界境の市   作:丸米

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START IT AGAIN

 ──さあて。

 

「準備はいいな」

「はい」

 

 作戦も決めた。指揮系統も決めた。特段の不安要素もなし。

 気持ちよく、執り行おう。

 

「ランク戦ラウンド1スタートまで、残り十秒──」

 

 アナウンスが聞こえるごとに。

 緊張とわくわくが体中を駆け巡る感覚が走っていきます。

 

 では。

 しっかりとやっていきましょう。

 

 

「──皆様こんにちわ! ランク戦ラウンド1、昼の部。実況はこの私、海老名隊オペレーター武富が務めます! そして解説には──」

「太刀川だ」

「当真だぜ」

「A級1位、2位両隊のエースに来ていただきました!」

 実況席に座る武富は少々興奮気味に言葉を捲し立てていく。

 何を隠そう。

 この女こそ──

「今期のランク戦より、こちら実況・解説席が増設されました! 皆様、戦術理解の一つの参考として、お聞きいただければ幸いに存じます!」

 この実況・解説ブースを作り上げさせた張本人だから。

 内心。

 武富は泣いていた。

 感動の涙が滂沱の如く溢れ出て、心の中に広大な海とまっさらな青空が地平線の彼方にまで広がっていた。

 

 悲願が達成されたその瞬間。

 彼女の中には確かな達成感と開かれた未来に心の中で絶叫を放っていた。

 

「太刀川さん。こんな所に座ってて大丈夫なんすか。レポートはどうしたんです?」

「はっはっは。心配するなら自分のテストの心配でもしておけばどうだ?」

「はん。知らねぇなそんなもん」

「ほほう。やるじゃないか」

 

「──さて! 今期ランク戦ですが、二隊、新たなチームが増加されました! 今回は、この二隊がぶつかり合う事になります!」

 

 新たに増設された隊。

 茶野隊、及び勝山隊。

 

 この二隊。

 

「昼の部の試合では、茶野隊・間宮隊・勝山隊の三つ巴戦ですが、注目ポイントは何処でしょうか」

「まあ、勝山隊だなぁ」

「だな」

 

 太刀川も当真も、二人してうんうんと頷く。

 

「東さん引っ張ってきてんじゃん。アイツマジで何やってんの?」

「いやー。マジでびっくらこいた」

 

 そう。

 現在勝山隊には──ボーダーに在籍するその全員に知れ渡っているであろう大物の名前がある。

 

 東春秋。

 この名前は、こういう存在を表している。

 

 ・現在存在している狙撃手というポジションの生みの親であり、

 ・戦術・戦略のエキスパートであり、

 ・熟練の腕を持つ狙撃手であり、

 ・人材育成として自ら隊を率い、一期生の全員をA級隊隊長に育て上げた。

 

 という。

 ボーダーでも屈指の功労者かつ、将来の本部長候補の一角であろう人物。

 

 それが。

 今回新たに設立された隊の一員としてそこにいるものだから。驚くのも無理からぬ話だろう。

 

「──今回の勝山隊は元々集団戦の経験を積みたい勝山隊長が本部勤務をしていた三上オペレーターに声をかけ設立された部隊との事で。今期どんな結果になろうとも、このシーズンで解散をするとの事です」

「へぇ。そりゃあ何とも変わったコンセプトの部隊だな」

「その条件だからこそ、って部分もあったのかもな。東さんがそこに入ってんの」

「勝山隊は、勝山隊長が攻撃手。樫尾隊員も攻撃手で、東隊員が狙撃手。攻撃手二人と狙撃手一名という構成になっています。太刀川さんは、よく勝山隊長と個人戦をしているとか」

「ああ」

「どのような攻撃手なのでしょうか」

「数少ない幻踊の使い手だな。多分旋空よりもこっちをオプションに使う事が多い」

「幻踊ですか! A級では、三輪隊攻撃手、米屋隊員などがよく使っていますが、弧月の使い手でも中々使われる事が少ないトリガーの一つです」

「まあ、どういう風に使ってくるのかは試合見りゃ解るからな」

「そして、新人の樫尾隊員。未だデータがない隊員ですが、この試合でどのような動きをするのかが楽しみです」

「そっちも。純粋な弧月使いか、それとも別の射撃トリガーも入っているのか。それで戦い方も随分と変わって来るしな」

 

 して。

 各々の隊の所感を告げると、選択されたマップの解説が入る。

 

「今回選ばれたマップは、市街地Bですね。選択チームは茶野隊ですが、この意図をどう見ますが?」

 市街地Bは、高層建築物が多い、建造物の高低差が非常に激しいマップだ。

「狙撃手対策だろうな。この中で一番の脅威は東さんと捉えて、射線を切りつめる方向で戦略を取ったって感じじゃねーの」

「正直、銃手二人だと狙撃手に補足されたらマジで何も出来ないからなー。射線も切れるし出会い頭にズドンも出来る市街地Bはアリっちゃアリだな」

 

「成程。このマップ選択で茶野隊がどのような動きをしてくるか。注目して試合を見ていきましょう──」

 

 

 各隊が転送されると同時。

 眼前に現れた光景は、暗闇だった。

 

「ふむん.....」

 

 マップ選択及び環境条件は、マッチングするチームの中で最も下位の部隊に委ねられる。

 今回、勝山隊と茶野隊は共に新規チームであり、扱いとしては最下位であるが、二人部隊の茶野隊が優先されマップ選択権と環境設定権が与えられた。

 今回のマップ条件は、夜。

 非常に解りやすい。

 東対策だ。

 射線が切りやすい市街地Bで、かつ夜。

 遠距離での狙撃は東ほどの腕をもってしても中々に厳しいだろう。

 

 勝山はマップ中央付近、樫尾はやや東よりに転送される。

 そして、東は思い切り西に寄っている。

 

「──成程。敵は東さんを封じてきましたね」

 樫尾はそう呟く。

「──隊長。茶野隊の二人と、間宮隊の鯉沼君がそれぞれ付近にいる。囲まれているから気を付けてね」

「了解です三上さん。──樫尾君、どうしますか? 合流を優先しますか?」

 

 そう。

 今この部隊の指揮権は──樫尾にある。

 

「いえ。──ここは点が欲しいので、各個撃破を目指しましょう」

 三上から共有されたそれぞれの位置情報を見る。

 勝山から見て西側に茶野隊。

 西側に、鯉沼。

 

 すぐさま、樫尾は判断を下す。

 

「隊長は茶野隊の対処をお願いします。僕は鯉沼先輩を追います」

「追うのですね」

「はい。──間宮隊は必ず合流を目指すはずです。なので鯉沼先輩を泳がせて、他二人の位置の把握をして、まとめて倒します」

 

 成程、と勝山は呟いた。

 かなり強気な作戦だ。

 敵は合流させたうえで倒す。各個撃破している間に敵が散って点を取り漏らすのが嫌だから。

 合流してもなお、叩き潰せる自信がなければ、出来ない作戦だ。

 

「了解です。──ではこちらは、茶野隊を仕留めにかかります」

「はい。そして東さんはこのまま鯉沼先輩が向かっているルートに沿って、狙撃ポイントに向かってください」

「ああ。了解」

 

 勝山、樫尾、東はそれぞれ分散して動き出す。

 合流へ向かう両隊を、それぞれ仕留めるために。

 

 

「──藤沢! そっちに勝山先輩が向かっている!」

「解っている、隊長! すぐに合流だ!」

 

 茶野隊の両者は、急ぎ合流を目指す。

 近い位置での転送がされたのまでは良かったが、

 互いの中継地点にあたる場所に、勝山市がいた。

 

 部隊を組んだことがない関係上、戦闘記録は見れなかったが。

 マスターランクの攻撃手だ。

 ポイントを奪い奪われ、その階級が決められる個人ランク。

 その中で8000以上のポイントを持つマスターランクまで至っているのは本当に一握り。

 この盤上で、勝山を単独で仕留められる駒は間違いなくいない。

 だからこそ──合流した上でかからなければ、やられる。

 

「あれ」

 そうして、合流を急ぐ中。

 突如として勝山の反応がロストする。

 

「勝山先輩、バッグワーム付けた.....」

 

 バッグワームとは、トリオン反応を排除するための外套のようなオプショントリガーだ。

 幾ばくかのトリオン消費と、片側のトリガーセットが使用できない事を代償に、自らの姿をレーダーから排除するトリガー。

 勝山は、それをこのタイミングで使った。

 彼は恐らく、敢えてつけていなかったのだろう。

 彼はこの盤上で最も手ごわい駒だ。

 それ故に、ポイントを稼ぐために敵を引き付けようとしている──と。そう判断していたが。

 

「.....奇襲の可能性があるから、周囲に目を配りつつ合流しよう」

「ああ」

 

 何にせよ。

 合流しない事には始まらない。

 

 茶野隊は、入り組んだ路地の中に一つ存在する広場を合流場所とした。

 ここは周囲の建物で射線が切れる上に、開けた地形の場所だ。狙撃の心配もなく、銃手にとって都合がいい地形であった。

 

「──合流出来たな」

 二人は。

 特段の問題もなく、合流できた。

 

「──間宮隊は、丁度反対側だ」

「くそ。早くいかなくちゃ」

 

 合流に急ぐ間。

 間宮隊は丁度反対方向に向かっていた。恐らく彼等の合流地点だろう。

 間宮隊は全員が射手という珍しい構成の部隊であり、合流した後の中距離の制圧力に富んだ部隊だ。

 それ故に、合流する前に仕留めたかったのだが。

 勝山の存在でそれが思い切り阻害された形だ。

 

 二人はオペレーターに狙撃の射線が切れていないルートの作成を求め、そのルートに沿って路地を進んでいった。

 

 その時だった。

 

 ──ガラガラ、という音がした。

 

「──あ」

 

 広場から狭い路地に入り込んだ瞬間。

 

 建造物の壁を斬り裂き、

 

 バッグワームを着込んだ勝山が現れた。

 比較的小柄な体躯の男が、逆手に弧月の柄を握っていた。

 

 気付くと。

 藤沢の首が飛んでいた。

 

 横っ面からの、抜刀による斬撃の行使によって。

 

「.......」

「くぅ.......!」

 

 すぐさま茶野はバッグステップで距離を取り、二丁拳銃を構える。

 が。

 ステップを踏んでいる間には勝山はバッグワームを解き、その手に散弾銃を握っていた。

 して。

 着地し拳銃を構えるその瞬間には──三連発の散弾が茶野の全身を貫いていた。

 

 

「ここで茶野隊、合流するも勝山隊長の奇襲により全滅! 勝山隊に二点が入ります!」

 画面に表示される点取り表に、二点が追加される。

 

「この奇襲は、どのようにしてされたのでしょうか?」

 そう武富が尋ねると。

「まあ、どのルートで行くかがバレてたんだろうなぁ」

 と。

 当真が呟いた。

 

「あの広場を合流場所にするところまでは良かったが、結局あの広場でしか銃手にとって有利な場所はない。で、周囲は入り組んだ地形。茶野隊には狙撃手がいない。だから東さんからの射線を切りつつその狭くて入り組んだ地形を歩いていかなければならない。この条件全部合致してるのがあのルートしかなかった。待ち伏せも簡単だっただろうな」

「成程! では藤沢隊員を追いながらも、途中でバッグワームで身を隠したのも、待ち伏せをするためだったのですね!」

「この路地に逃げ込んだ時点で、動きを読んでいたな。綺麗に決まりやがった」

 

「さて! これで茶野隊は全滅し、残る所は間宮隊と勝山隊ということになります! マップ中央での戦いを制し、樫尾隊員と東隊員が向かうは──」

 

 マップ、西側。

 間宮隊の合流地点に、カメラが移り変わる。

 

 

「──今、中央地点で茶野隊が全滅したらしい」

「マジか。やったのは、勝山か....」

「マスターランクの攻撃手ってのは伊達じゃなかったんだな。まともに出会ったらまずいな」

 

 間宮隊の三人は。

 合流地点で、待ち構える。

 

 射線が通っておらず。

 周囲には背の低い障害物が山積している区画。

 彼等のメイントリガーであるハウンド──対象を追跡する射手トリガーにとって、非常に有利な場所だ。

 

「──夜の環境下で、ここに弾丸を撃つ事は東さんにも不可能だろう。ここで俺達は待ち構える」

 

 全員、バッグワームを外し。

 ハウンドを装備する。

 

 彼等の連携は至極単純。

 三人共にハウンドを使用する事により、単騎を中距離の圧力で圧し潰す戦略だ。

 

 例え、誰であろうとも──見つけ次第、叩き潰す。

 

「──お」

 レーダーに反応が走る。

「建物の中に潜んでいるのか」

 

 五十メートル東にある家屋の中。

 レーダーの反応が走っている。

 

 その時。

 レーダーにあった方向から、ハウンドが降ってきた。

 

「──気を付けろ、樫尾がハウンドを持っている!」

 

 三人は即座に連携し降りかかるハウンドをシールドで防ぐと、レーダーの反応に向け──全員でハウンドを放つ。

 

 放ったハウンドの雨あられにより家屋は押し潰れ、中に押しやっていく。

 そして──レーダーの反応が消える。

 

 やったか、と思ったものの。

 点数の報告が入らない。

 

 そう思った次の瞬間。

 

「──うお!」

 集まる三人の中。

 樫尾が斬り込んできた。

 

 ──何故樫尾がここにいる! 

 

 五十メートル離れた家屋。レーダーの反応。距離的にも、そして状況的にも──ここに無傷の樫尾がいるのはあり得ないはずで。

 

 混乱の最中。

 鯉沼のトリオン供給体が弧月により斬り裂かれる。

 

 鯉沼が緊急脱出する中──残る二人は、樫尾に標準を向けながらハウンドを放つ準備を行う。

 

 瞬間。

 彼方から──射線を防ぐ建物ごと貫く砲撃が訪れる。

 

「アイビス.....!」

 到来した弾丸を何とか避けるものの。

 その避ける行為が更なる隙を生み──樫尾のハウンドが泰隊員に貫く。

 

 残るは。

 間宮と、樫尾。

 

 ハウンドが放たれる。

 

 ──こんなもの。

 

 あの時、

 訓練の時に対峙した三輪の弾丸に比べればなんてことはない。

 これはシールドも透過しないし、凄まじい身のこなしで視線の外に常に動く様子もない。

 

 簡単だ。

 防げるだけの弾丸をシールドで防いで、防いだところに身をやって避ける。

 そのまま──間宮を、斬り裂く。

 

 

「試合終了──! 勝山隊により、両隊全滅!」

 そうして。

 勝山隊は更に三ポイントを追加し、五ポイント。

 そして──最終的に他の隊が全滅する中唯一盤上で生き残った事により、生存点も二点追加され、7ポイントを稼いだ。

 

「終わってみれば、勝山隊の圧勝でした! それでは、二人とも総評をよろしくお願いします!」

「うーん。総評言ってもなぁ.....今回に関しては、ちと部隊としての完成度が違いすぎた、って印象しかない」

「ですねぇ。──まあ敢えて言うなら、樫尾かな。ちょい予想外だった」

「予想外、とは」

 当真の言葉を、武富は反芻する。

 

「単純に、ハウンドも使える万能手タイプだったこと。そんでもって最後の動きは中々に頭使ったなぁと。──最後、間宮隊が家屋ぶっ放す前、アイツが仕込んでいただろ」

「ああ──ダミービーコンだな」

 

 ダミービーコン。

 このトリガーは、偽のトリオン反応を作り出すオプショントリガーだ。

 球体状の宙を浮くフォルムをしており、これをセットした地点には偽のトリオン反応がレーダー上に浮かび上がる。

 

「今回、樫尾は東さんと一度合流して、ビーコンを一個拝借してあの中に仕込む。で、起動させたところで本人はちょい離れた所でハウンドを撃つ。そうすると間宮隊はそのビーコンの反応を樫尾だと判断して撃つ。その隙に近寄って、後は流れで全滅させたって事だな」

「動きも行動も中々よかった。中々将来有望じゃないの」

「成程。──では、茶野隊を全滅させた勝山隊長はどうでしょう?」

「マスターランクだろう。あれくらいやってもらわなきゃ困る。これでも大分面倒は見てやったんだ」

 わはは、と笑いながら太刀川はそんな事を呟いていた。

 

「な、成程。太刀川隊長、当真さん、解説ありがとうございました! ──それでは、次回のランク戦の予告に移ります──」

 

 

 僕等は隊室に戻ると。

 四人で、ハイタッチを行いました。

 

「いい初陣でしたね」

「はい!」

「では、振り返りを行いましょうか」

 

 試合が終われど。

 そこで終わりではない。

 全員が部屋の中央のテーブルに座り、──東さんを見ます。

 

「──まずはおめでとう。この結果は上々だったな」

 そう東さんは笑顔で言うと、それぞれの試合の流れと、ポイントを淡々と話していきます。

 その中で、樫尾君に質問が飛びます。

 

「樫尾。いつもとは違って、今回弧月側のトリガーセットにバッグワームを入れていたな」

「はい」

「どうしてだ?」

 樫尾君のトリガーセットは。

 メインに弧月セットを入れ、サブにハウンドやグラスホッパーを入れています。そして、バッグワームはサブ側にあります。

 ですが。

 今回の樫尾君は──バッグワームをメイン側に入れていました。

 

 つまり、バッグワームの使用中に弧月が使えない代わりに、ハウンドが使える状態であったという事です。

 その結果として。

 最後の場面。ダミービーコンを設置した上で、自分はバッグワームで身を隠しハウンドを放つという一連の行動が出来たわけですが。

 それを、最初から想定していたのでしょうか? 僕も気にかかります。

 

 樫尾君はその質問に、明瞭に答えます。

 

「はい。──今回、相手に攻撃手がいないので、バッグワームの起動中ならば弧月よりもハウンドの方が応戦に便利だと判断しました」

「成程.....。ある程度、間宮隊の特性も踏まえて、という事だな」

「はい」

 

 東さんはその答えに。

 満足げに笑いました。

 

「よし、いいぞ、樫尾。──いいか、皆。これを繰り返していこう」

 と。

 東さんはいいました。

 

「自ら考えて行動する事が、ボーダーの基本方針だ。相手を知り、分析し、それに合わせて自らの戦術を変える。この繰り返しの中で、集団戦のやり方が次第にわかってくると思う。だからこそ、相手の戦術を分析し、そのレベルを見極めていくことが重要なんだ」

 

 自ら考え、行動する。

 ──そうか。そうなんだ。

 

 変わらないんだ。

 集団だろうと、個人だろうと。

 何かを上達するための、基本的な行動は。

 

「──では、次のランク戦に向けて、また訓練と研究を頑張ろう。今日はお疲れさま」

 

 樫尾君を見ます。

 確かな手ごたえを得たのでしょう。

 ジッと。

 自分の握り拳を、見ていました。




樫尾君の下の名前まで覚えていた人誰かいるでしょうか。

私は今も時々忘れます。

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