マリアさんは結婚したい   作:大ちゃんネオ

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ショタ化はマッテローヨ


魔境・同窓会

 帰り道。

 途中でスーパーに寄ると思いがけず旧知の友人と出会った。

 

「いや久しぶりだな!連絡もつかないから死んだんじゃないかって噂が出てたくらいだぞ!」

 

 こいつは山本。

 小中高と一緒だった数少ない俺の友人。

 十年ぶりの再会だったが昔と変わらない感じで話ができた。

 

「いや、まあ…仕事が忙しくてな…」

 

「ん?ろっくー結婚してんの!?いつの間に!?」

 

 目ざとく左手の指輪を見つけた山本はあれやこれやと質問をしてくる。

 まあ、お互いそういう年頃だから仕方ない。

 適当に話していると、急に話題が切り替わった。なんでも、高校の同窓会があるらしい。

 俺宛に実家に招待状は送ったとかなんとからしいが当然知らされるはずも…。いや、以前とは違い鯉音とはそれなりにやり取りしてるから教えてくれればいいのに…。

 それにしても同窓会、か…。

 

「というわけで招待されたんだが…」

 

「行ってくればいいじゃない。久しぶりに昔の友達に会ったら?」

 

 マリアに同窓会の話をしたらすんなりとOKされた。

 まあ、久しぶりに友達付き合いというものをするか…。

 

 

 

 同窓会当日。

 わりといいとこのホテルの宴会場が会場となっており、会場に入ると既に結構な数がいる。

 立食形式であちこちから久しぶり~だとか盛り上がる声が聞こえてくる。

 さて、見知った顔はいるかな…。

 …いない。

 くそ、山本は幹事だから忙しいし他に誰かいないのか。

 中野とか水氣とか日下部とか…。

 

「…六堂?」

 

 不意に後ろから声を掛けられて振り返るが誰もいない。

 まさか、幽霊…。

 

「…顔を下に向けなさい」

 

 声に従うと、茶髪で小柄な女性が…。

 

「久しぶりね。相変わらず背が高くて羨ましいわ」

 

「……久しぶりだな、米澤。相変わらず背が低いな」

 

「…ねぇ、忘れてたでしょ。私のこと忘れてたよねぇ?ねぇ?」

 

 正直言うと忘れていたが思い出せたので良しとしてくれ。

 彼女は米澤。身長は150くらい。生徒会で会計をやっていた。

 ちなみに俺は副会長をやっていた。

 つまり同じ生徒会で関わりがあったのだ。

 よし、思い出せたぞ。

 

「まさか来るとは思ってなかったわ。で、今あんたなにしてんの?」

 

 おお、これは同窓会っぽい。

 お互いに近況を報告しあってから思い出話に華を咲かせ…。

 近況…。

 

「…公務員だ」

 

「へぇ。なんかもったいない気もするけどね~」

 

 …はじめて、友里さんの気持ちが分かった気がする。

 守秘義務がこんなに壁になるとは思ってもみなかった。

 

「…そういうお前はどうなんだ」

 

 とりあえず、話題の矛先を変える。

 同窓会なんだ、近況を聞くぐらい変なことではない。

 

「会計士。結構忙しくて大変よ」

 

 会計士か…忙しいと聞くがよくやる。

 

「それで、公務員はなんの公務員よ?」

 

 こいつ…!

 話を戻しただと!?

 

「公務員って一口に言っても色々あるじゃない。区役所勤めとか警察とか消防とか自衛隊とか…。自衛隊はないか、その髪だもんね。若しくは国家公務員でどっかの官庁で働いてるとか…」

 

 細かいことを気にして…。

 昔もよく細かいことを注意していたな米澤は。

 さて、なんと答えるか…。

 うーむ…。

 

「…実は、スパイとして世界中を渡り歩いているんだ」

 

 若干の本当を混ぜた嘘。

 それにあまりに荒唐無稽な話。

 まあ、信じないだろう。

 信じられなくたっていい。

 本当の狙いは…。

 

「ぷっ、あんたそんな冗談言うようなキャラだっけ?」

 

「…まあ、人並みには」

 

 冗談だと思わせて話題を変える。

 

「前はホント無愛想で無表情で一緒にいるとイライラしたのに…やっぱり十年ってすごいわ」

 

「そうか?十年経ってもお前の身長は変わっていないから、十年なんて大したことないと俺は思ったぞ」

 

「…やっぱりあんたムカつく!」

 

 はっはっはっ。

 無事に作戦成功と。

 大体同窓会の空気が掴めてきたぞ…。

 

「…あの、六堂君!久しぶり!」

 

「久しぶりだね!」

 

「大人びたね!」

 

 な、なんだなんだ。

 次から次へと…いきなり集結し始めて…。

 それ以前に…誰だ?

 どの顔も見覚えが…。

 

「…あんた忘れてるでしょう」

 

 米澤が核心を突く。

 恥ずかしながらまったく覚えていない…。

 米澤は知っているようなので助け船を出してもらおう…。

 

「米澤…ちょっと…」

 

 小声で救援を呼ぶと、入り口近くの女性陣が盛り上がった。 

 必然的に大多数の人間がその方向を向いたわけで、俺もそのうちの一人なわけだが…。

 そこには見知った顔がいた。

 腰まで綺麗に伸ばした濡羽色の髪。

 整った目鼻立ち。

 正に清楚といった顔立ちで、事実、俺に清楚という言葉のイメージを掴ませた人物であった。

 彼女は有名人であった。

 何故なら、生徒会長を務めた人物だからだ。

 あちこちに会釈して挨拶しながら彼女はこちらへと歩いて来る。

 そして、彼女と目が合った。

 彼女は一瞬目を見開くと、俺の目の前までやって来て笑顔で話しかけてきた。

 

「久しぶりですね。六堂さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに三人でディナーというのもいいものデス!」

 

「そうだね、切ちゃん」

 

 久しぶりに三人でディナー。

 千鶴も昔の友達と今頃楽しくやっているだろう。

 

「ゆっくり羽伸ばしてきてって送り出してくれたダーリンに感謝デス!」

 

「よかったわね」

 

「マリアの方は?六堂さんは家で留守番?」

 

「千鶴なら今日は同窓会よ。高校生の時の友達と会うっていってたわ。楽しんでるかしら?」

 

「「ど、同窓会…(デス)」」

 

 私は普通のことを言ったつもりだった。

 しかし、調と切歌は何かまずいことでもあるかのようにショックを受けていた。

 

「マリア、同窓会というのはとっても危険なものなんデス!」

 

「どうして?友達と会うだけでしょう?」

 

「違うのマリア…。同窓会っていうのはね…」

 

「同窓会っていうのは?」

 

「「同窓会は不倫の温床なの(デス)!!!」」

 

 な…なんですって!?

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、六堂さんと会えるなんて思ってもみませんでした」

 

「…まあ、な」

 

 彼女は坂上遥菜。

 かつて生徒会長。

 俺は彼女の下で副会長をしていた。

 本来なら出たくもない生徒会選挙に出ろ、生徒会長になれと婆さんがしつこく言うので立候補だけした。

 他にも立候補者が出るかと思ったら彼女だけで、まあ…やりたくないから立候補を取り下げた。

 やる気のない奴がやってもしょうがないだろうと思ってのことだったわけだが…何故か副会長にされていた。

 なってしまったものは仕方ないと業務は真面目にこなしたのだ。

 とまあ、少し振り返ってみたが…。

 

「坂上は変わらないな」

 

「六堂さんは変わりましたね。雰囲気が」

 

「どう変わった?」

 

「そうですね…。丸くなりました。あ、もちろん体形の話じゃないですよ?」

 

 そんなことは分かっている。雰囲気だと言ったのに急に体形の話をする奴があるか。

 それに、ちゃんと鍛えているから丸くなんてない。

 こういうところも相変わらずだ。

 

「坂上は今なにしてるんだ?家を継いだのか?」

 

 坂上の家は有名な華道の大家で華道部でも実績を上げていた。

 将来は家を継ぐと言っていたが…。

 

「いえ、まだ父も母も元気ですから当分譲るつもりはないと言われています。その方が安心ですけどね」

 

 そう言いながら微笑む坂上。

 あの頃と変わらない笑顔だ。皆から好かれるのも当然だろう。

 

「六堂さんはお仕事はなにをしてらっしゃるんですか?」

 

「…親戚のとこで働かせてもらっている。書類とにらめっこする毎日だな」

 

「そうですか。でも、六堂さんは書類仕事得意じゃないですか。生徒会の時も真っ先に終わらせて他の人の分まで仕事取っていましたし」

 

 あれはさっさと帰りたかっただけだ。

 それより…。

 

「俺なんかと話してていいのか?他にも知り合いはたくさんいるだろう。なんせ、坂上は顔が広いからな」

 

「顔が、広い…」

 

 顔に触れる坂上。

 違う、そういう意味じゃない。

 

「あはは…。そう、ですね…他にもお話したい方はたくさんいらっしゃいます。ですが、私が一番お話したいのは、その…六堂さんなんです」

 

 一瞬、胸が跳ねた。

 予想にもしてないことを言われた。

 普通に聞いても、こう…勘違いしてしまいそうな言葉なので余計に。

 

「…少し、涼みませんか?」

 

「…この時期にか?」

 

「暖房が効きすぎて少し暑いんです」

 

 なら一人でどうぞ、と言いたいところだったが先程、俺と話したいと言っていたのでそこで話をしようということだろう。

 まあ、米澤も知り合いと話し込んでいるようだし、俺も他に知り合いがいないのでついていってもいいだろう。

 

 

 

 ホテルの中庭が見えるラウンジで横並びに立つ。

 ライトアップされた日本庭園は雪化粧をしている最中だった。

 さて、俺を連れ出したというのに坂上は口を結んでいる。用があるなら手短に伝えてほしいものだ。

 

「…さっき気付いたんですが、六堂さん。その、左手の薬指…」

 

「ああ、結婚した。夏にな。式はこの間だったがな」

 

「そう、ですか…」

 

 再び、沈黙。

 さっきから、坂上の様子がおかしい気がする。

 

「…そういえば、六堂さんは昔、モテてましたよね。しょっちゅう交際されてる方が変わっていました」

 

 …嫌なことを思い出させる。

 

「…俺なんかのことを好きだと言ってくれた。それに応えていたつもりだったが…あぁ、よくないな」

 

「ええ。とってもよくないと思います。それでいつも米澤さんから怒られていましたね」

 

「そうだな…。だけど、今は違う。本当に好きな人が出来た。ずっと一緒にいたい人が…」

 

 言った後に大分恥ずかしいことを言ったことに気付いた。

 いや、本心だから大丈夫だ。

 間違ったことを言っていないのだからむしろ誇るべきだろう。

 

「…幸せ、そうですね」

 

「…ああ」

 

「私、嬉しいです。六堂さんが幸せそうで」

 

「なんで坂上が嬉しいんだ?」

 

 率直な疑問が口から出た。

 なにも考えず、反射的に。

 それはきっと間違いだったのかもしれない。

 

「私、誰かと交際していれば例外なくとても幸せなんだと思っていました。いずれ破局してしまうかもしれないけれど、付き合っている間は。…だけど、六堂さんは全然幸せそうには見えなかったんです。いつも無愛想で無表情だったけど、六堂さんが楽しんでいるときは楽しんでいるんだってことが分かったんです。だけどお付き合いしている方のことを聞いてもちっとも楽しそうではありませんでした」

 

 ……。

 

「私、ずっと後悔していることがありました。ずっと、言おう言おうと思っていたことがあったんです。六堂さんに」

 

「…なんだ」

 

「…ずっと、好きだったんです。六堂さんのこと」

 

 ………。

 

「私なら、六堂さんを幸せに出来る。なんてこと、考えていました。だけど、いつまで経っても一歩が踏み出せなくて、時間ばかりが経って、生徒会が解散したら私と六堂さんにはなんの繋がりもなくて…」

 

「…坂上」

 

「…はい」

 

「悪いが、お前の気持ちには応えられない」

 

「…はい」

 

 まあ、当然だ。

 俺には、マリアがいる。

 

「これですっきりしました。幸せそうな六堂さんを見れたのでよかったです。あと…奥さん、大事にしてくださいね」

 

「言われなくても。…それと、俺は帰る」

 

「もう帰っちゃうんですか?」

 

「あぁ、知り合いが来てなくてな。山本によろしく伝えておいてくれ」

 

「分かりました。それでは、また」

 

「ああ、またな。…今度は、そんな悲しそうな顔見せるなよ」

 

「はい。次会う時は、六堂さんより幸せそうな顔になってます」

 

 …それは楽しみだ。

 振り返ることなく、俺はホテルを出た。

 

 

 

 

 一人、会場に戻って幹事の山本さんに六堂さんが帰ったことを伝えると米澤さんが訊ねてきました。

 

「あ、遥菜どこ行ってたの?六堂も見えないし…」

 

「六堂さんなら帰られましたよ」

 

「は?こんな早く?」

 

 米澤さんは若干というか六堂さんに厳しいので六堂さんの話題が出ると少々口が悪くなります。

 とにかく嫌いというわけではなくて二人はライバル的な感じだと私は勝手に思っています。

 

「あ、そういえば六堂結婚してたんだよ!知ってた?」

 

「はい。先程」

 

「あいつと結婚するとかどんな人なんだろう…。聞けばよかった」

 

「…そうですね。私の勝手な推測ですがきっと…とっても素敵な方だと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルを出て、タクシーを捕まえようと思ったら見覚えのある、というか家の車が来た。

 運転してるのは当然マリアだが…何故?

 向こうもこちらに気付いたようで、目の前の路肩に車を止めた。

 助手席に乗り込み、マリアに訊ねた。

 

「お前、今日は暁達と食事に行くんじゃなかったのか?」

 

「切歌と調が同窓会は不倫相手を探すためのパーティーだとか言うからいてもたってもいられなくて…」

 

 あの昼ドラ脳め…。

 いつだかもあいつらがハマった昼ドラのせいで不条理な目にあった気がする。 

 

「はぁ…とりあえず、その二人には説教が必要だ」

 

「…違うの?」

 

「ん…まあ、普通はな。それに、お前は俺が不倫なんか出来るたまに見えるか?」

 

「千鶴は千鶴が思ってる以上にモテるから心配なの」

 

「それを言ったら俺だって…」

 

 そこまで言い合って互いに黙った。

 まあ、なんとなく分かったからだろう。

 …。

 

「…ある奴から好きだと言われた」

 

 それを言ったら途端、マリアは急ブレーキを踏んだ。

 危ない奴…。他に車がいないから助かったがもしかしたら大事故になっていたかもしれない。

 

「ちょ!それ、本当なの!?」

 

「全く危ない奴だな…」

 

「いいから答えて!」

 

「あ、ああ。とりあえず車を走らせろ。それから話は最後まで聞けよ?まず、当然だが断った。お前がいるからな」

 

 当然。

 当然のことである。

 

「まあ、なんというか…ずっと言えなくて後悔していたらしい。そして、吹っ切れたそうだ」

 

 しばらく、マリアは無言だった。

 車の駆動音だけが車内に響き、このままなにも喋らないんじゃないかとすら思ってきた頃にマリアは再び口を開いた。

 

「…ねえ、千鶴」

 

「なんだ?」

 

「恋に必要なものが何か知ってる?」

 

 恋に必要なもの?

 …さっぱり分からない。

 

「恋に必要なものは、ちっぽけな勇気と、覚悟を決めた大きな勇気よ」

 

「…それ、勇気で纏めちゃだめなのか?」

 

「ダメよ。種類が違うもの」

 

 …まあ、なんとなくだが分かった気がする。

 

「その人のことふって傷つけたと思ってる?」

 

「…まあ、多少は」

 

「確かに千鶴はその人を傷付けたかもしれない。けどそれと同時に勇気を与えたのよ。吹っ切れる…諦める勇気をね」

 

 諦める、勇気…。

 

「それはあまりにも身勝手な思い込みじゃないか?」

 

「身勝手で結構。恋は自分のことだもの。遠慮なんてしたら好きな人取られるかもしれないでしょ?」

 

「…肉食系だな」

 

「あら?草食に見えてたかしら?」

 

「いや、全く。…そこのコンビニに入ってくれ」

 

「なにか買うの?」

 

「コーヒーでもな。あと、運転手交代だ」

 

 酒は飲んでないから問題ない。

 少し、夜の道を二人で走りたくなった。

 安いホットコーヒーが、重い頭と身体を研ぎ澄ました。




友里「六堂君はあれね。マリアさんに浮気されたら水面下で証拠集めてある日突然死刑宣告してくるパターンよ間違いないわ」

マリア「誰が浮気するですって?」
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