直死よりも透視の魔眼が欲しいです。ええ、使い道はもちろん女の子のパンツを見るためです   作:白黒パーカー

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1話:そして魔眼は起動する。見えないモノを見るために

「……パンツが見たい!」

 

 寒空の下、俺は白い息を吐きながら呻いた。

 パンツが見たい。女の子のスカートの中に隠れている秘宝を見たくて仕方がない。

 透視さえあれば。透視の魔眼さえあればすぐにこの悩みも解決できるのに。

 

(しき)、またバカなこと言ってる」

 

 そんなことを考えていると、隣から容赦のない言葉が飛んできた。

 そちらを見れば、オレンジ色の髪をサイドポニーに纏め、学校の制服に身を包む一佳(いつか)が冷めた目で俺のことを見ていた。いつも通り、彼女はスパッツを穿()いておらず、そのムッチリした生足を覗かせていた。

 

「いいじゃんかよ、一佳。俺はさ、パンツが好きなんだよ。スカートの下にあるパンツにときめいちゃうんだよ。そういう(さが)なの、個性とか起源的にたぶん。——そういうわけで一佳、パンツ見せて」

「そんな個性ないし、堂々とセクハラをするな」

「ぐぇっ」

 

 冷静にトッ、と俺の首に手刀を叩き込まれて喉から変な声がでる。

 いつもの調子でお願いしてみたがダメだった。相変わらず一佳さんは容赦(ようしゃ)がない。基本的に頭の回転が速く姉御気質の委員長だけど、最終的にはパワープレイに辿り着つくんだよなぁ、この人。

 

「……ひどいよ一佳。その手刀、人によっちゃ気絶しちゃうからね? 試験前なのに首がすごい痛いんですけど」

「色がいつもふざけたことばかり言うからだろ。されたくなかったらもう少し普段から真面目にしろよな」

「いやいやいや、色さんはいつでもどこでも真面目ですから。本気で一佳のパンツを見ようと頑張ってますけど」

「なお、タチが悪いわ。この変態!」

 

 最初は冷静に対応していた一佳だが、すぐ耐えきれなくなったのか「あー、もー!」と叫びながら、自分の髪を掻きむしる。

 それから俺のことを睨みつけてきた。美人な人に睨まれるとすごく怖いんですけど。

 

「おい、色! 私たちはこれから雄英の実技試験を受けに行くんだぞ! お前も今日ぐらいは、バカなこと言ってないで、試験の対策とか色々考えろ!」

 

 そう。彼女の言う通り、今日は雄英高校ヒーロー科の実技試験日だ。

 

 ヒーローを目指すものなら誰もが目指すヒーロー育成学校。平和の象徴であるオールマイトを含め、多くのプロヒーローを排出していることから彼らに憧れた多くの子どもたちは、雄英高校を受験する。

 

 俺と一佳も今日は朝早くから試験会場である学校を目指して足を運んでいる。

 隣で睨みつけてくる彼女を見る。普段から怒ると怖い彼女だが、今日は特段とピリピリしている。さすがの彼女も緊張してるんだな。

 俺は笑いながら、一佳に言葉を返す。

 

「おいおい、一佳。俺のこと舐めちゃあいけないぜ。普段はまぁ、ふざけてる色さんだけど、何も対策をしていないわけじゃない。一佳もそれは知ってるだろ?」

 

 俺がそう言うと、一佳は睨むのをやめて複雑な顔になる。

 

「はぁ? まあ、確かに普段のバカを除けば、色がすごいことは知ってるけどさ。その全てを変態性が塗りつぶしちゃってるんだよな……」

「ふふん、それが俺の願いに近い行動だからね。ま、それは置いといて今日はね、実技試験のためにまとめノートを持ってきたんだよ」

 

 そう言ってドヤ顔をする。

 俺自身2度目の人生で何をすればいいのかを模索した。

 まとめノートにはこの世界に来てから、自分にできることを増やすために取り組み続けた情報が(まと)められている。たとえば効率的に走る方法だったり、戦闘で使える格闘技、ナイフ術。直接戦闘に変わらないものなら、相手の緊張をほぐすやり方や他人の感情を推測する方法などもあり、様々な分野について記録されている。

 

 それもこれも資料を集め分析し、それらに詳しい専門家に聴いたり、実践してみて反省をしてと小さな頃からコツコツ積み重ねてきたおかげだ。

 ただまぁ、それを極めようとしている人と比べればしょぼい。要はできない人より、少しできるだけのこと。俺はそう思っている。

 

 そして、ノートの数は膨大(ぼうだい)で何冊かのまとめノートがあり、今回はそのうちの1つを、鞄の中に入れてきた。

 さっきまで怒っていた一佳も目をパチクリさせて、興味深そうにしていた。まぁ、彼女には今まで秘密にしていたことだ。どことなくワクワクしているところがまた年相応で可愛らしい。

 

「へー、それは初耳かも。良かったらさ、私にも見せてもらっていい? ダメなら仕方ないけどさ」

「いいよ。ちょっとだけ待ってね。いま鞄から出すから」

 

 肩にかけた鞄に手を突っ込んで、ガサゴソと探していると硬く平ぺったいノートらしきものに触れた。これかな?

 

「えーっと、あーこれじゃなかった。これは一佳ママに頼んで撮らせてもらったコスプレ集だ。えっと、ノートノート……。あ、あった。はい一佳、これが色さん特製のまとめノート」

「…………」

「一佳?」

 

 間違って出してしまった一佳ママコスプレ集と書かれたアルバムをしまって、探していたノートを見つけ出す。それを隣の一佳に渡すが、一佳はノートを受け取らない。それどころか足を止めてしまった。

 声を掛けてからしばらく様子を見ていると、一佳は俺の肩に両手を置いた。その顔は無表情だった。

 

「おい、色。さっきのはなんだ?」

「さっきのって、なに?」

「まとめノートの前に出してたやつ」

「あー、あれはアルバムっていうかコスプレ写真集だよ」

 

 無表情のまま淡々と言う一佳にそう答えてみると、俺の肩を激しく揺らしてきた。

 おおう。ゆれりゅー。

 

「そうじゃなくて! なんで!うちの母さんがコスプレしてて、その写真集をお前が持ってるのかって、聞いてるんだよッ!」

「あうヴぁっ、いつ、か……そんな激しく、揺、すると。話せない……」

 

 ガクガクと体を縦に揺らされて、頭がシェイクされる。

 一佳ママのコスプレ写真集。それには谷より深いわけがある。

 一佳とは小学校からの知り合いだが、お互いの家は割と近いところにある。当然、付き合いが長くなれば互いの親とも関わりができ、コスプレ写真は一佳ママにダメ元で頼んだものだ。

 

 そして頼んでみたところ、意外とオッケーされてできたのがこのコスプレ集だ。原作では一佳のヒーローコスチュームがチャイナ服で似合っているのを知っていたから、チャイナ服とか、色々なものを着てもらい撮らせてもらった。俺にとっての癒しのバイブルなのだが、今は割とどうでもいい。特に深いわけでもなかった。

 

「何なのアレッ! 私、あんなの撮ってたの知らないんだけどッ!」

「まあ、一佳に見られたら止めてたでしょ? いないときに撮らせてもらった。後悔はない」

「当り前だバカ! これから私は、母さんのことをどんな目で見ればいいんだよッ!」

 

 さっきまで緊張していた一佳も今はいつも通りの様子に戻った。少しやり過ぎた気もするが、まぁいい。

 緊張することはだめなわけではないけどさ、一佳。それが過度になれば身体の調子が悪くなる。身体の動きが固くなる。

 それならいっそリラックスしていつも通りに行動できるほうがいい。いつも通りに動けるのなら、彼女は必ず雄英に受かるはずだから。

 

 それはそれとして、一佳ママは一佳以上にナイスバディで素敵なパンツでした。

 

 

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「マジで一佳さん、怖かった」

 

 動きやすい服装に着替えた俺は、パーカーのポケットに両手を突っ込みながら、ため息をこぼす。

 一佳をリラックスさせるために見せた一佳ママコスプレ集が思ったよりも効果を出したからだ。リラックスどころか怒りゲージマックス状態。

 試験の説明会場に着き周りにも他校の生徒がいた事で、取り敢えずその場では怒りを収めてもらえたが、まだ怒りが燻ぶっていたのか、俺の顔に自分の顔を近づけながら、周りに聞こえないように一佳はボソッと言葉を零した。

 

 ——色、どういうことなのか詳しく教えもらうからな? ()()()()()()()()

 

「……どーしよう。次、一佳に会ったら殺される」

 

 無表情ながら低い声で言った一佳の言葉を思い出し、背筋に寒気が走る。

 殺されないよね? ヒーロー志望な子がそんなことしないよね?

 ……怒られないように言い訳を考えておくか。

 

 ほぼ無駄なことを考えながら、俺は周りの受験生に目を向けた。

 俺が今いるのはG会場。原作通り、試験内容も1Pから3Pのロボットヴィランを倒す加点方式、0Pのお邪魔ロボットヴィランも存在を確認した。そして、同じ学校で協力されないように一佳とは別会場に分けられていた。いや、ほんと今の一佳と離れられてよかった。

 

 動きやすい服装に着替えた生徒たちはこれから始まる試験に向けて各々、準備運動をしていたり、瞑想(めいそう)などをしていた。そして俺はその集団の中にいる2人に注目した。1人は腕がセロハンテープみたいになっているしょうゆ顔の少年。もう1人は2本の大きな角がチャーミングな外人少女だ。その2人とは学校は違うけど、俺は一方的に知っている者たちだった。

 

瀬呂範太(せろはんた)にB組の角取(つのとり)ポニー……。一佳以外の原作キャラ見るとなんか新鮮だなぁ」

 

 ヒロアカの世界に来たって感じ。

 それに含めてさっきの説明会場で見た緑谷くんたちの原作通りのやり取り。俺というイレギュラーがいても、さして物語の流れは変わってないみたいだ。うん、なんか知らない人ばかりの中で知っている人がいると、テンションが上がる。

 他にも原作キャラがいないかと周りに視線をキョロキョロさせると、不可思議な光景というか前世でも見たことがあるような様子に視線が釘付けになる。

 

「よーし、本気出して行くぞー! えっと、手袋とブーツも脱ごっと!」

 

 試験会場にも関わらず、集団の端側に女の子の服が散らかっていて、何もいないはずなのにそこから女の子の活発そうな明るい声が聞こえてきた。

 

「————()()

 

 そっと魔眼を起動する。

 すると、何も無いはずの空間には死の線と点が絡み、数秒すれば女性の体を形成した。俺は彼女のことを知っている。瀬呂と同じくA組になるはずであろう生徒。そこには葉隠透(はがくれとおる)がそこにいた。

 彼女の個性は『透明化』。人から見えないというそのままの個性だ。それが常時なのか発動なのかはさておき、物語の中ではっきりとした姿は見えていない、のだが……。

 

「…………わーお」

 

 思わず声が()れた。

 一応容姿は出たことがない。それでも設定では()()()()()とかなんとか言われてた気がする。

 しかし、今、目の前に見えるのは何なのだろうか?

 直死の魔眼は死の線と点を見るだけで透明人間の姿を明確に見るような能力はない。それでも、死の線は見えない葉隠に絡みつき体を形作り、その神秘を視覚化していた。どんな顔付きなのかはわからない。でも、絡みついた線のおかげで端正な顔つきのなのは分かる。

 原作での葉隠は見えないながらスタイルはいいということは分かっていた。でも、これは一佳にも負けてない。それどころかタイプムーン世界に出てくる美人美少女らと比べても負けてないんじゃないの? 葉隠さん、マジぱねぇっす。

 

 誰にも見えないはずの葉隠透。しかもスッポンポンにしてありのままの姿つまり裸を、間接的とはいえ()()()()()()()()()()()()()()

 おー、これはなんというか見てはいけないモノをこっそり見ているようなイケナイ気分だ。普通にイケナイことか? これはホントに見ていいモノなのか?

 数秒沈黙する中でできる限りの速度で思考する。うーん。

 うん、大丈夫だ。これはきっと合法だ。葉隠は自分の意志で裸になって、俺はたまたま直視の魔眼を起動した。

 どちらも自分の意志でやってることならば、全く持って問題はないのだ。というわけで、試験が始まるまで見ていよう。

 

 しばらく葉隠の裸をじっくりと見ていると、葉隠の顔がこちらの方を向いたような動作をする。

 それからキョロキョロと周りを見て、もう一度俺の方に顔を向けると、しばらくしてこちらに近づいてきた。

 

「あれれ? もしかして私のこと見えてる?」

 

 目の前までくると(いぶか)しげに尋ねてくる葉隠。傍から見えていないだろうが、うーん、と腕を組み(あご)を撫でる動作をしながら体ごと横に傾ける姿は活発的な性格で彼女のノリの良さが見て取れた。

 どうしよう。葉隠の質問になんて答えればいいんだろう。

 一佳なら、一佳の裸見てたとか素直に答えれば手を大きくして制裁をしてくるぐらいの仲だけど。

 さすがに初めてあった女の子に一佳と同じようなことは言えない。というかこれが一佳にバレたら余計に怒られてしまう。ただでさえ朝の件で怒られているんだ。いずれ雄英に通いだしたことを考えたら、バレた時のことが物凄く怖い。

 ……ここは、適当に誤魔化すか。

 

「ううん、見てないよ。君の大きなおっぱいとか予想外のくびれとか、はっきりしていないけどすっぽんぽんだろう下半部とか全く見てないよ」

「うわーっ! やっぱり私のこと見えてるじゃん!」

 

 ごめんなさい。やっぱり(さが)には(あらが)えませんでした。

 

 あわわ! と慌てながら胸を隠す葉隠。

 なんていうか、今まで見えてないから全く気にしてなかった女の子が、こうやって異性に見られて初めて恥を自覚するみたいなシチュって、なんかいいよね。

 

「大丈夫大丈夫。普通の人には見えてないし、俺自身もはっきり姿が見えてるわけじゃないから。だから、安心してそのままでいて」

「だ、ダメだよー! こういうエッチなのはダメだと思うな! ていうか、そんなに見ちゃダメ~ッ!」

「あー、はいはいごめんなさい。だから、一旦落ち着いてくださいお願いします。見えてないはずなのに、周りの目がすごく痛いんですけど」

 

 気づけば周りからジトッとした目で見られてなんだかすごく気まずい。雄英高校に入学する前に刑務所に行きそうで胸がドキドキする。

 すぐに直死の魔眼を切ると、ふうと息をつく。

 しかし、あわあわしていた葉隠は俺の顔を見て照れが引き、疑問の声を上げる。

 

「あれ、さっきと目の色が変わった? もしかして私の姿が見えていたのって君のこせ——」

「それじゃあ、おふざけもほどほどにしとこうか。そろそろ試験始まると思うからまたね。お互い試験頑張ろっか」

「え?」

 

 一佳と同じく()()()()()()()()()葉隠にそう伝えて、俺はG会場にいる試験監督者に目を向ける。葉隠の裸を見ながらもチラチラ先生のことを見ていたから、雰囲気が変わった先生に気づいたし、まもなく試験が始まるのだと予測した。

 

 やっぱり過度な緊張をしていてはいつも通りのパフォーマンスは出せないよな。試験だろうと本番だろうと無駄に緊張させないのはヒーローとしては必要な要素だ。

 うん。まとめノートに書いたことはしっかり実践できてる。

 それにいざ雄英に受かっても、知っているキャラがいないと寂しいし。

 

『はいすたーと!』

 

 そして予測した通り試験監督の唐突な開始の合図を出し、俺は1人加速した。

 後ろでは原作通り困惑する生徒たちの声とそんな彼らを急かす監督者の声が薄く聞こえてくる。

 

 もちろん予測だけではなく原作を知ってるからこそできた対応。しかし、これを卑怯とは思わない。

 そもそもせっかく知識というアドバンテージを持ってるんだ。活用しないのはもったいない。

 それに俺はみんなみたいに正義感とか持ってないし、フェアを重んじるスポーツマンシップに誓っているわけでもない。

 

 使えるモノは何でも使うさ(生かすさ)

 所詮、殺すことしかできない魔眼を持つ元一般人。

 転生したからといって、主人公補正があるかどうかもわからない。そんな中でヒーローを目指すなら、これぐらいはやらないとやってけないはずだ。

 

 さっきのことで後悔するなら、もう少しだけ慌てる葉隠とおっぱいを見ていたかった。あのおっぱいはマジでやべえ。

 

『目標発見!』

『ブッコロス!』

『コロスコロスコロスッ!』

 

 1人前に進んでいると3体のロボットヴィランが現れた。

 

「————直死」

 

 ポケットの中から定規を取り出し直死の魔眼を起動する。

 ヒーローを目指すため、自分の願いを叶えるため。これから破壊する敵に向けて、俺はナイフを構えるように定規を握った。

 

 

 

 

 

 




なんとか2話目も書けました。
一佳さんとのイチャイチャが書きたいのに、別のキャラと絡ませてしまう。
まぁ、葉隠みたいに見えなくて色々な想像ができるキャラは好きだし、書いてて楽しい。



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