氷川姉妹に弟がいたら_番外編   作:タクティくす

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おたえの伏線回収しなかった(忘れてた)
二期ドリ・・・やる?

実は当時サブタイトルは「May Love My Hero」と悩んだんですよね。



花園たえ:誕生日記念秘密の花園

秋も終わり、肌寒くなってきた。色づいた秋はすっかりと鳴りを潜め、木枯らしが吹き、人々がクリスマスや年の終わりににむけ東奔西走している師走の月の都内某所。流星堂と呼ばれる質屋、その蔵にてある祭りが行われていた。

 

yeah────! おたえ、誕生日おめでとー! Foooooo!!! 

 

「「「イェ〜〜イ!」」」

 

マイク片手に音頭を取る猫耳。主賓である黒髪ロングに、他3人よりやや控えめに声を上げるチョココロネ。悪ノリしだした発行少女。

その様はまさしく祭り。パーリーピーポーと呼ぶに相応しい。

 

唯一のインドア派と俺はこのノリについていけず、困惑するばかり。

 

 

「4人はなんでこんなにテンション高いんだ?」

 

「花園の誕生日にかこつけて騒ぎたいんじゃないの?」

 

蔵にカラオケセットがあったこともあったこともあり超ハイテンションで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだ。もし成人していたらここに酒が入っていたと思うと、学生でよかったと思わざるをえない。

 

「そもそも、俺がいていいのか?」

 

女3人寄れば姦しい。況や5人をや。そんな中に野郎1人というのは中々に居心地が悪くなるのも道理だ。故に黒一点、この中で唯一の男性である氷川暁斗がそんなことを尋ねるのも無理はないことだろう。

 

「他ならぬおたえが拉致って連れてきたんだしいいんじゃね?」

 

金髪ツインテールの少女にして流星堂の孫娘である少女、市ヶ谷有咲が答える。

 

「それならいいんだけど……」

 

「もー! 2人ともノリが悪い! ありさ〜一緒に歌お?」

 

「うわぁっ!? 待てって! ちょまま……仕方ねーな」

 

 

口ではぶつくさと言いながらもノリノリなあたり実に素直じゃない。楽しそうで何よりである。

 

5人でキャッキャウフフしている様を横目に、ジュースをちびちびと飲みながら、やはり女の園に1人いるのは居た堪れないものだと苦笑する。

 

長い付き合いであるAfterglowや商店街の面々は、宇田川巴が男より男らしかったり、気心が知れているためまだマシなのだが……せめて純か紗奈あたりがいれば気が紛れていたかもしれない。

 

無論この場にいるのが嫌というわけではない。花園のことは嫌いじゃないし、プレゼントだって用意している。ただ、この女の子女の子した空間にはどうにもこうにも馴染めないだけなのだ。代わりと言ってはなんだが、ジュースの買い出しやお菓子の補充なんかは引き受けているしどうか大目に見てほしいところだ。

 

正直なところ、どうして花園が俺をここに連れてきたのかがよくわかっていない。俺にはよくわからないけど、誕生日というものは皆に祝ってもらうものというのが一般的だし、きっとそういうものなのだろう。

 

その皆の中に入っているだけで特にこれといって深い意味はない……こんなこと考えていることがバレたら沙綾がうるさいか。というよりかは十中八九泣かれる。

 

()()()以来どうにも沙綾は過保護というか心配性になってしまった。心配されて悪い気はしないが時々面倒だと思ってしまうのは如何ともし難い。

 

 色々文句を垂れているがなんだかんだで沙綾が楽しそうにしているのを眺めているだけでもそこそこ面白いし、今のところは帰る気はない。 

 

「ねー暁斗?」

 

 暫く経った頃に、手を後ろに隠した花園がこちらに来た。

 

「どうした? 追加で何か作る?」

 

「ん……そっちじゃない」

 

「そっか。じゃあ、どうした?」

 

「お願いがあるの」

 

「お願い?」

 

誕生日だしよっぽど変な要求ではない限り叶えてやるのも吝かではない。

 

「付けて欲しいものがあるんだ」

 

「……ん?」

 

「暁斗も花園ランドの住人だよ」

 

俺よりも細く白い腕が姿を見せた。それは陶磁器のような美趣を擁していた。同じ人間のものであるはずなのに、性別が違うとこうまで印象が変わるのかと驚きを禁じ得ない。

 

・・・これは決してその手に握られているものから目を逸らしているわけでは断じてなく、花園の手が綺麗だと思っただけで他意はない。ないから、きっとその手先には何も無い筈だ。ああ、そうに決まっているさ……!! 

 

「ね?」

 

「」

 

しかし現実は非常だ。満面の笑みでずいと突き出す。その手先にある()()()は、きっと何かの間違いだと信じたい。

 

「暁斗、もしかして嫌だった?」

 

「嫌というか、なんかおかしくない?」

 

「おかしくないよ。きっと似合うよ?」

 

「嬉しくない」

 

「……? 私は嬉しいよ?」

 

「あー……うん、そうかもしれないけどさー」

 

「なんだよ……私も着けたんだから付けろよ!」

 

「市ヶ谷さん!? ……えっと……その、似合っているよ? すごく」

 

突然の乱入者。やや頬を膨らませ、文句ありげに不平を言うその様は、綺麗な金髪に可愛らしい顔立ちとこれまた可愛らしいうさ耳、羞恥により赤くなっている顔もあいまって凄まじい破壊力を有している。まるで森に棲む妖精のようなある種の幻想的な雰囲気すら感じさせていると言ってもいい。問答無用で写メを撮ろうと考えるぐらいには、何ともまあ可愛いという他ないだろう。

 

だがしかし、男にとってはうさ耳(地獄)だ。それをつけた瞬間男の尊厳が木っ端微塵に吹き飛んでしまうことは1+1が2であるように、犬が西を向けば尾が東であるように自明の理と言っても差し支えないだろう。そんな破滅は誘うなんて、市ヶ谷さんはきっと悪魔の類に違いない。

 

「う、うるせー! いいからお前もつけろよ! な? な!?」

 

すげー目がぐるぐるしてる。最早普段の市ヶ谷さんを期待するのは無理だろう。さっきは帰る気はないと言ったが、あっという間に嘘になってしまった。俺は今、全力で帰りたい。

 

「あー、ごめん。この後姉さんの分の夕飯作らなきゃだから……」

 

実は全くの嘘というわけではない。今日の夕飯はもう既に作り置きして冷蔵庫に入れてあるが、やっぱり家に帰ったら温かいものが用意されている方が姉さんたちも嬉しいだろう。何より、三十六計逃げるに如かずだ。こんなところにいられるか、俺は帰らせてもらう。

 

「逃すと──」

 

「思った?」

 

「げっ……香澄ィ!? それに沙綾まで」

 

突如背後から現れた沙綾の凶手が首周りを捉えていた。力を加えたらあっという間に裸絞の完成だ。背中に伝わる感触のこととか考えている場合ではない。逃げなきゃやばい。そう、わかっているのだが……

 

「これなら、動けないよねー」

 

香澄は俺の腕にしがみついていた。……こいつ思ったよりもあるななんて、不埒なことが脳裏をよぎったその刹那、逃げ出す術が失われたことに気がついた。関節を極められたたわけではない。力尽くで抜け出せるのは間違いないだろう。だが、スマホのカメラを構えている牛込さんを見て、俺は詰んでしまったことを悟ったのだ。

 

────下手なことをしたら社会的に殺される。痴漢のうえに暴力を最低クズ野郎として写真や住所などをばら撒かれる。たった数秒で、俺は人生の岐路に立たされていた。

 

 

「それじゃあ……」

 

花園が笑みを浮かべてにじり寄ってくる。

 

「ちょっ……待てよ、やめっ……うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

────一つだけ確かなことがある。この日のことは一生忘れられないものになったという

 

──────────────────────

 

お風呂から上がり、髪を乾かしながら今日のことを振り返る。

記憶にある中で一番楽しい誕生日だった。レイが引っ越してから()()1人だったから、こんなにたくさんお祝いされたのは初めてのことだった。

 

「ねーおっちゃん、今日はみんなにお祝いされたよ」

 

今日はオッちゃんの日だ。明日はドロちゃん。この時期は寒いから、一緒に寝るとふわふわであったかい。 

 

「それにね、やっと……」

 

胸がいっぱいになった。私は今本当に幸せなんだ。()()()()()()()()()時計の針がやっと動き出したんだ。

 

「あっ、メールだ……」

 

差出人は今は遠い場所にいる友人だった。

 

 花ちゃん、誕生日おめでとう! 

 そっちはもう寝る前かな? 本当はもう少し早く送りたかったけど、今は忙しくて、ごめんね? 

 

 P.Sこっちの夏休み直前。6月には仕事が終わるからそっちに帰るよ。また会える日が楽しみだね

 

 レイ

 』

 

そっか、レイも日本に帰ってくるんだ……話したいことがたくさんあるんだ。ギターのこと、バンドのこと、ポピパのこと、そして……うさぎみたいな私のヒーローのことを。

 

──────────────────────

 

もうあの日から4年も前のことになる。

 

 

 

私は大きな別離と対面していた。唯一の友人、和奏レイが引っ越してしまうらしい。

 

自分自身にぽっかり大きな穴が空いたような喪失感、そしてこれから先の不安で押し潰されそうだ。けれど、引越しはなくならない。子どもである自分が駄々をこねても大人が困った顔をするだけで何も変わりはしない。やり場のない悲憤をどうにかするために、私は公園へと駆け出した。

 

そこで、私は出会ったんだ。()()()な目をした少年と。私の大好きなヒーローがそこにいた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?」

 

泣きはらしたこちらの様子に気付いて、怪訝そうな顔をこちらに向ける。ブランコを適当に漕ぎながら問いを投げかけてくる。

私もブランコを漕ぎながら答える。

 

「友達がいなくなっちゃうんだ」

 

「病気?」

 

「違う、引越し……」

 

「そう……」

 

名も知らぬ者同士だから言えることがある。レイを悲しませたくないから本人には言えない。レイのお父さんやお母さんにも同じく、自分のパパやママにも言えない。でも、この場限りなら思うことを言っても怒られないだろう。

 

「嫌だよ……離れたくない。一緒がいい」

 

「ふーん……そりゃ、大変だね」

 

「うん」

 

「それに今はメールなり電話なりで話せるし、一生会えないって訳じゃないんだろ?」

 

「でも、寂しい」

 

「そりゃそうかもしれないけどさ、親の都合もあるし、仕方ないだろ?」

 

あまりに無遠慮な言葉にむっとする。

 

「何がわかるの!? 何も知らないくせに!」

 

「……そうだな。何も知らんし、興味もない」

 

「なら、わかったようなく「でも、別れの痛みは何となくわかるよ」……え?」

 

瞬間()()()が溢れ出す。氷のように冷たくて、でも触れると火傷しそうになる程に熱い。今の彼は相反する2つの事象を無理矢理一纏めにした奇妙な様相を呈していた。

 

「引越しとかじゃないけど、もう二度と会えないかもしれないんだ。何もかも変わっちゃった……何もかも、何もかもがだ」

 

それは、ある意味で友との別離よりも残酷だった。

 

距離の問題ではなく、時間。友達ではなくなってしまうこと、そっちの方がずっと辛く、苦しいものだと今の今まで考えたことはなかった。

 

過ぎ去りし過去の物言わぬ遺骸。一体何があったかはわからないが、この人は別れを知っている。二度と会えない別離を味わっている。

 

「……」

 

「……なんてね。俺のことは今はいいよ」

 

「うん。なんかごめん」

 

「勝手に話しただけだし、いいって。それよりさ」

 

この人、よくわからないけど悪い人ではなさそうな気がする。

 

「お別れはちゃんと言った?」

 

「言えない。会うと泣いちゃうし」

 

「……そっか。さっきの続きになるけど、自分なりにけじめつけないと絶対後悔するぞ?」

 

「後悔したの?」

 

「そりゃもちろん。自分の場合は突然だったから言えるわけがなかったけど、言えたならある程度自身の選択として“納得”できるから」

 

「納得?」

 

「まあ、あんたの場合はちゃんとお別れするとか、また会おうって約束するとかじゃないの?」

 

「そっか……」

 

また、会える……そう、だよね。今は飛行機もあるし、頑張れば会えるよね。そう、信じてる。

 

 

「同じ空を見上げている。空は繋がっている……か」

 

「どうしたの急に」

 

「ただの受け売りだよ。慰めの言葉とも言うけど」

 

「ふふ……なにそれ」

 

カッコつけてるみたいだけど、全然様になってない。

 

 

「会おうと思えば飛行機で会えるしさ、ちょっと遠くにいるだけだよ」

 

心はつながっていると信じられていれば、離れていても心配ないからとそんなギザなセリフを吐くこの人のことが可笑しくて思わず笑ってしまう。ひとしきり笑い終わったのを見計らっていたのか、言葉を発した。

 

 

「その相手がいなくなると寂しいだろ?」

 

「うん。辛くて苦しい」

 

「それでいいんだよ。忘れちゃったら、本当に終わりだから」

 

「終わり?」

 

「うん。忘れちゃったらもう会いたいともなんとも思えなくなるだろ? それは自分の中で死んだってことになると思うんだ」

 

「うん」

 

「だから、辛くて苦しいぐらいが多分丁度いい。痛みは忘れたって消えないんだから」

 

「……」

 

 

この人は、よくわからない。

 

この人は、一体何なんだろう。この人は何を経験したんだろう? 見たところ私と歳は殆ど変わらないのに、なんでこんなにもずっしりとくる言葉が出てくるんだろうか。

 

でも、たしかにこの人の言う通り後悔はしたくない。どうせなら笑顔でお別れして、いい記憶でさよならした方がいいに決まっている。

 

「……どうやら腹は決まったみたいだな」

 

「うん! ありがとう」

 

 

「……礼は要らないよ。ほら、やることあるんだろ?」

 

さっさと帰れとそっぽを向いた。

 

「今度会ったときにはお客さんになってね!」

 

その時は私がお礼として、今から練習した歌を聞かせるから。

 

 

「そりゃ楽しみだ。いつかどこかで()()()唄を聞かせておくれ」

 

ありがとーと声をあげながら私はその場を駆け出した。さよなら、たった数十分の出会いだったけど勇気をくれた人。真っ赤な目をしたうさぎなヒーローみたいな人。

 

 

「……記憶に残る、ね。そう、だよな。なら、俺も最後まで虚勢を張り続けられるよな」

 

 

それがどう意味で、どうしてウサギみたいに真っ赤な目をしていたのかはこの時の私には知る由もなかった。

 

 

 ──────────────────────

 

 

あれから月日が流れ、小学校も中学校も卒業したが、あの時のヒーローは一度も姿を現さなかった。会えば一目で分かる自信があるのに……

 

私のハジメテあげたかったのになぁ……色んなところでストリートしたのに、全然見つからない。思えば名前を知らないから探しようが無かった。また会いたいのに、会えない。近所は大体探したし、捜索範囲を広げたい。そう思って資金確保も兼ねてライブハウスでアルバイトを始めた。場所は昔から憧れだったSPACE。

 

 

 ──────そこで

 

「今日からこちらでお世話になります。氷川暁斗です。よろしくお願いします!」

 

 

私はまた、あなたに出逢えたんだ。背丈も声も目の色も違うけれど、わかる。間違いない。あの人だ。

 

ああ、会いたかったよ私のヒーロー。もう勝手に何処かへ行ったりしないでね?

 

 




実は暁斗の姉以外で一番最初に知り合ったのはおたえ。
ナカナ イナ カナイの誕生秘話的な何か?

暁斗が本格的に壊れるのはこれより後、本編開始時におたえのことを覚えていない、後はわかるな?
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