ガイガンと投稿予定のティガは待ってください…
二つのシリアスに胃もたれで気分転換にこっちを書いてました…
ラブコメガイガン?
書いてたらラブコメじゃなくて昼ドラになってしまったので現在鋭意修正中です…
『六堂千鶴』
今年で28歳になる彼は高校を卒業後、遠縁の親戚にあたる風鳴弦十郎から特異災害対策機動部二課にスカウトされエージェントとして所属しS .O .N .G. にもそのまま所属。
めきめきと頭角を現し、諜報において緒川並の人材がやって来たと言わしめたほど。
曰く、彼に近づかれたら終わり。
曰く、現代の切り裂きジャック。
曰く、殺し屋に転職したブラックジャック。
やがて自身のチームを持てるまでに出世し「六堂班」を結成。
二課の変わり者、ひねくれもの、一匹狼、鼻摘み者等々…一癖も二癖もあるメンバーが集まり、ついた渾名が「地獄の六班」
主に聖遺物の違法取引現場の検挙やパヴァリアの残党狩りを行う最も死に近い部署とまで言われるが今のところ欠員なし。
天国も地獄も受け入れ拒否してる奴等の集まり…
それが私が主に任務を共にする男とそのチームだった。
「それでは私からまず、結婚したくなる話をしてあげるわッ!」
なし崩し的にそのまま始まってしまった謎の戦い。
結婚したい女対結婚願望のない男。
まさか、こんな早くに始まるとは思わなかった。
「これはある男性の話よ…」
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男性は若いうちから多忙を極め、さらに若くしてとある組織のトップに選ばれてしまったの。
そこから更に忙しさはヒートアップ。
仕事が一段落して、慣れる頃には30代になっていたの。
そうしてようやく趣味の時間や遊びの時間を得ることが出来たのだけど…
『今日一杯どうだ?』
『すいません。妻が待っているものでして…』
このように自分と同年代の男性は家庭を持ち、家族のために尽くしていた。
しかし、彼にはそんな家庭などなく暗い家に帰ってご飯を食べて、映画を見て、風呂に入って寝る。
それが彼の日常になっていたの。
しかしまだ自分は若いと諦めず婚活サイトなどに登録してみたはいいもののなかなかマッチングもせず、マッチングしていざデートをすると次がない。
そうしているうちにまた忙しくなり結婚する暇もなくなって彼は今も一人寂しくご飯を食べて、映画を見て、風呂に入って寝る生活を送っているの…
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「どう?これが若いうちに結婚出来なかった男の末路よ!結婚したくなったでしょう?」
「…ひとつ言いたいことがある」
「なにかしら?」
「これ風鳴司令の話だろう」
「正解よ。よく分かったわね」
「酒の席で酔う度に話しているからな」
『お前は若いうちに結婚するんだぞ!今ならまだ大丈夫だが30を越えると一気に孤独感や虚しさ、寂しさが襲ってくる』
耳にタコが出来る程聞かされたがそれでも俺は結婚したくないと思った。
自分の父と母を思い返すとどうにも結婚というものに明るいイメージがわかない。
家で顔を合わせれば口論ばかり。
そんな喧嘩ばかりするなら別れればいいのにと思っていたが世間体がどうのとストレスが溜まるばかりの生活を送っていたがために二人共早死にした。
しかし…今、マリアの話を聞いて私にのし掛かってきた「孤独感」「虚しさ」「寂しさ」の文字。
周りが家庭を持つなか自分にはそんなものがないという疎外感。
更にその後のこと…老後のことを考えると頼る相手がいないというのは不安にもなる。
仕事に生きると決めた私だがこの先ずっと働けるわけではない。
定年後、一体私はなにをしているのだろうか…
「その顔はまさに考えている顔ね。どう?結婚する気にはなったかしら?」
「…結婚する気はないが、今後の人生設計を見直すいい機会になった」
「まったく強情ね…それにしても人生設計って?ファイナンシャルプランナーにこの間お世話になった私が相談に乗ってあげるわ」
「いや、お前それはただの客だろう」
しかし、まあ話してみるくらいならいいかもしれない。
こういう問題は他者の視点というのも参考になる。
「今後のこと…定年を迎えたあと、私はどうしたらいいかと思ってな」
「なるほど…そんな問題を抱えていたのね。けど大丈夫よ私に任せなさい。まずはこの書類に署名と捺印を──」
「結婚はしないと言ったろう」
「結婚すれば万事解決だと思うのだけど」
一体どういう頭の回路をしていればこうなるんだ?
単純に結婚したいだけだろう。
「なにをそんなに焦っている?別にまだ二十代半ばだろう?そこまで結婚結婚と焦る必要は…」
「もう二十代後半よ!知ってる?三十になると誰からも見向きも相手もされなくなるって。それに…」
それに…のあと、言葉が繋がらなかった。
もじもじとし始め、頬が紅潮している。
言いたいけど、言えない。
それを知ってか知らずか彼女は体全体でそれを表現していた。
こういう時はこちらから聞くべきか…
「それに、なんだ?」
「…がほしいのよ」
「すまない。最初のところが聞こえなかった」
そう言うとムッとした顔になるマリア。
また少しもじもじするが意を決して彼女は言い放った。
「子供がほしいって言ったの!」
子供…
要するに母親になりたいと。
「私、普通の幸せってものが欲しいの。普通に結婚して、普通に子供を産んで、育てて。普通に年を取って…」
普通になりたいと彼女は語った。
確かに彼女は普通ではない。
世界の歌姫であり、S .O .N .G. に所属するシンフォギア装者である。
いわば、特別な存在である。
そんな彼女が普通を望むというのは──
「なんだ…その、疲れたのか?今の自分に…」
「疲れた…というのもあるかもしれないわね。私は本当は引っ込み思案で…世界の歌姫なんて柄じゃないもの。装者だって新しい適合者が見つかっているし後進に譲るのも悪くないわね」
「歌姫はともかくとしてシンフォギア装者を続けるのは確かに難しいかもな。他の装者に比べるともう若く──」
「若くないとか言わないで。まだ二十代よ」
「す、すまない…」
キッと睨み付けるマリア。
女性に年齢の話はいけなかった。
それにしたってお互いもうアラサーというのは事実。
それは彼女だって分かっていることで…
「まだ二十代…だけど、三十路が近づいているのも事実。それなのにまだ…あんな格好をしなくちゃいけないの!?まだ五年前までは良かったわよ!だけど、もう嫌なのよ…あの露出度高いのを着るのは…」
「ちょっと前に写真集出してなかったか?水着を着たと言っていたが水着の方が露出度高いだろう」
「水着は別にいいのよ。海やプールでみんな着るものだし。だけどギアは…ギアは…あんなの普通二十代後半になったら着ないわよ!あんなコスプレ衣装!」
目頭を抑える。
遂に言ってしまったぞコスプレ衣装って。
まあ、みんな言ってたことだが…
ほとんどの装者が十代の中、唯一の二十代装者だったマリア。
年を経るごとに二十代装者は増えていき、今ではみんな二十代。
しかし、他の装者が年を重ねるということはマリアも例外なく同じように年を重ねるということで…
かつては確かに気にならなかった。
あの櫻井了子が開発したんだからこんなもんじゃね?的な空気があった。
だが、年月が経つごとにみんな『二十代であれはキツくね?』と思うようになったのである。
一部、気にしていない装者もいるらしいが…いやぁ、流石にそろそろキツイんじゃ…
だが、シンフォギアがなければならない場面というのは確かにあるわけでこれまで何度助けられたか数えられるものではない。
「だが、シンフォギアは必要だ。特に戦力として安定度の高いお前はみんな必要としている」
「おだてたって無駄よ。私に装者を続けてほしいならそこの書類に──」
「書かないぞ」
チッと舌打ちをするマリア。
とても世界の歌姫どころか女性がしていい顔ではない。
「大体!何で結婚したくないのよ!私が結婚したい理由を話したんだから貴方も結婚したくない理由を言いなさいよ!」
…確かに、フェアではない。
自分の意志を主張することでマリアが退いてくれればいいが…
「まあ、話すがそんな面白いものではないぞ?」
そう前置きして私は語りだした。
そもそも俺が結婚したくない理由としては結婚に対して良いイメージがないからだ。
私の父と母は顔を合わせれば喧嘩ばかり。
そんなに喧嘩ばかりするのなら別れればいいものをやれ世間体だとか遺産がどうのとか意地でも離婚しなかった。
そんなんだから子供達はひねくれるし隠居した祖母が出てくるなんてことになる。
更にストレスの種が増えた二人は私が高校生の時に亡くなったよ。
もちろん、世の中の普通の夫婦はこんな馬鹿ではないということは理解している。
だが…どうしても自分の中の夫婦像というものは自分の父と母なのだ。
どうしてもあの二人の影がちらつく。
それに──
言葉に詰まった。
あの時の光景がフラッシュバックする。
強い雨、濡れたアスファルトの地面を染める赤黒い液体。
倒れ、目を開けることのない男性。
棺の中の人物に向かって泣き叫ぶ女性。
呆然と佇む子供達──
「それに、なによ?」
「いや…」
話すようなものではない。
あれは──
あんな光景はもう見たくない。
「…不倫でもされたら堪らないと思っただけだ。知っているか?不倫は心の殺人だそうだ」
「しないわよそんなこと。愛する人を裏切りたくないもの」
「そうか…」
こういう時の彼女は真面目だ。
恐らく、本当にしないだろう。
そう思わせるほどの真剣な眼差し。
彼女は──本気だ。
「…とりあえず、今日のところは帰らせてもらうわ」
時計を見ると午前11時。
まだ11時か。
そういえばこいつは9時にやって来たんだった。
迷惑な奴だ。
「エントランスまで見送ろう。郵便の確認ついでにな」
朝起きて最低限のことを済ませたばかりに彼女が訪ねてきたので新聞をまだ取っていなかった。
「あら、優しいのね」
からかう彼女をスルーして一応財布とスマホを持って部屋から出た。
冬の澄んだ空気を吸い、七階から外の様子を見下ろす。
道路には一台の黒い乗用車が停められていた。
廊下を歩き、エレベーターに乗る。
狭い個室の中、二人きり。
ここまで会話はなかったがマリアが口を開いた。
「ねえ?今日、私変装しないで外を出歩いたの」
「そういえばそうだな…大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないわよ。けど、今は
どういう意味だ…?
変装しないことがいいこと…有名人である彼女が変装も無しに街を出歩けば目立つことは必然。
ピンク髪の人間なんてそうそういないしマリアは日本人ではない。
外国人はそれなりに目立つ。
そこにこんな美人かつ有名人という目立つ要素が合わされば…
「独身の女性芸能人が自宅でもないマンションに出入りするとして考えられるのは友人を訪ねたか…」
嫌な汗が流れる。
いつもは早く感じるエレベーターが遅い。
早く、早くここから出なければならない。
3F、2F…
「それか、
マリアの言葉と同時にチーンとエレベーターが目的の階に着いたことを知らせた。
このままでは、まず──
「郵便受けを…見るんでしょう?」
マリアに腕を引かれ、俺はエレベーターを降りてしまった。
こっちへおいでと死者が生者を引きずり込むかの如く。
引きずりこまれたらこの世には帰れない。
しかし、そのまま為す術もなく私はエントランスの外まで連れていかれ──
「それじゃあ、また今度ね♪」
いい笑顔でウインクする彼女の後ろ。
怪しい黒い乗用車の運転席。
運転手が何かを構えていた──
一戦目 マリア・カデンツァヴナ・イヴの勝利