それにしても未来編と書くとなんか火の鳥感……
くそあのクソコテバードめ!!!
思い出したら腹たってきたぞおい!!!
秋晴れの日曜日。
気温も下がり、あの鬱陶しいような暑さとはおさらばしてお出かけ日和というわけである。
「遊園地~♪遊園地~♪」
「あんまりはしゃぎ過ぎないでよ?」
「分かってるわよ。わたし、子どもじゃないから!」
……まあ、子供なんだがな。
そう言うとうるさくなるので口には出さないが。
大人といえば千歳の方が同年代に比べたら大人びていると思う。単純に物静かだからそう見えるだけかもしれないが。あ、けど刃物のことになると年相応になるな。
ま、大人びていると言っても結局は子供は子供ということだろう。
「ジェットコースター!絶対ジェットコースター乗る!」
「アリアはジェットコースター好きなのか?」
「まだ乗ったことないから乗りたいの!この前来た時はみんな怖がって乗れなかったから」
この前……?
前に連れてきた時はジェットコースターなんて見向きもしなかったはずだが……。
「GWに学校の友達と来た時よ。あなたがバルベルデ行ってた時」
「あ、ああ……あの時か」
苦い記憶を思い出してしまった。
あの時はアリアの小学校入学祝いということでアリアのお願いを聞くという約束をしていたが急遽仕事が入りバルベルデへ飛んだのだ。
当然アリアはごねるし、帰ってからもしばらく口を聞いてくれなかった。なんとかGWの分をこれから取り戻すということで許してもらったのだが、子供から嫌われるというのは想像以上に来るものがある。
出来れば、あんな思いはもうしたくないのだが……。
「難しいだろうな……」
「? 何が難しいの?」
「いや、こっちの話だ」
どれだけ……。
どれだけ、戦えばいいんだろうな……。
マリアや装者達の出ることはなくなった。
彼女達の守った世界を維持するのが俺の仕事となったわけだが、まるで終わりが見えない。
平和は掴み取るより維持することの方が難しいと国連のお偉いお嬢さんが言っていたがまったくもってその通りだと思う。
「……パ!パパ!ねえ!聞いてるの!」
「ん?悪い、聞いてなかった」
「もう!ちゃんと聞いててよ!」
「ごめんごめん。謝るから許してくれ」
「むう……じゃあ、肩車して」
「はいはい……っと」
屈んで、アリアを肩に乗せて立ち上がる。
……ちょっと重くなったか。
訂正。
今の言い方だと誤解が生まれそうだ。
大きくなったという意味で言いたかったのだ。
「ママより高~い!」
「ホントね~。良かったわねアリア」
この間までちっこかったと思ったのだが、子供の成長とは早いものだ。
最近は一年過ぎるのも早いし、確実に歳を重ねていることを実感する。
周りからは若さの秘訣なんて聞かれるがなんてことない。
東京都の水で毎朝顔を洗っているだけである。
「千歳はママと手を繋ぎましょうね~」
隣のマリアが千歳に手を差し出す。
千歳はその手をしばらく見つめると……。
「だいじょうぶ」
そう言った。
俺は笑いが止まらなかった。
マリアからは怒られた。
理不尽である。
さて、休日ということもあって人で賑わう遊園地。
人、人、人と人しか見るものがないのでなんともつまらないが、このつまらないものの大切さというものを知ればそう見れない景色ではない。
……個人的には秋なのでぶどう狩りとか紅葉見に行ったりとかの方がいいのだが我が家の姫が遊園地というのだから遊園地なのだ。
悲しいことに、父親の意見というのは優先事項ではない。別に亭主関白というものでもないし、子供の笑顔が見れるのならそれで構わないが。
というわけでジェットコースターであるが……。
「ごめんねお姉ちゃん。身長が足りてないんだ」
「う、嘘よ!わたしが130cmに満たないなんて……」
アリアがいざ身長制限に引っかかり、スタッフから優しく乗れないことを伝えられていた。
「うーん小学一年生とかならそんなもんだと思うよ?」
あー……。
こういうのがあるのか。
あんまり遊園地とかに来たことがないから失念していた。
「しょうがないからアリアがもっと大きくなったら来ましょう?ね?」
「うー……はっ!」
マリアに宥められるアリアだが、俺を見た途端何か思い付いたような顔をした。
……なんとなく読めた気がする。
「パパに肩車すれば130cm以上あるわッ!だからだいじょうぶ!」
「大丈夫じゃない。ほら、行くぞ。……すいません娘がご迷惑おかけしました」
スタッフさんに謝ってその場を離れた。
俺に肩車すれば130cm以上あると言い出すのはなんとも子供らしい発想で微笑ましいがスタッフさんに迷惑はかけられない。
ごねるアリアを無理矢理連行して近くのベンチに座らせた。
「なによ!130cm以上ないといけないなんて!さべつよさべつ!」
子供とはどこで言葉を覚えるのか。
小学一年生にして差別なんて単語を覚えたのか。
「しょうがないでしょう。あれはね、130cmより小さい子が乗ると危ないから乗っちゃダメってしてるのよ?」
マリアによるごねるアリアの宥めタイムが始まった。
俺はこの光景が好きである。
「……なんで130cmより小さいと危ないの?」
「え?それは、その……」
子供は時にドキッとする質問をしてくる。
大人でもハッキリと答えられないような。
こういう時に子供を納得させられるような言葉をかけられるかアドリブ力が求められる。
マリアはアーティストなのでアドリブ力はちゃんとある。
少し考えたマリア。
思い付いたと目を開き、真面目な顔でアリアに言い聞かせた。
「ジェットコースターに130cmより小さい子が乗るとね……首が飛ぶのよ。こう、スパーンって」
さっき、マリアの子供を宥める姿が好きと言ったが理由はこれである。
珍回答とでも言えばいいか。
真面目な顔でとんでもないことを言うので腹筋に悪い。
それと……。
「ひっ……」
それを真面目に信じるアリアも可愛いのでこの光景が好きなのである。
「ねえ、お父さん」
「なんだ千歳?」
「130cmより小さい人の首が飛ぶなら普通に乗ってる人は胴体が切り裂かれるね!」
目を輝かせながら、千歳は年相応の子供らしさで子供らしくないことを言った。
この息子は……。
一体誰に似たんだ?
「どう考えてもあなたよあ・な・た!」
ふざけるな。
俺はこんなトリガーハッピーならぬスラッシュハッピーじゃなかったぞ。
目下のところ、千歳のこの癖の矯正が俺達夫婦の課題であった。
さて、遊園地に来たからには色々アトラクションを楽しんでいきたいものである。
アリアも全部乗る!と息巻いていたが初っぱなのジェットコースターからつまづいてしまったが他のアトラクションは大体楽しんだ。
「今日はたのしかったな~。あとはもう帰ってご飯食べる!」
「そうね~。今日なに食べたい?」
楽しげに会話しながら退場ゲートへと向かう母娘。
いやいや待て待て。
「おい、まだあれが残ってるぞ」
あれと指差したのは【お化け屋敷】
ここのはなかなか怖いと有名らしい。
「え?もうぜんぶのったじゃないおとうさん」
「そうよはやくかえってゆうはんのじゅんびしなきゃ」
なんともぎこちなくそう言った二人。
そのままぎこちなく歩いて……走り出した。
まったくしょうがない奴等……。
「行きたい」
「え?」
「お化け屋敷行きたい」
珍しく、千歳がわがままを言った。
いや、わがままというと悪いので願望を言ったと言おうか。
「え?駄目よ千歳。あそこには怖いお化けがたくさんいるのよ。千歳は小さいから食べられちゃうかもしれないわ」
「そうよちい!あそこは怖いところなのよ!ちいは怖くないの!?」
『千歳君はお化け怖くないもんね~』
「うん。お化け怖くない」
その言葉に驚く母と姉。
その前にであるが……。
「セレナ。お前、ついてきてたのか」
小声でぼそっとセレナに話しかけた。
『はい。家族でお出かけなんていいじゃないですか』
まあ、それはそうなんだが……。
「千歳に憑くのはやめろ。何か悪いことが起きたらどうするんだ」
『私は悪霊じゃないですから大丈夫ですよ』
「俺はまだしも千歳はまだ五歳だ。何が起こるか分からん」
『けど……すごい憑き心地いいんですよ千歳君。それに幽霊のみんなとも仲良しですし。一番は私ですが!』
憑き心地がいいという発言が既に悪霊のそれだと思うのだが如何だろうか?
「言っとくが、お前実年齢30半ばだろう?犯罪だぞ」
『なに言うんですか!千歳君は可愛い甥っ子です!』
「その可愛い甥っ子に取り憑くのはどうなんですかね叔母さん」
叔母さんという発言に怒るセレナ。
見た目はこんなだが充分おばさんという年齢だし血縁的にも叔母さんなので仕方ない。
「ちょっとあなた。あなたも千歳を説得して」
セレナと小声会話をしているとマリアが俺に助けを求めた。
だけど悪いな、俺もお化け屋敷入りたい派なんだ。
「それじゃあお父さんと千歳の二人で行ってきて」
優しくマリアがそう語りかけたが千歳は俯いて、泣きそうな声で言った。
「……みんなで、行きたい」
なんて、なんて健気なんだろう。
なんて家族愛。
みんな一緒がいいだなんて……。
これほどの家族愛。邦画なら売れること間違いなしだ。
というわけで。
「行くぞ」
「しょ、しょうがないわね。マ、ママもついていってあげるわ。別に怖くなんてないし~?昔はもっと怖いものと戦ってたわけだし?お化けなんてママが倒すんだきゃら……」
「そ、そうよ!わたしも怖くないし?むしろお化けおどろかせてあげるし?か、かかってきなさい!」
なんとも勇ましいことを言う二人であるがだな。
「その、腕から離れろ。痛い」
「お姉ちゃん、痛い」
俺はマリアから左腕をガッチリと掴まれ、千歳はアリアから抱きつかれていた。
「これはあれよその、あなたが怖いだろうなと思ってよ。ほら、怖くないでしょう?怖くないわよね?ねえ?ねえ?」
「そういうお前が一番怖いんだが……」
言っても離れてくれない我が妻。
しょうがないのでこのままお化け屋敷に入るとこにした。
はぐれないように千歳と手を繋いで歩く。
結果は……左耳が痛くなった。
まあ、察してほしい。
ほとんどお化け屋敷の内容が入ってこなかったぞ。
グロッキーになった妻と娘の介抱をして遊園地を後にした。
帰りの車内には夕方のラジオと可愛らしい寝息。
出かけた帰りはいつもこんな感じだが……最高のBGMなのでラジオの音量は低めに。
バックミラーから様子を伺えば可愛らしい寝顔。
よく遊んでよく食べてよく寝るのは子供の特権だ。
たまの休日でも、こうして家族サービスするのは疲れるが疲れはしないのだ。
疲労なんて吹き飛ばすほどのお釣があるからである。
けど……今日は、早めに寝るとしよう。
しかし今寝るわけにはいかないのでガムでも噛んで眠気を覚まそう。
「ガム」
「はいはいっと」
収納からガムを取り出し、包み紙を開くマリア。
そうそうその板状のガム……。
「はい、あーん」
ガムを持った手をこっちにつきだしていた。
急に、何を言い出すかと思ったら……。
「そんな恥ずかしい真似出来るか」
「いいじゃない。二人とも寝てるんだし」
確かに、そうなんだが……。
『あーん!あーん!』
約一名めっちゃ見てくるんだよなぁ……。
まあ、幽霊だし今更か。
「ん……」
あーんなんて、いつぶりだろうか。
子供にはしていたが、マリアからされるのは本当にしばらくぶりだ。
「たまには、私のこともちゃんと見てよね。千鶴」
「……見てるさ。何時もな」
マリアの顔が赤い色に染まったのは夕陽のせいだけではないだろう。
それと、顔が熱いのも夕陽のせいだけではないだろう。
しかし眩しいのは夕陽のせいなので、サングラスをかけることにした。
西陽が眩しいからかけた。
それだけのことである……。
別ver 水族館編
アリア「お魚お魚~」
マリア「ペンギンさんがたくさんいるところなのね~楽しみ」
千鶴「よし、行くか……」
入り口真っ暗
アリア「!? 暗い!?お化け!お化け出る!こわい!!!」
マリア「大丈夫よアリア~。お化けなんて出ないから。いるのはお魚さんよ?」
アリア「やだやだこわいこわい!!!」
千鶴「……よいしょっと」アリア抱っこ
アリア「やだパパ!強引なんてやだ!」
千鶴「目を隠してろ。そうすればお化け出ないから」
アリア「……うん」
千歳(秋刀魚……太刀魚……!)