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その時のファムはもう死ぬんだと思った。人が目の前で死ぬのを見るのは初めてだ。なんとなく俺は助けたいと思った。手を伸ばしたが、ヴィーナスのキックの速度があまりに速く、間に合わないことは直ぐに自明の真実となった。
「開斗!」
ファムはバズスティンガーの拘束を力ずくで振り切り、カードを一枚装填した。
『タッグベント』
音声が放たれたと同時に、鈍い音が鳴り響いた。
なんで今俺の名前を呼べたんだ?知っていたんだ?
あらゆる疑問がやってきては、消える。ファムはもう死んだからだ。勢いよくファムは吹っ飛んだ。同時に、サバイブのカードが偶然にもヴィーナスの手元にやってきてしまった。
ファムが完全に敗北し、脱落した証拠として光の玉-モンスターを倒した時に出るやつ-がヴィーナスの体内に入った。やはりファムのレベルが高いだけあって、俺のバイザーの表示でヴィーナスのレベルが大幅に上がり、20に達したのがわかった。
「これでサバイブを使えるわ」
「どういうことだ?」
と清岡が問う。
「知らないの?サバイブはレベル20じゃないと使えないのよ」
ヴィーナスがサバイブのカードを自慢するように見せつける。瞬間、相手のヴィーナスバイザーが巨大な槍状のヴィーナスバイザーツヴァイへと変化した。
ゆっくりとサバイブのカードを装填した。
この光景に全てのライダーが動かなかった。まるで降臨した神を崇めるように。
『サバイブ』
エコーのかかった音声が響く。そのエコーは、他と一線を画すようなイメージだ。
蒼い風に包まれ、ヴィーナスサバイブが降臨した。青と金色のスーツは、他のライダーを寄せ付けないオーラを纏っている。
俺はそれを無視して、息を切らしながらファムに駆け寄った。ベルトのカードデッキはヒビが入り、中のカードの背面が所々見えている。体を抱き抱えた。まだ息があった。
『ユナイトベント』
エコーがかかっているからヴィーナスか?振り向いた時にはヴィーナスの周りに、バズスティンガーが5体集まっていた。
サバイブになったから増えたのか?5体のモンスターが合体し、巨大な蜂となった。バイザーにはアリスタイオスと表示されている。
刹那、アリスタイオスの尻の部分のバルカンが火を吹いた。無数の弾丸が俺たちを襲う。
俺はファムの肩を担いでなんとかミラーワールドを脱出した。
ゾルダ、ナイト、王蛇、ビートは1枚のカードを切った。
『ファイナルベント』
一か八か、ナイトと王蛇は必殺技を放った。先ずは飛翔斬とベノクラッシュが放たれる。
『シュートベント』
『ストライクベント』
ゾルダがギガランチャーから弾丸を放つ。そしてビートがワイルドボーダーの装甲を模した爪で殴りかかった。
『ガードベント』
強力な防御力は相変わらず。アリスタイオスは無数の蜂に変化し、ヴィーナスサバイブの周りを覆って全ての攻撃を防いだ。ナイトと王蛇はその防御力に弾かれ、勢い余ってミラーワールドから追い出された。
煙が晴れたところ、無傷のヴィーナスサバイブに絶望したのかゾルダとビートも切り上げて逃げ出した。
あたりの沈黙を確認した後、蜂山は勝利の笑い声を上げた。
「誰も私には勝てないってことね」
ミラーワールドから出た瞬間、俺の嫌な予感は当たっていた。
いつの間にか担いでいた筈のファムの姿は、俺の大切な人の姿へと変わっていた。
力が抜けたように、花枝はするりと俺の肩から滑り落ちた。急いで抱きかかえる。
「どうして...」
「こっちの...セリフよ」
目が開ききってない。苦しそうだ。
「紫の…ライダーが記者って…。腹の傷とか思い出して」
「もう喋るな!…どうしてなんだよ」
気づけば俺の頬を涙が伝っていた。
「永遠に…生きたかった。開斗とずっといたかった。開斗より先に死んじゃうと…あなた、寂しがりだから。あなたより長生きしたいって願った」
「俺は…そんなこと」
「愛してる。…傷付けちゃって、ごめんね」
花枝の唇が閉じた。瞼も。俺の腕を掴んでいた左腕が落ちていった。
初めての感情が俺を襲った。鳥肌が全身にいきわたり、頭頂部まで痺れるような刺激が襲った。
「ぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!!」
次回7章
最愛の人を失った開斗。
「タイムベント?それで人も生き返るってのか?」