物語が動き出していきます
「後ろだ!金色の羽は後ろを殴れ!」
真司さんの声が耳に響いた。視界ははっきりしていなかったが、ドラグレッダーっぽい何かが見える。そして辺りに金色の羽が降っているのも。
重力のようなものに囚われている気がしていた。無理矢理振り絞り、拘束を抜け出す。
背後に何かの気配を捉えた瞬間、俺は振り向いて右手の拳を突き出した。そして俺の姿はいつのまにか龍騎に変身していた。
右手は金色のオーラのようなものを捕らえた。だが、すぐに消えてしまった。あの金色のライダーの技なのだろう。
この真っ暗な空間で、真司さんはあまり戸惑ってないようだ。以前会った時とは雰囲気が落ち着いている。
「大丈夫か?」
ドラグレッダーから降りた真司さんは俺の前に立った。
「大丈夫か?」
何故かくぐもった声。本人じゃない!?俺は驚いて身を引いた。
案の定その予想は当たっていた。相手の口角が上がり、不敵な笑みを浮かべる。いつのまにかドラグレッダーも、黒い色に変わっていた。何者だ?バイザーには、???と表示されている。認識できない?バグでも起きてるのか?
途端に真司さんの姿をした男は、俺の姿に顔を変えた。あの時の顔だ。あの時の俺だ。あの時、俺は鏡の中のこいつを見ていたのだとわかった。
「変身」
低い声はそのままに、黒い龍の紋章のデッキを掲げて相手は変身した。
なんとその姿は、黒い龍騎だった。
「嘘だろ」
「合わせ鏡が無限の世界を作るように、世界は一つではない。俺はもう1人のお前だ」
俺は恐怖で足が動かなかった。手は寧ろ震えている。
黒い龍騎が俺に手を差し伸ばす。顔を覆ったところで、俺の意識は無くなった。
開斗は目を覚ました。タイムベントの呪いを打ち破ったのだ。
気づいた時には、会社のデスクで突っ伏していたことになっていた。
冬沢が近づき、寝ぼけ眼の開斗のシャツの襟を掴みあげた。
「おい、寝てんじゃないよ!」
「あっ、え?」
どうやらこの惚け方では、「開斗」のようだ。
「BEEEのあの事件のことがわかりそうなの。取材に行くからついてきて!」
というと承諾を得ないまま冬沢は開斗の手首を掴んでオフィスを出ていった。
開斗の口角は歪んでいた。まるで別人かのように。
「BEEEさん、来週の撮影でもよろしくお願いしますね」
駆け出しのアイドルユニット、EAVSGYの竜木源二が挨拶をしにきた。イントネーションが関西弁なのが特徴的だ。すぐ後ろには所属事務所の社長である黒井が立っていた。黒井も社長にしては若い年齢だ。並んでいる2人を見ると親子のように見える。
「ええ。お手柔らかにね。それと、社長も今日は見にきてくれてありがとうございます」
黒井はこの日収録に参加する訳ではなかったが、新人の仕事ぶりを見にスタジオに来ていたのだ。
「とりあえず名刺を」
というと黒井は前に出た。源二からは手元が背中で隠れて見えない。
蜂山は目を見開いた。大胆にも黒井はアドベントカードを裏向きで見せていた。源二に怪しまれないように、すぐに表情は戻した。どうも、と建前の挨拶は交わしておいた。
「どうです。この後少しお茶でも」
というとそのあとの会話は源二には聞こえなくなり、二人はその場を去っていった。
テレビ局の中のミラーワールドに来た王蛇とヴィーナス。
「どういうつもりよ。まさかあなたが王蛇だったなんて」
「仮面を被ってるとわかんないよなあ。でも俺のベノスネーカーは鼻がよくてよ」
ベノスネーカーが蜷局を巻いて王蛇の背後に現れた。
バズスティンガー3体がヴィーナスの前に召喚される。
戦いの火蓋が切って落とされた。