マリアさんは結婚したい   作:大ちゃんネオ

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前回でまだマリアさん人妻じゃねえじゃん!って思ったそこのあなた。
夫婦じゃなくて、恋人でいる期間を書きたかったんや…
まあ、それも今回で終わるのですが。
あと今回は短編集的な感じデス。



マリアさんが人妻になるまで

『膝枕』

 

「千鶴。ここに来なさい」

 

 唐突に、ソファに座るマリアがそう言った。

 なにやら太ももをぽんぽんと叩いているが…?

 

「膝枕よ膝枕。早く来なさい」

 

 膝枕…膝を枕にするというあれか。

 マ、マリアの膝で膝枕をするというのか…?

 

「どうしたのよ千鶴。もしかして、恥ずかしがってるの?」

 

 ニヤニヤして俺のことをからかっている。

 なんだか負けたようで嫌だ。

 

「別に恥ずかしがっているわけではない!今行く!」

 

「はいはい」

 

 ソファで横になって頭をマリアの膝の上に…

 あっこれ駄目になるやつだ。

 すぴー…

 

「寝ちゃった…ふふ、かわいい。寝顔の写真撮っておきましょう」

 

 

 

 

 

 

『膝枕2』

 

 ぐでー。

 ごろん。

 

「もう…すっかり膝は千鶴のポジションね」

 

「ん」

 

 撫でられるのが心地いい。

 頭の感触がちょうどいい。

 柔らかさと固さのバランスとマリアの体温で心地いい。

 あー。

 

「あっもうこんな時間。夕飯の準備するから膝枕終了」

 

「ん」

 

 一度体を起こしてマリアが退いてから再び寝転ぶ。

 ん…

 ん~……

 クッションを頭の下に敷いて… 

 んん?…

 んんん?……

 いいポジションがない。

 んー…

 こうか?

 いや、こう…

 うーん…

 

(すごい寝返りうってるわ…)

 

 

 

 

 

 

 

『犬っぽい』

 

「千鶴って犬よね」

 

 夕飯の味噌汁を啜っていると唐突にマリアがそう言った。

 

「…それは組織の犬とかそういう意味か?」

 

 否定は出来ないが…

 

「そういうことじゃなくて…性格とかの話よ。ほら、犬系男子って知らない?」

 

「犬系男子?」

 

 強い者にしっぽを振るような男という意味だろうか…?

 

「わりと素直だし責任感強いし真面目だしちょっと天然なところあったり…千鶴の場合、犬は犬でもシェパードみたいな?」

 

 わりととはなんだわりととは。

 それにしてもシェパードとは…

 

「どっちにしろ組織の犬だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『犬っぽい2』

 

「すう…すう…」

 

 千鶴が寝てるわ…今こそ計画を実行に移すとき!

 これをこうして…こう!

 

 千鶴 E犬耳、首輪

 

 完璧!

 ありがとう切歌、いいものを持ってきてくれて。

 おかげですごい、もうかわいいものが目の前に!

 早速写真撮影よ!

 

『一方その頃』

 

 ん…ここは…どこだ?

 どこかの部屋のようだが…

 な、なんだこれは!?

 体が拘束されている…!?

 

「千鶴…ここが今日から私と千鶴の愛の巣よ」

 

「マリアッ!お前自分がなにをして…!?」

 

「ふふっ…千鶴が私のものだって証明のためにこれを付けましょう」

 

 マリアが手にしているのは首輪。

 それが俺の首に巻かれて…

 ・

 ・

 ・

 ・

「う、ん…恐ろしい夢だっ、た…?」

 

 目を覚ますと目の前にはカメラが。

 カメラを持っているのは当然ながらマリアなのだが…

 頭と首に違和感が…なんだこれは。

 

「おい、マリア」

 

「な、なにかしら~?」

 

「なんだこれは」

 

「えーと、そのー…千鶴から生えてきたのよ」

 

「…もっとましな嘘をつけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一人の時間』

 

「それじゃあ買い物行ってくるから留守番よろしく」

 

「ああ」

 

 マリアを見送ってリビングのソファに寝転がる。

 …

 ……

 テレビでもつけるか…

 リモコンリモコン…あった。

 ピッと。

 

「明日は全国的に晴れ。穏やかな…」

 

 ピッ。

 

「もうこの事件のトリックは全て…」

 

 ピッ。

 

「これはどういうことですか!?総理!総理!!!」

 

 ピッ。

  

 また静かになった。

 テレビを消したから当然のことであるが。

 …

 ……

 スマホを手に取り音楽アプリを起動させてイヤホンをつける。

 曲が始まると同時に目を閉じる。

 

「ふん…」

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

『お料理』

 

 買い物から帰ってキッチンで夕飯の支度を始めようとするマリア。

 マリアにばかり働かせているな…

 

「夕飯は俺が作ろう」

 

「いいわよ別に。怪我人なんだからゆっくりしてなさい」

 

「別に運動するわけでもないんだ。それに、お前にばかり色々させるのは、その…悪い気がして…」

 

「気にしなくていいの。…だけど、千鶴の料理食べたくなっちゃった。だからお願い出来る?」

 

「もとよりそのつもりだ」

 

 さて…なにを作るかだが…

 冷蔵庫とマリアが買ってきた物を見て決めよう。

 …うむ。

 いざ料理をするとなるとなかなかに面倒だ。

 時短クッキングでいこう。

 …パスタでいいか。

 ニンニクと玉ねぎと…いわし缶でいいか。

 ニンニクを切って、玉ねぎは半分でいいか。

 ざっくりと切ったニンニクを油をひいたフライパンへ。最初は中火で炒めて油がふつふつ沸いてきたら弱火にしてきつね色になるまで…あぁいい匂い。

 食欲を刺激される匂い。

 やはりニンニクは偉大だ。

 よく自炊でパスタを作る人はニンニクは買っておいたほうがいいぞ。保存も効くしパスタ以外にも色々使えるから腐らせることはないだろう。

 さて、ニンニクがきつね色になったら玉ねぎを投入。

 中火に戻してしんなりするまで炒めていわし缶を投入。ここで水を入れてパスタを半分に折って投入。

 底の深いフライパンのおかげで鍋とか使わずに済んで助かる。洗い物が減るのはいいことだ。

 ソースで茹でることでパスタにも味が染みて良い。

 あとはパスタがくっつかないようにたまに混ぜて…この間にサラダを作る。

 単純に野菜を切って千切って盛り付けるだけの簡単サラダ。

 あとは…昨日マリアが作ったスープ温めて…フライパンに入れた水が飛んだら醤油を少々垂らして混ぜて完成。

 その名も一人暮らしパスタ。

 フライパンひとつで出来るんで洗い物も楽なのだ。

 

 

 

 

 

 

『実食ッ!』

 

「ほら、出来たぞ」

 

「早かったわね。うん、美味しそう」

 

 テーブルにパスタとサラダとスープを並べて座る。

 

「「いただきます」」

 

 まずはパスタを…うん味見もしたが特に問題ない。

 サラダもまあ普通のサラダ。

 ドレッシングの味。

 スープは昨日マリアが作ったもの、美味い。

 さて、マリアはパスタを食べているが…

 

「…」

 

 無言。

 口に合わなかっただろうか?

 まあ、一人暮らしの男が食べるようなものだからな。いいもん食ってるだろうマリアには合わんか。

 ふむ…

 少しは精進するか…

 さて、無言でパスタを食べ続けたマリアは一度フォークを置いて俺を見た。

 急に見られたもんなんで少しぎょっとしたが顔には出てないはず。

 

「ねぇ、千鶴」

 

「なんだ…?」

 

 真面目な顔で見つめて…一体なんだっていうんだ。

 そんなに不味かったか?特に問題ない味としてきたが俺の舌は実は馬鹿舌だったのかもしれない。

 しかし俺の予想は裏切られることになる。

 

「これ……すごく美味しいわ」

 

 すごく真面目な顔で、そう言った。

 その様子がなんともおかしくておかしくて…

 

「な、なによ///笑うところなんてどこにもないでしょ!」

 

「いや…真面目な顔してどうしたかと思えば…そうか、美味かったか。無言だったから口に合わなかったかと思っていたぞ」

 

「美味しいからこそ無言になるものよ」

 

 そういうものかと納得して再び夕食に手をつけるがマリアの手が止まっている。

 スープも飲んで残るはサラダなのだが…手をつけない。特に嫌いなものがあるわけではなかったはずだが…一体どうしたのだろうか?腹がふくれたのだろうか?

 

「どうした?満腹か?」

 

「いや、そうじゃない…そうじゃないのよ…」

 

 ?

 今度はどうしたというのか。

 

「このサラダの野菜…どうやって切ったのッ!?」

 

 マリアが箸で掴んで見せたのは花の形に切った人参。

 どうやって…と言われてもな。

 

「どうやって…普通に」

 

「普通!?普通はこんなに切らないわよ!ラディッシュなんかてんとう虫だしこっちの人参は蝶々よ蝶々!こんなのいつか行った料亭でしか見たことない!」

 

 そんなこと言われてもなぁ…

 普通に切ったものは普通に切ったものだし。

 

「どうやったか教えて千鶴!」

 

「分かったから早く食べろ」

 

 まったくこの人は…

 変なところで子供っぽい。

 

 

 

 

 

 

 

『飾り切り』 

 

 キッチンでマリアと二人並ぶ。

 さて、飾り切りについて教えるのだが…

 とりあえず、やって見せるか。

 

「いいかマリア。まずここをこうしてこうだ。分かったか」

 

「いやいや待て待て待ちなさいッ!!!なにがどうしてそうなるのか全ッ然!分からないわッ!!!」

 

 むう。

 そう言われてもなぁ。

 俺も感覚でやってるから教えるとなると…

 誰かから教わったわけでもないからなぁ。

 

「どうして出来るようになったの?」

 

「なんとなくどこを切ればいいか分かるっていうか見えるっていうか…」

 

「ふぅん…それが千鶴の強さの秘訣ってわけね。S.O.N.G.でなければ和食料理人になるべきよ」

 

「今から調理師免許を取れと?」

 

「千鶴くらいの歳で取る人はたくさんいるって聞いたわ」

 

「そうか…まあ、料理人になる気はないが」

 

「どうして?」

 

「食べてもらいたい相手は、今はお前一人だけだからな」

 

「なっ////」

 

 顔を赤らめ、言葉になっていない言葉を発するマリア。

 なるほどなるほど。

 なかなかどうして面白い(愉悦)

 これからはこうやって遊ぶか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逆襲の千鶴』

 

 風呂から上がったマリアが髪をタオルで拭きながらリビングへとやって来た。

 俺はその光景をリビングのソファに凭れながら眺める。

 キッチンに入って水分補給と水を飲み干すマリア。

 いい飲みっぷり。

 さて、そろそろ仕掛けるか。

 

「マリア。ちょっと来い」

 

「ん?なにかしら?」

 

 なにも知らずに近寄って来るマリア。

 自分がこれから狩られることも知らずに暢気な奴。

 今の気分はさながら蜘蛛である。

 獲物…マリアが射程距離内に入った瞬間、抱き寄せキスした。

 

「ンーーーッ!?!??!?!!!?!!」

 

 面白いほどジタバタしてる。

 やがて暴れる手足も鎮まり、黙ってキスを受け入れた。

 静かになったあたりで口を離す。

 

「きゅ、急にどうしたのよ…その、私まだ髪乾かしてないし…ちょっと待ってて千づ…」

 

「よし、寝るか」

 

 立ち上がり、寝室へ。

 寝る準備は既に済ましているのであとはベッドに入るだけ。

 

「待ちなさいッ!!!その気にさせといてなにもせずに眠るというのッ!?」

 

 ぐいっと腕を引っ張られ紅潮した頬のマリアに引き止められる。

 本人は恐らくポーカーフェイスのつもりかもしれないが照れている。しっかり顔に出ている。

 さて…

 

「その気とはどの気だ?」

 

「そっ!それは…その…」

 

 どんどん小さくなっていった声。

 ごにょってなにを言っているかさっぱりだ。

 …かわいいな。

 

「からかって悪かったな」

 

「そういうことする千鶴は可愛くないッ!」

 

「悪かった悪かった」

 

 ジョークというものは即興でやるからジョークなのだ。

 しっかり謝っておかなければ禍根が残ってしまう。

 

「むう…まあ、許す」

 

「そうか。それじゃあ、おやすみ」

 

「いやいや待て待ry」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『寝る前』

 

 現在、俺とマリアは同じベッドで寝ている。

 普通の一人用ベッドなので若干狭いがしょうがない。

 最初は布団を敷いて寝ようとしたがマリアに怒られたのでこのような形で寝ている。

 

「それじゃ、おやすみ」

 

「おやすみのキスはないのかしら?」

 

 むう。

 さっきので許してくれないだろうか?

 

「ダメよ」

 

 さいで。

 そっと口づけして横に…させてくれなかった。

 

「もう一回」

 

 ねだるマリア。

 断ったら怒られるし断る理由もないのでキスする。

 これで寝られ…

 

「もう一回」

 

「…寝る気はあるのか?」

 

「うーん…ないわね。もう少し起きていたいの、二人で」

 

 そうか…

 じゃあ付き合うとするか、夜更かしに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『添い寝』↑とは別の日。

 

「それじゃあ電気消すわね」

 

 マリアが部屋の電気を消して真っ暗に。

 今日も一日が終わる…

 今日はいつもより少しハードに筋トレをしたから頭も体も寝ようと言っている。

 目を閉じるとすぐに寝れるなこれは。

 目を閉じて、寝る体勢に入るとマリアの腕が俺の胸板に乗せられた。

 頬にマリアの息を感じる。

 マリアめ、俺を抱き枕にしているな。

 

「千鶴は温かくて抱くと心地いいわ…湯タンポみたい」

 

 抱き枕どころか湯タンポ扱いとは。

 まあ俺も触れているマリアの体温で温まっているが。

 

「千鶴の匂いも嗅げる…」

 

 首に顔を埋めるとすんすんと匂いを嗅ぐ鼻の音が。

 マリアはなんでも俺の匂いが好きらしい。

 相手の体臭をいい匂いだと思えるなら相性がいいとかなんとか。

 かくいう俺もマリアの匂いは好きなわけだが。

 …鼻息がくすぐったい。

 されるがままにしているとなんとマリアは俺の尻を触りはじめたではないか。

 痴漢だ。

 

「この側面のへこみが好きなのよね~」

 

「変なこと言ってないで早く寝ろ」

 

「いいじゃない。恋人なんだし」

 

 むう。

 まあ、そうだが…

 …眠くなってきた。

 好きにさせてやるか…

 Zzz…

 

 

 

 

 

 

『復帰』

 

 なんやかんやで職場復帰。

 長いような短いような三ヶ月だったな…季節は巡ってもう初夏である。

 さて、久しぶりの職場というのはよく分からんが緊張する。

 落ち着け落ち着け…ただいつものようにすればいいだけ。

 よし、行くか。

 

 本部内の通路を歩く。  

 すると、なんだか以前と違う点が。

 

「あ…おはようございます」

 

「ん…おはよう」

 

 珍しい。

 私が挨拶されるなんて。

 それも女性職員に。

 このあとも何人かの女性職員に声をかけられた。

 今までこんなことなかったのだが一体…?

 考えながら歩いていると六班の事務室の前。

 いつも通りいつも通り…

 

「おはよう」

 

「あっ班長おはざーす。お久しぶりっす。体はどうっすか?」

 

 事務室には真地の奴が既にPCとにらめっこしていた。

 この光景もなんだか懐かしい。

 事務室の様子も特に変わったところはない。

 

「体は特に問題ない。健康体でずっと自宅療養だったもんで大分暇だったがな…」

 

「そうっすか…ところで班長。なんか変わりました?」

 

 変わった?

 変わったとはどういうことだ?

 私自身が変わったところなどあまりないと思うが…

 そういえば。

 

「変わったといえばさっき女性職員から挨拶されたり声をかけられたりしたな。今まで避けられてきたのだが…まあ、復帰ということで声をかけてくれたのだろう」

 

「あー…それはあれっすよ。班長がマリアさんの男になったからっすよ」

 

 どういうことだ?

 マリアの男…という言われ方は少しあれだがまあいい。

 それとどう関係があるというのか。

 

「女ってのは他の女の物になった男が気になるもんなんすよ。よく聞きません?彼女出来てからモテ始めたなんて話」

 

 ううむ…まあ、あるな。

 まさかその現象が私に起こっている?

 モテ期到来というやつか。

 

「あとあれっすよ。班長の場合こう丸くなったっていうか、野良犬が飼い犬になったみたいな。マリアさんにしっかり手綱握られるようになったんすよ。首輪されたもんで他の人達からして怖さがなくなったんすよ。だから声かけられるようになったんすよ」

 

「むう…真地まで私を犬扱いか…」

 

「私までってことはつまりマリアさんから犬扱いされたってことすか!?まさか犬耳つけたとかしたんすか!!お熱いっすねぇ!!!ヒュー!!!」

 

 …あんまりに真地がからかってくるものなので私は消しゴムを指で弾いて真地の額に命中させた。

 真地は撃沈した。

 さっさと仕事しろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お礼』

 

 復帰初日ということで各所に挨拶回り。

 次は、というか最後の場所だが…エルフナインのところか…

 奴のおかげのような仕業のようなで現在マリアと同棲、婚約しているのだ。お礼の品でも持参したほうがよかったな。

 しかしここではそんなお礼で渡せるようなものは入手出来ない。

 後日改めて持ってくるか…?

 いや待てそういえば…

 内ポケットを探ると…あった。

 ふむ。

 お礼と仕返しを兼ねるか。

 

「失礼するぞ」

 

 エルフナインの研究室に入ると彼女はなにやらよく分からん器材を用いて作業していた。

 恐らく私では想像も出来ないようなものを作っているに違いない。

 

「あっ六堂さん。お久しぶりです。お体はもう平気ですか?」

 

「体は特に問題ない。轢かれた時も大して怪我もしていなかったからな」

 

 なにも知らないターゲットが近付いてくる。

 さて、仕掛けるか。

 

「エルフナイン。目を閉じて口を開けろ」

 

「分かりました。あーん」

 

 流石エルフナイン。

 純粋な奴…

 罪悪感はないのかと聞かれたらまあないことはないがそれよりもこれから起こることへの楽しみが勝っている。

 さて、思いっきり口を開けているエルフナインに向けて…

 

 シューーー………

 

「!?!??!!?酸っぱ!?!!!」

 

 どうだ、見たか。

 これがすっぱいスプレー(60円)の力だ。

 はっはっはっ。

 

「六堂さんッ!!!」

 

 珍しく声を荒げるエルフナイン。

 普段の血色の悪い顔から大変身。茹でダコのように顔を真っ赤にしている。

 

「悪い悪い…お礼と仕返しを兼ねてな。結構美味いぞ?」

 

「酸っぱいだけじゃないですかッ!!!」

 

 急に距離を詰めてくるエルフナイン。

 真っ赤な顔で私を見上げ、睨み付けてくるが…迫力不足。

 

「ほら、これやるから許せ。酸っぱいと知って食べれば驚きもしないだろう」

 

 すっぱいスプレーをエルフナインに押し付けてエルフナインの研究室を後にする。

 余談だがネムクナインという渾名が彼女にはあるのだが、それがすっぱいスプレーの力で更に不眠不休に拍車がかかるのだった。

 

「眠くなった時にこれを使えば眠気が吹っ飛ぶんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『同伴出勤』

 

 昨日はマリアが歌のほうの仕事だったので一人で出勤だったが今日は本部に行くとのこと。

 というわけで一緒に通勤しているわけだが。

 

「どうしたマリア?そんなに離れて」

 

 数歩後ろを歩くマリアの方を見て訊ねる。

 俺とマリアの間には謎の距離が開いていた。

 どうしたというんだ?

 いつもはべったりくっついていたというのに。

 

「い、いいから歩く!遅刻するわよ!」

 

 はあ。

 そっぽを向かれてしまったので俺も前を見て歩くのを再開した。

 ・

 ・

 ・

 本部に着くと昨日と同様に通りがかりの職員達から挨拶される。

 そして昨日とは違う点がひとつ。

 

「マリアさん照れてますね」

 

「マリアは初心だからしょうがないデス」

 

「全く…いつもの堂々とした態度はどこに行ったのやら」

 

 装者三人からマリアがからかわれている。

 マリアの様子を見るとみるみる顔が赤くなっていき…

 爆発した。

 

「貴女達ねぇ!さっきから黙って言わせておけば…!」

 

「まあまあマリア…お前、照れていたのか?同伴出勤を」

 

 聞くとマリアは目をあちこちに泳がせて誤魔化そうとして…

 なにやら、踏ん切りがついたらしい。

 

「ほら!行くわよ千鶴!」

 

 顔を真っ赤にして私の腕を組んだマリアはそのまま私を引き連れて歩き出した。

 まったく、可愛い奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『8月7日』

 

 遂にこの日がやって来た。

 互いにこの日は空けておくように約束して、今──

 

「遂に、出したわね」

 

「ああ、出したな」

 

 不備もなく受理されたその書類は…婚姻届である。

 これで晴れて俺達は…夫婦。

 

「これからよろしくね。あ・な・た♪」

 

「ああ、こちらもよろしく頼む」

 

 区役所を出て駐車場に停めていた車に乗り込む。

 ふう…

 意外と、緊張した。

 この汗は夏の暑さのせいだけじゃない。

 書類を出すだけだというのになにをこんなに緊張したのだろうか俺は。

 

「ありがとね千鶴。この日にしてくれて…最高のバースデープレゼントよ」

 

 今日、8月7日はマリアの誕生日。 

 折角なのでこの日にしようということにしたのだ。

 ちなみに俺の誕生日はとっくに過ぎている。

 自宅療養中だったのだしょうがない。

 

「さてと…あとは式のこととか考えないとね。式場選びにウェディングドレス選びに新婚旅行も…ふふっ楽しみがいっぱいね」

 

「そうだな」

 

 楽しそうにするマリアを横目に見て車を出した。

 雲ひとつない青空が、俺とマリアの未来を祝福してくれているように見えた。




人妻編でやらなきゃいけないこと。
予告したシンフォギアVSシンフォギア。
あと最近思いついたネタ…
今のうちに、予告するッ!
そのタイトルは…

「錬金術師が恋に落ちたので証明してみた」

いつか投稿します。
楽しみに待っててくれると嬉しいです。 

追記

この興奮を抑えきれずに書いちゃうんですがユニクロのCM!!!
ティガの新ぐんぐんカットに新撮アクションにゼペリオン光線!!!
マジで嬉しいわぁ…リアルタイム世代ではないけどビデオでめっちゃ見たから好きなんや…
それにしても、何故相手がガンQ?
ま、まあFE3のOPで戦ってたし平成を代表するウルトラ怪獣だしそんなもんか…

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