2015年/8月6日/アリゾナ州
「司令、こちらカタナ」
私は真夜中の空にいた。
時折雲間から顔を覗かせる月が私を静かに照らす以外、空は漆黒の闇が支配する。
「現在位置アルファ・ナイナー・ツリー・ツリー上空4000フィート(1,219m)にて巡航。EOTSオン・ノーマル」
装着するヘッドセットから伸びるブームマイクを軽く掴み、離れた地点にある基地内の指令ユニットに向けそう言った直後HMDバイザーにEOTSからのスキャン結果が映る。
「─────司令、こちらカタナ。 EOTSが微量の魔法力を感知しました。司令の予測通りです」
『やはりか』
ヘッドホンから聞こえる女性の声。
私の所属する航空団のボスだ。彼女はこのアリゾナの隣の州であるネバダのネリス空軍基地にいる。
この通信は扶桑魔女のみ……リベリオン側には盗聴出来ないよう魔法針を用い、幻聴術も加えた徹底ぶりだ。軍用衛星やフリーサットは使えない。他国の陰気臭い話を盗み聞きするリベリオン諜報機関が聞き耳立てている為だ。
『2日前にはカットラスがNESTとSEALsを積んだナイトストーカーズ(第160特殊作戦航空連隊)のヘリを確認している』
NEST(Nuclear Emergency Support Team:核緊急支援隊)とSEALs(リベリオン海軍特殊作戦部隊)、この2部隊の名を聞けばこの地域で“何か”が起きていることは確かだ。
「やはり何か事件が、ですか」
『それをあちらさんが教えてくれない以上、こっちから探るしかないでしょカタナ?』
その言葉に、無線の向こう側で笑みを浮かべ好奇心を隠せられない様子のボスの姿が目に浮かぶ。頭を押さえる彼女(カタナ)
「厄介事は御免ですよ“カーミラ”?」
ボスのあだ名を口に出す。
女性ばかりを襲いその血を吸うことでその美貌を保たせ、永遠の時を生き長らえる女吸血鬼の名を。
「や、やめてよ(汗)その名前は。 ちゃんと自重はするから、ね?」
「はぁ……本当にお願いしますよ? 司令」
「はいはーい」
「はいは1回です」
「はい了解よ。 帰投してちょうだい。明日はサタン・エンジェルズ(第57航空団)のウィッチ隊とのDACTよ」
「カタナ了解。RTB」
体を横にし旋回する。
帰投方角に向けると水平に戻しIHI製F-6魔導エンジンを唸らせ、圧縮されたエーテルがスラスト・ベクタリング・ノズル(推力偏向式排気口)から吹き出させ上昇してゆく。雲を抜ければ、目の前に広がる無数の星々と月が瞳いっぱいに映る。
地上を隠すように覆う雲の上を這うように飛行するF-3ジェットストライカーを履く航空魔女を月は静かに照らすのみ。
謎の動きを見せるリベリオン軍にいち早く気づいた扶桑国防空軍第9航空団第157飛行隊、通称“八咫鳥(やたがらす)”のウィッチ。
どう絡ませていくかは、まだ未定です。場合によっては出さないかもしれません(苦笑)。
それと今後の本作ですが、少し投稿日に間が空くかもしれません。その場合は自分が高校時代に書いていたSSを代替え手段として投稿します。