世界を敵に回しても   作:はすきるりん

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28話 勇気とコトバ

シオンが夜空の下で誓った翌日、シノア隊は、昨日助けた女の子の家族を救うべく、表参道地下のB3フロアに来ていた。

 

シノア達の周りには、同じ服を着た人間が所々座っていた。その異様な光景に優以外が困惑していると、柱の陰から吸血鬼が出てきた。

 

「総員攻撃準備‼︎抜刀‼︎」

 

それにいた早く気付いた三葉は、すぐさま全員に戦闘態勢に入るよう指示した

 

「仲間を呼ばれる前に「おおおおお!」っおい‼︎」

 

三葉の言葉を遮って優は吸血鬼に突進し、その刃は吸血鬼の心臓を見事に捉えた。それにより鬼呪が発動して吸血鬼は灰になって消えた。

 

「あれほど独断先行はするなと…‼︎」

 

「敵は非武装だったし、抜刀の命令も待った。お前こそ戦地でぐだぐだ文句つけてんじゃ…」

 

三葉と優が言い合いを始めるかと思ったが、優は途中で発言をやめ三葉の手を取って引っ張った。すると先程まで三葉が立っていた位置に刀が振り落とされた。

その攻撃を受け止めた優の刀からはガキンッ!と火花が散り、その音を聞いてすぐさま振り向いた三葉は、自分がどのような状況だったか理解して血の気が引く感覚がした。

 

「はっは〜いいね!こ〜いうのを俺は待ってたんだよ。8年もな‼︎」

 

優は三葉をどかすと、一瞬のうちに吸血鬼を斬り伏せた。

一瞬で吸血鬼を斬った優の力を見た三葉は、ただ驚いていた。

新人なのになぜこんな力があるのかと。

 

パチパチパチ

その優の強さを見たシノアは拍手をしていた。

 

「やーやーグレン中佐の秘蔵っ子ですから強いってのはわかってましたが、まさかこれほどとは」

 

「凄いよ優くん!」

 

「俺よりは弱ぇけどな」

 

シノアに続いて与一も優を褒め、君月は少し挑発じみたことを言った。

もちろん優はその挑発にのっていたが…

 

 

「こいつらはいったい…」

 

三葉は優たちの絡みを見て呟いた

 

「グレン中佐お気に入りのチームワークのない問題児たちです。だから私たちに押し付けられたんでしょうかね〜?手の焼く人を私たちは相手にしているので」

 

シノアは自分の想い人を例にして言った。三葉もその相手が同じなのですぐにそれはわかって少し苦笑いする。

 

「…あいつほどじゃないけどな。…よしお前ら浮かれるな。まだ敵は5人い…」

 

三葉は気を取り直して優たちに指示を出そうとしたーその時バリィン!と三葉が立っていた後ろの窓が割れ吸血鬼が入ってきた。三葉は不意を突かれ吸血鬼に捕まってしまった。入ってきた吸血鬼の数は、情報通りなら5人だったが、実際に入ってきたのは10人だった。

 

情報と数が合わないことに、一同は驚いていた。

 

「…どういうことだ…情報と数が合わな…」

 

「情報?はは、それは誰が出した情報だ?ふふふ、お前ら人間は醜いよなぁ

家族や仲間を人質にされたら平気で同族を売るんだからなぁ」

 

三葉たちは改めて自覚した。吸血鬼の汚さを。どこまでも吸血鬼は人間を下に見ていることを。

 

首を掴まれ苦しい三葉は、それでも頭を回転させなんとかこの事態の解決策を考える。このままだと舞台は全滅…自分のせいで仲間がみんな死んでしまう…あの時みたいに。

それを避けるため三葉はある決断をした。

 

「あたしのことは見捨てて逃げろ!」

 

「ふざけんじゃねえ!仲間見捨てて逃げれるか!今すぐお前を助けてやる!」

 

三葉の言葉を拒否した優は、抜刀して戦闘態勢に入る

その行動を見た三葉は、歯を食いしばるもすぐにまた指示を出した。

 

「私は…私のせいで部隊が死ぬのは…もう嫌なんだ!だ、だから早く…」

 

三葉の瞳には涙が浮かんでいた。そしてその頭の中は大好きな人の顔でいっぱいだった。

(あぁ…今日が最後なら、我慢しないでたくさん甘えとけばよかったな…ごめんなシオン、私はここまでみたいだ。でもせめてこいつらだけは…形は違うけど、シオンが私を守ってくれたみたいに守りたいんだ!)

 

三葉は、最後の勇気を振り絞ってた。

「…早くにげろおおぉぉ!

 

優はその言葉を無視して、すぐに三葉を助けるために動こうとしたその時

 

 

「…今言うことはそれじゃない、“助けて”だろ」

 

その声が聞こえたと同時に、シノア隊一同はもちろん、吸血鬼たちも言葉を失いただ一点を見ていた。

その視線の先には、三葉を掴んでいる吸血鬼と三葉の間に立ち、三葉の頬を撫でるシオンがいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時はシノア隊が、表参道駅地下へ潜入したところまで戻る。

その頃シオンは隊服に着替えたはいいが、眠くてまたベッドで横になっていた

ヒメとクロはそんなシオンを間に挟んで楽しくおしゃべりしていた。

 

(鬱陶しい、うるさい、眠い…)

シオンはう〜んと眉間にシワを寄せて唸っていた。

それに気付いたヒメとクロは

「シオン!そんなに難しい顔してどうしたの!?

そんなことしてたら跡が残っちゃうわ!」

 

「そうだよシオン。せっかく綺麗な顔なのにもったいないよ?

ほらシワ伸ばして。何を悩んでるのか僕たちに相談しなよ」

 

と、2人はシオンの眉間のシワを一生懸命伸ばしていた。

 

(お前たちのことなんだけど…てかさっきからそれ痛い…)

 

シオンはその思いを、言葉にはせず、2人が飽きるまで待つことにした。

しばらくやられ続けると、ドアがノックされシオンは、「どーぞ」と、返事をした。

 

そこには、昨日シオンたちが助けた彩香と鈴音、その2人を預けた衛兵ともう1人知らない女の子が泣いていた。

 

「突然すいません!少々大変なことがありまして!」

 

「そんな慌てなくていいから落ち着いて。…それでどうした?」

 

シオンは衛兵に水をあげると子供たちには、クロが昨日買っていたジュースをカップに注いであげた。そのジュースをクロは結構楽しみにしていたのか、口から魂的なものがでていた。一応そのジュースはシオンのお金で買ったのだが。

 

水を一気に飲み干した衛兵は、深呼吸をして事情を説明した。

 

「どうやら今日新人部隊が、表参道駅地下を拠点にしている吸血鬼を討伐しに行ったのですが、どうやら吸血鬼の数が違うらしくて…」

 

シオンは細かく聞くと、昨日シノア隊が助けたその泣いてる女の子と彩香と鈴音は同じとこに捕まっていたらしい。そこで昨日女の子は、シノアたちに駅地下にいる吸血鬼たちの情報を教えたけど、自分の親を人質に取られてるため脅されて、嘘の情報を言ってしまったらしい。そこで彩香と鈴音は、その女の子を励まし、本当のことを衛兵に伝えたのだった。

 

「数の誤差は予想していたよりも多いね、シノアたちじゃその数は捌けない」

 

「だったらやることは一つしかないわね!」

 

クロとヒメはベッドから降りるとシオンの方へと視線を移した。

 

「ごめん…なさい。グスッわたし…嘘ついちゃって…グスッパパとママを助けたいのに…」

女の子はボロボロと涙が溢れ出ていた。それを見ていたシオンは、子供たちの方へ寄ると3人の頭を順番に撫で、泣いている女の子の頬をそっと手で包むと、指で涙を拭いた

 

「お前は家族を守るためにしたんだ、それはいけないことじゃない。

ましてや泣くようなことでもない。それに、お前は勇気を出して、こうして俺に伝えてくれた。お前は強い、だからもう泣くな」

 

シオンは優しく微笑みながら、女の子を宥めた。

 

「彩香と鈴音もありがとな。ちゃんとお前らの親は助けてやるからちょっとだけ待ってろ。な?」

 

「「うん!!」」

 

また2人の頭を優しく撫でると2人は嬉しそうに返事していた。

 

「それじゃ行ってくる。この子たちを頼む。」

 

「はい!お任せください!」

 

衛兵は背筋を正して敬礼した。子供たちも一緒になって敬礼をする。

 

シオンはその姿に少し口角をあげると部屋の窓から飛び降りた。

あとからヒメとクロも飛び降り3人は表参道駅地下へ向かった。

 

「12人地下に潜んでいるなら…不意打ちで殺れても2人が限度だ。ってなるとおそらく残りは10人、武装状態なら勝機は薄いだろう」

 

「今回は遊べそうな相手はいるかしら!早く遊びたいわ〜!」

 

「僕だって遊びたいんだからダメだよ。今回は僕が多めに…」

 

「いや、今回は俺がやる」

 

「「…なんで!?」」

 

3人はもの凄いスピードで移動しながらも、普段通りの緊張感のなさで話していた。

 

「お前らは昨日のうちに相手してただろ、俺はまだしてない。

それにこんぐらい数の差がなきゃ意味がない。

俺は強くならなきゃいけない、だから今回俺は鬼の力は使わないぞ。」

 

シオンは2人を鬼呪装備にして戦うのではなく、ヒメの武器庫から抗吸血呪のかかっているノーマルの刀を出してもらってそれでやると言った。

 

2人は「「えー」」とつまんなそうな顔をするも、シオンの意思の固さは2人とも知っているので、諦めた。

 

「まぁ仕方ないわ!

それにシオンの戦闘を間近で見るのは楽しいし、わかったわ!」

 

ヒメは走りながら金模様を出しそこから刀を取ってシオンに渡した。

 

「僕もそれでいいよ。

その代わり、わがまま料って事で終わったらジュース買ってもらうからね。」

 

クロは譲ったかわりにジュースをねだった。

どうやら先ほどのジュースのことをまだ根に持っていたらしい。

 

シオンたちはその移動速度からすぐに表参道駅地下に着いた。

シノア隊の元へ向かう途中、奥のほうから声が響いてきた。

 

「あたしのことは見捨てて逃げろ!」

 

「あら?この声三葉の声かしら?」

 

「おそらく捕まっただけだよ。どうやら間に合ったみたいだ。」

 

シオンたちはスピードを保ちつつ気配を消して向かっていた。

 

(三葉が捕まったのなら真っ先にみんなを逃すのはわかってる、でも俺はお前たちと約束したんだ…死なせないと。だったら俺の名前を叫べばいいだろ)

 

3人はシノア隊の姿が見える位置まで来た。もうシノア達からでも見える位置なのにシノア隊や吸血鬼たち3人は気付けないでいた。

それだけ3人は気配を消すのがうまかった。

ヒメとクロはシノアの隣に、そしてシオンは平然と三葉の方へと歩く

この間も誰もシオンたちの存在を察知できていない

 

「…だから早く」

 

三葉は涙を浮かべていた。

シオンはその様子を見ながらもどんどん近づいていく

 

(三葉、言っていいんだよ“助けて”って。

俺の名前を呼べばいい。それだけで俺はどんな敵からでも、お前を助けられる力が湧いてくるんだから)

 

シオンは三葉と首を掴む吸血鬼の間に立ち、そっと手を伸ばした

 

「早くにげろおおぉぉ!」

 

(三葉の過去のことを考えればその言葉が出るってことはわかってたけど。

でもちょっとは、今の仲間達を、俺を頼ればいい。

だから…)

 

「…今言うことはそれじゃない、“助けて“だろ」

 

 

 

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