マリアさんは結婚したい   作:大ちゃんネオ

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変なところに話挟んですいません!!!
思い付いてしまった以上、仕方ないのデース……
時系列は妊娠前。
あと、個人的に糖をもっと意識して書きたいという欲求があったもので……
帰省編の続きはそのうちあげるのでよろしく!


構われたい、構いたい

 一人、本部の通路を歩くマリア。

 クールな表情を浮かべ、優雅に歩く姿は様になっている。

 午前は表の仕事をこなして午後はフリー。

 家にいても暇なので本部へとやって来たのだが……。

 

(……すごい千鶴とイチャつきたい!)

 

 クールな外面とは裏腹に、内心はめちゃくちゃピンク色であった。

 

 

 

 

 公私混同をしないというのは私の徹底したポリシーである。職場では『私』として組織に尽くし、家では『俺』としてプライベートを楽しむ。

 外面が菩薩なら内心は夜叉だというが、私の場合は外面が夜叉のようだと言われるので内心は菩薩ということになるのだろう。やれやれそこまで褒めるんじゃない……等と気を紛らわしているのにはわけがあった。

 

(マリアの視線が気になる……)

 

 先程から、ずっと見られているのである。

 マリアから。

 応接用のソファに座り、背もたれに顎を乗せてこちらをじっと見つめているマリア。

 事務室は現在、私とマリアの二人きり。

 黙々と自分の仕事をこなしているわけだが、長時間見られているとやはり気になるというものである。

 ここらでひとつ、文句のひとつでも言ってやろうか……。

 

「……あまりこちらを見るな。気になるだろう」

 

「別に気にする必要ないでしょう?夫婦なんだし」

 

 それはそうなのだが、そういう問題ではない。

 

「単純に集中力の問題だ。じろじろ見られるのには慣れていないんだ私は」

 

 やれやれと肩を回そうとした瞬間、マリアが「それ!」と叫んだ。

 心臓が止まりそうになるので止めてもらいたい。

 

「それ!今は二人きりなんだから【私】っていうの禁止!」

 

「なんだそれは……意味が分からん」

 

「【私】って仕事モードの時でしょ?二人きりの時くらい【俺】でいいじゃない」

 

「駄目だ。いくらお前と二人きりとはいえ、今は仕事中だ。さっきお前が言った通り仕事モードでいるのは当然だろう」

 

 マリアから漏れる「むう」という抗議を意味する声。

 そりゃ私だって仕事でなければもっと気安い感じでいたいが仕事中なので仕方ない。

 

「失礼します!」

 

 二人きりの空間に入り込む第三者の声。

 どうぞと返して入室を促すと確か今年配属されたばかりの新人君が入ってきた。

 身長は私と同じくらいだが、肩幅が広く胸板も厚いため新人君の方が感覚的には大きく見える。

 しかし、それと同時に何故か木偶の坊のようなイメージを抱いてしまった。恐らく、身体中に無駄な力が入っているからだろう。

 ガチッと硬く一礼をした新人君は新人らしいフレッシュさと元気さで用件を報告してきた。

 

「回覧文書をお持ちしました!」

 

「ご苦労。そこのデスクに置いといてくれ」

 

「はい!」

 

 元気一杯に返事した新人君は目の前のデスクにきっちりと綺麗に置くと「失礼します!」とこれまた元気よく退室していった。

 肩に力が入り過ぎているのが難点だが、印象は悪くない。まあ、ろくに話したこともない人物を第一印象だけで評価するのはあまり良くないと思うが……。

 さて、と腰を上げて回覧文書を手に取りざっと眺めながら自分のデスクへ戻る。

 あまり大した内容ではないな。

 

「今時紙媒体で回ってくるのも時代遅れね」

 

 私の肩越しに文書を眺めたマリアがそう呟いた。

 マリアの髪が頬に当たってくすぐったいが、すごく気になるというものでもないのでそのままにしておく。

 

「なかなか、根付いた文化というのは変えがたいということだ」

 

「ふーん……。そういえば、千鶴はよく本読むけど紙の本よね?電子より紙の方が好きなの?」

 

「まあ、紙の方が本って感じがしてな」

 

 文書の内容を把握したので確認しましたという意味の印を押す。

 さて、次のところへ回しに行くか……。

 

「おい」

 

「なによ」

 

「手をどけろ」

 

 立ち上がろうとした瞬間、マリアが私を後ろから抱き締めるように手を回した。

 まるでジェットコースターのシートベルトのようだ。

 

「ふふ~ん」

 

「ふふ~んじゃない。手をどけろ」

 

「アホ毛」

 

「髪を弄るな」

 

 私の言葉など聞こえていないように髪をいじり回すマリア。

 はあ……。

 

「きゃっ」

 

 マリアの事を気にせず立ち上がり、文書を回しに次の部署へ。

 

 

 三分後。

 

 

 事務室に帰ってきたらマリアが私のデスクに陣取っていた。

 少々離れた隙に侵略してくるとは……。

 

「おい、退け」

 

「嫌」

 

「仕事の邪魔がしたいのかお前は」

 

 ジト目で睨み付けてくるマリア。

 まったく……。

 

「退かないのなら、こうだ」

 

 マリアの背後へ回り、両手でマリアの頭を掴む。

 

「えっちょっ……あいたたたた!?ダメ!許して!退くから!!!」

 

「なに、ツボを押してマッサージしてあげているんだ。ありがたくマッサージを受けろ」

 

「や、辞めなさい!もう!ダメ!」

 

 勢いよく立ち上がったことで、マリアへのマッサージは終了した。マリアは一目散にソファへと逃げると、再び背もたれに顎をのせてこちらを見る体勢に。さっきと違うのは抗議の視線を私に向けていることだけ。

 まったく……。

 やれやれと自分のデスクに座り、業務へと戻る。

 

 

 数分後。

 

 

 PCに向かって集中力が増してきた頃、マリアからの視線がないことに気が付いた。

 私を見るのに飽きたんだろうと結論づけて仕事を続ける。

 毎度毎度の報告書作成である。

 部下達から送られてくる報告書は大半が報告書の体を成さないので一々解読して、それを報告書として直してまとめあげて報告するのだ。

 まったく困った部下達だ……。

 

「ちーづーるー」

 

 なんとも、間延びした声で呼ばれた。

 声の主は当然だがマリアである。

 

「なんだ」

 

 PCからは目を離さず、手を止めることもせずそう聞き返した。そう大した用じゃないだろう。

 

「呼んだだけ」

 

 ほらやっぱり。

 大体の行動は読めているのだ。

 変わらず業務を続ける。

 部屋にはキーボードを打つ音だけが響く。

 これぐらい静かな方が個人的な好みである。

 都会の喧騒は煩わしい。

 やはり、老後は田舎に引っ込むべきか……。

 ふと、視線をずらした。

 ちょうど、左斜め下。

 そこには見慣れたピンクの猫耳のようなもの。

 正確には、髪である。

 そして、それが少しずつ浮上してきて……マリアと目が合った。

 

「あ」

 

 それだけ呟いたマリアは再び潜航を開始する。

 

「おい。何してるんだ?」

 

「……潜水艦ごっこ?」

 

 何故疑問系?

 

「よいしょっと」

 

 急に立ち上がったマリア。

 これは潜航からの急浮上どころか空へと飛び立ったのではないだろうかマリア型潜水艦は。

 まあいいと気にせず業務に集中する、が……。

 背後に回ったマリアが再び私の髪を弄り始めた。

 ……もう、好きにさせてやるか。

 特に反応を示すことなく私は一人、深い集中の海へと潜航していく。

 目の前にあるのはPCのみ。

 手をひたすらに動かしていく。

 残業は出来る限りしない主義。

 しかし、今日は定時で上がりたい理由があった。

 定時帰りのためにもとにかく集中……。

 突然、目の前にピンク色のものが現れた。

 ふぁさっと目の前を舞うものは髪の毛で……。

 マリアが、私の膝の上に座っていた。

 

「おい……」

 

「気にせず仕事して」

 

 いや、これでどう仕事しろと。

 

「きゃっ……え?」

 

 仕方なく、マリアを抱えて運ぶ。

 ソファに下ろしてデスクへ戻る。

 壁掛けの時計を見ると、既に四時を回っていた。

 これは……少々本気でかからなければいけない。

 自分自身の中でも最高の集中力を発揮しなければならない。

 イメージするのは、居合。

 脳内には火のついた蝋燭。そして、構える自分。

 火は燃える。

 私は待つ。

 そして、時が訪れる。

 一瞬、火が踊った瞬間。私は火を切り裂く。

 今日もまた、よく切れた……。

 

 説明しよう!

 千鶴は居合をイメージすることでめっちゃ集中力を増すことが出来るのだ!

 ちなみにこの集中力が高い状態の時、千鶴の目からはハイライトが消えるので、

 

「えっ……なんすか班長怖っ!?」

 

 とよくなるのである。

 説明終了。

 

 

 ……業務、完了。

 時間は、五時前。

 完璧だな。

 そして時計の針が五時を差し、定時である。

 帰る。

 

「おい、マリア。帰るぞ」

 

 ソファに座るマリアに声をかける。

 が、返事がない。

 

「マリア……拗ねてるのか?」

 

「別に。なんでもないわよ」

 

 まったく……。

 

「しょうがない。今日は久々にマリアの上がりが早いから仕事を定時で切り上げてデートでもしようと思ってたんだがな。予約した店にキャンセルの電話入れないとな」 

 

 スマホを取り出して、電話を開いて……。

 

「!? 待ちなさい!!!」

 

 お、かかった。

 

「デートするならするって言いなさいよ……」

 

「お前達の大好きなサプライズってやつだ。悪いか?」

 

「悪くはないけど……折角定時で仕事終わらせようとしてた千鶴の邪魔しちゃったし……」

 

 なんだ、そんなことを気にしていたのか。

 まったく。

 

「そうだな。お前が邪魔してこなければもっと余裕を持って定時を迎えていただろうな。それに……」

 

 マリアを捕まえて、目を合わせる。

 目を逸らそうとするマリアを逃がさない。

 

「ちょ……千鶴……」

 

()だってお前に構ってやりたかったんだ。今日は覚悟しておけ……!」

 

「え、ええ……」

 

 このあと、マリアは反撃……では生ぬるかった。

 逆襲されたのだった。




マリア「なんか肩こりが治った気がする」

千鶴「ふっ……」(ツボ押しの成果)
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