俺の嫌な予感は当たった。
目の前に現れたのは、白いコブラの姿をしたミラーモンスターだった。バイザーの画面ではVenoviperと表示されていた。
今にも毒を吐きそうなやつだ。少し不安になってきた。
ソードベントを装備し、果敢に立ち向かう。
ベノヴァイパーが吐く毒の息を交わしながら、相手の胴に一閃。
悲鳴を上げる怪物は、痛みのせいで体をうねらせた。よし。今がチャンスだ。ファイナルベントを取り出した時だった。
俺はふと殺気を感じて手を止めた。
誰かいる!?
反射的に後ろを振り返った。するとそこには紫を基調としたボディで、コブラの頭部を模したような姿のライダーがいた。バイザーの画面では、相手のことを王蛇と表示されている。英語での表記じゃないのには少し違和感を感じるが人のことを言えた義理ではない。
相手の画面にも勿論俺の、龍騎の名前が表示されている。互いに視線が合ったところで相手が口を開いた。
「ほお。初めて見たぜ。俺以外のライダーはよ。・・・、話には聞いているが」
その冷静さを帯びた口調は俺の身体を少しずつ凍らせていった。緊張感が、物凄い緊張が俺の身体を襲う。
「このモンスター・・・。お前のか?」
ベノヴァイパーも蛇であり、王蛇の契約モンスターにも思える。ただ違うのは色のみだ。
「ん?俺はそんな弱そうな色のモンスターとは契約していないぜ。俺の相棒」はというと、王者はアドベントを取り出す。「こいつだ」
『アドベント』
ベノヴァイパーとは姿が似ているが、色が紫の蛇のモンスターのカードが装填される。
そうして現れたのは、まさにベノヴァイパーの色違いのモンスターであった。
「やれ、ベノスネーカー!」
王蛇は前方、つまり俺とベノヴァイパーの方を指さしながら攻撃を指示した。
刹那、ベノスネーカーは強力な毒の息を吐いた。
間一髪でかわす。毒が触れた地面からは煙が上がっていた。地面が溶けている。恐ろしい威力だ。
「戦う気がないなら引っ込んでろ。取りあえずこの白い奴を片付けるか」
ベノスネーカーとベノヴァイパーがにらみ合う。色違いなだけでフォルムは対照的な点が絵になっているともいえる。俺はその戦いの様子を、黙ってみていることしかできなかった。ある意味、俺からすればどうでもいいようなことであるからだ。
俺の願いが定まっていないのが原因だ。
王蛇が飛び上がり、ソードベントでベノヴァイパーの目を傷つける。上手い。一瞬でモンスターが怯んだ。その隙にファイナルベントを装填する。
『ファイナルベント』
王蛇は再び飛び上がり、ベノスネーカーの口に収まった。するとすぐにベノスネーカーは王者自身を毒と共に打ち出した。その勢いで毒を纏ったバイトキック―ベノクラッシュ―がベノヴァイパーに炸裂した。
必殺技を食らって、ベノヴァイパーは大きく退いたが爆散などはせず、巨体を地に倒して終わってしまった。
ここから俺にとっては衝撃のシーンが始まる。
「ほお、まだ生きているとはな・・・」すると王蛇は手慣れた手つきで一枚のカードを引いた。宛があるかのように。「なら仲間にしてやるよ」
王蛇が引いたのはContact、モンスターと契約する時に使うカードだった。
真っ白なカードをベノヴァイパーに翳すと、途端に白蛇は吸い込まれていった。そして、そのContactのカードはアドベントに変化した。
「う、嘘だろ・・・。モンスターを2体契約!?」
と、俺は思わず心の声が漏れた。その声に反応して、王蛇はゆっくりと俺の方を見た。というよりは、殺意をこちらに向けていると言った方が正しい気がする。
そしてベノスネーカーの尾を模したソードベントをこちらに向けて口を開いた。
「やるだろ?やらなくても、・・・無理やり戦わせてもらうぜ。そういうルールだろ?」
彼の言っていることは正論だった。だが、俺は相手の持っている力が圧倒的であること自覚していた。明らかに自分のカードデッキとでは戦力差がある。
「い、いや待て。俺は・・・」
情けないが、咄嗟に出た言葉がこれだった。逃げないといけないことしか頭になかった。
「祭りの始まりだあ!」
王蛇の剣が振り下ろされる。