『正面に多数の戦車型を視認!』
『指揮車よりフント全車へ。ブライトカイルを維持しつつ敵戦車型に仕掛ける。距離300まで引きつけて砲撃開始』
『トミー(ブリテン兵)より獲物を多く狩ってやれ』
『フント2(ツヴァイ)、ヤボール(了解)!』
『フント6(ゼクス)、ヤボール』
『フント10(ツェーン)、ヤボールッ』
空は雲一つ無い快晴。
頭上から容赦なく太陽の陽光が照りつける広大な砂漠を砂塵を撒き散らしながら突き進むKAK(カールスラント・アフリカ軍団)機甲部隊。Ⅲ号戦車やIV号戦車等で構成された戦車部隊はブライトカイル(広翼逆楔隊形)と呼ばれる隊形でネウロイを攻撃する態勢をとり、備える。
此処まではネウロイの小規模部隊による障害を航空部隊の支援のもと突破しており、損害は軽微だった。
彼らKAK機甲部隊の頼もしい味方は空だけではない。
「ヴィクスン1(アイン)よりフント1へ。こちらは側面を警戒しつつ正面の戦車型に攻撃します」
KAKでも重宝されるカールスラント陸戦ウィッチ隊。
ロンメル将軍の虎の子の戦力と呼ばれる彼女たちは、ここぞと言う時に戦車部隊に随伴し陸戦ネウロイを凪払う役割を担う。
計8名の陸戦ウィッチ隊はそれぞれ4名で1隊編成でカイル(楔形隊形)で左右に展開し戦車部隊より少し前を走行していた。
『こちらフント1、ヤボール。気をつけろよヴィクスン』
『露払いはオレ達に任せなって言いたいが......な』
彼らは陸戦ウィッチに比べればネウロイに対し不利だ。
その為、彼女たちの陸戦ウィッチの助けが必要不可欠なのだが、彼ら戦車乗りは自分たちの代わりに彼女たちが負傷するのを凄く嫌っている。犠牲になるのは自分たちだけでいい、と。
だが、その思いを知っている彼女たちは彼らの為に戦い続ける。自分たちの事を一番に心配し奮戦する彼らの為に少しでも負担を減らすように、と。
陸戦ウィッチの指揮官が無線スイッチを入れる。
「私たちなら大丈夫です。その気持ちだけで戦えますから」
『感謝しても足りないぐらいだよ、いつも』
「ふふっ」
そんな会話をしている中、前方から照射されたビームが掠む。
彼女がずっと先の砂丘に目を細め見つめると、砂丘にポツポツと明らかに砂の色とは違う黒い物体が出ていた。
「敵は稜線射撃でこちらを削るつもりね」
彼女がそう呟くと、もう1隊の同僚たちを無線で呼ぶ。
「ヴィクスン1よりヴィクスン5~8へ。前方12時方向に中型陸戦ネウロイを確認、数15、距離400、左翼から回り込んで」
『『『『ヤボールッ!!』』』』
戦車部隊を挟んで反対側に展開している陸戦ウィッチ隊が指示を受け速度を上げる。
するとタイミングを見計らったように10時方向から潜んでいたらしい陸戦ネウロイが数十騎、回り込もうとした陸戦ウィッチに襲い掛かった。小型種が左右で攪乱するように攻撃を仕掛け、大部分を砂に埋め被弾面積を減らした中型ネウロイが実体弾、ビームを混ぜた砲撃を行い釘付けにしたのだ。
『こちらヴィクスン5(フュンフ)......ッ!』
「ヴィクスン5、一旦下がって!」
『フント1、こちらフント3(ドライ)。第1小隊は左翼のヴィクスン隊を援護したい。許可を』
『フント3、こちら1。許可する、やってやれ』
『フント3、ヤボール。奴らを鉄屑に変えてやるよ』
戦車部隊から離れた小隊が待ち伏せしていたネウロイ部隊に砲撃を開始し吶喊する。
一方で、12時のネウロイ部隊との距離が300を切ったフント1指揮の他の隊は合図とともに一斉に砲撃を開始、ネウロイのいる砂丘は爆発による爆煙に包まれ一瞬だけ攻撃の手が止んだが、煙が晴れると再開した。
右翼側のヴィクスン1~4の陸戦ウィッチ隊も魔導照準を展開し照準をつけると手持ちの50mm対装甲砲や75mm対装甲砲を撃ち始め、1騎ずつ片付けてゆく。
『徹甲弾装填! フォイアッ!!(撃てッ!!)』
『敵戦車型1撃破!』
『フント8(アハト)被弾!無事かッ!?』
『なんとかな...! だが履帯と転輪がヤられた、行動不能だ』
『フント10、フント8の乗員を回収後、後方へ下がれ』
損傷を受けた戦車の傍に仲間の戦車が停車し、乗員を車体上部に乗せ後方へと下がり始めた。
敵の砲火が後退中の戦車に集中するが、援護に回ったヴィクスン隊のウィッチが2名、シールドを展開して敵弾を弾く。
ヴィクスン1と他1名は最大速度でネウロイとの距離を詰める。
「ヴィクスン2、左の2騎を任せた!」
『ヤボール、ヴィクスン1』
陸戦ネウロイが砂丘の陰に隠れた隙に50mm対装甲砲の空弾倉を新しい弾倉に交換させる。ヴィクスン2が砲塔を覗かせた陸戦型に徹甲弾をお見舞いし破壊する。
ヴィクスン1は魔導エンジンの出力を一気に上げ、砂丘の向こう側へ突っ込み飛び出した。
「もらったッ!!」
空中で態勢を整え50mm砲を真下の陸戦型に発砲。
ドンッ!!ガウンッ!!
砲声に次いで装甲を貫く音が辺りに響き渡り、瞬時に光の欠片と化す陸戦型に構わず次の標的に再び50mm徹甲弾を放つ。
1発目は車体側面部を穿つように貫通し脚部を1つ失う陸戦型。バランスを崩した事でヴィクスン1に向け放たれたビームは虚空へと消え、その砲塔部分に着地した彼女が50mm砲を発射、至近距離で発砲された徹甲弾がコアを貫き粉砕した。
「敵2騎撃破ッ!!」
『ヴィクスン1、此方も片付いた』
『主目標までのルートに障害認めず。ヴィクスン1』
「ヴィクスン1よりフント1へ障害を排除しました。主目標である拠点型までの進行ルート上に敵影認めず。これより......ッ!」
無線で報告をしている最中に木枯らしのような音が聞こえ、集結中のヴィクスン隊の直ぐ傍で爆発が起こる。
『くっ......!』
『ちょっ! 何々ッ!?』
突然の事態に混乱するのもつかの間。
再びひゅうぅぅぅっという音とともに真っ黒い塊が数個飛んでは地面に落着すると凄まじい爆発を引き起こし辺りを吹き飛ばす。
少し冷静さを取り戻したヴィクスン1が事態を把握する。
「敵からの長距離砲撃よ!散開してッ!!」
『いったいどこからッ......て!』
『何なのよ、アレ』
回避行動を続ける彼女たちの視線の先には巨大な黒い塊が砂塵を撒き散らしながら此方へと移動していた。
以前ハルファヤ峠防衛戦に於いて出現した大型陸戦ネウロイを更に大型化したようなネウロイだった。全体的に2体分の大きさで、ずんぐりとした太い4脚で歩行して胴体上部には巨大な連装砲を持ち、背中には数本の柱が伸びている......それが火を噴いているとなると恐らく榴弾砲だろう。
それだけならまだしも、その陸戦型後部から飛び出すように航空型ネウロイが射出されているのだ。
「まさか......アレが拠点型なの!?」
『自走可能な拠点型ってなんだよッ!?』
『かなり装甲が硬そうね。手持ちの徹甲弾足りるの?』
呆然する彼女たち。
そんな彼らに待ったを掛けないネウロイではない。
拠点型から自走可能となった巨大陸戦型ネウロイは小型、中型陸戦ネウロイと航空ネウロイを引き連れ、ゆっくりと迫って来る。
そして、その巨大な連装砲が旋回するのを見たヴィクスン1が全員に指示を叫ぶように伝えた。
「来るわ! 皆避けてッ!!」
その直後、巨大陸戦型の主砲が火を噴いた。
砲声と衝撃波が大気を震わせ、あまりの反動に巨大陸戦型自身も少し後ろに下がったように見えた。砲弾の飛来する音が聞こえ始めそれが次第に大きくなると着弾し炸裂した。
着弾地点から数十メートル範囲を吹き飛ばし、辺りに爆風とそれにも伴い金属製の弾片が撒き散らされる。
『きゃああああっ!』
『クソッ!』
ヴィクスン隊のウィッチは着弾に備えてシールドを張ってはいたものの、あまりの衝撃波に相殺することが出来ず数人が吹き飛ばされ地面に転がる。
「......なんて威力なのよ!」
着弾地点に出来たクレーターを見たヴィクスン1が言う。
まるで戦艦か列車砲のような大口径砲弾並の威力にヴィクスン隊は驚愕していた。
遅れて到着したフント戦車隊もその光景に言葉が出なかった。
気を取り戻したフント1が無線で全隊に告げる。
『フント1より全車。ヤツがまた砲撃する前に仕留めるぞ!』
『ヴィクスン1、此方が随伴ネウロイを引き付ける。その間にヤツに接近して可能なかぎり砲弾を叩き込めッ!!』
フント1の指示に動き出した戦車隊。
最大速度を維持したままの行進間射撃など当たりはしないが、それに巨大陸戦型周囲の中・小型種が反応し足元から離れる。
それを見たヴィクスン1は再び隊に指示を出す。
「負傷した者は後方に! それ以外は私について来て!」
「行くわよ! パンツァー・フォー!!(戦車、前へ)」
『ヤボールッ!!』
行動開始する彼女たち。
そんなヴィクスン隊の動きに気づいた航空ネウロイが編隊を組んで上空から襲い掛かって来るが、突然、数機が火を噴いて撃墜された。
「え?」
ヴィクスン1が思わず見上げたその先には1人の魔女の姿。
長い白い髪を靡かせ黒い飛行服に身を包んだ彼女の履くストライカー・ユニットには黄色で『14』の数字。
「マルセイユ中尉!」
『何とか間に合ったようだな。大丈夫か、ヴィクスン』
迫っていた敵機を機関銃の短連射で撃墜してゆくマルセイユ。
後方に敵機がついても身を翻し一瞬で背後を取り、仕留める。アフリカの星と称される彼女の他にも統合戦闘飛行隊「アフリカ」所属の航空魔女たちが続々と飛来した。
『マルセイユとライーサはそのまま上空の戦闘機型をお願い。真美は戦車隊の援護に向かって!』
『『『了解!!』』』
扶桑人の隊長の指示に応答する各員。
マルセイユ中尉とその僚機を務めるペットゲン少尉が上空の航空型ネウロイを相手にするなか、小柄な体格の扶桑人のウィッチが対空砲に使われる機関砲を抱え陽動戦をしているフント戦車隊への援護に向かう。
彼女は上空から逆落としに降下を始めるとその機関砲を構え陸戦型ネウロイの上部に1、2発叩き込み撃破する。一旦離れては上昇して降下、狙い撃つを繰り返す度に1騎、また1騎と破壊した。
そんな彼女たちよりも異質な存在が現れた。
ヴィクスン隊の頭上を白い噴煙を噴く何かが高速で飛び越えてゆき、巨大陸戦型に2度の閃光が走り爆発が起きた。
『何だ!?』
『変な筒みたいな物が凄いスピードでヤツにぶつかったよ?!』
『...!後ろから何か来てるよッ!』
その言葉に振り返ると「ソレ」が見えた。
低空で飛行している灰色の航空機。
機首にプロペラは無く、長い直線状の翼の下に複数の筒状の何かを持っており、後ろに樽のような物が2つ付いている。
それが私たちの上を通り過ぎると甲高い音が辺りに響く。
航空魔女やプロペラ機の音がブーンなら、あの機体はキーンという感じなのだ。
ヴィクスン隊のメンバーはそれがプロペラ無しでどうやって飛んでいるのか不思議で仕方がない様子だった。
「あの機体は......?」
『そういえばヴィクスンは初めて見るんだったな』
ヴィクスン1に上空のマルセイユ中尉が答える。
『あれは遠い未来から来た航空機だ』
「遠い......未来?」
『あぁ、半世紀以上先だそうだ』
マルセイユ中尉が言う事に頭が混乱してきたヴィクスン1。
無理もない。いきなり現れた未知の航空機が未来から、しかも半世紀以上先から来たと言うのだ。普通なら精神が参ってしまったのか、と疑われるレベルだ。
頭の中が?だらけになりつつあったヴィクスン1の無線機に見知らぬ男の声で通信が入る。
『ヴィクスン1、こちらリベリオン空軍所属機、コールサイン、ブラックマンバ6。これより貴隊への航空支援を行う。オーバー』
声の主はあの機体に乗っている者だろうとヴィクスン1は思いつつ、距離300m近くまで巨大陸戦型に迫り徹甲弾を撃ち込む。だが、砲弾は装甲の表面を少し破壊しただけで、あまりダメージを与えていない様子だった。
すると、先ほどのリベリオン軍機が旋回して戻って来た。
『マーベリック発射』
見れば、機体の翼の下に吊されていた筒状の物が噴煙を出しながら切り離されもの凄いスピードで巨大陸戦型に突き進む。まるで光の矢とも言うべきそれは命中とともに爆発。脚の一つを消失させた。
その威力に目を見張るヴィクスン1。
そのまま低空を維持し続けるリベリオン軍機が機首を少し上げたかと思えば、機首下部が真っ白い煙に包まれ多数の曳光弾が巨大陸戦型に吸い込まれるように次々と命中した。
巨大陸戦型が苦しむかのように甲高い叫び声を上げた。
これを好機と見たヴィクスン1がメンバーに伝える。
「ヤツの被弾箇所に徹甲弾を集中させてッ!!」
ヴィクスン1の発砲を合図に陸戦魔女たちが巨大陸戦型の負ったダメージ箇所に対して集中砲撃を実施した。次々に命中する砲弾を受け続けた箇所は更に損傷を悪化させ遂には、赤く光を放つコアがその姿を現した。
『コアだ!』
「全車、撃ち込んでッ!!」
最後の1発まで撃つつもりで砲撃を続け、放たれた砲弾の1発がコアを貫通した。動きを止めた巨大陸戦型は静かに光の欠片へと徐々に崩壊を始めた。
「なんとかやったな......一時はどうなるかと思ったが」
機甲部隊の上空を旋回しているプライアーがバイザーを上げる。
EOTSで捉えた地上のズーム画像には巨大陸戦型を仕留めた陸戦魔女たちや戦車兵たち。戦場は歓喜に包まれていた。
巨大陸戦型に随伴していた中・小型種のネウロイは子機であったらしく、マスターである巨大陸戦型がコアを撃ち抜かれた時点で一気に消滅した。
通信によれば第8中隊とブリタニア軍が担当した拠点型も撃破したとの情報が回ってきた。これで暫くはゆっくりできそうだ。
隣を飛行するマルセイユから無線が入る。
『帰ったら一杯やるぞ~?ウィル』
......この飲んだくれめ。
「作戦の事後報告書はどうした?」
『そんなものケイに任せれば......』
『マルセイユ......あんたねぇ』
大尉の額に青筋が......知らないぞ?マルセイユ。
『まぁ、いいわ。早く基地に帰りましょう。疲れたわ』
『同感だな』
「了解」
『......こんな夜中にどうしたんだ?』
『緊急の案件だ。至急ISA(情報支援活動隊)の1ユニットを貸せ』
『...いきなりだな。情報の収集ならラングレーだろう?』
『それとも、例のデビスモンサンの件か? あれだったら既にお前の要請でブラボーユニットを派遣していたはずだが?』
『違う。ホワイトマン基地にだ』
『ホワイトマンに?何故......まさか!?』
『あぁ......』
『スピリット・オブ・リベリオンが“消滅”した』
どうでしたか?
ちなみに登場した部隊名は
フント=犬
ヴィクスン=雌狐
です。
ヴィクスン隊がA-10を始めた見たのは今作戦からで、今まで彼女たちと共同で戦った事が無かったからです。
ちょっとおかしいなぁ?と思える箇所、質問、誤字・脱字等がありましたら感想の方で受け付けます。