1 ライダー通知(分割版)
『近くにライダーがいます』
驚愕の一文が、俺の心臓をざわつかせた。
そのメッセージの通り、俺の目の前には春が近づいているという季節には大げさな黒のトレンチコートを着た青年が立っていた。大学生くらいの年齢で、落ち着いたストレートの髪型だ。
「もしかして、・・・あんたライダー?」
と言いながら、青年はスマホの画面を俺に見せつけた。
そこには、蝙蝠のような形の金色の紋章が映っていた。龍騎のカードデッキに彫られている金の彫刻と似たようなものを感じた。―こいつもライダーか。
まさかこんなに早く出会うとも思っていなかったために、言葉が喉でつっかえている。
「見たところ、初心者って感じだな。早速一勝負やる?」と言い、近くの水たまりを指さす。
なるほど、鏡の役割を果たすことができる場所や地面なら何でもいいわけか。俺は言葉に詰まりながらも、またミラーワールドの仕組みを一つ理解した。
「いきなりかよ・・・」
なんて台詞は、初心者であることがばれてしまうだろうか。口を滑らせてしまった気がした。
「あんたおかしなこと言うなあ。もしかして、初心者か?」青年はいなすように睨みを利かせた。「だったら、お手ごろだな」
彼のスマホの画面が水溜りの方を向く。そしてスマホがカードデッキへと変わった。
「ちょっと待て、俺は・・・」
戦う気がない?まだ初心者?適切な言葉は何だ・・・。そんなことを考えているのは不適だということもわかってはいた。だが心の底では、この青年が目の前からいなくなることを望んでいた。見ず知らずの青年と戦うのは無理がある。
その時、救いの手を差し伸べたのは予想外な人物だった。
「開斗!」
突如俺を腰部声が前方から聞こえてきた。女性の声だ。その声で青年の動きも止まる。彼は焦ってカードデッキをポケットにしまった。
青年の背後に立っていたのは、花枝―俺の彼女―だった。
花枝が近づいてくる足音と共に、名前もわからぬ青年は去っていった。彼女に助けられた。一先ず脅威は去ったようだ。
「こんなところで何してるんだ」
「営業周りで偶々近くにいたら、・・・って感じかな」
ショートカットが照り映える。今日も彼女は美しい。
花枝とは大学生時代に知り合って交際に発展した。かれこれ4,5年は付き合っているが、俺たちは結婚に行きつくのだろうか。俺の時々シャイな性格が、素直に結婚しようという言葉を遮り続けている。
彼女は保険会社の営業をやっていて、人と話すのが好きなのか上手くやっているらしい。
「開斗は?取材?」
「ああ、今会社に戻ろうとしたところ」
「そうなんだ。あ、そういえばさ、ちょっと美味しそうなイタリアン見つけたんだけど。今夜どう?」
唐突なデートの誘いだ。でも構わない。予定も特になかったはずだ。
俺の今の仕事は外に出ていくことが多いせいか突発的な飲み会も少ないところがいいところだ。
二つ返事で返し、俺たちは別れた。