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8-1 二つの翼
源二は春子と居酒屋に来ていた。春子は相当な酒好きで、よく付き合わされていた。
「来週で二十歳なんだし、もう飲んでいいじゃない」
酒を勧めてくる。今月に入ってから、3回目だ。酒に付き合うのは問題ないのだが...。
「ここで週刊誌なんかにバレたら堪ったもんじゃないです。飲んでみたいのも山々ですけど、ここは我慢しておきます」
所々語尾が関西弁になりつつ返した。
その返事を聞いてがっかりしたのか、春子は机に突っ伏した。伸びた右腕が源二のグラスに当たってしまい、倒れかける。間一髪で受け止めたが、不意に視界に入った春子の様子がおかしいことに気づいた。
「愚痴聞いてほしかったのに…」
「え?」
と思わず質問し返す声が漏れた。春子はしばらく沈黙した。
どうやら春子は黒井からのパワハラにあっているらしい。
それに怒り震えている自分がいた。
源二は翌日、黒井の部屋の前にやってきた。中にターゲットがいるのは確実だ。
ドアの隙間から、ファントムバイトのカードを差し込み、部屋の中の鏡にイラストが映るようにした。刹那、部屋の中のミラーワールドにファントムバイトが吸い込まれていった。
鏡の中からファントムバイトで攻撃するつもりだった。
合図を送り、衝撃音が鳴り響いた。ファントムバイトの顎がデスクを砕いたのだ。だが、黒井の悲鳴は聞こえていない。
ここで予感が確信に変わった。黒井はライダーであるという確信が、源二の中で生まれた。
「変身」
聞こえた。
源二は勢いよくドアを開けた。だがそこには黒井社長はいなかった。そう彼はミラーワールドに入っていったのだ。割れた壁の鏡にカードデッキをかざす。
「変身!」
ダイナソーに変身し、鏡の世界に入っていった。
ミラーワールドに突入したが、黒井が変身していると思われるライダーはいなかった。
ダイナソーは左右を見渡したが、誰もいなかった。左右だけしか見なかったのが甘かった。
前後左右にいないとなると、相手がいるのは上空だった。
ウロボロスに登場した王蛇が襲いかかってきた。ウロボロスが吐き出したエネルギー波がダイナソーを襲う。
間一髪で避け、カードを1枚切った。
『ストライクベント』
ファントムバイトの足を模した爪を両手に装備する。そして飛び上がった。恐竜の力を得ているジャンプ力は驚異的でウロボロスの巨体を雄に飛び越えた。
ウロボロスの背に着地し、王蛇に攻撃を仕掛ける。
王蛇もソードベントを使い、攻撃を受け止めた。
「やるなお前。楽しませてくれよ」
攻められていながらも、黒井は余裕そうだった。それが源二の怒りのボルテージを増加させた。
「クソ野郎が!」
カードを1枚胸のダイナバイザーに装填した。
『スパンベント』
ダイナソーの体に尻尾が生える。ファントムバイトの尻尾だ。尻尾の先のドリルが回転し、王蛇を回り込んで攻撃した。不意打ちを食らった。
ウロボロスの体から落下する王蛇。そこを更にファントムバイトの巨体がタックルを仕掛けた。主人が攻撃されているのを見て負けじとウロボロスも恐竜にタックルする。その衝撃でダイナソーもウロボロスから落下した。
なんとかスパンベントの尻尾を起点にして着地する。
吹っ飛ばされた衝撃から立ち上がる王蛇。下半身にこびりついた粉塵を払うと、青い翼のカードを引いた。
バイザー越しに青い翼のカードが見えた。ならば自分もと言わんばかりに、赤い翼のカードを引いた。
『サバイブ』
2つのバイザーで同じ音声が戦場に鳴り響いた。