世界を敵に回しても   作:はすきるりん

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29話 英雄のチカラ

「シ…オン?な、なんで…ここに」

 

「お前たちが助けた女の子に頼まれた。」

 

「あ、あいつ…いつからあそこにいた!?」

 

シオンは普通に会話しているがシノア隊や吸血鬼たちはただ動揺していた。

自分たちは近づいてくる気配があったら、すぐわかるぐらいには油断していなかった。

それなのに誰も、シオン一人(・・)の接近に気付かなかった。

 

「家畜風情がいつからそこにいた!

…まぁいいすぐに殺してやる!」

 

三葉を掴んでいる吸血鬼は剣を振り上げた。一方でシオンは抜刀するわけでもなく、吸血鬼に背中を向けたまんまだった。

 

「死ね!家畜があぁぁぁ!」

 

「お前さっきからうるせえよ。…それと」

 

シオンは刀を触れたかと思えば、カチャンっと刀をしまう音を鳴らした。

シオンは半見だけで吸血鬼の方を見ると

 

「いつまでその汚え手で三葉に触れてんだ?」

 

「アアアァァァア!」

 

吸血鬼は全身から血を吹き出すと、すぐに塵になって消えた。

掴んでいた手がなくなり重力に従って落ちる三葉を、シオンは抱き抱えた。

 

「シオン…また、お前は助けてくれたんだな…

グスッもう…ダメかと思った。死んじゃうって…グスッ」

 

三葉は安心して涙を流し、シオンに抱きついていた。シオンは三葉の背中をポンポンと優しく叩いて落ち着かせていた。

 

「まずは無事でよかった。だけどまだ終わってないから続きは後でな、とりあえずお前はシノア達んとこいっとけ。ヒメ!クロ!そいつらを守っといてくれ」

 

「ええ、わかったわ!楽しんでちょうだい!」

 

「ほら三葉ちゃんおいで〜。泣いちゃったことはいじらないであげるから〜」

 

指示を受けたヒメはシノアの右隣で笑顔で返事をし、クロは左隣で座って三葉に手招きしていた。

 

「ヒメさん!クロさん!いつからそこに!?」

 

「ハァ!?こいつらもかよ!」

 

「一体どうなってやがる!?」

 

「ぼ、僕もわからないよ!」

 

シオン以外にもいることに気付けなかったシノア隊は、またも驚いていた。

 

「てかちょっと待てよ!相手はあと9人いるんだぞ!?俺達もやるぞ!」

 

優はそう言って刀を構え戦闘態勢に入った。そしてそれに続き君月と与一も構えるが、シノアと三葉は武器をしまった。その様子を見た優たちはシノアに指示した。

 

「なんで鬼呪をしまうんだよ!俺らもやらなきゃ「大丈夫です優さん。」…は?」

 

優はシノアの発言にバカっぽい声が出た。

 

「シノアは大丈夫だと言ったんだよ百夜優一郎君。

君たちは戦わなくていい。

参加したらかえってシオンの邪魔だよ、だから大人しくしときなよ」

 

クロは手をひらひらさせながら優の方を向いて言った

 

「…そ、そんなことあるわけねえだろ!」

 

「それじゃあなたは気付いているかしら?私たちが会話している間に、貴方達を囲んでいた4人はもういないわよ?」

 

それでも納得できなかった優に、ヒメは質問した。今この会話の間にシオンがしたことを理解しているのかと。

そしてヒメの発言にシノア達はバッ!と周囲を確認すると、さっきまでそこに立っていた吸血鬼の4人がいなく、そこには吸血鬼が消滅した証拠の装備が落ちていた。

 

「嘘だろ…一体いつ、どうやって…」

 

君月はあまりの出来事に冷や汗をかいていた。

 

「どうって移動して斬ったんだよ。まぁ動きは人間離れしてるけどね、まぁ詳しく言うとね…」

 

クロは見えなかった人たちにわかりやすく説明を始めた。

クロが言うには、シオンはシノア達を囲んでいる吸血鬼のうち1番手前の吸血鬼との間合いを一瞬で詰め、すれ違いざまに斬ると勢いを殺さずに2人目も斬った。

そして3人目が振り向く瞬間、天井目掛けて跳躍し身体を反転、そのまま天井を蹴り刺突で殺し、最後に居合で4人目の身体を真っ二つにしながら元の位置に戻った、と。

 

「「「ば、化け物すぎだろ」」」

 

優、君月、与一は息ぴったりに同じ反応をしているとヒメが笑っていた。

 

「アハハハ!それはそうよ、シオンは強いもの!」

 

「まぁそう言うわけだから手は出さなくていいよ。

今回の敵の数は流石に君たちの許容範囲外だろうからね」

 

クロは指でシオンの方を指して【見とけ】と合図をしていた。

そして一同はシオンの方に目線を向けると、シオン1人を吸血鬼5人が囲んでいた。

 

「貴様!家畜の分際で調子に乗るな!」

 

「その家畜に殺される気分はどうだ?吸血鬼」

 

シオンの言葉を最後に、吸血鬼たちは一斉にシオンに向かって刺突した。

人間よりもはるかに身体能力が高い吸血鬼から放たれた刺突の威力は強力だった。

吸血鬼たちも完璧に仕留めたと思ったのか、余裕の笑みを浮かべる…が手応えが全くなかった。

剣の先を見ると、シオンは吸血鬼の剣の上へバランスよく乗って回避していた。

 

「…弱すぎるんだよお前ら」

 

シオンは宙で逆さまになって体を捻り、5人の吸血鬼の首を一瞬で斬った。

それにより5人同時に吸血鬼は塵になって全滅した。

 

「少しぐらい連携取ってくれないと、遊び相手にもならねえな」

 

シオンは刀を一度払うと、鞘にしまった。

刀は役目を終えたかのように、サァーっと金色の粒子になって消えていった。

そしてシオンはシノア隊の方へ向き直ると

 

「とりあえず全員無事でよかった、めんどくせえ任務させて悪かったな」

 

シオンは片手を顔の前に持っていき、軽く謝罪した

 

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