日脚が照らす景色   作:ピポヒナ

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こんにちはヒポヒナです。

遂にノーブルローズ来ましたね。Roselia箱推しの私はしっかり泣かされました。ガチャも20連爆死して泣きました。

鬼滅の刃の小説を2冊とも買ったので読むのが楽しみです(^^)

あと、鬼滅の刃168話(20巻)のお館様のセリフの内容を今回使わさして頂いてます。しかし大きなネタバレには繋がらないと思うのでご了承願います。

それではどうぞ。



参話 運命

赤く染まった廊下が続く。

 

その先には何十もの怪物を斬りながら駆ける水色の羽織を纏った日菜の姿があった。

 

 

いくら走り続けても終わりが見えないほど広い屋敷。その構造は分からない上に随時変化する。そして案内もない。

そんな絶望的な状況下で特定の場所を見つけ出すなど、砂漠に落とされた小石を探し当てるぐらい不可能に近いことだ。

しかし、それを日菜は己が感じ続けている気配だけを頼りに実行する。

 

 

「……っ邪魔!!」

 

 

一体、また一体と怪物を屠りながら進み続けるその足取りからは少しも迷いを感じられない。

 

そして気配を追い始めてから約十分後、日菜はとある部屋の前で足を止めた。

 

 

「この先に…!」

 

 

閉ざされている襖は今までに見た物と全く同じの物で、少しも特別な何かを感じない。

 

それでも日菜は迷わず襖に手をかけ、勢いよく開けた。

するとそこには他の部屋の数倍はある大きな空間が広がっていた。しかし、パッと見る限り広さ以外に変わった様子はなく、置いてある物も他の部屋と同じだ。

 

日菜は不思議に思い部屋の中央に向かって歩いてゆく。

 

 

この部屋で間違いない

 

 

日菜はそう確信している。

それは先程まで感じていた気配がこの部屋の至る所から感じ取れるからではなく、己の直感がこの部屋だと訴え続けているからだ。

 

日菜は昔から自分の直感を信じて生きてきた。

その直感は日菜にとっての利害は関係なく外れた事が無い。それはしのぶが死亡した時も例外ではなかった。

これまでの経験から日菜は己の直感を何よりも信頼できる判断材料と認識している。

 

だから今もこの部屋にいるという直感を信じ散策していた。

 

すると声が聞こえた。

 

 

 

 

「久しぶりね。」

 

 

 

 

懐かしい声

 

 

自然と胸が弾む

 

 

 

 

 

「日菜」

 

 

 

 

それはいつも聞きたかった声

 

 

 

それはここでは聞きたくなかった声

 

 

 

 

日菜はゆっくりと振り向く

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーこの直感だけは外れて欲しかった

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに会ったって言うのになんて顔をしているのよ。」

 

 

 

 

振り向いた先には先程まで無かったはずの階段が現れており、その上には一人の人間が立っていた。

 

 

 

 

「どうしてここにいるの?」

 

 

 

 

 

 

 

いや、人間だった者が立っていた

 

 

 

 

 

 

「それは…日菜に会いたかったからかしら?」

 

 

 

 

 

 

誰よりも大好きで

 

 

 

 

 

 

 

「そうじゃなくて!!!」

 

 

 

 

 

 

世界で一番会いたくて

 

 

 

 

 

 

「何で鬼になってるの?!?!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

世界で一番会いたくなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃん!!!!!」

 

 

 

氷川日菜の姉 氷川紗夜がそこにいた。

 

 

 

階段の頂上で日菜をじっと見下ろすその姿はまさに濃紺色の空に力強く浮かぶ満月を連想させる。

 

 

 

日菜を太陽と例えるならば紗夜は月

 

日菜を晴れと例えるならば紗夜は雨

 

 

外見は類似している二人。しかしその内面は対を成していると言っていいだろう。

それほどまでにこの二人の存在が交わる事は希少である。

 

ならば二人が今まさに再会したことは偶然なのだろうか?

 

答えは否だ。

 

太陽と月が出会う日食、月食の如しそうなる運命であったと言えよう。

 

 

「私はずっと力が欲しかったからよ。誰にも負けない力をね。」

 

 

取り乱す日菜とは対象的に紗夜は深く落ち着いている。

 

 

日菜の直感で分かる事は大雑把な事が多いのだが、今回は気配を感じ取った瞬間から自分がこれから誰と会うのか分かっていた。

 

しかし、いくら直感で分かっていたとはいえそれを受け止めきれるかは全くの別問題である。それは紗夜程の大切な存在なら尚のことであり、今も日菜は敵の血鬼術にかかって幻想を見せられていると思い込んでいた。

 

 

「そんなわけっ………!!?」

 

 

日菜は紗夜へ不信の眼差しを向けた。

 

私は騙されない。有り得ない。

 

その視線からはそんな思いがありありと伝わってくる。

 

しかし見上げた先にあるその瞳は至って真剣であり、これは現実だと言うことを無言で訴えかけてくる。

日菜は紗夜が鬼になったという事を認めざるを得なかった。

 

 

「っ…そ……んな…」

 

 

受け入れたくない現実が日菜の平衡感覚を失わせ、たちまち立っていられなくなり膝を着く。

それと同時に腹の奥から何かが込み上がってきた。すぐに不快感が口内を満たし、何の抵抗も出来ないまま吐き出す。

 

 

「ヴッッ…!?!!………がぁぁっ…、、グッ…?!」

 

 

紗夜は吐瀉物をばら撒きむせ返る日菜を見下ろし、階段をゆっくりと下りてゆく。

 

 

「鬼は素晴らしいわよ日菜。疲れないし、老いてゆくこともなければ、首を斬られない限り死ぬことは無い!そして何より人間では届かない領域に手が届く!!」

 

 

答えの続きを言い渡すその声は、先程までの落ち着いた声とは違い感情的で少し高揚ぎみだ。それは紗夜が完全に鬼に染まってしまったことを意味する。

そしてその事は日菜の心に更なる追い打ちをかけるには十分だった。

 

 

 

「…ヴッ……!」

 

 

再び不快感が日菜を襲ったが今回は何とか抑えつけることに成功し、口を拭いなんとか落ち着こうと深く息を吸った。しかし一向に心臓の脈拍は収まらず視界の端が白く点滅したままだ。

 

 

「日菜も鬼にならない?」

 

 

弱り果てている妹へ姉がかけた言葉は心配ではなく勧誘だった。

階段を下りきった紗夜はまっすぐに日菜の目を見詰め手を伸ばす。

 

 

 

「また一緒に暮らしましょう。私はあの御方のお気に入りだからきっと血を分けて下さるはずよ。」

 

 

 

その声は優しく、昔を思い出させてくれる。

 

 

幼い頃、紗夜と日菜はいつでも、どこに行くにしても常に一緒に行動していた。その仲睦まじい光景から町でも仲良し姉妹と有名で多くの大人から可愛がられていた。

 

しかしある日、日菜には何をするにしても上手くできるという才能があることが判明した。その事が二人の姉妹の間を引き裂いてゆく事となる。

 

最初の頃は紗夜もそんな妹の才能を誇りに思い受け入れていた。が、歳を重ねる毎に妹と比べられることが多くなり紗夜の心境は変わってゆく。

 

紗夜も何度も姉として妹より上手くやって見返してやろうと人一倍努力を積み重ねていた。実際その努力によって他の者よりもいい成績を残している。しかし、日菜の才能はそれら全て嘲笑うかのように短期間で軽々と上回っていった。

 

いくら努力しても簡単に追い越されてゆく経験が紗夜に劣等感を芽生えさせ、それはやがて嫉妬へと変わっていき、次第に紗夜は日菜を避けるようになった。

 

 

 

その紗夜が今、面と向き合い、日菜へ手を差し伸ばしている。

 

その姿に日菜は先程とは違う何かが込み上がってくるのを感じた。

それはまだ紗夜が日菜を避けていなかった頃によく湧いていた感情と同じだ。

嬉しいに決まっている。

 

 

しかし、日菜はすぐに答える事は出来ず沈黙が続いていた。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

 

日菜の中で葛藤が生じていた。

 

それは目の前の手を取ることによって叶えられる夢とそれによって繰り広げられてしまう残酷な現実だった。

 

再び姉と共に暮らすという日菜にとってはあまりにも魅力的過ぎる誘惑だ。

しかし、その未来を選んだ先には紗夜以外誰も残らない。自らの幸せの代償は他の大切な人達の命によって支払われることとなるだろう。

 

 

それだけは決してあってはならない

 

 

ならば今言わなければならない答えは自ずと決まってくる。

 

 

 

 

「……それは出来ないよ…おねーちゃん…。私は、鬼に…鬼なんかになりたくない…!!」

 

 

目を強く瞑り、日菜は力強く断った。

 

 

これが最後のチャンス

 

 

そう分かっていながらも日菜は自らその未来を手放した。

 

 

 

 

「そう、残念ね。」

 

 

紗夜は提案を断られたことをあっさりと受け入れる。

まるで日菜がそう答えるだろうと予知していたかのようにその表情は少しも変化が無い。

 

 

「それなら仕方がないわ。」

 

 

紗夜は腰にある刀へそっと手を伸ばし、柄を掴んだ。

その瞬間に辺りの空気が凍りついたのを日菜は感じた。

 

 

「殺すしかないわね。」

 

 

鞘からゆっくりとその姿を露わにしてゆく蒼色の刀身はまるで月の光を反射する波のない水面の様。

 

 

「綺麗…」

 

 

 

思わず声が出る。

 

その言葉が自分を殺すために抜かれた刀を見て真っ先に抱いた日菜の感想だった。

そして今も尚、命の危機にあるということを感じ取れていないかのように日菜は刀に釘付けになっている。

それほどまでにその刀を扱う紗夜の姿は綺麗だった。

 

 

「あなたは抜かないの?」

 

「…えっ?」

 

 

一種の放心状態だった日菜を紗夜の言葉が現実に引き戻した。

そして紗夜の言った事を理解すると同時に日菜はようやく気づく

 

鬼と鬼殺隊が向かい合い、お互いが己の武器を、この二人なら刀を抜くということはつまり殺し合うということに他ならないということを。

 

しかし紗夜を傷付けるなど出来るはずがない事は日菜自身が一番分かっていた。

 

だからどうにか戦わずに済む方法が無いか頭をフル回転させて考える。

そこで一人の少女のことを思い出した。

以前の柱会議でその少女は、鬼になったにも関わらず二年以上もの間人間を食べたこと無いらしく、それは怪我をしている状態でも変わらなかった。

つまりその少女は己の忍耐力で鬼の本能に打ち勝っていたのだ。

 

 

あの少女が出来るのであれば、紗夜も同じことが出来るはずだ。

鬼となった紗夜が人を食べなければあの二人の様に一緒に暮らせる。

これできっと鬼となった紗夜と戦わなくて済む。

 

そんな淡い希望は紗夜が放つ冷酷な殺気によって簡単に砕かれた。

 

 

背筋が凍るという表現では優し過ぎると断言出来る程無比の恐怖が日菜を襲う。

まるで鎖で雁字搦めにされているように日菜の体は思ってるように動かず、震える以外の行動を取ろうとしない。

 

 

日菜には戦う気は無い。戦えない。ということを悟ったのか紗夜はこちらに向かい歩き出した。

 

 

「っ………!」

 

 

近づいてくるほどに鎖は強く太くなってゆく。

 

日菜は実際体を縛り付けている物など何も無いと理解している。しかし、どれだけ足を、腕を、体を動かそうと力を入れても少しも動かすことができない。

 

汗が額を伝うのを感じた。

それは何とか動こうと踏ん張り続けているからなのか、絶えず当てられている殺気への恐怖からなのか、あるいは両方によって生じたのか分からない。

いずれにせよ汗を感じたことによってほんのわずかだが日菜の意識が紗夜以外へと向いた。

 

その事が日菜を救う。

 

 

 

「はぁ…はぁ…日菜…さん……」

 

 

少女の声が日菜に届いた。

今にも消えそうな小さな声。先程までの日菜なら確実に聞き逃していたであろうその声を僅かに外した意識が拾い上げた。

 

 

「やっと…見つけ…た」

 

 

少女の声が全身を駆け巡り、日菜を縛り付けていた鎖を断ち切った。

 

 

「つぐちゃん!!」

 

 

縛り付けていた恐怖がなくなり動けるようになった日菜は声がした方に振り向く。そこには壁にもたれかかることで何とか立てているつぐみがいた。

 

日菜はその姿に目を見開き一目散に駆け寄り抱き抱える。

つぐみの容態は素人が一目見ただけで重症だと分かるほど酷く、頭の他に体中の至る所から出血しており、右腕に至っては不自然な方向に曲がっている。

 

 

 

「酷いですよ…日菜さん……置いていくなんて…」

 

 

つぐみは心配させないよう笑みを浮かべようとするが、痛みですぐに顔を歪めた。

 

 

その様子を見て日菜は気付く。

守ると言った相手を忘れていたことを。そしてそれは、冷静になれずに衝動に駆られたという自らの失態が原因で引き起こったということを。

 

 

「ごめんつぐちゃん…私…」

 

 

自然と顔が下を向いた。

 

自分がもっと冷静だったらこんなこと起こらなかったはずだ 。

 

その後悔が日菜の心をより深く沈めてゆく。

 

 

「顔を上げてください……言ったじゃないですか…私は日菜さんと同じぐらい強くなるって…だからこれぐらい大丈夫ですよ……!」

 

 

そう言いながらつぐみは刀を支えにし日菜の一歩前に立った。

少しふらつきながらも力強く立つその姿は二度と諦めないという覚悟を体現しているかのようだ。

 

つぐみは痛みに歯を食いしばりながら顔を上げ、前にいる鬼を睨みつける。

しかしその鋭い目線は鬼を目にした途端、驚きへと変わった。

 

 

「感動の再会はもういいかしら?」

 

「!?…紗夜……さん?」

 

 

それもそのはず、目に映ったその鬼の姿、耳が聞き取ったその声はつぐみもよく知る人物と同じだったからだ。

 

 

紗夜とつぐみは同じ年の最終選別を受け、合格した同期である。

選別時、紗夜は大型の異形の鬼に挑むが返り討ちにあい、殺されそうになった。そこでつぐみが助けに入り、傷だらけになりながらも協力して窮地を脱する。そして鬼殺隊に入隊した後も二人は度々任務を共にし、何度も死線をくぐり抜けてきた。

 

しかし約半年前。

既に行方不明者が数十人出ている山へ任務で向かった際に下弦の弐と遭遇した。

初めは息の合った攻撃で互角に闘えていた二人だったが、強力な血鬼術によってつぐみが重症を負ってしまい逃走を余儀なくされる。二人でようやく闘えてた相手から一人を抱えた状態で逃げ切るのは難しく、紗夜は少しの間隠れることにした。

腕の中でぐったりとしているつぐみを見てこれ以上闘えないと判断した紗夜は一人で闘う事を決意する。

 

「約束です。必ず勝って帰ってきますから、それまで待っていてください。」

 

そう言い紗夜は自分の小指をそっとつぐみの小指にかけた。

薄れゆく意識の中、言葉に込められた決意を悟ったつぐみは必死に止めようとしたが、思いは届かないまま意識を手放してしまう。

 

紗夜はつぐみを寝かせると、優しく撫で微笑みかけた。

 

それは自分の決意が鈍らないようにするため。

約束を果たすため。

 

立ち上がると紗夜は下弦の弐へ挑むため大地を蹴った。

 

 

 

次につぐみが目を覚ますとそこは蝶屋敷のベットの上だった。

初めは何故ここにいるか分からなかったが、少し動いただけで走る激痛と包帯で巻かれている腹部を見て全て思い出す。

急いで部屋を見渡すが相棒の姿は無い。今度は見知っている隊士が数名いたので聞いてみるが特に情報も得られなかった。

 

 

私に帰ってくると言ったんだ

あの人が…紗夜さんが約束を破るはずがない

 

 

そう信じ、つぐみは紗夜の帰りを待ち続けた。

 

しかし、紗夜が帰ってこないまま数日が経ち、「隠」と呼ばれる人がつぐみの元へ訪れある物を手渡した。

 

それは相棒の刀と遺言書だった。

 

 

覚束無い手つきで遺言書を受け取る。

そこには例え自分が傍にいられなくても、つぐみが天寿を全うするその日まで、決して鬼に脅かされることも無く幸せに過ごして欲しいと願う文とこれまでの感謝の気持ちが綴られていた。

 

 

次に刀を受け取る。

青かった柄は赤黒く染まり、美しかった刀身は折られていた。それらがつぐみに紗夜が最後まで闘い続けた事を教えてくれた。

 

積もっていた感情が弾け、まるで焼かれているような痛みが胸を包みつぐみは崩れ落ちる。

そのまま形見を抱き抱え相棒の死を嘆き続けた。

 

 

 

しかし、死んだと思っていた相棒が今、生きて目の前に立っている。

 

 

「……うそ……あの時に…下弦の弐と闘って亡くなったはずじゃ…?!」

 

 

当然の疑問だ。

あの日渡された刀と遺言書が嘘だったと思えるはずもなく、その上死者の蘇生は絶対にありえない。

 

ともなれば考えられることは一つだけだ。

 

 

「あぁ、そんな事もありましたね…私は死んでませんよ。」

 

 

紗夜は明らかに興味が無い口ぶりで答えた。それがつぐみの予感を確信へと変える。

 

 

 

「それにしても、大切な人を二人も殺さないといけないのはさすがに悲しいですね…」

 

 

ボロボロな二人を前にしている紗夜は少し口角を上げた。

それはまるで死神がこれから刈り取る命を前に笑っているかのような見た者全てが怖気立つ笑みだ。

 

 

「「!!」」

 

 

紗夜の殺気に満ちた眼光が二人を貫く。

日菜とつぐみは本能的に後ずさろうとするがそれすらも紗夜の殺気は許さない。

 

 

「抵抗しても良いですよ。まぁ、その様子だと無駄に終わると思いますが」

 

 

冷酷に放たれたその声が二人の精神を追い詰めてゆく。

 

 

かつての相棒が別れを告げるために一歩踏み出す。

 

 

「紗…夜さん……」

 

 

かつての家族が見返すために一歩踏み出す。

 

 

「おねー……ちゃん…」

 

 

ゆっくりだが着実に近づいて来ている死を前に二人は動けないままだった。

 

 

「そんな…約束したのに……」

 

 

あの様子だと「必ず帰ってくる」と約束した事すら忘れているだろう。もうあの約束は果たされることは無い。

 

黒く塗り潰されてゆくつぐみの心から零れ落ちたかのように呟く。

 

視界に映る翠色が少し揺れたのが見えた。

すると、口にした「約束」という言葉がつぐみの心に引っ掛かった。

 

 

それはもう一つの約束。それはまだ果たすことが出来る約束。

 

 

 

「日菜さん!もう目の前にいるのは私達が知っている紗夜さんじゃないです…!だから、戦いましょう…!!」

 

恐怖をなぎ払い覚悟を胸につぐみは日菜に訴える。何度も何度も。

 

しかしその約束は伝わらなかったのか、日菜からは動く気配が全く感じられない。

 

 

 

「日菜さん!!」

 

 

 

 

 

 

ーーー必死な呼び掛けが聞こえる。

分かっている。動かないと。守らないといけないことは。

 

だけど心が悲鳴を上げ続けている。

もう無理だと訴え続けている。

生きていく意味がなくなったと叫び続けている。

 

 

 

現実はきっと私の事が嫌いだ。

 

 

 

いつも私にばかり辛い試練を与えてくる。

今まではそれでも何とか全部乗り越え、笑い続けてこれた。

だけど…だけど今回ばかりは無理だ。

例え乗り越えたとしても大切な人を失ってしまう。

ふざけるな……ばか………

 

 

 

あぁ、いつからこんな世界になってしまったんだろうーーーー。

 




伝えるのが遅くて申し訳ないのですが、この作品に出てくる鬼は鬼滅の刃本誌に出てくる鬼ではありません。
なので下弦の弐も轆轤ではなく、轆轤の前に下弦の弐を任されていた鬼と認識してください。
間接的に出てきた鳴女は本誌の通りいます。
紛らわしくてすみません(--;)

それでは前の2話よりも倍近く長いのに読んで下さりありがとうございました。ばいちーっ!
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