直死よりも透視の魔眼が欲しいです。ええ、使い道はもちろん女の子のパンツを見るためです   作:白黒パーカー

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雄英入学編
0話:透視って男のロマンだよね。つまり女の子の隠れたパンツは秘宝です


「————()()

 

 吐いた言葉に寒さを感じる。閉じた瞳には熱が篭もる。

 瞼を開ければ、視界にある様々な色が全て落ちていくような感覚に襲われる。

 しかし、何も見えなくなったわけじゃない。

 ただ俺の眼に見える景色に、線と点が浮かび上がるだけのこと。毒々しいその線と点は建物も目の前にいるロボットも、周りでロボットと戦っている人ですら例外なく張り付いている。

 そして、今からすることに何の支障も起きない。

 ——ただ殺すだけ。

 少し文句を言うなら女の子のスカートに隠れているパンツを透視できないとか、(しき)さん的にマイナス点だと思います。

 ほんと、直死の魔眼よりも透視の魔眼のほうが絶対いい。

 

「さあ来いよ、ロボットヴィラン。彼女みたいに生きてる神様は殺せないけどさ。動いてる機械ぐらいなら俺でも殺せるさ」

 

 目の前にいる機械に声を掛けながら、片手に持った定規(じょうぎ)をゆるく構える。

 敵であるロボットヴィランは3体。それぞれの機体には他の景色と同じくいくつかの線が脈打ちながら絡んでいて1箇所だけに点がある。

 

『目標確認、ブッコロスッ!!』

「ああっ、殺してみろよ! とっくに俺は死んじまったけどなぁ!」

 

 それがスタートの合図だった。

 1番近くにいた一体が物騒な言葉を吐きながら、俺に向かって真っ直ぐ突撃してくる。

 キャタピラで移動するくせに思いのほか速い。

 しかし、

 

『ブッコロッ……!?』

 

 数秒で目の前まで距離を詰めてきたロボットヴィランは俺に対して右腕を振り上げてくるが遅かった。

 その時には、俺は横にズレながら機体側面に絡む線を定規でなぞる。脈打つ線。それは死の線だ。()()()()()を持つ俺にしか見れず、触れることさえできない万物の(ほころ)び。

 本来なら硬くて包丁ですら切り込めないはずの機体は、定規によってあっさりと何の抵抗もなく切り抜かれた。

 ガラガラと機体を崩す音が後ろから聞こえてくる。俺は振り返らず、血のついた刀を払うように定規を横に振るった。

 

 虹色に揺れているであろう瞳で残りのロボットヴィランを見る。

 

「さて、次はお前たちの番だ。殺す覚悟はできてるか?」

 

 もちろん俺はできている。

 心の中でそう呟いて、俺はロボットヴィランに向けて駆け出した。

 

 ——俺はこの殺すことしかできない魔眼でヒーローを目指す。それが今、俺がすべきことだから。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆       

 

 

 

 

 

「————直視」

「直視じゃないよ、このバカっ!」

 

 学校の校門にボコっと鈍い音が響く。それは俺の頭から鳴っていた。

 

「いったぁっ! …………もう、痛いよ一佳(いつか)。幼馴染だからって容赦なく頭を叩かないでよさ。ちょびっとだけ一佳のパンツとかイロイロをギリギリのラインで見ようとしただけなのに」

「お前は幼馴染の前に常識で行動を判断しろ。というかどう考えてもアウトだよ、変態(しき)

 

 中学3年目の冬になり、雪は降らなくても程々に寒い冬空の下。

 学校帰りの前に一佳のスカートの下を覗こうと顔を下げたら、頭に手刀が振り下ろされた。

 痛い。すごく痛い。

 涙目になりながら制裁を下した彼女、一佳を軽く睨む。

 だって、一佳がこんな真冬なのにスカートだけしか()いてないんだもん。寒いんだから、スパッツぐらい穿()けばいいのに。それはもう俺に太ももを見せるため、もっと言えばパンツを覗けと言ってるに違いない。

 

「違うからな? スカートは学校の校則だし、スパッツは動きにくいから穿いてないだけだぞ」

「一佳、よくわかったね。もしかしてテレパシーの個性でも発現したの?」

「そんなわけあるか。こんなのいつものことだからそれぐらいのことは分かるよ。小学生の時から色は何も変わらないし」

 

 まあ、確かにいつものことか。1度目とは違って精神的な成長もそこまでなし。2度目の世界に生まれて1番付き合いが長い友達は一佳だけだから。

 

 拳藤一佳(けんどういつか)は小学生からの幼馴染だ。

 サイドポニーに纏めたオレンジ色の髪。中学生にしては出るとこは出て、締まるところは締まってるプロポーション。

 ムチッとしながらも鍛えられた分引き締まった体はとても魅力的だ。

 

 小学生からの付き合いだけど、ここまで成長するとは思わなかった。知識と体験じゃやっぱりギャップがある。

 知り合いながら鼻が高いと色さんは思います。透視の魔眼があればぜひブラやパンツ姿を見てみたいぐらい。

 改めて見ても、一佳の身体はしっかり鍛えられてるな。あの日から一佳は夢を叶えるためにずっと努力してきたことが服越しからでもよく分かる。

 

「どうした、色?」

「いや、一佳もずいぶん成長したと思って」

 

 

 俺が黙っているからか、一佳が不思議そうに声を掛けてきたから素直に思ったことを伝える。

 すると、彼女は一瞬呆けた顔をしたが俺の言葉の意味を理解したのか、クスリと微笑んだ。

 

「ん、まあね。ここまで強く成長できたのも、アンタが私のために手伝ってくれたおかげだよ。いつも馬鹿なことばっか言ってるけどさ、私はすごく色に感謝してるん――」

「ほんっと透視の魔眼でもあれば、じっくり見たくなるぐらいムッチムチになったよね。……ほんと、なんで俺は直死の魔眼なんだろう。透視の魔眼ならその身体もたっぷり見れぇ痛い、痛いイタイっ! 頭割れそうで痛いんですけどっ! 個性はダメっ、大きな手で潰さないでぇっ!」

「感謝しようとした私がバカだったよ! この変態!」

 

 声を荒らげる一佳の大きくなった手で頭を鷲掴みされて、すんごい痛い。個性は卑怯だよ。

 女の子なんだからもう少し優しくお淑やかに……でも、お淑やかな一佳とか想像できない。あれ、なんだか締め付ける手が強くなって……い、く。

 

「あ、あのー、どんどん締め付ける手が強くなってるんですけど? 冗談抜きで頭が割れちゃうから。蒼崎(あおざき)さんみたいに頭が弾け飛んじゃうからっ!」

「色、お前また余計なこと考えたろ。言ってみな? 内容次第では許してあげるから」

 

 クラスメイトの前では姉御肌の一佳さんも、俺の前では凶暴になっちゃうとか。マジ怖い。そんな特別な関係いらないんですけど。

 でも、内容次第では許してくれるのは優しさでは?

 ここはやっぱり一佳が喜ぶこと言った方がいいよね。たぶん。

 

「一佳みたいな、……お、女の子のスベスベした手で、頭を握りつぶされるなんて……、我々の業界ではご褒美です! あ、嘘です。痛いですっ。Mじゃないからとっても痛いんですけどっ!」

「こんのバカッ!」

 

 あー、あーおーざきー。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「あー、いたかった」

「反省しなよ、もう。色は普段から真面目にしてくれたらいいのに」

 

 しばらく頭を鷲掴みされた後、一佳には一応、お願いを1つ聞くことで許して貰えた。どうせいつも通り受験に向けた実技試験の特訓だろうけど。

 さっきまでのはちょっとした茶番だった。

 今は一佳と隣になって一緒に歩く。道路には自分たちと同じく帰ろうとする生徒や大人。パトロール中のヒーロー達がいた。

 

「ほんと馬鹿なことばっか言って。……毎度毎度同じことばかり言われるこっちの身にもなってよな」

 

 どこか呆れたような表情で言ってくる一佳。

 うん、全く持ってその通り過ぎて反論することが出来ない。

 でも、なんだかんだ離れていかない一佳のその姉御度の高さは彼女の魅力だと思います。

 さっきまでの行為はいつものやり取り。アレも毎日やってることだから、ルーティンワークみたいなもの。

 やめろと言われてはい、そうですねと、やめるには少しばかり惜しい。

 

「そこは勘弁して欲しいかな。欲望に忠実に生きるのも、この色さんにとってのしょうもない願いみたいなものだからさ」

「願いっていうか欲望でしかないけどな。しかも、色欲マックスの」

「まあ、否定はしないけど」

 

 一佳のツッコミにゆるく肯定する。

 欲望に忠実に生きるということはただの欲求。これは生きるために必要なモノなだけ。願いではあるけれど、これは当たり前のものじゃないといけない。

 それでも、今の俺にとっては確かな願いなのだ。

 

「一佳は今でも願いは変わらない?」

 

 気になって俺は一佳に質問する。少しだけ力が入ったのか瞳がじわりと熱くなり視界の認識がズレる。

 一佳も俺の眼の変化に気づいたのか、少しだけ一佳の雰囲気が真剣になる。虹色に揺らめく瞳で、線と点が絡む一佳の答えを待つ。

 

「……うん、変わらないよ。私はヒーローになる。だから、雄英高校に受験する! 絶対に雄英に合格して夢を叶える!」

 

 一佳は真剣に、それでいて嬉しそうな声で夢を語った。

 死の線と点が絡んでいてもその笑顔は素敵だった。

 その願いはとても綺麗なモノだった。

 だから、それをもう少し近くで見てみたい。ついでに一佳のパンツも見てみたい。彼女は今でもキャラクターパンツなのかどうかを確かめたい!

 

「そっか。その願いが叶うことを楽しみに待ってるよ。……まあ、高校も一緒だろうからよろしくね一佳。今度こそ一佳のパンツを見てあげるから」

「反省してないな、こいつ……。というか、もう受かった気か? しかも私と色の2人も。さすがに雄英を舐めすぎじゃないか? あの高校はオールマイト含めプロヒーローばかりだす名門校だぞ?」

 

 視界を切り替えると、一佳はいつものように呆れたような笑みを浮かべて訪ねてくる。

 でも、その言葉には全く持って心配は感じられない。

 

「きっと大丈夫だよ一佳。俺も一佳も願いのために色々と積み重ねているからさ。雄英ぐらい余裕で受かるさ」

「根拠もなにもないな。……でも、そうだな。油断はしないけど自信ぐらいは持って受験に取り組もうかな」

 

 ああ、大丈夫だろう。

 そもそも一佳は雄英高校ヒーロー科に受かることは知っている。俺がこの世界に転生して多少の変化はあろうとも大丈夫なはずだ。

 逆に言えば、俺が入れるかどうかのほうが不安だが。まあ、そこは何とかなるだろう。

 素敵な女の子のパンツを見るためなら、この直死の魔眼で神様だって殺してみせるさ。

 そんなことを考えてると、一佳がいつも見せる男勝りな笑顔でニカッと笑う。

 

「そのためにも色。帰ったら実技用の特訓手伝ってくれよな?」

「いいとも。お代は一佳のパンツでどうだい? 今ならお安くしとくよ」

「懲りないなぁ。……まだ締め付けが足りなかったか?」

「はい冗談です。ぜひとも、特訓させてください。だから個性で手を大きくしないで」

 

 軽い冗談を言って、笑いながら帰りの足を進めた。

 

 

 そして、俺と一佳は雄英高校ヒーロー科を受験する。

 

 

 

 

 




続くかどうか分からないけど頑張ります。
それはそれとして、見えないものを頑張ってみようとするギリギリ感はいいですよね。スカートに隠れたパンツとか。

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