Vault101のジゴロ   作:神山

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今回は殆ど説明回。いつか報復してやりたい奴のトップランキングに入る彼女が登場します。

でも日本語版の声が可愛くて……。


Vault5

メガトンの中に入り、一息つくために町の中心にある大衆食堂のブラス・ランタンに案内された俺は互いの自己紹介を済ませていた。そして現在、椅子に座らず立ったまま奢りの水を乾杯している。というのも、このミョルニルアーマーで小さな椅子に座ると重量で壊しかねないからだ。着替えればいいんだが、今は人目が多い所で機能を使いたくない。

 

「いやはや、本当に助かった。改めて礼を言わせてくれ。いつものルートを通っていたんだが、どこから湧いたのかあの虫の群れに遭遇して命からがらここまで逃げちまったんだ。バラモンもメガトン目前でやられちまったし、散々だよ」

 

ばりばりと頭をかきながら愚痴る商人の名前はクロウ。レザーアーマーに帽子をかぶった白人の男だ。ここから離れた場所にあるカンタベリー・コモンズという町を拠点に、普段からキャラバンをしていて各地を巡っているらしい。彼が主に取り扱うのは服やアーマーといったもので、なかなかの品ぞろえだった。助けたお礼にとサングラスをタダでくれ、ついでに綺麗な黒スーツや下着とかも購入した。さっそくの客に少しは気が紛れたようだった。

 

ちなみに商品は少し汚れた程度で無事だった。でもそれを抱えていた牛の変異種たるバラモンは虫に殺されてしまったため、しばらくはここで商売しつつ替えのバラモンを買う予定だとか。

 

「どうして縄張りでもないここにいたのかはわからないけれど、私達だけじゃ死んじゃうからメガトンの防衛機能に頼るしかなかったの。でも運悪く傭兵が出払っててね……いつものスナイパーだけじゃどうにもならなかったのよ。そこにあなたが現れたってわけ」

 

立っている俺に寄りかかるように座っているのはキャラバンガードのカミラ。同じくレザーアーマーとアサルトライフルを装備して赤茶色の髪を後ろで束ねている女性だ。旅と先程の戦闘で汚れているものの、中々の良い女性だったりする。

 

「へぇ、まるで物語みたいじゃない。しかもすごく強くていい男だし、横顔も色っぽいわ……ねぇ、この後時間ある?」

 

カミラの前に料理を置いて俺にお誘いをかけてくるのはここを経営している一人であるジェニー・スタール。黄色いツナギを着た茶髪の白人女性だ。このブラス・ランタンを姉弟で経営しているとか。ちなみにこちらも中々美人だ。ここ重要。

 

「あら駄目よ。私が先」

 

「えー、あなたは外で男探せるけど、私はここに来る放浪者か住人しか選べないのよ?少しは譲ってよ」

 

「さっそくモテモテだなこの色男」

 

俺を取り合う二人を横目にニヤついているのはここメガトンの保安官ルーカス・シムズ。カウボーイ風な恰好の黒人で、見事な髭を蓄えている。ここの治安などを任されている代表に近い立場だ。自己紹介の時に何もしないよう釘を刺されたのもそのためだ。

 

それと、俺の事情はすでに話してある。探し人をするにあたって保安官の信頼を得てから行動するのは当たり前だし、彼はある程度口が堅い。

 

それによると、父さんはここにある『モリアティの酒場』にて少し滞在したあとすぐに出ていったとのこと。内容は流石にわからないので直接聞く必要が出てくるが、この情報が貰えただけでも良しとする。これで今回の分はチャラになったわけだが。

 

「それにしても保安官。あの爆弾、どうにかしないのか?」

 

水を一口飲み、町の中央部にある巨大な不発弾を指差す。周りには放射能汚染された水が浅く溜まっており、その中ではなにやら宗教染みたことを言っている男がいた。アトムがどうとか、宇宙がどうとか……完全に頭がイカれてやがる。しかも話を聞けば爆弾の起爆装置はまだ解除されていないそうで、いつドカンとくるかわからないとか。

 

「どうにかしたいのは山々なんだが、見ての通り宗教絡みだし、誰も爆弾を解除できる能力は持っていないんだ。顔を知られている俺じゃ近づくことすらできやしない」

 

「ふーん……保安官、もしどうにかできるとしたら、どうする?」

 

声を抑えた俺の言葉に言い争っていた二人と項垂れたクロウまでも反応し、保安官と共に驚いた顔をする。しかし俺は保安官を真っ直ぐ見て、彼の中でされている計算の結果を待つことにした。

 

「ふむ。それが本当だってんなら、勿論報酬を払うだろうさ。そうさな、100キャップってところか」

 

「爆弾の解体には精密な作業と多大な労力を要する。500キャップはくだりません」

 

「高すぎる。そんなもん払ったらこっちが困る。150」

 

「俺はVault101の安全な環境の元、専門的な知識を学んできています。それに俺ならあの宗教団体にも気づかれずに行動できる。450」

 

「それが本当ならな。ばれてもこっちは庇えんぞ。200」

 

「やるのは夜、道具も一式も持っているから問題ありません。それに、長年頭を悩ませていた問題が一晩で解消する機会がくるのは今度はいつになるやら。400」

 

「あー、くそ。わかったわかった。300だ。これ以上は増えん。だが確実に成功させろよ?いざこざが起きたらこっちでの関与はしないし、爆発で一緒に死ぬのも御免だ」

 

「了解しました。では、終わり次第連絡しましょう。依頼は、確実にこなします」

 

俺はずれていたサングラスをかけ直して一礼し、水を飲みほした後その場を去る。他の連中には悪いが、慣れている皆と違って宿も仕事もない俺はすぐに行動しないと時間が無い。それに今晩一回きりで成功させることで能力を見せ、今後の足掛かりにしていく必要がある。

 

ちなみに敬語になるのは俺なりの仕事のオンオフ切り替えだと思ってくれればいい。依頼主、客には相応の態度を取る。今までもVaultの中ではそうしてきた。あそこでは全員が顔見知りだから切り替えをしっかりしないとなぁなぁになってしまう。

 

「さて、まずは準備……って、特にやることないな」

 

アーマーアビリティのアクティブカモフラージュ――ステルスボーイと同効果。透明になれるが走ると歪むし、音は遮断できない――を使えば難無く成功させることが可能だろうが、問題は周りにいるだろう教主達や監視がどうなるかだ。普段皆放置しているようだから問題ないだろうが、見張りがいた場合無力化する必要が出てくる。

 

まぁ、こういう時のジェイムズ式格闘術なんだけど。

 

「なにそれすごいアーマー!あ、わかったわ!あなたがメガトンの前で虫を退治した人ね!話は聞いてるわ。ところでそのアーマーどこで手に入れたの?素材は?機能は?えらく近未来的だから相当凄いんでしょうね。あ、そうそう言い忘れてたわ。いらっしゃいませ、モイラの雑貨店へようこそ」

 

「……あー、うん。どうも」

 

怒号の勢いで繰り出された言葉の波を乗り越えてなんとか挨拶を済ませる。色々考えながらアーマーアビリティのセットをして坂を上りついた先は、クレーターサイド雑貨店。自己紹介の時に町の主な設備は保安官から聞いていたため、難無く来れた。

 

店内は埃っぽく、薄暗いがしっかりとした造りで様々な物が置いてある。ふと視線を感じた先を見ると、ここの用心棒だろう男から同情したような視線を送られていた。なんというか、ご愁傷様的な。

 

「今日は何をお求め?それともこのアーマーを見せに来てくれたのかしら?そうだったら十分うれしいのだけれど、今日は特殊な殺鼠剤を作ろうと思っていたからちょっと取材はまた今度取らせてくれるとありがたいわ。でもそれだけじゃ――」

 

「ストップ、もういい。今日は買い物しに来ただけだ」

 

「なんだ、つまらないの」

 

ぶすっとした顔をされても困る。

 

ここまでしゃべくり倒してくれた彼女、モイラ・ブラウンはこの雑貨店の店主だ。赤毛をポニーテールにし、ロボット会社のロブコ社の作業服を着ている。保安官によると彼女は変人だそうで、頭は良いのだけど何か変だとか。ようやく理解した。

 

「それで?今日は何をお求め?」

 

「工具、弾薬、食料品ってところかな。少し見せてほしい」

 

「了解。ちょっと待っててね」

 

がさごそと棚を漁るモイラ。もうほとんど記憶にないゲームの内容だが、主人公もこんな感じで疲れ果てたんだろうかと思って内心苦笑してしまう。それと、彼女から何かクエストを受けられたような気がするんだが、思い出せない。まぁ、なるようになるだろう。

 

「はいこれ。商品の目録ね。ざっと見て欲しいのがあったら言って」

 

「んー……じゃあこれと――――」

 

今の手持ちの工具でも足りるだろうが、念には念をいれて準備しておく。今後使うことにもなるだろうし、銃の整備用もあったのでついでに購入しておく。そして今回使った5.56mm弾と.44マグナム弾を追加購入。50口径は在庫が無いので、言っておけば今後置いておいてくれると言ってくれた。もちろん確実に買わないといけない。食料は水と保存食、バラモンステーキ、ヌカ・コーラ数本。医療物資はまだ大丈夫。

 

「ほほー、随分と一気に買うのね。どこか行くの?」

 

「しばらくはここにいる。でも俺にはやらなければいけないことがあるから、また外に出るよ」

 

「なんかカッコいいわね!で、それって何?そんなに急ぐことなの?」

 

「まぁ、何と言うか……俺はVault101出身でだな」

 

「Vault!久しぶりに聞くわ!それでそれで?」

 

キャップの支払いをしながら話していると、あれよあれよと聞きだされてしまった。本当はここまで話すつもりもなかったのに、彼女と話しているとつい口を滑らせてしまう。それなのにそんなに嫌な気分にならないのは、彼女の仁徳というか纏う雰囲気によるものだろう。

 

あれだ、邪気が無い。だから俺が女にだらしないだけじゃないと言っておく。

 

そして話していく中で彼女が今本を書いている途中なのだということを知った。名前はウェイストランドサバイバルガイド。ウェイストランドの危険を細かく分析し、読者の生存率を上げ、人類社会の再建に貢献するとかなんとか。で、現在彼女の仮説を証明する助手を募集しているらしい。

 

「内容は各地の調査とか医療実験、あとちょっと読み物もあるかしら。もちろんちゃんとやってくれればキャップとか薬品、それに珍しい発明品もあげちゃうわ。悪くない話でしょ?」

 

「本の内容は素晴らしいものだな。いいよ、余程酷いことじゃなければ手伝おう」

 

「やった!まぁこれは依頼というか共同作業みたいなものだから、楽しくいきましょ?それでまず第一章の内容なんだけど、必要なのは危険の中で生き残るってことでしょ?例えば、食料を探すのに安全な場所と危険な場所、放射能の危険性、危険な地雷を避ける方法、おまけに地雷で利益を上げる方法。ねぇ楽しそうじゃない?どれに興味ある?」

 

報酬も良いし、完成した本をうまく使うことが出来れば人の生存率は飛躍的に上昇することだろう。それはとても素晴らしいことだ。まぁ、ざっと聞いても結構危険そうなことには変わりないんだが。

 

「まず放射能のことからいこうか。これなら十分な知識をVaultで得た。これでも医者だったし、科学も専攻している」

 

「えっ!うそ本当!?これなら私の個人的な私見のみじゃないからより信憑性が増すわね。もう!こんなすぐに一つ埋まるなんて、あなた最高ねモンド!」

 

「ありがとう。さて、まずは――――」

 

医学的観点から見た放射能の影響と科学的観点から見た放射能の被害等々、似通っている部分もあるけどちょっと違う知識をモイラに話し、彼女の知的好奇心とメモが終わるのを待つ。時折来る質問にも答え、彼女が見たことのある人体への影響の話の回答も加える。サバイバルガイドに載せるのには十分な量の取材と言えるだろう。

 

「あなた最高の助手ね!やっぱりVaultで専門的な知識を学んでることは大きいわ。これなら第二章の分野でも話を聞くと思うから、その時はお願いね?はいこれ、報酬のRADアウェイとRAD-Xね」

 

と、メモを置いたモイラから手渡された各4つずつの報酬を手に入れ、次の内容に移ることにする。

 

内容は食料品と薬品の確保。古いスーパーウルトラマーケットが近くにあるので、ああいう建物の中にまだ残っているか確認することだ。200年過ぎてるわけだし、誰か知っている人はいないのか聞くも、誰もいないとのこと。まぁ、いいか。

 

「ありがとう!基本的には食料を探すようになるけど、薬品もあったらお願いね?とにかく生きて帰ってきて!」

 

「……」

 

なんとも不安にさせる言葉と共に、俺は外に出るのだった。




まぁ、スーパーウルトラマーケットに行くのは少し後になります。

ミョルニルのアビリティのおかげでステルスは普通に使えます。でもクールタイムがクソ長く、一日一度ですし、乱発はしません。それにこの小説の主人公には正面突破させるためにこの装備をつけているわけで……。
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