王蛇が黄金の剣を振り下ろす。
俺は反射的にその攻撃を避けた。逃げなければならない。レベルはもうあてにならず、相手の方が戦力が上であることは先ほどのContactで自明だった。
逃げることしか頭になかった。戦う選択肢はない。今からドローするカードは全て逃亡するために使う。
「なんだよ。つまんねえな。なら消えろ」
攻撃を外したことで、相手のヘイトを貯めてしまっているようだ。現実世界での俺はあくまで仕事中の身だ。大けがでもして戻れば冬沢さんに疑われることは間違いない。
王蛇の連続攻撃が再び繰り出される。避け続ける気力はないため、ガードベントを両肩に装着する。
そのまま攻撃を防ぎながら後退し、鏡の傍までやってきた。相手と同じ出入口ではないはず。だから現実世界でも追われることはもうない。幸い、相手も興奮した状態の為、俺がこの鏡を出入口として逃げることは頭にないだろう。
「死ねえ!」
王蛇が勢いよくサーベルを振り上げた瞬間、俺は一枚のカードを装填した。
『アドベント』
ドラグレッダーが飛来し、唐突に王蛇の身体を吹っ飛ばした。相手の舌うちが聞こえる。今だ―。
俺は一目散にミラーワールドから脱出した。
なんとか戻った俺は、冬沢さんの元へ急いで戻った。怪我はないはずだ。
あのライダーは誰だったのか。
推測だが、あの消えたライダーは恐らくモンスターに食われた。これでちゃっかりまた行方不明事件の被害者がまた一人と消えてしまったわけだ。となると、俺がミラーワールドに入った直後にいたベノヴァイパーか。もしくは王蛇のベノスネーカーに食われたことになる。
王蛇が俺より後から来たか先に来たかは割とどうでもいいな。それよりもあの記者が何故消されることになったのか。それの方が重要だ。あの記者は黒井にとって都合の悪い質問をしていた。彼が消えて得をするのは間違いなく黒井だ。ということは・・・。
王蛇は黒井の可能性が高いのか。
俺は今ミラーワールドに潜ったことをとてつもなく後悔した。冬沢さんに怪しまれる可能性はあるし、何より中でとんでもない敵に遭遇した。モンスターを倒してもいないので経験値ももらえていない。いいことは全くない。
「大丈夫?トイレにしては、ちょっと長かったけど」と冬沢さんが言う。
やはり疑われた。なんて弁明しようか・・・。
「最近、腹の調子が良くなくて・・・」
後頭部を掻きながら言った。ばれていなければいいが。ばれていても、冬沢さんはあまり口に出すことがないのでそれを祈る。
予想通り、そう、とだけ呟いて冬沢さんは踵を返した。
俺はこの一件を瑠維に連絡しておいた。一応あいつはライダーバトル上は敵で間違いないが、タッグベントの誓いを交わした中だ。警告として捉えてもらえばいいかな。
返事は思ったよりも早かった。食いつきがいいというか。
瑠維は反応を示すとともに、一枚の画像を送ってきた。若い男だ。俺より少し年上ってくらいの雰囲気だ。何処かで見たことあるな・・・。(まあ職業柄誰にでも見たことある、と感じてしまうのは癖なのかもしれない。見たことがなくても)
『俺も昨日、ライダーが近くにいる通知を受けた。だけど大学の授業中だったんだ。だから誰かわからないし、俺は寝ていたから尚更わからない』
最期の一文は瑠維らしさを感じたが、信用を失いかねないだらしなさも感じた。
『こいつ、スーパー検事って言われてるやつか?』と俺は返信した。
今回は本当に見たことがあるようだった。有名人で助かった。
『そう。今日はこの人がゲストスピーカーで大学に来ていたんだ。今まで大学でライダーの通知が鳴ったことは無い。だからこいつがライダーの可能性が高い』
瑠維の推理はかなり的を得ているような気がした。まあ誰がライダーになってもおかしくはない。願いは、あるとしたら富や名誉って感じなんだろうな。
まあ、さっき出会った王蛇は大分サイコパスな野郎だったから、考えても仕方ないだろうな。
改めて、俺も早く願いを見つけたいところだ。
そして互いに気を付けるように忠告しあった。