くたびれおじさんと娘たちとの生活   作:usgismr

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その7

 女の子にズボンを履かせようとしたらえらく嫌がられた。

 何度も何度も首を横に振ってうなずこうとせず、ずっと眉をひそめていた。

 また皆森が身振り手振り口振りで、夜寝る時は脱ぎ捨ててええからと、迫真の演技で頼み込むと女の子はしぶしぶ承諾してくれた。

 

 皆森にも引くに引けない理由があった。

 こんな小さい女の子が、いつまでもちらちらさせたり、丸出しというのは絶対にあかん。

 それが故の皆森渾身の演技と、真に迫る説得だった。

 肌着は上下ともにぼろぼろで、手にした瞬間風化するように土に返った。

 そのことが一番皆森を悲しませた。

 

 女の子にズボンを履かせる時、皆森は出来る限り直視しないよう心掛けていたが、女の子がしゃがんだ自分の肩に手を置いてズボンに足を通す時とそのズボンを腰まで上げる時、わずかではあったが確認の意味も含め、間近で見た。見てしまった。

 

 女の子はまぎれもなく女の子だった。

 そして当然のようになにも生えてなかった。つるつるだった。

 事前にわずかな胸のふくらみとその感触を確認していたが、つい見てしまった。

 万が一、生えていたらどうしようと思ったがただの杞憂で終わった。

 何故か皆森は男の娘の知識は持ち合わせているが、いまのこの状況にそれを求めてなどいない。

 皆森は誰と会話をするわけでもないのにひとり空しく自問自答を繰り返し、いい年のくせに童貞のような反応をする自分に自己嫌悪のため息をつくのだった。

 

 ズボンには腰ひもがついていたのでこれには助けられた。

 女の子に前掛けを持ってもらい、皆森がそのおへそ辺りで紐を結んで留めることが出来た。

 その時、女の子にも留め方も教えた

 裾は引きずらないように何重にもまくった。

 ズボンのサイズが合わないのでえらくだぶついている。

 けど、しばらくの間はこれで我慢してほしい。

 体裁だけを整えた服装ではあるが、いまの女の子の恰好は皆森を安心させるには十分なものだった。

 

 一息つき、ペットボトルの水で喉を潤す。

 食事にはまだ早い、それにあの実がいつまであるのか、もつのかも分からない。

 だから皆森は女の子がお腹を空かせたら優先的に食べさせるつもりでいた。

 皆森が腹に手を当てながらうつむき、女の子に悲しい表情を向ける。

 そして声に出してゆっくり叫んだ。

「お腹、お、な、か、は空いとらんか?」

「――、――、――、――っ?」

 女の子が口をぱくぱくと開き、発音を繰り返した。

 そして自身のお腹を手を当てる。皆森と同じポーズだ。

 女の子は顔を左右に振って否定した。まだ大丈夫のようだ。

 そういえば皆森自身もまだそんなに腹が減ってないことに気付いた。

 あの実は随分と腹持ちがいいようだ。

 まるでお米やお餅のようだ、味はえらく酸っぱいけど。

 朝食べたあの赤い果実のことを思い出し皆森の口の中が唾液であふれる。

 女の子はなにがうれしいのか口元を上げてにこにこと笑っていた。

 

 ふと皆森は表情を引き締めた。

 遺骨を埋葬しなければならない。

 それだけの物を、見返りを既に十分すぎるほど受けてしまっている。

 皆森が無意識に腰に下げた剣に手を当てる。

 譲り受けたこの長剣が、早速役立ちそうだ。

 そうつぶやきながら皆森は、女の子後方の森の方へと歩みを進めた。

 途中立ち止まって女の子に手を差し伸べる。

 女の子は嬉しそうにその手を取る。そしてふたりは再び森へと足を踏み入れた。

 

 

 ぎぃぎぃぎぃ。

 奇妙な鳥の鳴き声が深い森の奥から聞こえてくる。これは昨日聞いた鳴き声と同じものだ。

 いま皆森は洞窟周辺の森を探索しているだけで森の奥まで入るつもりはなかった。

 そしてお目当てのものはすぐにみつかった。

 




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