氷川姉妹に弟がいたら_番外編   作:タクティくす

5 / 11
美咲回。


やっぱりハロハピの方が暁斗のメンタルを思う存分フルボッコにできるから書いてて楽しかったかも


実は百人一首イベでネタかぶりしちゃってるというね、だから本編はちょっといじったんだよ(憤怒)


奥沢美咲誕生日記念:伝えたい言葉

9月の残暑も終わって秋が深まってきた今日この頃。漸く秋になったと実感できるようになってきたでしょう。

 

紅葉はもう少し先だから、こころが紅葉狩りに行くと言い出して、弦巻家所有の山へ連れて行かれるのはもう少し先になるかな? 

 

.……なんて、言いながら実は結構楽しみなんだ。去年は松茸が生えてたりなんてしてたし、美味しいものが沢山。それと、ハロハピの皆といるとやっぱり楽しい、かな。

 

 

────え? そんなことはとっくに知ってる? ……やだなぁ、まだまだ話したいことは一杯あるんだからさ、今日ぐらいは私に付き合ってよ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私と暁斗が出会ったのは、確かハロハピの活動が軌道に乗り始めた頃、ちょうどあかりちゃんの応援をしていた頃だったと思う。

 

こころ発案の楽しいこと探しの最中にこころの目に留まったのがきっかけだった。

 

 

 

* * * * *

 

ある日の昼下がり、ハロハピの5人で病院へ行った帰りのことだった。

いつものようにこころとはぐみと薫さん、所謂3バカはあっちこっちをふらふらと好奇心赴くままに突き進む。まるで小学生だ。そんな3人に笑みを浮かべながら見守っている花音さんと2人で、後ろからついていく。そんなお約束が出来上がっていた。

 

 

「あら? あそこの人……」

 

こころの目に留まる何かがあったらしい。視線の先を辿ると、1人の男の子がいた。年は私と同じか1つ下かな? 奇妙なことをしていたわけでもないし、変な見た目というわけでもない。言い方は悪いけど、どこにでもいる平凡な男子といった感じなんだけど、

 

「ん〜? あっ! あっ君だね! おーーーい」

 

どうやらはぐみの知り合いらしい。かなりのスピードで走り寄りそのままはぐみがハグをした。

 

「ぐはっ……」

 

おーい。はぐみさーん? もろに鳩尾に入っていますけどー? ってやばいやばい!? 

 

「ちょっとはぐみ?! あんた何やってんの?」

 

まずその速度。

最早人間かどうかすら疑いたくなる身体能力を誇るこころに勝るとも劣らない運動性能をフル活用した全力疾走。

そのまま勢いを殺さずに飛びついた。

遠くからでも聞こえてきた呻き声がその威力を雄弁に語っている。

 

いや、そもそも男に抱きついてることにびっくりだ。

 

「……はぐみ。久しぶり」

 

……めっちゃプルプルしてる。膝が笑ってるし変な汗かいてるよ……

 

「うん! あっ君の誕生日パーティー以来だね! 元気してた?」

 

 

 

「只今絶賛不調中ですよー。殺されるかと思った」

 

そりゃそうだ。いくらはぐみが小柄な女の子とはいえど、滅茶苦茶痛いでしょうに。

 

「あっ……ごめんあっ君……」

 

「いんや。問題なし……ってあれ? 松原さんまで」

 

「あはは……こんにちは暁斗くん」

 

どうやら花音さんとも知り合いらしい。この謎の御仁は一体誰なのだろうか? 

 

 

「……はぐみ、この人は誰かしら?」

 

.ん? 何故だ。こころの様子がいつもよりおかしいような.気のせいかな? 

 

「えっとね、あっ君だよ。暁斗だからあっ君」

 

「どうも暁斗です」

 

いやいやいや

 

「いや、苗字は?」

 

「「「……」」」

 

え? 何この空気。なんかまずいこと聞いちゃった? 

 

「.氷川

 

ボソリと呟かれた小さな音。

まるで何かから逃げ出したいと言っているような、それ自体が苦痛であるかのような、たった三文字なのに初対面の私にも悔恨と怨嗟が伝わってくるような、そんな不思議な声音だった。

 

「.氷川暁斗です」

 

よくある普通の自己紹介。にもかかわらず背筋が凍りつきそうな感覚がするのは何故だろう。

 

「暁斗君……その、大丈夫なの?」

 

「まあ、はぐみの知り合いですし……」

 

この後に続く言葉はなかった。理由は至極単純明快。我らのトラブルメーカーが火を噴いたから。

 

 

「決めたわ! あたしはあなたを笑顔にする!」

 

まるで「笑顔じゃないこはいねぇが」と彷徨い歩くなまはげの類。

見ず知らずの人が見たらきっと笑顔振りまくテロリズムに他ならない。あれやこれよと氷川さんの手を引いて突如爆走を開始。

 

どうやらハロー、ハッピーワールドの活動に巻き込むつもりらしい。

 

結局この不思議な男の子、氷川暁斗の抱えていた光と闇は突如爆発し襲いかかってくるまで分からずじまいだった。

 

* * * * *

 

それからは本当に色々なことがあった。

 

幼稚園や病院でライブしたり、豪華客船でライブしたり、スカイダイビングして高度数千メートルでライブしたり、突如遊園地ができたり、雪山に遭難したり、ライブしたり……

 

側から見たら「何言ってんの?」って言われそうだけど、これは気にしたらダメなやつだと思う。

 

毎度毎度あの人はこころに巻き込まれていた。時には黒服の人が拉t ……いや、招待したりして半ば強制で連れて来られることもあった。

 

ぶつくさと不平不満を言いながらもなんだかんだで付き合っているあたり本当に素直じゃないよね。

 

ただ、全然笑わなかった。全く笑みを浮かべていないわけではない。けれど、ふとした時に楽しもうとしている自分を嘲笑っているような、”笑う”ではなく”嗤う”って感じで、少なくともこころの好みではなさそうな笑顔だった。

 

けれど、暁斗が面倒見が良かったのは本当だったと思う。3バカの突拍子もないアイデアに可能な限り寄り添いながら実現可能なラインを見極めて、その上で3バカを丸め込むのは暁斗がいたから出来たことだと思う。

 

『“できない”とはいわず”多分できるだろうけど”それ以外の方法を選ぼう。違うところが綻ぶからバランスを取ろう』

 

それにどれだけ私と花音さんが助けられたかはもはや言うまでもない。

こころは「人に不可能はない」と信じている節があり、自身の基準で出来る出来ないを判断しがちだ。

 

それがダメということは絶対ない。あかりちゃんは間違いなくそれに救われた。花音さんはそんなこころに勇気を貰ったことは疑いようがない事実だ。実際そんなこころだからこそハロー、ハッピーワールド! が今ここにある。

 

けれど、同時に世の中には不可能なことが存在する。極端なことを言うと今この瞬間に時間を止めるとか、過去に遡るとか、高度数千メートルから生身で落下して無傷とか。そうでなくても出来ないものは出来ないという当たり前の悲しい現実が存在する。

 

暁斗はどういうわけか“出来ない”という事実に一家言あるらしく、こころの理想と現実を擦り合せるのが上手かった。

 

例えば「こころがお星様とライブがしたい」と言い出し宇宙への思いを馳せ始め、黒服さんがNASAとの連絡を取り始めたら「流れ星は地球からしか見れなくないか?」とか、「数年越しのラブレターとか儚くないですか?」と現実味のあるライブへと話を戻したり、黒服さんとこころの要望を満たしつつ害のないものを考えたり、楽しさを提供するという方向性の問題上どうしても発生してしまう弊害をそれとなくこころに伝えることは暁斗に頼りっぱなしだった。

 

本人に感謝を伝えると

「ただの僻みでしかない」とか、「言い訳つけてこころたちの行動の邪魔してるだけ」とか良くない反応だったことが寂しかった。

 

たしかに見方を変えるとこころの言うことにケチを付けてると言えるのかもしれないけれども、確かに弱者の言い訳、と言われたらその通りやもしれない。出来ないとか言うなってよく聞くセリフだし。

 

けれども、正しさだけが人間じゃない。暁斗の言葉を借りると『正しいことは痛いこと』なのだから。

自分を磨くという言葉がそれをよく表している。その例として一番わかりやすいものは筋トレだと思う。自身に負荷をかけてより良い結果を目指している。だから辛くもなるし辞めたくもなる。

そんな弱さを、こころはよくわかっていない。あの子意外とすぐになんでもできちゃうからね。

 

正しいだけだと人は壊れてしまうから、暁斗のような地の足のついた“人”の視点が必要不可欠だった。まあ、グダグタ言ったけど、それ以上にこころの非常識っぷりをフォローしてくれる人がいてくれたのが私にとっては大きかった。

 

確かにこころみたいに眩しくはないけれど、暗い夜を照らす月のように昏く優しく心地よかった。

 

 

そんな暁斗だから私は、いや私だけじゃなくてみんなも暁斗に心の底から笑って欲しかったんだと思う。嗤うんじゃなくて笑って欲しかった。

 

だから、みんな考えた。どうすれば暁斗に笑顔をプレゼントできるのか。けれど、会議は難航した。一番付き合いの長いはぐみですら暁斗がどうすれば喜んでくれるのかはっきりしたものをイメージ出来なかった。

 

先日の誕生日パーティーもお礼を言っていたものの、どこか申し訳なさそうな顔をしていたらしい。花音さんも同様だ。「氷川」という名字に抵抗感があることと、お姉さんが優秀であること、そのぐらいしか聞かされていないらしい。どうやら暁斗本人以上にはぐみの友人がそれを話すことを止めているみたい。

 

共に過ごしてきたはずなのに、我をあまり感じなかった。まるで、蜃気楼のようで、いまいち全体像が掴めない。

 

拘泥として、苛立ちが募り始めた頃、とうとうこころは極めて暴力的な結論を出した。「わからないなら本人に聞けばいい」と、特大級の地雷を自ら踏み抜いてしまった。結果的に暁斗の周辺の人たちから話は聞けたけれど、暁斗本人からは聞けなかった。

 

 

暁斗の抱えていたモノは他人がとやかく言っていいことではなかった。私にも妹や弟がいるけれど、年が離れているせいか、そこまで矢鱈と何かにつけて比べられたことはない。だから、正直、何を言ってあげたらいいのかわからない。

 

わからないから、とにかく側にいようと思った。暁斗には味方がいなかったからせめて私はそうありたい。

 

正直私より花音さんの方がこの手の役には向いてそうだとわかってはいるけれど、どうしてか私がやりたかった。それを話した時に何故か花音さんからは生暖かい視線を貰ったけれども .

 

それからは暁斗にべったりだったと思う。ハロハピのメンバーのことで ……とか建前を用意して。でも、暁斗も悪いと思う。だって文句1つ言わずにそばにいさせるんだもん。居心地いいからついついそれに甘えちゃうし ……ってそれはともかく、暁斗自身のことをよく知ることができたと思う。

 

薄味の料理が好きで、ジャンクフードがちょっと苦手で、犬より猫派とか些細なことから、朝4時に起きて山吹さんの家に行って朝御飯を食べて、放課後はアルバイトか羽沢珈琲店かハロハピ。といった習慣とか挙げ始めたらキリがないけど、実は意外と知らないことばかりだった。

 

暁斗って本当に受け身というか自分のことを話していなかったんだなってその時になって漸く気づいたよ。キグルミで顔を隠してライブに出ている私が言えるかは微妙だけど結構シャイだよね。

 

まあ、そんな風に日数を重ねるとさ、愛着が湧くというか、なんというかさ、その ……ああ。恥ずかしいな。

 

そうなると不思議なことに居心地の良かった時間がむず痒くなって、でも嫌じゃなくてさ……むしろもっとって感じだし。

 

 

ハロハピって建前抜きで暁斗と一緒にいること増えたよね。羽沢珈琲店に遊びに行ったりしたし、2人で時間作って出かけたりしたしさ。

 

まあよく考えなくても完全にデートだったけど、暁斗にはその自覚は無かったよね? まさか私が業を煮やして押し倒すまで全く気がついていないとは夢にも思わなかった。……そこからのことはまあ、その、うん。まあ恋人らしいことをしましたよね。

 

まあ、暁斗も多少は前向きになったというか、私がいうのも恥ずかしいけど『美咲のためにも頑張る』って言ってくれてすごく嬉しかったよ。将来の約束もしたし、2人で歩んでいこうって約束したのに……

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「 ……凄く、()()()()()んだよ? バカ」

 

 

 

私が今いるのは墓場だ。墓標に刻まれた文字は『氷川家之墓」。

 

そう、暁斗は死んだ。現実はいつだって理不尽だ。なんだって暁斗ばかりこういう目に遭わなければいけないんだ。彼

 

の不遇の原因である姉や両親や追い込んだ奴らはのうのうと生きているのに、こんなのってないよ。あんまりだよ。

 

もう私、笑えないよ。世界を笑顔に! なんて無理だよ。きみがいなくちゃ始まらないよ。

 

 

だって、笑ってる人が憎くて憎くて堪らない。八つ当たりとはわかっているけど、とてもじゃないけど祝福なんて絶対にしたくない。

 

「 ……会いたいよ」

 

もう無理だとわかっているけど、前を向かなきゃいけないことぐらいわかっているけれど、私は、忘れることなんてできやしない。

 

 

「また、来るね」

 

多分きっとまたすぐ、弱音を吐きにまた来るよ。いつか、この痛みも風化してしまうのかと思うと今は物悲しいけれど、暁斗の分まで騒がしい彼女達の面倒を見なければいけないのだから、少しぐらいは許してほしい。

 

 

赤い菊を添えてその場を去る。

 

ねえ暁斗、赤い菊の花言葉って知ってる? 

花音さんに石のプレゼント送ったらしいし、意外とそういうのは知ってるかな? 

 

あれ? そう思うと、なんか妬けてきた。

 

 

じゃあ、またそのうち来るよ。これだけは絶対に色褪せないし、いつまでも変えたくない。永久不変の想いだから。

 

私こと奥沢美咲は

 

 

 

 

 

 

『あなたを愛しています』

 

 

 




10/1の誕生花である赤い菊の花言葉は「あなたを愛しています」です。

この時点で死ネタ以外ないだろ!と本編のエンドを一つ衝動的に使い潰したんですよね、
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。