転生したと思ったら、俺は豚貴族で地位を追われていました。   作:如月空

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アレフとアリスの修行(ダイエット)

 

「…豚じゃん……。」

 

 おうふっ!いきなり美少女から辛辣な言葉を頂きましたよ!…って、あれ?

 

 馬車から降りてきた少女の姿を見て、アレフは目を見張る。

 

 ……これ、俺の事言えなくね?つっても、多分コイツは貴族令嬢だよな?ストレートに言ったら、ヤバイか?

 

「此れはまた、可愛らしい子豚(お嬢さん)ですね。」

 

 あ、逆じゃん。

 

「あぁん!?」

 

 目の前の少女が剣呑な雰囲気を出した、そして、彼女は顔を紅潮させて叫んだ。

 

「この豚を捕らえなさいっ!!」

 

「ハッ!…え?」

 

 護衛の皆さんは困惑しながら、俺に剣を向ける。

 

 其の様子に思わず俺は両手を上げて、降参の意を示した。

 

「何しているの!?早く捕まえなさいってば!」

 

「あ、いえ、その…アリス様?」

 

「何よ!?」

 

 執事風の若い男が困ったような表情で、アリスに話し掛ける。

 

「私の記憶違いで無ければ、この御方は隣国サルジアの伯爵家の長子だったかと…。」

 

 あら?俺の事を知ってるのか?

 

「え、ええ!?伯爵家!?うちよりも家格が上じゃない!?」

 

 ああ、そうなんだ…。でも、国が違うから関係なくね?

 

 慌てて頭を下げてきたアリスに、俺は声を掛ける。

 

「あー、確かに俺はヴェリアス家の長男だけど、家を出たから…。」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

 

 

―――――――――――――…

 

 

 <アリス>

 

 さっきの豚…じゃなかった、アレフさんは今、馬車の中で私の向かい側に座っていて、事情を説明してくれている。

 

「…で、結局俺は、家を追い出されちまってな。」

 

「…自業自得じゃないですか。」

 

 アレフの話を聞き、私がストレートな感想を述べると、彼は肩を竦めた。

 

「あれ?でも、今はそんな感じじゃないですよね?」

 

 彼は、家を追放されているので身分的には平民なんだけど、人によっては貴族に返り咲く人もいるらしいので、此処は敬語を使っておく。一応年上だしね。

 

「目が覚めたからな。」

 

「いや、目が覚めたって…。」

 

 そんな傍若無人だった人が、追放されたぐらいで改心なんてするの?っていうか、別人レベルの変わりっぷりよね?

 

「まるで別人って感じですね。」

 

 本音を漏らすと、彼は困ったような顔をしたが、其の後、何かに気付いた様な表情に変わる。

 

「あ、思い出した。」

 

「?」

 

「そうだよ、マークシェイド家のアリスって言えば、有名じゃんか!」

 

 え?アレフって隣国の人でしょ?何で私の事を知っているのよ?

 

「私はそんなに有名なのですか?」

 

「ああ、剣を自在に操る天才美幼女!アリスを嫁にしたいって言ってた奴は多かったよ。まぁ、今の姿じゃどうな、ごはっ!?」

 

「あ、御免なさい。つい…。」

 

 余計な事を口に出されて、ついイラっとしちゃった。

 

「……誰にでも優しい少女だって聞いていたんだけどな。そっちこそ別人みたいじゃん…!?」

 

 アレフの言葉に私は、目を見張る。そして、彼もまた、口を開けたまま固まった。

 

「「もしかしてとは思うけど…!?」」

 

 二人の言葉が重なり、私達はまた固まる。

 

「……出身地は?」

 

 アレフが搾り出すように声を上げる。それに応える様に今度は私が口を開く。

 

「…都道府県から?」

 

 多分、彼も私と同じ…、この時はそう思った。……後々気付いたんだけど、日本人というか地球人とは限らなかったのよね。 

 

「神奈川県横須賀市。」「東京都江戸川区。」

 

 前者がアレフ、後者が私だ。

 

「…で、どっちが主人公だと、思う?」

 

 彼がそんな問い掛けをするので、私は率直に思った事を口に出す。

 

「アレフさんじゃないでしょ。体型的に。」

 

「アリスだって、無理じゃね?ヒロイン枠すら。」

 

 ゴスッ!っと私の拳が、彼の鳩尾に入っていた。

 

……

 

…………

 

 

 夕方頃、私はマークシェイド家の屋敷に戻った。家族はまだ返って来てないそうだ。

 

 私の家族構成は父、母、兄と姉が二人ずつ。ちなみに兄姉は一つ上でも5個離れているので既に成人して居る。

 

 父は、元近衛騎士で現在は領都の騎士団長だ。領地の経営は直接してないらしく、優秀な執事や文官が行政を代行しているらしい。

 

 そして、二人の兄は長男22歳が近衛騎士、次男15歳が王国騎士団の中隊長でどっちも出世頭だ。

 

 母は、治療魔法のスペシャリストで父の補佐役として領都の騎士団に勤めている。長女19歳と次女17才も父の元で女騎士として活躍しているみたい。…婚活はしないのかな?

 

 末っ子の私は婚約者の元に嫁ぐ筈だったんだけど、見事に振られて出戻り状態。うーん、如何考えても私はウチの家名に傷つけているよねぇ…。ちなみにアレフに話した所…。

 

「ぶははは!婚約破棄とか何処の悪役令嬢だよ!?」

 

「うっさい!私も同じ事思ったわよ!!」

 

 アレフは客室に案内されていた。盗賊を蹴散らしてくれたのは彼なので、当家としてはお礼をしないと行けない訳だ。

 

「あーそういや、名前はなんていうんだ?」

 

「はぁ?アリス・ロナ・マークシェイドだけど?」

 

 アレフの質問の意味が分からず、私は胡乱気な目で答える。

 

「いや、そっちじゃなくて。」

 

 ああ、そっちか。

 

「大和飛鳥よ。」

 

「お、カッコイイ名前じゃん。」

 

「ありがと、で、アレフは?」

 

「今川義経。」

 

「何処の戦国武将よ!?ってか、何か混ざってない!?」

 

 今川義元なのか源義経なのかはっきりしなさいよ!

 

「其れ言うなら、大和飛鳥もアニメキャラっぽくね?」

 

「そうだけど、別に嫌って事はないよ?というか、かなり気に入っているしね!」

 

「ふーん?じゃ、もし家を出る事になったら、アスカって名乗るのか?」

 

「うーん…、アリスも捨てがたいんだよねぇ…。って、アレフはヨシツネって名乗らないの?」

 

「いや、世界観合わな過ぎだろ…。」

 

「じゃ、豚若丸とかどう?」

 

「おい…。」

 

 名案だと思ったのに、もの凄い嫌な顔されちゃったよ。どう見てもお似合いの名前なのにねー。

 

「お嬢様、ご主人様達が戻られました。」

 

……

 

………

 

「話は聞いた、私からも礼を言おう。」

 

 そう言って、お父様はアレフに礼を述べる。

 

「い、いえ、大したことでは…。」

 

 ガタイが良く、強面の父に気圧されたのか、アレフは当たり障りの無い言葉を漏らす。うん、実に日本人的。

 

「そういえば、アレフ殿はヴェリアス家から出奔したそうだが、本当の事かね?」

 

「え、ええ。ちょっと、悪ふざけが過ぎたようで…その…、い、今は心を入れ替えましたよ!はい!!」

 

 顔を引き攣らせながら、アレフは必死に答えている。……やっぱり怖いんだろうなぁ…。私からすれば娘馬鹿にしか見えないんだけど…。

 

「それで?今後の身の振り方は決めているのかね?」

 

「え、えーと、魔法の才はありますので…冒険者になろうかと…。」

 

 アレフの返答を聞いて、ふむと考え込むお父様。何を考えているのだろうと、何気なくお父様を顔を見ると目が合った。

 

「…アリスは如何するつもりだ?家に残りたいと言うのなら手を回すが、周りが騒ぐかも知れん。」

 

 ああ、やっぱりそうですよねー。家族や使用人は兎も角、領民や他家の貴族達は婚約破棄について色々言いそうだ。

 

 そして問題なのは貴族側、間違いなく悪い噂が流れるし、マークシェイド家の名前に傷がつくよね…。

 

「…やはり、私は出た方が良いでしょうか?」

 

「いや?残りたければ残れば良い、可愛いアリスの為だ。何、他の連中に文句は言わさぬよ。」

 

 フフと悪そうな笑みを浮かべるお父様だったが、私は突っ込まざるを得なかった。

 

「そんなの無茶ですよ!?ウチは子爵家なのですよ!?」

 

 うちが公爵家ならば、何とかなったかも知れないけど、子爵家じゃねぇ…。

 

「む、むう、しかしなぁ……、。」

 

 私の言葉でようやく現実を見るお父様だが、言い辛そうに言葉を紡ぐ。

 

「その、アリス?…一人で平気なのか?お前はまだ12歳なんだし、せめて成人するまで家に居ても…、それに…。」

 

 言葉を紡ぎながら、お父様は私を見る。そして、上から下まで見てから言葉を続けた。

 

「其の体で旅が出来る…グハッ!?」

 

 気が付いた時には、私の拳がお父様の鳩尾に入っていた。

 

 其の様子に、アレフは顔を引き攣らせながら、私にそっと囁いた。

 

「お前、父親相手でも容赦ないのな……。」

 

 

 

 <アレフ>

 

 アリスの狂撃で倒れたマークシェイド子爵はものの数分で復活し、これからの相談が始まった。

 

「うーむ、残念だがそうするしかないのか…。だが、今のままではやはり不安だな。」

 

 正直俺は場違いだと思う。だが、其れを指摘するような雰囲気ではなく、俺はメイドさんが入れたお茶を飲みながら静観していた。

 

「確かにアリスは剣才があるが…、言いにくいのだが、昔の様には動けまい?」

 

「う、そうだけどー!」

 

 あの体じゃあねぇ、俺も人の事言える体型じゃないが、俺は魔術師だから何とでもなる。身体強化を使えば、動けるデブに変身出来るので逃げ撃ちぐらいは出来るのだ。

 

 だけど、アリスは剣士だ。となれば、あの体型じゃ冒険者になるのは無理だろう。子爵の言う通り、成人まで家にいるべきだと思う。

 

 ただ…、折角、同郷の人間に会えた訳だし、この縁を無くしたくはないな。

 

 そんな事を考えながら、ふと視線を上げると子爵が此方を見ていた。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「アレフ殿は冒険者になると言っていたな。」

 

「え?ええ。私が出来そうな事はそれぐらいしかありませんし。」

 

 一応、いくつか商売も考えてはいるけど、如何転ぶか分からないしなぁ。それに、冒険者になっておけば最低限の身分は獲得できるし。

 

「ふむ、やはり、噂で聞いていた人物と思えんな。」

 

 噂、うん噂ね…、でもそれ事実なんだよなぁ…。

 

「お父様……?」

 

「よし、決めた!アレフ君。うちの娘をよろしく頼むよ!勿論、手を出したらただでは済まさないがね。」

 

 強面のおっさんの圧が強い!

 

「ええ!?どうして其の流れになるんですか!?」

 

 父親の言葉に悲鳴の様な声を上げるアリス。そんなに嫌なのかよ…。

 

「アリスは冒険者としてやって行くのだろう?ならば、信頼出来る者が傍に居た方が良い。それにアレフ殿は魔術師だ、アリスとは相性が良いだろう?」

 

「そうですけど!……はぁ、分かりました。お父様の指示に従います。」

 

 俺の意思に関係なく決まったんですけど…、いや、まぁ良いけどね?アリスとは友達になれそうだし。

 

「アレフ殿も良いか?」

 

 あ、こっちにも確認が来た。圧が凄いけど…。

 

「構いません、前衛が居た方が私も助かりますし。」

 

「そうか!なら、この話は終わりだな!」

 

 アリスと旅かぁ、支度金とかは用意して貰えるかな?

 

「では、これから訓練に入ろう!二人とも、付いて来い!」

 

「「はっ?」」

 

 

―――――――――……

 

 

 

「ぶは!ぶひっ!ひゅはっ!」

 

「ひぃ、ふは、あふ!」

 

「二人とも、息を整えろ!余計辛くなるぞ!アリス!これぐらいの距離なら以前普通に走っていただろう!?」

 

 翌日、俺達は子爵に先導されて、領都内をランニングしていた。

 

 いや!色々可笑しくね!?何で俺達領都内を走ってるの!?何で、子爵自ら先導してるの!?アンタ、この町の領主だろう!?

 

 領都一周の後は屋敷の庭で素振り1000回。だから、おかしくね!?俺魔術師だっていったよね!?

 

 腕がパンパンになって上げられなくなると、今度は筋トレ、流石に腕立ては除外された。アリスは強制でやらされてるけど…。

 

 腹が支えて腹筋が出来ねえ…、苦しい!って、メイドさん!?何で俺の背を押してるの!?え?補助?って痛いって!?これ以上曲がらないから!?

 

 最後は短距離…50Mぐらいの距離を本気でダッシュ。無理です、もう倒れそうです。怒鳴らないで下さい…。もう無理ですからー!?

 

 そして、入浴してからストレッチ。メイドさん達のサポートあり。美人に囲まれてるけど嬉しくはない。いてててててて!!!

 

 晩飯は味が分からなかった。アリス曰く不味いらしいし、この世界の食事レベルを考えればそうなんだろう。なんか肉が多かったし、野菜と米食いたい。

 

 昨日の夜はまだ平和だった、時間が遅かったからか、軽く訓練して終わりだった、でも二日目がコレだ。

 

 何時の間にか、客室で寝入ってしまい、其の日は泥の様に眠った。

 

 更に翌日、朝から素振り、ランニング、昼食を摂ってから剣術と効率的な運動の指導があって、またランニング。

 

 夕方には屋敷に戻って、素振りをはじめとした近接訓練。そして、筋トレ筋トレ筋トレ。

 

 そんなブートキャンプみたいな生活を続けて、一月が経った頃…。

 

「しんどい…。死ぬ。」

 

「無様ねぇ、豚若。」

 

「…人の事言える姿か?アスカ。」

 

「……家の中でアスカって呼ばないでよ。」

 

「じゃ、豚若はやめろよ。」

 

 この一ヶ月で俺達の体は大分絞られていた。とは言え、俺はまだ世間的にはデブに入るだろう。ちなみにアリスはというと。

 

「…ねっとりした視線を向けないでよ!このロリコン!」

 

 アリスは完全に痩せていた。まぁ手足は多少太めだが、剣士だから其処は仕方ないだろう。

 

「…今の姿なら、婚約破棄を取り消せるんじゃね?」

 

「別に未練なんかないし、大体、あんなクソガキ、私の趣味じゃないってば!?」

 

「クソガキって、お前の2個上だろ?」

 

「私の精神はJKなの!!」

 

「ああ、ロリババアか…、はあ…。」

 

「何で溜息つくのよ!?」

 

「見た目は良いのになぁ…、やっぱロリは純真無垢じゃなきゃ…。」

 

「いい加減殴るよ!?」

 

 と、最近はこんな遣り取りが続いている。二人で居る時は遠慮が要らないから、本当に気が楽だ。

 

「で、魔法の方はどうなの?」

 

「ん?」

 

「最近は余裕が出てきたから、毎日訓練してるんでしょ?」

 

「まあね。つっても、攻撃魔法を放つ訳にも行かないから、魔力循環と身体強化だけだけど。

 

「…ねぇ、アレフ。訓練中も強化使ってない?」

 

「……。」

 

「ずるい!?」

 

「あー、明日から、アリスにも支援魔法掛け様か?」

 

「あれ?聞いて無いの?今日で一通りの訓練は終わりだって。」

 

 え?そうなの?

 

「それで、明日は一日掛けて、旅立ちの準備なんだけど、本当に聞いてなかったの!?」

 

「……。」

 

「まあ、そう言う訳だから、今日は早めに寝てよね。明日は早朝から色々用意しなきゃだし。」

 

「…分かった。」

 

「あ、そうだ!アンタって料理は出来る?出来るんなら手伝って欲しいんだけど。」

 

「料理に嵌っていた時期も少しあったからな、簡単なものなら作れると思うけど?」

 

「ん、了解。じゃ、明日朝一で食料の買出しに行きましょ。」

 

「あいよ。」

 

 

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