言うついでに角から出てきた鬼のような怪物の首を斬る。

そのスピードは凄まじく、切られた怪物自身も自分が斬られたという認識が遅れており、走り抜ける日菜に対し「無視するな」と動きだした時には既に体が崩れ落ちている。

 

 

「ねぇ、つぐちゃんもっと早く走れないの〜?急がないと他の柱に上限の鬼皆取られちゃうよ〜」

 

 

頬を膨らましながら振り返ると後ろを走るつぐみはさっき日菜が倒した怪物の死体を踏みそうになりバランスを崩しているところだった。

 

日菜が遅いと言っている今の速さも決して遅い訳では無い。それどころか誰が見ても速い部類に入る。

 

 

「キャッ!…ご、ごめんなさい、今の速さが全力です…私の事は良いので日菜さんは先に行ってください!」

 

 

現につぐみは既に少し息を切らしながら走っており、これ以上速くなるのであればすぐに体力が尽きてしまうだろう。

そうなると大きな遅れとなってしまう。一刻を争い、目標の場所に何時たどり着くか分からない現状ではそれは絶対に避けなければならない事だ。ならばこう提案するのが妥当だろう。

 

しかし、それを聞いた日菜の表情は相変わらず不満気なままだった。

 

 

「えー、でも私が離れたらつぐちゃん鬼に食べられちゃうじゃん」

 

 

貴方は弱いからここでは一人で生きていけない。

 

言った本人からしてみれば当たり前の事を普通に言っただけだろう。その通り、それは紛れもない事実だ。しかし、事実を突きつけるということは時に他のどの言葉よりも鋭利となり相手の心を傷つける事に最も長けた言葉と化す。

 

 

「っ…………」

 

 

つぐみは為す術もなく切り刻まれる。

 

自分の弱さが嫌いだ。

どうして私はこんなに弱くていつも守られてばかりなのだろう。

私だって、いつかは柱の皆さんのように……

 

そんな自分の本心を全て吐き出した所で迷惑にしかならないことをつぐみは分かっている。

 

 

「……ははっ、私はそんなに弱くなんかないですよ日菜さん。…それに自分が死ぬ事よりもここで無惨を討つことが出来ない方が私は怖いです。」

 

 

だから、日菜に悟られぬよう胸の奥深くに自分の気持ちを押し込み、自己犠牲という化粧で心を塗り重ねてゆく。

 

 

柱は強い

 

だからこそお荷物の隊士など放って先に行って強い鬼を退治した方がいい。

そうするのが最善の策だ。

たとえその結果、誰も知らないところで自分が命を落とすことになったとしても、その代わりに多くの命を救うことに繋がる。

 

 

「だから私の事なんて気にせずに先に行ってください!!」

 

 

前を走る日菜の姿が二重、三重に重なって見える。

 

 

「…あれ?」

 

 

目を擦ると手の甲が少し濡れていた。

これだけ言えば日菜さんは一人で行くだろう。そうなると、あとどれだけの時間自分は生きていられるのだろうか…と嫌なことを考えてしまったからだろうか。

でも、これでいい。これで良かったんだ。

 

 

「つぐちゃん」

 

 

涙を抑え、前を見ると日菜が立ち止まってこちらを見ていた。

自然とつぐみも立ち止まる。

 

何かおかしいことを言ってしまったのだろうか、日菜は真剣な眼差しでつぐみを見詰めている。

 

 

「それはダメだよ!ぜーったいにダメ!!」

 

「へぇっ?!」

 

 

日菜の口から出た言葉はまるで小さい子供のような返答で思わずつぐみは驚きの声を上げる。しかし日菜は特に気にする様子もなく続けてゆく。

 

 

「つぐちゃんにとってそれで良くても、私にとっては全然良くないよ!!だって私はつぐちゃんのこと大好きなんだもん!」

 

 

そんなこと言ってる場合じゃないですよ!

つぐみの中で真っ先に出た返答。しかし、その思いは声となって発されることは無く、それによって生じたほんの僅かな無音の時間を二人は見つめ合って過ごした。

つぐみの目をじっと見詰めながら日菜はニコッと笑みを浮かべる。その笑顔はいつものように暖かく、心にある不安を全て優しく抱きしめてくれる。

 

手が暖かいものに包まれた。

 

そして、頬から先程までは無かった感覚を感じ、抑えていた涙が溢れ出ていたことを悟る。

 

 

「私つぐちゃんに面倒見られるの凄い好きだよ?それに、つぐちゃんといるといつもるんってするんだ!!」

 

「あ!帰ったらまたお団子食べに行こうよ!だから死んじゃったらダメだよ!あたしが絶対に見捨てないから!死ぬなんて言わないで!分かった?!」

 

 

日菜はつぐみの小指をそっと自分の小指にかけ「ゆーびきりげんまん」と可愛らしい歌声で歌ってゆく。次々と渡される想いを前につぐみは涙を流しながら動けずにいた。

その涙は塗り重ねていた偽りを全て流し、つぐみの本心をさらけ出してゆく。

 

 

あぁ、そうだった

日菜さんはそういう人だ

一度自分で決めたことは絶対に曲げない

だから私を見捨てないと言った以上、どんな状況になっても絶対に見捨てずに手を差し伸ばし続けてくれるだろう

 

この人の言葉はいつも勇気をくれる

 

こんな普通な私にも夢を与えてくれる

 

 

「あの、日菜さん!」

 

 

それなら私はそれに応えれるように頑張ろう

この人といつまでも居るために

 

 

「私、いつか日菜さんの隣で肩を並べて戦えるぐらい強くなります!」

 

 

これはしなくちゃいけない覚悟だ

これから先どんな厳しい未来が待っていようと逃げ出さないための、諦めないための覚悟だ

 

 

「だから絶対に生きて帰りましょう!」

 

 

今度はつぐみが日菜の手を取り、少しでも多くの思いが伝わるようにギュッと握る。そのために力を入れすぎてしまったせいか、日菜の目が見開かれたと思うと顔を少し下に向けて、痛みを我慢するかのように少し震えていた。

 

 

「あ、あの…日菜さ」

「るるるんってきたぁー!!」

 

やりすぎてしまったと思い心配するつぐみの言葉は、突然爆発した日菜の感情によって遮られた。

 

つぐみは日菜のその姿に呆気に取られる。日菜の突然の行動もそうだが、なにより日菜の笑顔をいつも近くで見てきたが今見ている笑顔はいつもと違い何か特別なものを感じたからだ。

 

 

「つぐちゃんの思いはよーく分かった!大丈夫!!どんな鬼が出てきても絶対あたしがつぐちゃんを守るから!」

 

 

日菜は感情のままにつぐみに抱きつく。その力は強く、つぐみの抵抗を一切許さない。つぐみは抵抗するのを諦め、日菜にされるがまま抱き締められる。

 

 

こんな人だけど本当にそれが出来ちゃうぐらい強いんだよなぁ

今は守られてばかりだけど絶対に追いついてみせる。そのためにも今は生きて帰るために同じ失敗を繰り返さないようにしよう。

 

 

ビクともしない日菜の抱擁の中、つぐみはそう決意する。

 

満足した日菜はつぐみを離すと上機嫌な様子でクルっと体の方向を変え、笑顔のままつぐみへと振り向いた。

 

 

「よし!じゃあカラスが急げってうるさいし早く行こっか!」

 

 

ようやく開放されたつぐみは一呼吸つくと、さっきまで全く耳に入ってなかった甲高い鳴き声が鼓膜を通り脳内を駆け回った。

少しクラっとする。

 

 

「い、行きましょう」

 

 

大丈夫だ

 

この人について行けば絶対に

 

 

 

そう心で呟きつぐみは日菜の背中を追った。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回はつぐみの覚悟を決める回となりました。
1話から覚悟って早くね?って思われてると思うんですけど、前書きで書いた通り元々1話で終わらせるつもりだったので許してください…。

人物の心の描写と状況のナレーションの使い分けが難しいですね…
伝わるように上手く書けてるかどうか不安しかありません……伝わりにくかったかも…

ちなみに、鬼滅の刃では伊黒さんと伊之助が推しです。おばみつが尊いです( ´ ཫ ` )伊之助可愛いです。
バンドリではRoseliaの箱推しで、最推しはリサ姉(この作品ではでない)

なるべく早く3話まで上げたいので頑張ります。
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