突如俺が持っていたカードデッキがスマホの画面に吸い込まれていく。物理的法則を超えている。超常現象か?事態がつかめず、戸惑っていた。まるでこの龍―ドラグレッダー―が俺を呼ぶかのように、カードデッキは綺麗にスマホに吸い込まれた。
「え。・・・何が起こったんだ」
何をすればいいのかわからず、反射的にスマホを起動する。
すると俺の目に飛び込んできたのは、見知らぬアプリだった。名前のないアプリ。アプリのアイコンは、今吸い込まれた龍騎の金色の紋章だ。
真司も何が起こったのか解明できず、二人の間には静寂が訪れていた。
恐る恐るアプリを起動しようとしてタップする。しかし、何も起こらない。これは一体。・・・まったくもって意味不明な出来事に、俺たちは何もできずにいた。複雑な社会になった今、ライダーバトルも複雑化したように思えた。
だがしかし、ドラグレッダーが俺を呼んでいるという予想だけは当たったかのように思えた。今から俺はその2032年版のライダーバトルに巻き込まれることになる。
悲鳴が聞こえる。いち早く反応したのは真司だった。この反応速度の速さから、彼がどのようにして戦ってきたのかなんとなく察しがついた。
真司が振り向いた方向を見ると、ビルの透明な壁から謎のかぎ爪が飛び出し、一人の女性を襲っていた。昼休みの終わりごろだからか、あたりに人は少なかった。これが幸いだった。
椅子から飛び出した真司は、老いている体を諸ともせずに正義の拳をそのかぎ爪に繰り出した。そのおかげで女性は解放された。
俺は驚きが連続しすぎて固まっていた。一歩も動けずに。
真司の叫び声が聞こえた。
「なあ、変身してくれよ!俺の代わりに」
その時俺は自分の役目を理解した。真司は今いろんな意味で戦うことができない。龍騎になれなくてもなれないのだ。
俺は何となくではあるが変身の方法を悟っていた。あの鏡の向こうにはモンスターがいる。
カードデッキはこのスマホの中にある。恐らく―。
真司のもとに駆け寄った。
「・・・俺が戦います」
俺の真っ直ぐな視線が、真司の目線と重なる。真司は黙って首を縦に振った。
スマホを鏡にかざす。すると、案の定変身の為と思われるベルトが鏡から出現し、俺の腰に巻き付いた。もう何が起こってもあまり驚かないくらいには感覚が麻痺していた。
そしてスマホが先ほど吸い込まれたカードデッキに姿を変える。黒に金の龍の紋章が撃ち込まれた龍騎のカードデッキ。サイズもほとんど変わらないことから、あまり違和感はなかった。
「・・・変身!」
カードデッキをベルトに差し込んだ。瞬間、俺はミラーワールドの中に吸い込まれていった。