トリオン:8
攻撃:11
防御・援護:6
機動:7
技術:10
射程:2
指揮:2
特殊戦術:2
total 48
という訳で。
僕と三上さんはその日のうちに申請届を出し、認可され、部隊として発足する事となりました。
「そういう訳で。──よろしくお願いします。勝山君」
「はい。こちらこそ」
今の所一人部隊というのは漆間隊以外に存在しない。しかも、あまり潰しの効かない攻撃手一人という編成。見つかった瞬間に叩きのめされて終わってしまう。
「基本的には、浮いた駒があればそれを積極的に取りに行く──って方針になると思う」
「ですね」
単騎で部隊ごと殲滅させられるような駒は、太刀川さんや二宮さんのようなインチキじみた強さが無ければまずもって不可能でしょう。
「勝山君のトリガー構成、見せてもらっていい?」
「はい」
僕は
メイン:弧月 幻踊 旋空 シールド
サブ:散弾銃(アステロイド) 空 バッグワーム シールド
という構成です。
弧月セットをメインに入れ、サブには散弾銃を入れる。
近距離での破壊力にひたすらに特化した構成となっています。
「散弾銃使っているんだ」
「はい」
基本的に散弾銃は、二人を同時に相手するような場合に、片方を足止めする目的などの為にセットしています。
一応、集団戦を想定してこんなものを入れているのです。
「うーん。──今回部隊がたった一人だから、撃墜するのに時間がかかってたらすぐに囲まれそうだもんね。瞬間的な破壊力を求めて散弾銃は割とありかも」
「今回、序盤で位置が判明したら、それこそ一巻の終わりですからね」
「うん。だから基本的に勝山君は身を潜めて、位置が判明した狙撃手や単独行動している人をまず索敵する必要がある。その上で、他の部隊の位置関係もしっかり探りながら」
「前途多難ですね」
「うん。──でも、だからこそ楽しそう」
三上さんはそう言って笑う。
この人の笑顔は、何というか。
人を包むような、自然な優しさがある。
それが何だか、とても新鮮だった。
※
「隊用のお部屋が明日には用意されているみたいだから、何か持ち込みたいものがあれば持ってきてね」
「了解です。それじゃあ、今日の所はこれで上がりという事で」
「うん。──どこかで、新しい隊結成記念に一緒にお店にでも行こうか?」
「えっと、いいんですか?」
「ん?」
「いえ。先程のお電話を失礼ながら聞いてしまいまして......。家族の関係で、あんまり時間が取れないのかと」
そう僕が言うと、ああ、と一つ笑って。
「私だって、一週間休みなく働いている訳じゃないよ。お母さんに頼める日は、素直に頼るから。だから大丈夫」
「.....解りました。それじゃあ、お店の予約は僕の方でしておきますので。空いている日をお伝えいただければ」
「うん。わかった。──それじゃあね、勝山君。あ、そうだ。勝山君。スマホ」
「あ、そうですね」
連絡先の交換すらまだしていませんでしたね。
三上さんは機嫌よさげに、番号とチャットIDを送信します。
「なんだか、凄く機嫌がよさげですね」
「うん。──1シーズン限定でも、初めて自分が部隊の一員になれた日だから」
「.....」
何というか。
予想外にチームを組めた事を喜ばれていて。ちょっとだけむず痒い。
「だから、よろしくね。勝山君──私も、精一杯サポートするから」
多分。
この人は心の底から人との係わりを喜べる人なんだろうな、と。
湛えられた笑顔を見て、そんな風に思えました。
僕は。
本当に素敵な人と部隊を組めました。
その事に一つ感謝をするとともに──1シーズンとはいえ、出来る限り上へ行ける事を目指し、頑張ろうと。
それだけを思いました。
※
さて。
人間見栄を張るもので。
見栄の上に重ねた虚飾の度量を以て安請け合いを無意識の中行使する事があります。
今僕も。
そんな愚かしい行動を取ってしまった事を認識しました。
──日程を送ります。よろしくお願いします。
可愛らしい絵文字と共に送られた日程を片手に、さあお店を予約せんとスマホを片手に持つと同時。
固まりました。
そもそも──僕はこちらに引っ越してきてからというもの、外食をロクにしたことがないのです。
大体は寮の食事で事足りますし、お休みの日も基本的に自炊をしている僕は、あまりにも、あまりにも三門市のお店について無知でした。
ボーダーの仕事もしながら弟妹のお世話もしているという三上さんの多忙極まる生活の中で、ほんの一時の休息日。それをこんな男との食事に費やすというのです。その諸々の準備を僕が負うのは自然の論理です。が。残念。僕は何処までも無知でした。
さて。
どうしたものか。
打ち上げや歓迎会を行うとき、どんなお店を使いますか?
そう尋ねると。
二宮さんはいつもと変わらない表情のまま、迷いなく言い切りました。
焼肉、と。
何という単純明快な一言でしょう。
お店も紹介して頂きました。
非常に美味しそうです。
ですが残念。
単純に高い。
寮で悠々自適に過ごしている僕の貯蓄は月々溜まっていく一方であるので、特段問題ないのですが。
三上さんの性格上絶対に割り勘をするでしょうから、その負担分を考えると焼肉はちょっと高校生二人には重すぎる選択でした。
そこで、救いの手が。
「──ん? 店探しだァ?」
その時。
影浦先輩にその事を話すと、髪をガシガシ掻きながら言いました。
「ああ、そっか。お前部隊作ったんだっけ?」
「はい。1シーズン限定ですけど」
「ケッ。二人でやれるほど甘くはねぇぞ」
「まあ、その辺りも含めて工夫しながらやっていこうかと」
そうですよねぇ。
オペレーター一人、攻撃手一人。
こんな構成で上に行けるなんて思っちゃいない。
それでも付き合ってくれるという三上さんは、本当に何というか。感謝しかないです。
「ほれ」
ポケットからぐしゃぐしゃになったチラシを取り出すと、僕に見せました。
「──お好み焼き屋ですか」
おお。
これならば、予算もそれなりで十分に楽しめることが出来そうです。
「ここ、俺んち」
「え?」
「ま、候補の一つとして考えときな」
そう言えば。
影浦先輩、実家がお店をやっているというお話を聞いた事があります。
そうなんだ。
お好み焼き屋さんだったのですね。
僕は一つお礼を言うと、三上さんに電話をかけお好み焼きでいいかを確認します。
了承の一言を頂き、僕は影浦先輩に席の予約をするのでした。
※
「自分で予約をして、アレなんですけど」
「うん?」
「お好み焼きで良かったですか?」
「うん。お堅い店よりも、こういうお店の方が私は好きだよ」
じゅうじゅうと、豚バラが乗ったキャベツ玉が焼かれ、裏返される。
ソースが塗りたくられ、鰹節が躍る。
見るだけでも、食欲が湧きたつ色をしていた。
「私ね。とんこつらーめんが好きなんだ」
「とんこつらーめん....」
何と。とても意外な好物です。
「うん。──私はそういう人間だから。これからもお店で変に気を遣わなくていいからね。あ、もう焼けたね」
「切り分けますね」
コテを真ん中から斬り込み、そのまま半分に切り分け、それを更に三等分。
豚バラを細かく切り進め、どうにか均等に切り分ける。
「ありがとう。それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
あの。
影浦先輩。
何故こちらを見ているのでしょうか......。
僕自身どういう感情を浮かべているかは判然としませんが、一応影浦先輩に視線をやる。
僕からどのような感情を受け取ったのでしょうか。にやにやと笑みながらキッチンの奥でこちらを見ています。
「──おいしい」
「本当。おいしいです」
よし。
今僕の中で「この店を褒めたくて褒めたくて仕方がない」感情が渦巻いているのを自覚します。
このタイミングで僕は影浦先輩にもう一度視線をやります。
すると、非常にむずがゆそうなそぶりを見せ、そのまま厨房の奥に引っ込んでいきました。
影浦先輩。
彼の人は非常にツンデレなのです。
「お店の予約してくれてありがとうね」
「いえいえ。三上さんはお忙しい方でしょうし。この程度やっておかなければならないですよ」
注文物があらかた揃い、その後。
つつがなく会話が拡げられていきます。
お互いの家族の事からまず始まり、ボーダーに入隊したきっかけ。身の上話。
三上さんはとても聞き上手な方で、相槌の打ち方も話題を拾ったり転換の仕方も実に鮮やかで、会話が途切れることなくずっと話続けていました。
「難病、なんだね」
「はい。まあ難病と言っても、単純に今の所治療法が確立されていないからその指定を受けているだけです。命に別状はないですよ」
「野球を止めたのって」
「はい。この病気が一番の原因ですね」
この部分は。
隠さずにお伝えした方がいいと、僕は思いました。
下手に隠していると、後々その事が判明した時に非常に重く捉えられる可能性があるからです。
このお話は僕にとって所詮は過去のものですから。
あまり、重々しく解釈してほしくないのです。
「でも。今はまた別の目標が出来ましたし。そのことについては今は気にしていないですね」
「目標って?」
「ここで働くことで、この病気を治す方法を見つけ出す事。そして、──この街の復興を、見届ける事ですね」
「復興.....。復興、なんだ」
「はい」
復興、という言葉が少し解釈に悩むのでしょうか。
彼女は少し悩むそぶりを見せました。
「復興って。何を以てすれば復興なのかな、って。考えたんです」
「うん」
「三年前の侵攻で、この街は色んなものを喪っていて。じゃあそれは取り戻せるものか、と言うと.....絶対に取り戻せないものもあって」
喪った人々。
何をどうしようとも、あの侵攻で喪われた命は取り戻せない。
「あの侵攻が完全に過去に出来て、全ての恐怖から解放されて。──この街にいる人たちが、前を向いて歩いていけるようになれて、そこで復興と言えると思うんです」
これが自然災害ならば。
理不尽を押し付けられた人々も。時間の経過とともにそれを忘れられる。
でも。
三門市の人々は未だ──災害の中にある。
続いている。
あの日の侵攻が、今もまだ。
あるはずの日常。
無かったはずの非日常が。
連続してぐるぐると、この街には渦巻いている。
だから。
それを、止めたい。
そして──あるべき日常に戻して、戻った中でもう一度歩き出す人々の姿を。
見てみたいと。
そう、思った。
「それを僕は見届けたいんです」
そう言い切ると。
三上さんは──少しだけ閉口して、押し黙りました。
まさか。
あまりにもあまりな理想論に、少しだけ引いてしまったのでしょうか。
いや。理解できます。こんなロマンチシズムに塗れた語りに、会話の中に多少は含むべきリアリズムは一切ないという事に。
思わず語ったその内容を振り返る。
うわぁ。
痛い痛い痛い。
でも仕方がない。これこそが僕の中の偽りのない気持ちですので。こんなロマンチストな一面も含めて受け入れてもらうしかない。
.....などと。
思っていたのは、杞憂だったようです。
「凄い」
そう。
はっきりと呟いてくれたものですから。
「え?」
「多分──ボーダーの中でそのお話を聞いて、応援しない人はきっといないよ」
三上さんは。
僕の目を真っすぐ見て。
「ちょっとね。不思議だったんだ」
「何がでしょうか?」
「何で影浦先輩と仲がいいんだろう、って」
現在厨房の奥で何やら御母堂と話し込んでいる影浦先輩をちらり見て、三上さんは言う。
「でも話を聞いていて納得しちゃった。──ねぇ、勝山君」
「はい」
「──私。本気で頑張るから」
「.....」
「今は私と勝山君の二人だけだけど。ちょっとずつでも人を集めて。──出来るだけ、上に行ってみよう。この1シーズンでどこまで行けるか」
「.....はい」
「うん」
そうして。
鉄板の上のお好み焼きを全て平らげると、二人で割り勘を行う。
最初は、形だけでも(どうせ断られるのを解っていながらも)全部僕が出すことを提案しようと思いましたが。
何というか。
今は、そうするべきじゃないと思いました。
僕も三上さんも。
この場において、同士だ。
同士ならば、分け合うものだと。
そんな風に感じて──ごく自然と、割り勘を選んだ。
その後。
影浦先輩にお金を突き返され、ぶっきらぼうに奢りだと告げられました。
それはないよとお金を置いていこうとしましたが、その前に襟首を掴まれて店の前に放り出されました。
「ぷっ」
「あははは」
何というか。
とても愉快な気分でした。
僕は何だか、底抜けにいい人たちに囲まれている。
それを自覚して。
「じゃあ。勝山君」
「はい」
「ランク戦が始まるまでに、もうちょっと私達も頑張ろう」
「頑張る.....?」
「うん。──せめてあと一人、この条件で入隊してくれる人、探そう」
そう言って、三上さんは屈託なく笑いました。
うん。
そうだ。
一つでも上に行きたいならば。
1シーズン一緒にやってくれる人を探そう。
これもまた──これから幾らでも必要になる努力の一つだろうから
。
本作のテーマは
「ワートリで青春もの」です。
私なりに頑張ります。