結果はショタ化となりました!
というわけでお楽しみに…
六堂千鶴。
二課、及びS.O.N.G.で若くして頭角を現し、自身が率いるチームを持つほどの男。
今回は、千鶴の一日の仕事に密着してみた。
午前7時45分。
「おはよう」
「おはまーす」
出勤。
世界各地に飛んでいる部下から届いているメールを確認。
今日は特に異常なし。
その後は………。
「暇だ」
「暇っすねぇ」
六班内では珍しい事務室勤務の真地が相槌を打った。
六班というのはよく言えば隠し球、悪く言えば仕事がない時はない窓際部署である。
これは六班設立の理由にも繋がるのだがここでは割愛。
「オーストラリア土産いただきまーす」
真地が手伸ばしたのはマカダミアナッツチョコ。
先日の新婚旅行のお土産である。
「けどマカダミアナッツってハワイとかのイメージじゃありません?」
「なにを言う。元々マカダミアはオーストラリア原産だぞ。まあ、それを品種改良して広めたのはハワイの方らしいが…」
雑談で盛り上がる事務室。
しかし、一本の電話が雑談を終わらせた。
「班長、司令からっす」
「回してくれ。…六堂です。…はい、はい。分かりました、私が向かいます」
電話を切った千鶴。
早速かけてあるトレンチコートに身を包み、真地に伝言を残すと事務室を後にした。
午前11時。
千鶴は部下三名を引き連れ、豪邸の玄関前に貼られたバリケードテープをくぐった。
「国連直轄の組織がこんなところに何の用だよ…」
周囲の刑事が悪態をついたが無視。
千鶴はこの手のものには慣れていた。
しかし、新隊員の部下はまだ慣れていない様子で、刑事に噛みつこうとしていたので制止する。
「与えられた任務だけこなせ。警察と喧嘩しに来たわけじゃないだろう」
千鶴が悪態付かれるのに慣れているのは刑事どころか同じS.O.N.G.内ですら言われているからである。
普段は暇なくせに荒事となると手柄をかっさらっていくハイエナ。社会不適合者の集まり。縁故採用等々。
とにかく言われ慣れてしまったのである。
閑話休題。
刑事や鑑識が忙しなく動き回る事件現場を肩で風を切りながら歩く。
そして、この場で一番階級の高い警官を捕まえて確認作業に入った。
まずは遺留品から…。
「班長、これ…」
千鶴の部下が見せてきたのは、パヴァリア光明結社のエンブレムの記されたバッジである。
「この男はパヴァリアへの資金提供の疑いがあったとかで一班の連中が張り込んでたみたいです。しかし、尻尾を掴めず一時捜査打ち切りになっていたとか…」
「それで、この有り様か…。ということは、あいつがそのうち来るな…」
苦虫を噛み潰したような顔をした千鶴がそう呟くと、千鶴の予言は当たってしまった。
「六班の六堂千鶴~。なんでお前がいんだ?えぇ?」
柄の悪い、ファーつきのアウターをスーツの上から纏った男が現れた。
年の頃は千鶴と同年代か少し上くらい。
男は千鶴に近付くとメンチを切りながら問い掛けた。
「…タイミングいいんだか悪いんだか」
「いいから質問に答えろ。なんでいる」
「司令からの命令だ。お前達一班の連中が手が空いてないというから私達が来たわけだが…。なるほど、手が空いてないというのは誤りのようだ」
「基本的に暇な部署の奴に言われたくねえな。こいつは元々俺達がマークしてた男だ。なら捜査も俺達がやるのが筋ってもんだろ」
「…これだから警察上がりは。縄張り意識というやつか?縄張り争いがしたいならジャングルなりサバンナなり野生に帰ったらどうだ?」
「なんだと…!」
一触即発。
珍しく千鶴も血気がはやっていた。
この男…犬飼湧と千鶴は二課の同期。
そして、犬猿の仲。
別に二人の間に仲が悪くなるような事件があったわけではないらしい。
とにかく、お互い気に入らないそうだ。
「…まあいい。私が命じられたのは確認だけだ。あとは任せる。行くぞ」
「…待て」
事件現場を去ろうとしたところ、犬飼が声をかけてきた。
「最近、パヴァリア残党の奴等が妙にきな臭い。注意しておけ」
「…言われなくとも」
午後2時30分。
「ハアッ!」
トレーニングルームから聞こえてくる雄叫び。
声の主は立花響。
そして、相手は千鶴である。
「甘いな」
響の拳をかわすと同時に腹部へ一撃。
…ちゃんと寸止めしてあげただけ、千鶴なりの配慮が見える。
「まだまだ!」
響が諦めず、回し蹴りを繰り出す。
しかし…。
「それも甘い」
繰り出された足に、千鶴の腕が蛇のように絡み付くと一瞬の内に響は体勢を崩され床に倒された。
そして、首に千鶴の手刀が振り下ろされて…これもちゃんと寸止め。
こうして組手は終了。
「ありがとうございました!」
「こちらこそ付き合ってもらって悪いな。立花ぐらい骨がある奴でないとつまらん」
「いえ!六堂さんは兄弟子ですから!学ぶことも多いですし、いつでも相手になります!」
司令に師事した者同士、響は千鶴を兄弟子としている。千鶴もまた後輩として響を指導している。
…兄妹?
いやいや。
…いやいや。
午後5時。
この時間を持って通常の勤務時間は終了。
「おつかれ」
「おつかれっす~」
今日はもう特に仕事はないので千鶴は帰宅。
千鶴は基本的に残業はしない主義。
そして寄り道もしない主義。
真っ直ぐ家に帰るのである。
愛する妻の待つ家へ…。
「妻の待つ家へって、お前もここにいるだろう」
帰宅途中、立ち止まった千鶴がそう言った。
「違うわ千鶴。愛する妻の待つ家よ。ちゃんと愛するをつけなさい」
「そういう問題か…。それにしても、今日はなんたって一日中俺について回って来たんだ?」
「なんだか、仕事モードの千鶴が見たくなったのよ」
意味が分からんと呟いた千鶴。
それでも、見たいものは見たいのだ。
前までは仕事モードの千鶴が私にとっての普通の千鶴だった。
だけど、結婚してからはオフモードの千鶴を見る方が多くなって…。
職場は同じだけど、最近はあまり仕事モードの千鶴を見ていなかったので少し新鮮な気持ちと懐かしい気持ちになれた。
「久しぶりに私って使う千鶴を見れたわ」
「…からかってるのか?」
「違うわよ。私って使う千鶴も好きよ?」
「…とにかく、密着24時みたいな真似はもう終わりだぞ」
密着24時…。
ああ、あの警察に密着する番組か。
それにしても、密着か…。
「えいっ」
千鶴の腕に抱きついた。
いいことを思い付いてしまったのだ。
「ふふ、密着は終わらないわよ。夫婦だもの。むしろこれからが本番よ」
「…手柔らかに頼む」
千鶴の了承も取れたので、今日はとことん密着しようと思う。
そう、密着だ!!!
久々の仕事モードの千鶴さん。
このあとはマリアさんに密着されたんすねぇ…
羨ましい。