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その日、俺にとって最悪の日となった。
『黒井社長、文啓社員に暴行を受ける』
この記事がYahoo!ニュースで大きく取り上げられた。頭に包帯を巻き、腕を包帯で吊るした黒井の写真が何枚か掲載されていた。ダンディ社長と言われていた面影は無くなっている。
ぶっちゃけ、俺のせいでこうなったのはわかってはいるが、こういう手段に出てくるとは思わなかった。
予想外の事態に、俺はオフィスで体を硬直させていた。周囲からの視線が痛い。小声で聞こえてくる様々な会話は、全て俺への批判に聞こえてきた。
「おい、開斗。・・・継巳開斗!」
どうやら呆然としていた俺はその声で我に返った。目の前には小久保デスクが立ちはだかり、睨みを利かせていた。目が合うなり、反射的に謝罪の言葉が漏れる。
「冬沢も今日は休み。…お前、昨日の取材で何があったんだ。収穫はあったのか?まあ、収穫があったのはうちじゃないらしいけどな」
最後にかましたジョークのお陰で、周囲がくすりと笑った。少しは落ち着くことができる。本当にこういう時には頼りになる上司である。
取りあえず二人で話がしたいと、誰もいない会議室に入った。
「デスク、俺もう会社辞めます・・・」
落ち着きはしたものの、テンションは最悪。事態を考えるとそうするのが丸く収まると考え、自暴自棄になっていた。あまり考えていなかった。
「いやお前それはないだろ。急にやめられても困るぞ」デスクは俺の両肩を掴んで諭してくる。「それより冬沢は大丈夫なのか?」
「大怪我とかしたわけじゃないんです。気を、失って・・・。」
「はあ?取材中にか」
まあそういう反応はするよな・・・。この説明をまた素人にしなければいけないのが辛い。面倒だ。
また、というのはそういうことだ。
俺は冬沢さんに話した。
昨日の晩。冬沢さんの病室にて。
「あれは何があったの?」
―ベノスネーカーのことだ。気になって当然だろうな。俺の喉元まで、言いたいことが来ていた。だがそれが口から出てこない。
記者として俺は真実を知りたい。それは冬沢さんも同じだ。ある意味、ライダーバトルに対しての願いはある程度固まってきたと言える。
「言っても信じますか?」
これから俺たちは新たな領域に踏み込もうとしている。互いが互いを信じることができるかが鍵だ。冬沢さんが俺を裏切るとは思えない。
冬沢さんはゆっくりと首を縦に振った。
「私は記者よ。・・・自分の目で見たものしか信じないわ。それを伝えるのが私の仕事よ」
その真っ直ぐな眼差しが強い意志を俺に見せた。大丈夫だ。つくづくいい先輩たちに恵まれているとは思う。
俺は自らがしらべたミラーワールドや神崎士郎についての資料を見せた。
冷静に目を通す冬沢さん。あくまで公平な立場から意見を出そうとしているのがわかる。
「これ本当?」目を見張って言う。「じゃあ、黒井社長はこのライダーってわけ?」
と冬沢さんが俺に向き直った瞬間。
俺は龍騎のカードデッキを見せつけた。
更に大きく目を見開いた。ただでさえ大きな瞳が、更に大きく開いた。
「僕も、・・・ライダーです」
これで信じるだろうか。いや、はっきりと冬沢さんの瞳にはカードデッキが映り、反射している。
「まさか。じゃあ継巳君が」
「いや、黒井には逃げられました・・・。僕は少なくとも他に二人のライダーを見ました」
それを聞いて冬沢さんは少し黙っていた。状況の整理が追い付かないのだろう。
そのあと、もう一度俺の方を見たが直ぐに目をそらされた。
「今日はもう・・・。一人にさせて」
ベノスネーカーに襲われた時、気絶はしたものの恐ろしい思いをしたはずだ。それと同等の能力を俺が持っていると思うと、俺のことを
怖がっても仕方ないか。
仕方ない。
何もかも・・・仕方ないんだ。
「俺は事件の真実を知るために、・・・ライダーになったんです。それだけは、信じてください」
まるで悪あがきにしか聞こえないが、それでも俺はこれだけは言っておきたかった。
黙って病室を後にした。
冬沢さんが入院している経緯を小久保デスクに話した。
「え、入院してるのかよ」
「直ぐに退院しますよ。心配かけたくなかったんじゃないですか、あの人のことだし」
冬沢さんのことを分かったうえでデスクを宥めたかった。
だがデスクは後頭部を掻きながらため息をついた。どうも俺の思い通りにいかない。やりたいこととは反対方向にベクトルが進んでいく。
「あいつ・・・。まあ冬沢らしいといえばらしいが」
俺の処分も含めて、頭を悩ませることが多い。俺自身にはどうしようもできないのが悔しかった。ただ力を持っているではだめなんだな・・・。
所詮はミラーワールドのみでの力ってわけか。
その時突然、会議室のドアが勢いよく開いた。
電話の子機を持った女性社員が立っている。
「デスク、電話がありまして・・」
面倒そうに振り返るデスク。今と彼が言いかけた時、社員が言葉を遮った。
「清岡という検事から電話が」
その名前を聞いてデスクの表情が明らかに変わった。勿論俺もだ。俺は声が出た。ついこの間名前を聞いたからだ。
そう、瑠維から。瑠維は清岡がライダーに違いないと推測していた。もしこれが当たりだとすれば・・・。
「清岡ってあのスーパー検事か」
あの後、デスクが電話に出た。要件は、俺が清岡の元へいくということだった。話はそれからだと。
デスクの推測では、今回の件についてどうにかしてくれるのだろうということだった。俺も納得がいった。
清岡が文啓本社に自ら電話をかけてきたのは、あの時の戦いで龍騎かナイトのどちらかが俺、継巳開斗だと感づいたからだろう。
それに今回のニュースが割り込んできた。清岡には都合がいいというわけだ。
こうして俺は、検察庁を訪れることになった。
緊張した面持ちで訪れた。入るなり、スタイルのいい女性が俺を出迎えた。森岡奈緒子というらしい。
どうやら彼女が清岡の事務官らしく、部屋まで案内してくれた。ややハスキーボイス気味の声が特徴でかなりの美人だった。
部屋の前まで来た。
「今回は私は席を外すように言われているので」
なるほど。もうお互いにライダーであることを前提として清岡は俺を誘ってきたのか。
重い扉を開ける。
目の前には、大きな窓ガラスと机。
ガラスから外を見ているのが清岡だろう。実際に会うのは初めてだ。メディアでしか見たことがない。
扉が閉まる音がすると清岡は振り向いた。
「よ、一昨日は悪かったな。あいつに止めを刺したかっただろうが、それだけは御免なんだ」
ハンサムな顔を輝かせて口を開いた。口調が何処か天才肌であることを思わせる。
「どういうことだ」
「俺には前世の記憶があってな。そいつは弁護士で、俺たちと同じように」胸ポケットから緑のカードデッキを取り出す。「ライダーだった」
俺は驚きの声と共に目を見開いた。だが予想通りだった。予想通りであったことに驚いた。
カードデッキをちらつかせながら、近づいてくる。
「そして先代のゾルダは・・・あの王蛇に殺された」
この話は真司は知っているのだろうか。その先代のゾルダや王蛇も調べれば出てくるのかもしれない。やることが一つ増えた。まだ清岡は続ける。
「俺は前世の仇を打ちたいんだ。だから申し訳ない、王蛇は俺が殺す。誰にもやらせない」
ある程度は合点がいった。わからなくはない。でもどうして俺は呼び出された。
「まあしかし一人で戦うのもあまり意味がない。どうだ、ここは取引をしないか?」
「まさか」
嫌な予感がした。しかしこれは、”嫌”なのか?むしろ俺には好都合なのではないか?
「俺がお前を無罪にしてやる。だからお前は俺とタッグを組め」
そうして清岡はカードデッキからタッグベントを引き抜いて俺に見せた。
キャラクターが増えてきて、扱いが難しくなってきましたが頑張ります。
4章―3次回予告
「変身!」
もう少しでレベル20・・・。限界値ね。
ユナイトVSユナイト