マリアさんは結婚したい   作:大ちゃんネオ

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水族館ネタ…やはりどこぞのペンギンモドキを連想する方が大勢いました。
もう少し待っててください。
現在、修正中なので…
本当に申し訳ありません…


ゲームは一日一時間なんて誰が決めたッ!!!

 六班事務室。

 今日も今日とてデスクワーク。

 年度末が近く、やるべきことがいっぱいだ。

 

「班長~疲れました~ホモください」

 

「そんなものはない。仕事しろ仕事」

 

 何故か最近、真地が毎日出勤している。

 前まで「こんな古臭い部屋は嫌っす!」って言っていたのに。

 一体どういう心境の変化が彼女にあったのか…

 

「そういえば班長。マリアさんとその後どうすか?進展ありました?」

 

 進展…

 あの水族館で二人で抱き合ったわけだがキスを通り越した私とマリアは特に動じることもなく普通に接している。

 

「特になにもない。いつも通りだ」

 

「そっすか。じゃあ今夜ご飯行きましょご飯」

 

「…珍しいな。真地が誘ってくるなんて」

 

「いや、前の任務で班長が敵に投げて紛失した班長お気に入りのメスを一緒に探した時、後で奢るって約束だったじゃないすか」

 

 そういえばそんなことがあった。

 もう三ヶ月近く前の話だからすっかり忘れていた。

 …約束したのだから守らなければならない。

 

「分かった。それでは今夜終わり次第な」

 

「よっしゃ。私焼き肉がいいっす。食べ放題じゃなくてコース系のお高いやつ」

 

「ふざけるな。お前のためにそんな金払えるか。いつもの店だいつもの」

 

 えー!と抗議の声があがるが無視。

 そんな高いところプライベートでも行かないのだから部下に奢るなんてもったいない。

 駄弁るのを終えて再びPCの画面に向かうと軽快なノック音。

 返事をする前に客人は事務室へと入ってきた。

 

「失礼するのデス」

 

「お邪魔します」

 

「お、お邪魔します…」

 

 客人は三人。

 暁切歌、月読調、それにエルフナイン。

 二人は分かるがエルフナインが加わるというのは一体どういう風の吹きまわしか。

 

「六堂さん。マリアと何かありましたか?」

 

 入室早々、月読調がそう問いかけてきた。

 さっきなにもないと言ったがまさか何かあったのか。

 実はマリア的にはよろしくなかったとか…

 

「この間の休みからマリアはふとした時にやけたり、イヤホンで幸せそうな顔してなにか聞いているのデス。これはなにかあったとしか思えないのデス!」

 

「最近のマリアを察するに六堂さんが関係あるのは自明の理。というわけで…」

 

「なにがあったか教えてください(教えるデスッ!)」

 

「なにもない。いつも通りだ」

 

 即答。

 言ったら絶対にめんどくさいことになるのが目に見えている。

 

「なにもないわけないのデスッ!マリアがあんなに楽しそうにしてるのは久しぶりなんデスよ!悔しいデスけどそれはあなたがいたからデスよ!」

 

「そうと決めつけるな。まったく別の理由かもしれないだろう。それより、彼女…エルフナインは何故ここに?二人と関係ない仕事の用なら優先するが…」

 

 恐らく部屋の前でたまたま出会ったとかだろう。

 真面目と言われる彼女がこの二人組と関係は…

 

「いえ、ボクも関係あります!」

 

 関係あるのかよ。

 私の中で彼女の真面目なイメージが崩壊した。

 

「六堂さんのためにこんなもの作ってきたんですよ!パソコンお借りしますね」

 

 使われていないパソコンを起動させてUSBを差し込むエルフナイン。

 変なウイルスでもいれようとしてないよな…?

 

「…よし。六堂さんすいませんがこちらの席に来ていただけませんか?」

 

 …一体なんだというのか。

 変なことされてるようだったら一瞬で叩き出してやるが…

 パソコンの画面を見ると、私は一瞬で頭が痛くなった。

 

『これだけであなたも恋愛マスター!装者編』

 

「…なんだこれは?」

 

「マリアさんにあんなに迫られてるのに勇気が持てず一歩踏み出せない六堂さんのために作った恋愛シミュレーションゲームです」

 

 恋愛シミュレーションゲーム…

 

「やらんぞ。仕事中にゲームなんて。こっちは年度末で忙しいんだ」

 

 とにかく忙しいこの時期にこんなことで時間を浪費されてたまるか。

 しかし、エルフナインの口から衝撃の言葉が出たのである。

 

「いえ、これは遊びではありません。お仕事です。司令からも許可はいただいています!」

 

 そう言いながら何か書類を広げるエルフナイン。

 その書類を真地が受け取って…

 

「うっわガチですよ班長!これ司令から印鑑もらってます!」

 

 私にまわってきた書類。

 企画書やらなにやら…

 確かにそこには司令の印が押され決済されていて…

 

「というわけで六堂さん。お仕事の時間です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 果たしてこれが仕事なのか。

 私にはこの疑問に答えてくれるものはなかった。

 あるのはただ「この忙しい時期にこいつら(司令含む)はなんてことしてくれたんだ」という怨嗟のみ。

 貴重な労働時間をゲームなんてものに割かなくてはいけないなんて…

 はあ、今日も残業か…

 

「それでは六堂さん。こちらのコントローラーをどうぞ」

 

 やけに自信満々の笑顔で手渡してくるエルフナイン。

 本当に彼女はどうしてしまったというのか。

 自ら過酷なブラック労働に身を置いた結果がこれなのか?

 だとしたらもう手遅れ…

 そもそもなんでゲーム?

 

「今のお二人を見ていると『とてもじれったい』『やきもきする』といった意見が多くてですね。お二人の関係を早期決着させるためにまずは六堂さんにシミュレーションを受けてもらおうということでこちらの開発が行われました」

 

 一体どこのどいつだそんなこと言い出したのは。

 それにしたってゲームはおかしいだろう…

 

「こちらを開発するにあたって切歌さんと調さんに協力、監修していただきました」

 

「ヒロイン完全再現」

 

「デスッ!」

 

「…ものすごい不安なんだが」

 

「まあまあ班長。ものは試しっす。やってみましょう」

 

「お前が気になるだけだろう」

 

 分かるっすか?と舌を出した真地。

 お前の趣味に通じるものがあったからな…

 

「それじゃあ早速始めましょう。コントローラーのボタンを適当に押してください」

 

 促されるままにボタンを押すとゲームがスタートした。 

 一度暗転するとヒロイン選択画面に切り替わった。

 

「む…立花か」

 

「はい。装者のみなさんをヒロインとして用意しました」

 

 なるほど…と言って他のヒロイン達を確認していく。

 風鳴、雪音、暁、月読、マリア…

 

「おい、マリアから動かなくなったぞ。バグか?」

 

 コントローラーが一切反応していない。

 早速バグとは詰めがあま…

 

「いえ、仕様です」

 

「六堂仕様デス」

 

「あなたにマリア以外攻略なんてさせない」

 

 とんでもない仕様があったものだ。

 選択する権利はないのか。

 …まあ、この中の面子で誰か選べと言われてもあれだが。

 しょうがないのでそのままマリアを選択してゲームを始めた。

 

『お仕事お疲れ様。千鶴♪』

 

 …喋った。

 

「ヒロイン達はフルボイスです。これまでの音声データを元に再現しました」

 

 ゲームも進んでいるなぁ。

 そういえば最後にゲームをしたのはいつだったか…

 学生時代に友人の家でやったくらいか。

 

「それでは早速ストーリーモードで遊んでいきましょう」

 

「遊んでいきましょうって。さっき遊びじゃないとか言ってなかったか?」

 

「ストーリーモードでは様々な選択肢が現れます。適切な選択肢を選んでハッピーエンドを目指しましょう!」

 

 スルーされたぞおい。

 しょうがない…これも業務になってしまったのだからやるしかないのだ。

 さっさと終わらせよう。

 ストーリーモードを選択して早速ストーリーが始まった。

 マリアが画面の中央に。

 背景はどこかのリビングのよう。

 …既視感があるのは気のせいだろう。

 

『千鶴、お願い!私と結婚して!』

 1 結婚する

 2 保留する

 3 断る

 

「いきなりぶっこんできたっすね」

 

「…まあ、こんなものだろう」

 

 実際に始まりはあれからだと思うし忠実な原作?再現だ。

 とりあえずこれは…3でも選んでおくか。

 いきなり1を選ぶのは恐らく罠だろう。

 2も保留というのはちょっと現在の状況を連想させて選びにくい。

 ここはきっと最初は断っておいてストーリーが進むのだろう。

 だから3だ。

 

『嘘よ…』

 

「…なんか様子おかしくないすか?」

 

「あ、ああ…」

 

『嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ』

 

「え、なにこれは…」

 

「あーこれはですね…」

 

 画面が切り替わりスーツ姿の男が包丁でマリアに刺されて…

 

『GAMEOVER』

 

『これで二人一緒ね千鶴…』

 

 画面の中、返り血を浴びたマリアが刺された男…私を抱きしめている…

 

「いやおかしいだろッ!?なんで最初の選択肢でいきなり死ななきゃならないッ!?」

 

「いえ、だって…ねぇ?」

 

「マリアならこうするデス」

 

「マリアならこうする」

 

「お前達はマリアをなんだと思っているんだッ!?一番長い付き合いだろう!?本当に監修したのか!?」

 

 ツッコミが止まらない。

 絶対こうはならんだろう。

 

「いやぁちょっとゲームを作るにあたって参考にしたものが…」

 

「この昼ドラ二人ではまってみたからこれの影響大」

 

 DVDを取り出した月読。

 DVDのタイトルは「女達の絶唱」

 ちょっと昔に流行った昼ドラである。

 なんてものを参考にしているんだこいつらは。

 

「こうなればコンティニューしかないです」

 

 くっ…早く終わらせなければならないのに…

 コンティニューを行い、早速例の選択肢へ。

 こうなれば次は…2か…

 

『千鶴?私と結婚しましょう?』

 1 結婚する

 2 保留する

 3 断る

 

「おい。同じ質問がまた出てきたぞ」

 

「大丈夫です続けてください」

 

 続けてくださいって言われても…

 3は刺されるから…えーと2をまた選んでおくか。

 

『結婚しましょう?』

 1 結婚する

 2 保留する

 3 断る

 

「…おい」

 

「大丈夫です続けてください」

 

 促されるまま再び2を選ぶ。

 

『結婚、しましょう』

 1 結婚する

 2 保留する

 

「3が消えたぞ」

 

「続けてください」

 

 …エルフナインの言葉も少なくなってきた。

 どことなくイライラしてるような気もしないでもない。

 しかし…2を選ぶとこうなるのか?

 やはり1を選ぶしかないのか…?

 いやしかし…

 2を選ぶ。

 何故か、2を選ぶ度に胸に重いものがのしかかってくる。

 現在の自分と重なるのだろう。

 

『千鶴?』

 1 結婚する

 2 保留する

 

 やはり、保留するままでは駄目なのだろう…

 この因果を断ち切るには…

 

『GAMEOVER』

 

 再び画面の中の私がマリアに刺される。

 

『ずっと…ずっと一緒よ千鶴…』

 

「え…?」

 

「ゲームオーバーです」

 

「はあ~全くダメダメデスね」

 

「ダメダメ」

 

「班長…そりゃないっすよ…」

 

 全員から「うわ、こいつないわ」的な目で見られる。

 それ以前に…

 

「さっきはまだ何も選んでないぞ!?何故ゲームオーバーになった!?」

 

「なにも選ばなかったからです。ずっとマリアさんを待たせ続けた結果がこれです」

 

「いやこうは…」

 

「ならないと言い切れますか?マリアさんの時間をいたずらに奪い、希望を見せて選ばないような真似をしている貴方にはいずれこんな未来が待っているんです」

 

 …かなり、いいものを喰らった。

 ボディブローがもろに入ったかのような衝撃。

 実際に痛みがあるわけでは当然ないが、ひどく私に響いたのである。

 今まで、目を逸らしてきた問題に直面させられ現実に引き戻された。

 ゲームなんて、虚構のはずなのに…

 

「…私は、どうすればいい?」

 

「もう分かっているはずですよ?答えは既に持っているんです。六堂さんは」

 

 答え…

 私の答えは…

 

 1 結婚する

 2 保留する

 3 断る

 

 …1を選ぼうとして。

 

「だ、大丈夫か?1を選んだらその時点で婚姻届が役所に提出されるとかそんな罠が…」

 

「あるわけないデス。いいから男らしくさっさと選ぶデスよ」

 

 嘘ではなさそうなので、1を選択する。

 すると画面が白に染まり…

 

『これからもよろしくね。千鶴』

 

 ウェディングドレス姿のマリアが画面に映った。

 教会の外、晴天の下で幸せそうな笑顔を浮かべるマリア──

 

『HAPPYEND』

 

「やりましたね六堂さん!これでクリアです!」

 

「おめでとうデス!」

 

「おめでとうございます」

 

「おめでとうっす班長」

 

 おめでとう。

 おめでとう。

 おめでとう。

 おめでとう。

 おめでとう。

 祝福の言葉が連なる。

 ああ…そうか、こんなにも、簡単なことなんだ──

 マリアと過ごした日のことが思い出される。

 楽しそうに笑う彼女。

 怒る彼女。

 泣く彼女。

 照れる彼女…

 そして、今日。

 今やったゲームを思い返す。

 このゲームがなければ私は気付けなか──

 刺される私。

 血に染まるマリア。

 …

 

「いやこんなクソゲーに何がおめでとうだ」

 

「クソゲーだなんて…みんなで一生懸命作ったんですよ!」

 

「選択肢ひとつで死ぬか結婚するかなんてゲーム。ゲーム性もなにもないだろう。マリアがメンヘラみたいになっているし…どうせ深夜のテンションで作ったんだろうが…」

 

「ゲーム性…盲点でした…」

 

 そこは盲点にしちゃいけないだろう。

 

「ゲームを名乗るならもっとゲームを勉強してからにするんだな」  

 

「ボクは…絶対に六堂さんを楽しませることが出来るゲームを作ってみせます!」

 

「ふっ…その意気だ」

 

 こうしてはいられないと部屋を飛び出したエルフナイン。

 それについていく暁と月読。  

 全く…とんだ嵐がやって来たものだ…

 

「さて、遅れを取り戻すか…」

 

 伸びをして自分のデスクに戻ろうとするとドアの開く音が。

 ノックも無しに一体誰が…

 エルフナイン達の誰かが忘れ物でもしたのか?

 

「は、班長…」

 

「どうした、真地?」

 

 真地が震える声で私を呼んだので一体何事かと振り向くとそこには…

 

「ち…づる…」

 

 入ってきたのはマリア。

 真っ白なドレスに赤い大きな染みがあり、その手には妖しく光る包丁が握られていて──

 私は即座に鎮圧を開始した。

 

「なーんて!驚いた?今日ジャケ写の撮影で…ちょっ!千鶴!?こんなところでそんな///」

 

 マリアから包丁を奪い取り、近くの客人応対用のソファへと押し倒し拘束する。

 まさか、ゲームのマリアが現実になってしまうとは…

 違うのは被害にあったのが私ではなく誰か。

 きっと本部内ではマリアという通り魔に切られた被害者が大勢いるだろう。

 いくらマリアとはいえ…許すことは出来ない。

 

「悪いなマリア…お前を拘束させてもらう…」

 

「えぇっ…///こ、拘束ってそういう…///けど千鶴になら///」

 

「真地、拘束具を用意しろ」

 

「りょ、了解っす!」

 

 拘束具を取りに事務室を出た真地。

 きっと辛い現場を見せてしまうことになるだろう。

 

「そんなこんなところで/////それにカレンまでいるのに…」

 

「マリア…何故こんなことをしたッ!?お前はこんなことをしないと私は信じて…」

 

「だって、千鶴を驚かせようと思って…///」

 

「驚かせる…?なにを馬鹿なことを!?そんなことのために大勢の命を奪ったのか!!!」

 

「ちょっ、ちょっと待って千鶴。貴方勘違いしてるわ!私は誰も殺してなんかないわ!これは衣装よ衣装!ジャケ写の撮影って言ったでしょう!」

 

 ジャケ写…

 撮影…

 

「なんだ…そうならそうと早く言え…ゲームが現実になったかと思ったぞ…」

 

「言ったわよ最初に」

 

 そうか…

 あまりの恐怖に全然聞いていなかった。

 

「まあ…とにかくすまなかった」

 

「本当よ…それよりその…どいてくれると助かるのだけど…///」

 

 よくよく考えると今の私はマリアに馬乗りという危ない状態。

 もしこんな現場誰かに見られたら…

 

「すいません六堂さんさっきのUSBを忘れてしまい、ました…」

 

 えへへボクとしたことがと笑いながら入ってきたエルフナイン。

 徐々にその顔から笑顔が消えていって…

 

「ごごご、ごめんなさい!//その、まさかお二人が実はそこまで進んでいたなんて///」

 

「ちょっと待てエルフナイン。これは誤解だ」

 

「そ、そうよエルフナイン!これは違うのよ!」

 

「ああえっとその一応お仕事の時間中ですからそういうことは仕事終わりのプライベートで行ったほうがいいですよ/////それじゃあッ!!!」

 

「エルフナイン!待て!待つんだッ!!!」

 

「エルフナイン私達の話を聞いて!!!」

 

 このあと、めちゃくちゃ二人でエルフナインを追いかけた。




千鶴「ちなみにマリア以外はどうなんだ?みんなあんな(ヤンデレ)なのか?」

エルフナイン「六堂さん仕様のもので他の方を選ぶとマリアさんに殺されます」


本日の勝敗 千鶴とマリアの敗北
エルフナインの誤解を解くのに疲れ果てたため。

新シリーズ エルフナインの自作ゲームシリーズ開幕
続くやもしれない。

真地さんは事務室で仕事すればついでに二人の恋の行方を見ることが出来ると毎日出勤しだした模様。

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